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春ねむりが音楽で抵抗し続けるKNEECAPに共鳴、話題曲「IGMF」の制作経緯も明かす

左から春ねむり、渡辺志保。
10分前2025年07月25日 1:05

昨日7月24日に東京・新宿シネマカリテで映画「KNEECAP/ニーキャップ」の先行上映が行われ、上映後のトークショーに春ねむりと音楽ライターの渡辺志保が登壇した。

8月1日より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開される映画「KNEECAP/ニーキャップ」は、アイルランドのヒップホップトリオ・KNEECAPの誕生をたどる半自伝的物語。KNEECAPは、2022年まで北アイルランドでは公用語として認められていなかったアイルランド語でラップをし、政治的な風刺の効いたリリックに反抗的なパンク精神を融合したスタイルで注目されているグループだ。先日開催された世界最大級の野外音楽フェス「Coachella Valley Music and Arts Festival」や「Glastonbury Festival」では、パフォーマンス中、パレスチナにジェノサイドを行い続けるイスラエルを批判して物議を醸している。

日本語でラップしてる人は少ないからこそ面白い

マスタリングエンジニアの勧めでKNEECAPのアルバムを聴いてファンになったという春は、映画について「『ケアとユーモアだよな、アナキズムは』っていうのが率直な感想で。アルバムを聴いてKNEECAPを好きになったので、こんな愉快な映画だと思ってなかったし、すごい楽しかったです」とコメント。これを受けて渡辺も「ドキュメンタリー映画に仕立てたほうがいいのかもって思うようなシリアスな主題なんですけど、あのファニーな感じとか全体的なトーンのミックス具合が面白かったと思います」と賛同した。

KNEECAPというグループについて、春は「普通の人が普通に持ってる面白さを爆発させて、置かれた環境も面白くしちゃうのが素晴らしい」と称賛。一方、渡辺は「ラップの本質は言葉そのもので、KNEECAPは自分たちの本当のルーツであるアイルランド語を奪われたというバックグラウンドをラップに掛け合わせているのが天才的」とその魅力を語り、春は「私もたまに英語で歌詞を書かないんですかって聞かれることがあるんだけど、日本語でやってる人のほうが少ないから日本語のほうが面白いじゃんって思います」と話を広げた。

言語が違っても伝えたいメッセージは伝わる

日本語でラップしながらワールドツアーも行う春は、母国語が違う海外のファンの反応について聞かれると「自分の言葉が強すぎるので、言語がわからないほうが聴きやすいんだろうなと思っていて」と笑いつつ、「意味を理解しようとしてくれる人もいるし、伝えたいメッセージは伝わってるなと思うことのほうが多いです。全然違う国の通勤電車とか、学校で居場所がなかったときに聴いてましたってめっちゃ言われるんですけど、私もそういうときに聴きたい曲を書いてるから」と答えた。

また春は映画の舞台であるアイルランドでライブを行った際のエピソードも披露。「ワークマンズクラブという会場だったので、MCで『働いてる女もいるぞ』と言ったらめっちゃウケてました。パンクなものとかアナーキーなものを好きで聴いてくれるのかなと。当時出したばっかの新曲「ディストラクション・シスターズ」をやったんですけど、めっちゃ歌ってくれて。こういう連帯がすごく必要だから、私は音楽を聴いてるんだなってことを感じました」と振り返った。

参政党さや氏への怒りを表明した「IGMF」

渡辺に話を振られた春は、参政党のさや氏への怒りを表明した話題の楽曲「IGMF」についても言及。「あれを精査していくと、普段の私の曲みたいになると思うんですよ。もっと抽象的な概念の話とか、詩的な言い回しとか。でも、その人が持ち出そうとしてる概念がキショいなっていう感情をこの段階で共有しないとやってらんねえなと。表現に精査が足りないだろうし、もっと完成度を高めたほうが曲としてはいいんだろうけど、即書き即出ししないとダメなんじゃないかなと思ったので書いてしまった」と制作経緯を語り、「ライブの帰りの車で書き始めて、次の日、寝て起きてトラックを作ってアップしたので、ほぼ1日くらいで作りました」と明かした。

春は楽曲がSoundCloudから一度削除されるも復元された経緯について「ヘイトスピーチって通報した人がいっぱいいたみたいで。『ヘイトスピーチには当たらないと思う』ってメールしたら対応してくれました」と説明。その反響を聞かれると「ここ数日は、Xの通知欄を横目で見てます。自分に対してはいいんですけど『反日』とか『何人ですか?』とか答えに困るなって。答えた方がいい批判にはできる範囲で答えようと努めてるんですけど、流し見せざるを得ない」と苦笑した。

怒るというコストを誰かが負担しないといけない

音楽でそうした怒りを表現する日本のアーティストは数えられるほどしかいない中、怒り続けるのも難しいのではないかと聞かれた春は、「怒らないほうがしんどいというか、怒りを封じ込められてきた経験があるから嫌なんだと思います」と回答。「怒るのは無駄なんですけど、誰かが負担しないといけないコストではあって、それを負担しなくていいのは特権的だということを認識してほしいと思っちゃいます」と続けた。

KNEECAPがライブ中の政治的言動を巡って起訴されていることに話が及ぶと、春は「でも、やり続けるじゃないですか。そのやり続ける筋力を鍛えないと生きてこられなかったんだろうなと。それはカッコいいことだし、その筋力が必要なときはあるなって」と共感を示し、「裁判費用になれと思って買いました」とKNEECAPのTシャツをアピール。最後に「もし春ねむりの物語を撮りたいと言われたらどうするか」という質問を投げかけられると、「一回話を聞いてみたいですね。外からどういう人だと思われてるのか気になります」と笑った。

トークショーの締めくくりに、渡辺は「私もこの映画を観て、興味の幅も広がったところもありますし、イギリスとアイルランドの歴史ってなんとなく知ってるけど、今現在若者がどんなことに苦しんでいるのか、どんなことに打ち勝ちたいと思ってるのかは想像が及ばなかった。私と同じような人がいたら、そのあたりのルーツに目を向けてもらえればと思います」とコメント。続けて春は「殴られて殴り返さない人は立派だと思う。でも殴り返したいって感情や抵抗しなければならないって感情が生まれるとき、力を発さなければならないときがある。これはそういう映画だと思うし、その中にユーモアがあるのがすごいグッとくるポイントで。ムカつくけど笑ってやれってすごく思うし、自分もやろうって思いました」と映画から受けた感銘を言葉にした。

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