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マイベストトラック2024 Vol.3 トラックメイカー編

上段左から岩井莉子、大沢伸一、Shinnosuke、下段左からPARKGOLF、MONJOE、Lil'Yukichi。
14分前2025年01月29日 10:03

2025年の幕開けに合わせ、音楽ナタリーではさまざまなアーティストに「2024年に最も愛聴した3曲」を聞くアンケート企画を実施。回答者のジャンルごとに分けた全8本の記事を公開していく。今回は「トラックメイカー編」として、岩井莉子(LAUSBUB)、大沢伸一、Shinnosuke(ex. SOUL'd OUT)、PARKGOLF、MONJOE(DATS)、Lil'Yukichiが選んだ2024年の3曲を紹介する。

構成 / 橋本尚平

岩井莉子(LAUSBUB)

NEW YORK「kicks」

ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタル・ガール・ポップ、パフォーマンス・デュオ「NEW YORK」の楽曲。00年代のエレクトロニカやMark Fell、Frank Bretschneiderを想起させるグリッチ / パルスサウンドと、20年代の海外ギャルマインドによって噛み砕かれたヒップホップ・サンプルの奇跡の融合! 過激なサウンドコラージュとなって、クールなリリックと共にストリートに吐き出されたような表現と、その実験的な姿勢に虜になりました。

公式サイトに掲載された、床に直置きのPCを囲んで立つ二人の姿も超クール。

RP Boo, Armand Hammer「Blood Running High」

Sun Raトリビュートコンピ「Outer Spaceways Incorporated - Kronos Quartet & Friends Meet Sun Ra」(Red Hot)から。シカゴ・フットワークのパイオニアRP BooとArmand Hammerによるコラボレーションで、Sun Ra楽曲が大胆にサンプリングされた生音フットワークです。螺旋階段を駆け上っていくようなリズムの連なり、絡みつきがかっこいい! この曲がフロアでかかると、マジカルな気持ちになります。

Aura Safari, Jimi Tenor「Last Waltz In Perugia」

イタリアのジャズファンク・コレクティブAura Safariと、フィンランドの巨匠・マルチ奏者のJimi Tenorによる共作ALからの1曲。全曲素晴らしいのですが、特にこの曲は繊細なピアニッシモの瞬間が際立ち、セッションの中で生まれる無音の美しさ、演奏者同志の阿吽の呼吸を感じます。冒頭の印象的なソロと、無音からの解放。最初に聴いた瞬間が忘れられません。ダイナミクスや生っぽさを活かしきるための録音や、MIXの考え方に関心を持つきっかけとなった曲です。

<プロフィール>

岩井莉子(イワイリコ)

2003年6月生まれ、北海道出身。2020年に同じ高校の軽音楽部に所属していた高橋芽以(※高ははしご高が正式表記)とテクノバンドLAUSBUBを結成。2020年12月発表のシングル「Telefon」が、2021年に入ってからSNSを中心に話題となり、SoundCloudで週間チャート1位を記録した。LAUSBUBは2024年7月に1stアルバム「ROMP」をリリース。

大沢伸一

Carrie Cleveland「Love will set you free」

7月に念願だったノルウェー旅行に行ったとき、現地は白夜で時間の感覚が狂う中、可能な限り聴いたことのないプレイリストを聴き漁った。そのとき出会った曲がこれ。実際には何年も前に買った「Late Night Tales」に収録されてたんだけど、とにかくノルウェーの離島から見える地上最北端の海原と、この曲のミスマッチ具合が妙にハマった。

70年代以前のソウルっぽく偽装されつつ、実際は80年代の技術が入ったトラック。これが中毒性高くて、金太郎飴みたいに繰り返すリフレインと相まって、不思議なグルーヴが生まれてる。間違いなく2024年で一番聴いた曲。

大枚叩いてGINZA MUSIC BAR用にオリジナルLPを買ったんだけど、その後に「Late Night Tales」のボーナス7インチですでに持ってたことに気づいた(笑)。

Oppidan「WAKE AND BREAK」

ダンスミュージックから1曲。実際にたくさん聴いたかどうかは別として、一度耳にすれば忘れられないだろう。この曲が持つ異様さは、明快なテーマや民族性、温度感といったものを持たないところにある。そして、「音楽に意味なんて要らない」と語りかけてくるようだ。

この曲は、一体どんな気分にさせたいんだろう? 最近では、機会があればフロアにも投下している。

Asynchrone「Thatness and Thereness」

ストリーミングが主流になってから、「新譜」という概念がよくわからなくなってきた。昔ながらの意味とは少し違って、出会った瞬間が「新譜」ということなのかもしれない。

この曲をカバーしているのは、坂本龍一の作品を中心に取り上げるAsynchrone。オリジナルは、僕が中学二年生くらいのとき、YMOに夢中になり、周辺作品を貪るように聴いていた中で出会った「B-2 UNIT」というショッキングなアルバムに収録されていた唯一の歌曲。教授自身が歌っていた。

ここでは、その退廃的でディストピア的なムードをアコースティックで再現している。ちなみに、この曲は、たぶん人生で最初にフルコーラスの英語詞を覚えた1曲でもある。

<プロフィール>

大沢伸一(オオサワシンイチ)

DJ / コンポーザー / プロデューサー。アシッドジャズバンドを前身としたソロプロジェクト・MONDO GROSSOにて革新的なトラックをリリースしつつ、国内外のアーティストのプロデュースを手がける。2007年からは個人名義での活動を本格的にスタートさせ、テクノ、ハウス、エレクトロのシーンを中心にDJとして活躍。2017年にアルバム「何度でも新しく生まれる」で14年ぶりにMONDO GROSSOを再始動させた。2019年にはRHYMEとのユニット・RHYME SOも始動。2023年12月に、SHINICHI OSAWA名義での作品「FCKNJP」をアメリカ・サンフランシスコの名門レーベルDirty Birdから発表した。

Shinnosuke(ex. SOUL'd OUT)

Lady Gaga & Bruno Mars「Die With A Smile」

映画でも色々な意味で話題をさらったLady Gagaですが、やはり歌っている彼女は本当にカッコいい。素敵です。
Brunoの甘い声とのマッチングもとても美しく素晴らしいハーモニーを聴かせてくれました。
何よりメロディーが素晴らしい!! 美メロすぎませんか?! 最初Babyface作かと思いました。
トラックメイカー的な目線で言うと、いわゆるソウルマナーに則った音色・質感で耳馴染み良く聴かせる正統派なアレンジ。純粋に「名曲」としていつまでも後世に残るべく自然なテクスチャーに仕上げているところがかなりの好感触でした。このメロに対しての最適解なのではないかと。もう全てが本当に美しい、素晴らしい、神々しい。
曲自体がとても素敵なので、誤解を恐れずに言うと「ある意味誰が歌っても良くなる」んだと思いますが、やはりこの2人にしか出せない世界だと感じました。歌声のオーラ。
そしてMVも素晴らしい! どこかツインピークスみもあるような…?
本当に音楽って良いですよね。
こんなに素敵な曲が聴けてとても嬉しいです。
嗚呼、感動。

Yolanda Adams「Powerful」

尊敬している偉大な音楽プロデューサーJimmy Jam & Terry Lewisが手がける作品は全て聴くようにしているのですが、昨年は待望の彼ら自身名義でのソロ来日コンサートも開催され大興奮の夏でした。
そして久々のYolandaのアルバムをプロデュースするという事で期待大だったのですが、それを遥かに超えてきたこの仕上がり! なのでアルバム「Sunny Days」全曲とっても良いです。
その中でも今回はアッパーな4つ打ち曲をピックアップ。
彼らはたまにこういうハウシーな曲も手がけるのですが、この曲のベースは最高にカッコいいですね。
ソウルを感じさせるエレキベースのスラップがファンキーに映えつつ、サビで入ってくる手弾きのシンセベースの細かい動きがたまりません。Dirty Loopsっぽさも感じるようなバカテクダンスミュージックですね。
アルバム収録の他の曲もゴスペルからR&B、ポップスにオールディーズとかなりバラエティに富んでいてボリューミーで大満足でした。

Ariana Grande「yes, and?」

Madonna「Vogue」をオマージュしたガラージハウス!!!
たまりませんね。初めて聴いた時は本当に痺れました。
以前Gagaとコラボした「Rain On Me」もこの辺の90年代クラシックハウスをモチーフにしていたので、おそらくその流れからのプロダクションとしてソロでもやりたい、という感じなのかな?と勝手に想像して楽しませてもらいました。
MadonnaやGagaのようなダークさを帯びたクールな声質とはまた違う、Arianaのコケティッシュな声質とこういうトラックがポップミュージックとしてうまく昇華されていてとても合っていると思いました。
更にMVではPaula Abdul「Forever Your Girl」(と、もちろん「Vogue」も)をオマージュしているというこだわりよう! このMVもとてもカッコ良くてプロフェッショナルを感じました。素晴らしい!

<プロフィール>

Shinnosuke(シンノスケ)

2003年1月にSOUL'd OUTのトラックマスター兼キーボーディストとしてメジャーデビュー。2014年7月に東京・新木場STUDIO COASTで行われたワンマンライブ「SOUL'd OUT LAST LIVE "0"」をもってグループは解散した。2017年7月に声優の森久保祥太郎とともにbuzz★Vibesを結成。嵐、AI、寺島拓篤、「アイドリッシュセブン」、「アイドルマスター ミリオンライブ!」といったアーティストや作品への楽曲提供も行っている。1月23日に新曲「VIVID TRAVELER」を配信リリースした。

PARKGOLF

2024は好きなアルバムのリリースが沢山あったのでアルバムの中からの紹介になります。

Mk.gee「New Low」

アルバム「Two Star & The Dream Police」が本当に素晴らしかったです。
ここ数年インディーとエレクトロニックの共存みたいな曲が本当に好きで沢山聴いているのですが、ドラムやギター、ボーカルの加工も1つ1つが全部おもしろくて、一筋縄ではいかないpopさが詰まったアルバムでした。
色々と動画を見漁っていたらギターのエフェクターにモジュラーシンセも多用していてかなり興味深かったです。

Loukeman「Baby You're A Star」

2024リリースのアルバム「Sd-2」の楽曲。派手さがないのに派手に聞こえるとゆうか、曲の展開とか音作りも含め全てが絶妙でした。
個人的にMk.geeのアルバムとこのアルバムは別アプローチで似た場所に辿り着いている気がしていて、とても好きなアルバムでした。
僕の最近やりたいことの破片も沢山入っていました。

Vegyn「Another 9 Days(feat. Ethan P. Flynn)」

2024にリリースされたアルバムの楽曲。起承転結が激しくなって1曲の中で何箇所もフォーカス部分を作る風潮の中、アルバムらしいアルバムっていいなと思えたアルバムでした。
細かい部分のギミックが個人的にモードで、何年か経ってからも聴いてみたいです。今年も彼のレーベルの「PLZ make it Ruins」のリリースも楽しみにしています。

<プロフィール>

PARKGOLF(パークゴルフ)

北海道札幌市出身のビートメイカー / プロデューサー。Maltine Records作品への参加で注目され、ゲスの極み乙女 、藤井隆、上坂すみれ、tofubeatsらのリミックスやHey! Say! JUMP、にしな、eillらのアレンジを手掛ける。2015年に1stアルバム「Par」をリリース。2017年には「REO」、2021年には「Totem」という豪華客演陣を迎えたアルバムを発表しており、近年はSUSHIBOYS、ばってん少女隊、lyrical school、Negiccoなどに楽曲提供している。

MONJOE(DATS)

The Kid LAROI「GIRLS」

2024年、2000年代っぽいサウンドを作りたいというオーダーをあらゆるところで何回も聞きました。リファレンスでJustin TimberlakeやMissy Elliotはマジで超聴きました。笑

The Kid LAROIのGIRLSは、2000年サウンドを今の音に昇華してて大好きです。

Charli xcx「Von dutch」

あと、ハウス。Charlie xcxの「BRAT」が出て以降、グローバルポップシーンでハウスが更にトレンドになった感じがありましたね。K-POPではaespaがここと共鳴していて最高でした。

Number_i「BON」

最後に、J-POP。海外に行くとみんなJ-POPアツいと言っていました。マジでアツいと思います。そんな日本を拠点としてプロデューサーをやってるMONJOEですが、2024年沢山作った楽曲の中でも特に思い入れのある曲がNumber_iの「BON」。日本の音楽も凄い! 2025年も楽しみです。

<プロフィール>

MONJOE(モンジョー)

1993年生まれ。2013年にDATSを結成し、ボーカルと作詞・作曲を担当。2015年から2019年まで、yahyelのシンセサイザー奏者、コンポーザー、アレンジャーとしても活動していた。MONJOE個人としてはNumber_i、BE:FIRST、m-flo、SKY-HI、Superfly、加藤ミリヤなどへの楽曲提供やプロデュースワーク、CM音楽制作、DJなどで活動。2024年1月、作曲を手がけたNumber_i「GOAT」が大ヒットを記録し、同年3月には「Rolling Stone」誌の世界11カ国 / 地域の編集部が選ぶ「Future 25」にプロデューサーとして日本代表に選出された。

Lil'Yukichi

Rob49「I Swear To God」

アメリカ、ニューオリンズ出身のラッパー。
めちゃくちゃ厳ついトラップビートの上で「お前が一番だ、神に誓うよ」などと彼女へのラブソングを歌うという、その方向からくるー?的に思った曲です。
MVも彼女とのデートや惚気映像が満載でちょー最高です。

Paris Aden「Front Stage」

アメリカ、ヒューストン出身のラッパー、プロデューサー、DJ、写真家。
この曲が入ってるアルバム全体めちゃかっこいいです。
クールにゆったりしたラップと破壊力つよいトラップビートがいっぱい。
特に数曲、楽曲提供しているアルゼンチン出身のPsyckerってプロデューサーのビートがハードです!

Deech x Lil'Yukichi「Island Flow feat. JP THE WAVY」

最後は僕の曲なのですが…。
川崎のラッパーのDeechと夏の曲を出しました!
彼とはいくつか共作を出しているのですが、「Yap Yap feat. Elle Teresa」という2023年に出したアルバムからの1曲が、去年の5月ぐらいから幅広い層の方々に聴いていただけて本当に感謝です。

本題に戻りまして
この曲、なかなか爽やかな良い曲が出来たと思っております。
WAVYくんも快く参加してくれて最高なヴァースをかましてくれました。

ビートは90's R&BっぽいのをAIで生成してそれをサンプリングして作ったものなんですよね。
MVもちょっとした小芝居を入れたり、全体的に良い感じの映像に仕上がってるのでぜひ観てください!

2024年を振り返ってみて、新譜はラップばかり聴いてたなって感じました。
あと、自分の曲ばかり聴いてました。
ずっと温めているものがあるので、2025年はそれを無事にリリースしたいなと思っております。
今後ともLil'Yukichiをよろしくお願いいたします。

<プロフィール>

Lil'Yukichi(リルユキチ)

横須賀米軍基地内で生まれ、15歳の頃にCherry Brown名義でラッパーとして活動を開始。オリジナルのビートで曲が作りたいと考えていた際に、周りに作曲できる人がいなかったため、 Lil'Yukichi名義でビートメイカーとしての活動をスタートさせる。2018年にCherry Brownとしての活動を完全に終了。 BAD HOPをはじめとした数多くのアーティストにビートを提供し、あいみょんなどのリミックスも手がけている。また近年ではLil'Yukichiがボーカルを乗せた曲もリリースしている。

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