YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2026年1月23日から1月29日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、なとりの「セレナーデ」が11位に登場した。今作は放送中のテレビアニメ「【推しの子】」第3期のエンディング主題歌。1月21日のMV公開から2週間で410万再生を達成し、破竹の勢いを見せている。
17位にはXGの「HYPNOTIZE」がランクインした。幻想的なサウンドとリズミカルなピアノが調和したハウスナンバーで、現実と夢の境界を行き来するような、強い没入感を与える楽曲に仕上がっている。
42位にランクインしたのは、昨年12月に公開された雨良 Amalaのボカロ曲「バゥムクゥヘン・エンドロゥル」の本人歌唱バージョン。1月23日のMV公開から10日間で130万再生を突破しており、コメント欄では「初めて声を聴いたけどイケボすぎた」と、雨良 Amalaの歌唱力が注目されている。
47位にはFRUITS ZIPPERの「君と目があったとき」が登場した。作詞作曲はFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」や「かがみ」などを手がけたヤマモトショウが担当。FRUITS ZIPPERとのコラボコレクションを発売するメガネブランド「Zoff」とのタイアップ曲となっており、“夢ができる瞬間”を彼女たちらしい等身大の視点で描いている。
ソロアーティスト、ヒップホップグループ、アイドル、ボカロPなど幅広いジャンルの楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
Number_i「3XL」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場12位
Number_iの新曲「3XL」は1月29日のMV公開後、わずか1日で1000万回再生を突破し、現在も加速度的に勢いを伸ばしている。メンバーの平野紫耀がプロデュースした今作は、ピュアな恋心を描いたリリックをベースの効いたトラックに乗せた、Number_iならではの1曲に仕上がっている。
「3XL」は主人公の“俺”と、俺が恋をしている“君”の 過去と現在が交差していく楽曲だ。歌い出しの「ライブの最前列 / 君が俺の音に乗ってる / 俺は少し戸惑ってる / ブカブカの3XL」というフレーズをストレートに解釈すると、現在はライブの最中で、主人公はステージの上から観客に歌を届けていて、目の前に“君”の姿を見つけて戸惑っている。そこから学生時代にさかのぼり「いつになったら成就すんのこの恋 / クソアピりまくったダンスのスクール」と、かつての主人公の視点にチェンジ。いつかのダンスレッスンで“君”にいいところを見せようとアピールしている描写から、2人が同じスクールに通っていたと推測できる。
後半では「あれから10何年経ってんだ / お互いそれぞれ人生やってんだ」「君は彼氏がいてそりゃそうだ空振り」と、別の道を歩んで大人になった2人の姿が表現されている。そして場面は再び現在に戻り「汗ばむ手握り返せなかったおかげで今があるのさ」というフレーズで、勇気がなくて相手との恋が成就しなかったからこそ、主人公は夢を追いかけてアーティストになり、こうして観衆の前で歌っているという“今”が描かれている。
終盤の「デカすぎんぜこの愛は / 伝えたいんだ3×Love / 君も見惚れるくらいに / フィットする3XL」は、かつて愛情をうまく届けられなかった主人公が、今では惚れられてしまうほどの大きな愛情を届けられるアーティストになった、と歌っているのだろう。「学生時代はまだ未熟で3XLのサイズはブカブカだったけど、今の自分はフィットする存在になった」という成長のストーリーはメンバー自身にも重なるものがある。歌詞に込めた真意は不明だが、「3XL」はアーティストとして活躍する彼らのリアルな状況と、恋愛のフィクションを組み合わせた新しい切り口のラブソングではないだろうか。
Ren Meguro / Daisuke Sakuma「Hot Flow」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場38位
Snow Manの4thアルバム「RAYS」に収録されている、目黒蓮と佐久間大介によるユニット曲「Hot Flow」のMVが1月22日に公開された。
サビに登場する「We are 風呂友」のフレーズには由来があり、それはSnow Manのデビュー前にまでさかのぼる。舞台「滝沢歌舞伎」の期間中、目黒と佐久間はお風呂場で遭遇することが多かったことから「俺ら風呂友だな!」と意気投合。いつか風呂友をテーマにした楽曲やMVを作りたいと夢を語り合っていたという。2024年11月2日放送の文化放送「Snow Man 佐久間大介の待って、無理、しんどい、、」内で、佐久間はこの曲について次のように話している。
「楽曲を作っていただいたのがケンモチヒデフミさん(水曜日のカンパネラ)なんですけども、自分たちの意見も取り入れてもらったうえで、俺ら風呂友のことだけじゃなくて、お風呂の歴史みたいな要素も入っている。自分たちになかった発想も詰め込まれていて、本当に楽しく歌わせてもらいました」
この発言からも、2人の関係性やアイデアが、楽曲制作時に反映されていたことがうかがえる。MVでは古代ギリシャ風の衣装をまとった2人が、シャンプーやタオルで体を洗うようなユニークなダンスを披露するなど、バスタイムを満喫する映像が堪能できる。
ピノキオピー「不死身ごっこ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場50位
人間関係、お金、仕事、勉強……誰しも何かしらの不安やストレスを抱えながら生きている。2024年に厚生労働省が発表した「令和6年版厚生労働白書」によると、心身の健康に関する調査で最大のリスクとして“ストレス”を挙げた割合は15.6%と20年間で3倍に増えていることがわかった。現代社会においてストレスは深刻な問題である。そこで今回取り上げたいのが、ピノキオピーの新曲「不死身ごっこ」だ。
本来は無敵の状態である「不死身」に「ごっこ」をつけることで、実際はストレスで心が傷付いているが“傷付いていないフリ”を描いたのがこの曲だと思う。サビのフレーズで「不死身ごっこしよ 絶望は葬りましょ」と強気に見せているが、「大丈夫なフリをする」「平気そうに振る舞う」のは強いからではなく「タフな自分を装わないとやっていけない」と無理をしている表れだろう。
また、少し見方を変えれば、この曲の主人公は傷付くことが日常化しているため、心の感覚が鈍っているようにも思える。もし、そうだとすれば厄介で、心がやられてしまっていることに気付いたときには回復不可能な場合もある。例えば、上司や取引先から心のない言葉を浴びせられたとして「真に受けなければ、聞き流せるのに」と言う人はいるが、実際にはそう簡単な話ではない。人間はそこまで頑丈ではないのだ。「不死身ごっこ」は、そうした心の闇をリアルに描いた楽曲と言えるだろう。


