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石若駿バンドがロバート・グラスパーや椎名林檎と共演、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」今年も大盛況

抱擁し合うロバート・グラスパー(左)と石若駿(右)。
22日前2025年09月24日 11:03

石若駿率いるバンド・The Shun Ishiwaka Septetら出演のライブイベント「JAZZ NOT ONLY JAZZ II」が9月18日に東京・東京国際フォーラム ホールAで開催された。

「JAZZ NOT ONLY JAZZ II」はThe Shun Ishiwaka Septetがさまざまなゲストアーティストたちとセッションを繰り広げる企画。初開催となった昨年は、上原ひろみをはじめとした多彩なラインナップが大きな話題を呼び、9月19日からは劇場版として全国の映画館で上映されている。2回目となる今回は、ゲストとしてアイナ・ジ・エンド、岡村靖幸、KID FRESINO、椎名林檎、中村佳穂、ロバート・グラスパーが出演。さらにはイマーシブ音響システム「d&b Soundscape」を採用し、より没入感のある音楽体験を実現させるなど、去年以上に濃密な一夜となった。

アイナ・ジ・エンドがまずは登場

昨年同様に音楽評論家の柳樂光隆がオープニングDJを務め、開演時刻を過ぎると昨年のラフなTシャツ姿からフォーマルなスタイルに変わった石若、そして西田修大(G)、細井徳太郎(G)、マー ティ・ホロベック(B)、松丸契(Sax)、山田丈造(Tp)、渡辺翔太(Piano)によ るThe Shun Ishiwaka Septetが登場。昨年の「A Love Supreme」に続いて、今年もジョン・コルトレーンの楽曲「Transition」でライブをスタートさせ、細かなパッセージやフリーキーな演奏でオーディエンスを魅了する。

この日最初のゲストとして登場したのは、唯一昨年に続いての出演となるアイナ・ジ・エンド。黒いドレスを着たアイナは「Frail」で妖艶さとキュートさを併せ持った魅力を振り撒き、石若がドラムンベース的なリズムを叩く「革命道中」ではオーディエンスからのコールを求めるなど、その記名性の強い歌声に加え、アイコニックな存在感を際立たせる。「去年やってすごく楽しくて、もう1回今年もやりたくて」という話から始まったのは「私の真心」。アイナが裸足になり、情感たっぷりに歌い始めると、この曲の作詞作曲を担当した岡村靖幸が登場。2人が掛け合いをしながら歌い、松丸の艶やかなサックスや西田のエモーショナルなギターがその熱量を後押しすると、終盤ではアイナがバレリーナのように舞い踊り、早くもこの日最初のクライマックスを生み出した。

石若とライブ初共演の岡村は、アルバム「家庭教師」収録の「祈りの季節」を披露し、キレのあるステップで会場の空気を掌握。「Lion Heart」では山田のトランペットがムーディな雰囲気を盛り上げる。「ハレンチ」の演奏が始まるとオーディエンスが一斉に立ち上がり、ファンキーなボーカルと演奏で場内が一気にヒートアップ。岡村はステージを動き回りながら「カモン!」と煽ったり、ダンスで空気を盛り立てたりと、その千両役者ぶりを発揮した。

ここで体調不良によって出演キャンセルとなってしまったトランペッターの日野皓正について、石若が「僕がジャズの道に行くきっかけとなった人」とエピソードを語り、Septetのみで日野の「Still Be bop」を演奏。札幌で小学生から石若とともに音を鳴らしてきたという山田のトランペットをフィーチャーしつつ、曲の後半では西田と細井がスリリングなギターソロを聴かせ、ライブ中盤のハイライトを作り出した。

着物姿の椎名林檎が

石若を除くメンバーが退場し、グランドピアノがステージ中央に運ばれると、次のゲストである中村佳穂が登場。同い年で10年来の付き合いだという2人が飾らない雰囲気で言葉を交わすと、中村がいつものようにピアノを弾きながら即興で石若との思い出をメロディに乗せる。そして「駿のことを思いながら書いた」という「さよならクレール」をデュオ編成で披露。さらに「忘れっぽい天使」も即興に近い形で言葉を紡ぎながら届けられ、自由度の高いパフォーマンスが観客を惹き付ける。再びSeptetのメンバー全員が合流すると、KID FRESINOが登場してコラボレーションを披露。中村はそのままハンドマイクで 「MIU」を伸びやかに歌い上げ、最後まで音と戯れる喜びにあふれたステージを繰り広げた。

再びKID FRESINOがステージに登場すると、プログレッシブなリズムに巧みなフロウを乗せ 「Coincidence」を届ける。さらに彼らは、石若のリーダーバンドであるAnswer to Rememberの曲にKID FRESINOが参加した「RUN」を演奏。変拍子のアグレッシブなリズムながらも有機的なラップと演奏、そして渡辺のシンセから始まったソロ回しで観る者を圧倒した。

「ライブでやるのは初めての曲」という紹介から「鶏と蛇と豚 ~Gate of Living~」が始まると、着物を纏い、笠を被った椎名林檎がステージに登場。KID FRESINOのラップとの絡みを聴かせ、続く東京事変のナンバー「能動的三分間」で笠を投げ捨てると大きな歓声が沸き上がる。続けて名曲「丸の内サディスティック」の“EXPO Ver.”が披露され、椎名は扇子を仰ぎながら優雅かつエレガントに歌唱する。会場の所在地が丸の内であることから多くのオーディエンスがこの曲の披露を期待していたであろう中、その期待にバッチリ応える名演が届けられた。

ロバート・グラスパーが残したメッセージ

しばし転換時間を挟み、いよいよロバート・グラスパーが登場。ベース、ドラム、DJとの4人編成で「Find You」を披露し、そのジャンル横断的な作風がジャズの新たな時代を切り開いた第一人者であることを改めて印象付ける。公演のオフィシャルTシャツに着替えた石若が登場し、グラスパーと握手を交わすと、ツインドラム編成で「Rise and Shine」を演奏。曲の後半では、グラスパーのバンドのドラマーであるジャスティン・タイソンと石若が白熱のセッションを繰り広げる。グラスパーが、サンプラーを使って日本語で「音楽は人生、音楽はアート」とメッセージを伝える場面も。さらにはグラスパーと石若にマーティが加わり、彼らはピアノトリオ編成で「Jelly's Da Beener」を披露。演奏を終えたグラスパーと石若がハグをし、大歓声とともに本編が終了した。

アンコールでは石若がグラスパーについて「ジャズをやり始めた頃からずっと聴いてた人と一緒に演奏できる日が来るなんて。当時の自分に教えてあげたい」と話し、最後にこの日の出演者全員で椎名の「長く短い祭 ~In Summer, Night~」をパフォーマンス。再びオーディエンスが一斉に立ち上がり、椎名から始まる豪華なマイクリレーを堪能する。そこにグラスパーのピアノソロが加わるという、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」だからこその光景でイベントの幕が下ろされた。

なおこのライブの模様は11月16日にWOWOWにて放送 / 配信される。同月23日16:00からはStreaming+とLive Extremeでの配信も行われる。

セットリスト

「JAZZ NOT ONLY JAZZ II」2025年9月18日 東京国際フォーラム ホールA

01. Transition
02. frail(ゲスト:アイナ・ジ・エンド)
03. 革命道中(ゲスト:アイナ・ジ・エンド)
04. 私の真心(ゲスト:アイナ・ジ・エンド&岡村靖幸)
05. 祈りの季節(ゲスト:岡村靖幸)
06. Lion Heart(ゲスト:岡村靖幸)
07. ハレンチ(ゲスト:岡村靖幸)
08. Still Be bop
09. さよならクレール(ゲスト:中村佳穂)
10. 忘れっぽい天使(ゲスト:中村佳穂)
11. MIU(ゲスト:中村佳穂)
12. OPENING(ゲスト:KID FRESINO&中村佳穂)
13. Coincidence(ゲスト:KID FRESINO)
14. RUN(ゲスト:KID FRESINO)
15. 鶏と蛇と豚~Gate of Living~(ゲスト:KID FRESINO&椎名林檎)
16. 能動的三分間(ゲスト:椎名林檎)
17. 丸の内サディスティック(ゲスト:椎名林檎)
18. Find You(ゲスト:ロバート・グラスパー)
19. RISE & SHINE(ゲスト:ロバート・グラスパー)
20. Jelly's Da Beener(ゲスト:ロバート・グラスパー)
<アンコール>
21. 長く短い祭 ~In Summer, Night~(ゲスト:出演者一同)

撮影:太田好治

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