Hair Stylistics名義でミュージシャンとして活動し、作家、映画評論家としても知られる中原昌也の病後初の小説集「焼死体たちの革命の夜」が本日4月30日に河出書房新社より発売された。
2023年1月に糖尿病の合併症による脳梗塞と肺炎を併発し、一時は生命が危ぶまれるほどの病状に陥ったものの、奇蹟的に生還を遂げた中原。現在は左半身麻痺、視覚障害の後遺症が残りながらも、健康的な生活を送っている。
病いの前後に書かれた日記やエッセイなどを収めた生還第1作「偉大な作家生活には病院生活が必要だ」に続く「焼死体たちの革命の夜」には、2016年から病いに倒れる直前の2023年までに書かれた短編小説を収録。フィリピン人女性歌手が交通事故で死んだ速報から焼死体、動物たちへと連想を広げ、“ただ捨てられるだけのボロ布”としての生に思いを馳せる表題作、職場の窓から目にした同僚女性の不倫を妄想し“花を買いにいく”と宣言する「わたしは花を買いにいく」、馬に乗って新宿を彷徨う「あの農場には二度と」、バスに乗って角田の母親に会いに行く「角田の実家で」など9作が収められている。
「焼死体たちの革命の夜」より抜粋
未来も勿論なく、あとはただ捨てられるだけのボロ布が、唯一の存在感を主張するに必要な揺れを演出する微風が、「誰か家賃を払ってくれないか?」のいなたいメロディと重なって小さなスピーカーから流れた。ささやかに、煤けたボロ布はたなびいた。それは主張と呼ぶには、あまりにも小さな声。起こっても起きなくても、どちらでも構わないような、何事かが起きたとも言い難い、誰の感性にも認知されない音量の小ささだった。
岸本佐知子(翻訳家)推薦コメント
虚無が虚無を支え合ってできたアーチの向こうから、
目眩がするほどまばゆい虚無があらわれる。
中原昌也 「焼死体たちの革命の夜」目次 / 初出
わたしは花を買いにいく / 「文藝」2016年冬季号
悲しみの遺言状 / 「文學界」2016年11月号
劣情の珍獣大集合 / 文藝」2017年夏季号
あの農場には二度と / 「文藝」2018年夏季号
角田の実家で / 「文藝」2020年夏季号
次の政権も皆で見なかったことにした / 「文藝」2021年春季号
げにも女々しき名人芸 / 「ILLUMINATIONS」創刊号(2021年6月)
焼死体たちの革命の夜 / 「文藝」2021年冬季号
久美のため息 / 「FEU」創刊号(2023年6月)

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