2008年のデビューから2014年の解散まで大きな支持を集めた3ピースロックバンド・andymori。当時若年層を中心にたくさんのリスナーを熱狂させた彼らの音楽は、現在もなお後進のバンドに大きな影響を与え続けている。そんなandymoriに青春のすべてを捧げたと語るのが、俳優でモデルの田中真琴だ。10代半ばから20歳目前まで彼らの活動を追いかけ続けた彼女にとって、andymoriとはいったいどのような存在なのだろうか。各界の著名人が愛してやまないアーティストについて語るこの連載「私と音楽」にて、胸の内を明かしてもらった。
取材・文 / 石井佑来 撮影 / 小財美香子
今まで感じたことないうねり
私、andymoriについてどこかで語ったことって今までなかったんですよ。andymoriについて語るのは、あの頃の自分について語ることでもあるから、恥ずかしくって。それくらい当時の自分にとってandymoriはすべてだった。それに、今andymoriを聴くと「あの頃の自分に戻されちゃう」という恐怖みたいなものを感じて。若くて危うかった当時の自分が、メリメリと殻をむいて出てくるような感覚がある。そういう存在なんですよね、私の中では。それでも、自分の青春の真ん中にandymoriがいてくれて本当によかったと思います。そして、andymoriが解散したからこそ、自分は大人になれたんだろうなとも。
初めてandymoriを知ったのは2009年。「青い空」のミュージックビデオをCSの音楽番組で観たのがきっかけでした。その翌年、大好きなスピッツが主催しているイベント「ロックロックこんにちは!」を観に行ったらandymoriが出ていて。そのときのライブが本当にすごかったんです。みんなが曲の合間にスピッツへの感謝とかを話す中、andymoriはMCなしで、ものすごい熱量のままライブをやりきっていて。それを見て「ヤバい、ハマっちゃうかも」と思いました。もともと両親の影響でスピッツやTHE BLUE HEARTSは好きだったけど、ここまで好きになれそうなバンドを自分で見つけたのは初めてで。ちょっと怖くなるくらい引き寄せられる感覚があったんですよね。それから初めて自分でチケットを取って、友達と一緒にライブに行ったんですけど、そこで今まで感じたことない“うねり”みたいなものを体感して。音楽が全身を駆け巡って、体が勝手に動き出すような感じというか。まるで夢の中にいるみたいな感覚に、高校生だった自分はすごく感動したんです。そこからandymoriにズンズンとハマっていきました。
andymoriは“2度と戻れない過去”
andymoriは、多感な時期に出会ったというのがやっぱりすごく大きくて。そこに意味があったんですよね。この取材のお話をいただいてから、全曲聴き直して、DVDも観返したんですけど、そしたらなんとも言えない気持ちになっちゃって。二度と戻れない過去って、こういうことを言うんだなと。私は昔から「変わってる」と言われることが多くて、周囲にうまくなじめなかったんですよ。学校でも、誰と一緒にいたらいいのか全然わからないような状態で。そんな自分をandymoriは初めて肯定してくれた。「自分がいるべき場所はここなのかな」と、ようやく思えたというか。“変わった人たち”のチームに入れてもらえた気がしたんです。彼らの持つ危険な匂いやもろさ、刹那的な声、歌詞、リズム……あらゆる要素に共鳴してしまっていましたね。
andymoriを聴いていた頃の私は暴走状態も暴走状態で。ちょうどミスコンに出て芸能界に片足を突っ込みかけるぐらいの時期だったのもあって、マリオで言う“スターを取った”みたいな気分だったんですよ。怖いものなんて何もないと思っていたし、何にぶつかっても死なないと思ってた。本当に自転車をこぎながら目をつむったりとか、わけのわからない万能感に侵食されていて。そのときの自分の気持ちとandymoriの曲がマッチしすぎていたんです。夢見がちなところも、攻撃的なところも、世の中を憂いているところも、本当に自分と一緒だと思ってました。だからこそ、今聴くと怖くもなるんですよね。当時のヤバい自分は、まだ私の中にいるはずだから。今でもandymoriが続いていたら、たぶんあの頃のヤバい自分のままだったと思います。andymoriが解散したからこそ、人として丸くなったり、ほかの人を許容できるようになったりしたんじゃないかな。
初めて飲んだお酒はもちろん……
当時は「everything is my guitar」とか「ベンガルトラとウィスキー」とかアップテンポの曲をよく聴いていたけど、大人になってから「16」「オレンジトレイン」みたいなしっとりした曲が沁みるようになりました。あとは野音のDVD(「ぼくたちアンディモリ~日比谷野外大音楽堂ライブ&ドキュメンタリー~」)に入ってる「三万日ブルース」とかもすごく好きです。歌詞で言うと、「ユートピア」の「バンドを組んでいるんだ 素晴らしいバンドなんだ」というフレーズがお気に入り。自分たちのことを「いいバンドなんだ」とここまでストレートに歌う人たちって、あまりいないじゃないですか。それを彼らはありえないくらいさわやかに歌っていて。押し付けがましくもなく、本当にただただ歌うこと、演奏することが楽しいという気持ちが、このフレーズに込められている。初めて聴いたときに「これはこの人たちにしか歌えないな」と感じた記憶があります。あとは「ビューティフルセレブリティー」の世界観も大好きです。「彼女の家のドレスルームで暮らす短い夢をみる」とか、すごく絵が浮かぶんですよね。どんな家かも、そこにどんな人が住んでいるかも思い浮かべられる。私の思い描く空想に近い世界観で、自分にとって休息の地みたいな曲です。
学校から家に帰った直後の夕暮れ時がすごく嫌いで。その時間帯は決まって「1984」を聴いていました。この曲を1人イヤフォンで聴くことで、凪ってる時間の憂鬱を飲み込んでいましたね。あとはどの曲も塾で聴いていました(笑)。行きも帰りも塾の中でも、ずっとandymoriを聴いていた。あとは電車に乗りながら聴いた「無までの30分」も印象的です。大人になってから初めて飲んだお酒はもちろんジントニック(※楽曲「クラブナイト」に「ジントニックで踊ろうよ」というフレーズが出てくる)。今でもライブハウスのドリンクチケットはジントニックに交換しています(笑)。
短命なバンドなんだろうなと、なんとなく肌で感じてた
andymoriの曲は、後期になるにつれて穏やかになっていくんですよね。最初は彼らの危うさが持つ中毒性に惹かれていたけど、後期の“まろやかなのにトゲがある”という感じも好きです。嫌なことをただ「嫌だ」と言うだけじゃなく、まろやかに「嫌だ」と言うことの強さを教えてもらえた気がします。ただ、曲自体は穏やかになっていく一方で、小山田(壮平)さん本人はすり減っていっているんじゃないかというのを感じていて。曲は平和になっていくのに、不穏な空気をファンとしてはどこかに感じた。でも、そういう生々しさやアンバランスさもandymoriの魅力の1つだったと思うんです。
解散が発表されたのは私が大学生の頃で、授業中にその報せをこっそり見たのを覚えています。号泣して血迷った挙句、その足で京都の河原町にある楽器屋さんに行ってギターを買いました。「andymoriがいなくなるなら、私がandymoriになる!」という気持ちで。結果的に挫折したけど、そのギターは今でも部屋に置いてあります。解散はすごく悲しかったけど、きっと短命なバンドなんだろうなというのは、みんななんとなく肌で感じていたと思うんです。きっといつかは終わるだろうし、だからこそ彼らは美しいんだって。すごく刹那的な空気をまとっていたし、ライブを観ていても、あまりに身を削りすぎているのは伝わってきていたので。andymoriという危うい存在がバラバラになっていくその姿を見て、「このままだと、いつかは自分もこうなるんだろうな」と感じていました。そういうところを含めて、彼らは私の道しるべでもあった。そして何より、永遠には続かない刹那的な輝きを同じ時代に見ることができたのは、とても幸せなことだったんだなと思います。
自分にとっての儀式でもあった解散ライブ
初めて東京に行ったのも、andymoriの解散ライブのときでした。ライブを観るために東京に行って、日本武道館近くのビジネスホテルに泊まって。一番後ろの席で1人で観てたら、横のお姉さんも1人で来ていたので、2人で一緒に号泣しました(笑)。ただ、最初の数曲は泣けて泣けてしょうがなかったんですけど、徐々にもったいないという感情のほうが強くなってきて。絶対に「楽しかった」という気持ちで終わりたいから、感傷的になるのはやめようと思ったんです。それからはめちゃくちゃはっちゃけて、いつも通り飛び跳ねるようにしました。解散ライブは、自分にとっても1つの儀式のような感覚がありましたね。andymoriが解散するのと同時に自分の青春が終るんだってわかっていたので。「ここから私は大人になるんだな」という気持ちを抱えながら、1曲1曲終わっていくのを眺めていました。
小山田さんのソロやAL(andymoriのオリジナルメンバーと長澤知之が2015年に結成したバンド)も追いかけていたけど、やっぱりあの頃の小山田さんがあまりに魅力的すぎて。ほかの誰にも出せない危うさや変なきらめきがあったなあと思います。危ういうえにすごく素直で。アガってるときは声を上ずらせながら歌って外しまくるし、しっくりきてないんだろうなってときはわかるし。かと思えば屈託のない笑顔を見せてくれるときもあったり。本当に唯一無二の魅力を放っている存在でした。
あのとき彼らに出会えて本当によかった
スピッツも小学5年生のときにライブに行って以来ずっと好きなんですけど、どちらも触ったら壊れてしまいそうなもろさがありますよね。はかなさの中に、メラメラ燃える魂みたいなものがある。そのギャップに惹かれるんだと思います。あと最近だと、フェスで観た鈴木実貴子ズがめちゃくちゃよくて。彼女たちも危険な香りがするし、メラメラしてるし、改めてそういう人たちが好きなんだなと思いました。自分もそういう危うさを持っていると思うし、昔から「つかみ所がない」と言われてきたので、無意識のうちにそういう表現に惹かれるのかな。
少し前に朗読劇に出させていただいたんですけど、その中に「ロストボーイズ」という歌があって。それを歌うときに、私の中のandymoriが出てくるんですよ。「ロストボーイズ」というワードもなんとなく小山田さんっぽさがあるし、ついどうしても引っ張られちゃって(笑)。歌うたびに「うわ、andymoriが出てくる」と思っていたら、ファンの方が「『ロストボーイズ』のときのandymori感すごかったです」というメッセージを送ってくれたんです。「やっぱり私の中にandymoriはいるんだ!」と思って、めちゃくちゃうれしかったです(笑)。
恐怖を感じるとは言いましたけど、もう一度andymoriを観たいかと聞かれたら、それは正直観たいです。解散してから、夢で何回andymoriのライブに行ったかわからないですから。私が観に行ったライブについて、当時小山田さんがブログか何かに「今日はライブハウスのうねりをひさしぶりに見た」と書いていて。「ああ、ステージからでもわかるんだな」と思ったんです。私自身、あれ以来あんなうねりは感じたことがなくて。あのうねりをやっぱりもう一度体感したいです。でも今andymoriと出会っても、あそこまでハマることはないんだろうな。andymoriは、思春期真っ只中の、青さを持った人たちにこそ響く音楽だったと思うので。だからこそ、あのとき彼らに出会えて本当によかった。超ラッキーだったなって、そう思います。
プロフィール
田中真琴(タナカマコト)
1995年1月生まれ、京都府出身の俳優・モデル。多数のドラマやミュージックビデオに出演するなど幅広く活躍。ジュビロ磐田の大ファンとしても知られ、近年はサッカーにまつわる仕事も精力的に行っている。現在放送されているAmazonプライムのCM「ニュー・カラー」編にも出演中。
田中真琴 - TALENTS|株式会社Coccinelle Entertainmen
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