YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2026年1月9日から1月15日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、1位にMrs. GREEN APPLEの「lulu.」がランクインした。今作は彼らがフェーズ3に入って最初の楽曲であり、テレビアニメ「葬送のフリーレン」第2期のオープニングテーマ。1月12日のMV公開から1週間で720万再生を突破し、破竹の勢いを見せている。
8位には、ちゃんみな主宰の新レーベル・NO LABEL ARTISTSの第1弾アーティスト、ふみののデビュー曲「favorite song」が登場した。これからシンガーソングライターとして歩み出す彼女に向けて、ちゃんみなは“贈り物”としてこの曲を提供した。
31位にランクインしたのは、CUTIE STREETの「ぷりきゅきゅ」。青春の象徴として時代を越えて愛されるプリクラの“あるある”を歌った、新しい切り口のポップチューンだ。
41位にはOfficial髭男dismの「Make Me Wonder」が登場した。この曲は、人とチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”の姿が描かれるテレビアニメ「ダーウィン事変」のオープニング主題歌。MVはメンバーが全面LEDのボックスの中でパフォーマンスする、インパクトの強い映像に仕上がっている。
話題のアニメ主題歌や注目新人の楽曲などが再生数を伸ばした今週は、下記の3曲をピックアップする。
しぐれうい(9) vs. しぐれうい(16)「ウィマーマ・サーガ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場37位
「ウィマーマ・サーガ」は、MVの再生数が1億3000万回を超える「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」を歌った9歳のしぐれういと、設定上16歳である本来のしぐれういが対峙する楽曲だ。9歳のしぐれういは、ロリ属性として視聴者から「消費される存在」「かわいさを期待される存在」として描かれる。一方、16歳のしぐれういはタイトルの「ウィマーマ」が表すように、視聴者から「ういママ」と呼ばれている母親のような存在だ。
曲中で16歳の彼女は「わたしは お前らの ママじゃなーいッ!」と視聴者から“ママ”として期待される役割を拒否するが、9歳の自分が「あんたが神になるしかないだろ」と自らの属性を背負うことを強制。最終的には、みんなの崇拝する“神でありママ”となって「おっきなお友達のみんなえ / お前らが叫んでる姿を、みぃーんな見ているよ」と語りかける。そして「でも、いいんだよね? シアワセなんだよね? / よかったね^^」というフレーズで、視聴者を「これでよかったんでしょ?」と突き返す。
この2者が対決する構図から見えてくるのは、しぐれういが“ネタにされる側”から“ネタを統御する側”へ移行しつつあるのではないかということだ。メロディや歌声はコミカルでありながら、歌の内容はダークで辛辣。彼女のファンにとっては「しぐれういを変えてしまったのは、自分たちのせいではないのか」と考えさせられるような1曲だ。
jo0ji「よあけのうた」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場68位
jo0jiの「よあけのうた」は放送中のテレビアニメ「呪術廻戦」第3期「死滅回游 前編」のエンディングテーマ。第2期「渋谷事変」で宿儺の暴走によって多くの命を奪ってしまった主人公・虎杖悠仁の気持ちに寄り添って書き下ろされた楽曲だ。
タイトルの“よあけ”とは、歌い出しのフレーズ「翳りゆく日々に所在ない影が / ひとつ狼狽えている」から考察するに、闇の中でさまよい続けている状況を指しているのだろう。また、壊れてしまった世界の中で、ほんのわずかな希望をつかもうとする描写は、まさに虎杖の心情と重なるものがある。一方でこの曲は、虎杖というキャラクターを借りながらも、他者の痛みを自分の内側に引き受けてしまうjo0ji自身の性格とも重なり合っているのかもしれない。
MVのディレクターは「≒」や「ランタン」など、これまでもjo0jiのMVを手がけてきたMargt。オブジェの中で歌うjo0jiと情動的に踊るダンサーたちで虎杖の心境を表現した、壮大な映像に心をつかまれる。YouTubeのコメント欄では「ずっと絶望が続いているのに歩みを止めない虎杖の強い信念を感じる」「めっちゃ明るくネガティブなことばっか言ってるの 部品としての覚悟が決まった虎杖みたいでグロい」など、この曲の原作に対する解像度の高さを絶賛する声が並んでいる。
みつあくま「オシリスダンス」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場88位
みつあくまの「オシリスダンス」は、一度聴いたら自然と体が動いてしまう独特のリズム、楽曲全体から漂う妖しいメロディによって思わず何度も聴きたくなる、中毒性が高い楽曲だ。MVのコメント欄では「聴いてて気持ち良いからすき」「めっちゃ韻踏みまくってて聞き心地最高や」といった称賛の声が多く上がっている。
みつあくまのセンスが評価されている一方、古代エジプト神話に登場するオシリスをモチーフにしていることで、この曲は海外を中心に批判の声も上がっている。オシリスは死と再生、復活を司る“冥界神”として知られる存在。その神の名を「おしり」という下ネタ的な言葉遊びと結び付けてポップソングへと落とし込んだ点に対して、冒涜だと感じている人が多いようだ。日本の音楽が世界的に聴かれるようになってきたことも相まって、「オシリスダンス」に寄せられた賛否は、モチーフの扱い方に対してこれまで以上の繊細さが求められていることを示しているようにも思える。賛否両論を巻き起こしているこの曲がどこまで注目されるのか。今後の広がり方が気になるところだ。


