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角野隼斗、敬愛するショパン生誕日に聖地サントリーホールで紡いだ「CHOPIN ORBIT」

角野隼斗 ©︎Ryuya Amao
8か月前2026年03月05日 9:04

角野隼斗が3月2日にクラシックコンサートホールの老舗である東京・サントリーホールで、全国ツアーの最終公演を行った。

最新作「CHOPIN ORBIT」を携え殿堂のステージへ

今年1月に開幕した今回のツアーは、角野の最新アルバム「CHOPIN ORBIT」を携えて全国のホール会場を舞台に展開。角野は自身のキャリアにおいて欠かすことのできない作曲家であるフレデリック・ショパンの楽曲、ショパンからインスピレーションを受けて紡がれた自身のオリジナル曲を軸に、約2時間強にわたるリサイタルを繰り広げた。この記事では奇しくもショパンの誕生日である3月1日に開催された、サントリーホールでのツアーセミファイナルの様子を紹介する。

刻一刻と開演時刻が近付くにつれて、緩やかに静けさが広がっていくサントリーホール。客席にはクラシックファンと思しきシックな装いの男女の姿が見られる一方で、親とともに来たであろうおめかしをした少年少女の姿も。角野のコンサートは「多くの学生にも聴く機会を」という本人の希望によりリーズナブルな価格設定のU25チケットも用意されており、若年層に広く門戸が開かれているのが特徴だ。

子供から老人までが熱のこもった視線をステージに送る中、少しゆったりとしたシルエットのダブルのジャケットにパンツという出立ちの角野が現れると、さざなみのような拍手が響いた。ピアノと向き合った角野がすさまじい勢いで弾き出したのは、不穏に幕を開ける「スケルツォ 第1番 ロ短調 Op.20」。角野の10本の指によって奏でられる旋律は、観客の狂おしく情熱的な感情を呼び覚まし、途中で穏やかなひと時を紡ぐも、クライマックスでは再び緊迫感を帯びた。

敬愛するショパンは216歳

その後、「今日はショパンの誕生日。216歳ですか? 6×6×6で大変キリのいい数字ですね。たくさんの素晴らしい曲を残してくれたことに思いを馳せつつ……」と敬愛するショパンへの思いを明かした角野。「今回のコンサートは、舞曲が裏テーマとしてありまして。(アルベルト・)ヒナステラのアルゼンチンの舞曲から影響を受けたピアノソナタも弾きたいと思います」と予告すると、「CHOPIN ORBIT」に収録されている「エチュード 変イ長調 Op.25-1『エオリアン・ハープ』」、それにインスパイアされる形で生まれた「リディアン・ハープ」が心地よい豊潤なサウンドスケープをホール内に広げていく。

かと思えば、「マズルカ Op.24より 第1番 ト短調、第2番 ハ長調」「マズルカ Op.27-2」という複雑なリズムが特徴の2つの“マズルカ”で、ピアニストとしての演奏力の高さと豊かな表現力を証明した。アルベルト・ヒナステラによる「ピアノ・ソナタ 第1番 Op.22」を挟み、第1部の最後に角野が届けたのは、角野隼斗流の舞曲ともいうべき「ポロネーズ『空想』」。和のエッセンスがにじむ力強いリズムに乗せて、“冒険の始まり”を予感させる高揚感のある旋律がたっぷりと響き渡った。

第2部は躍動感たっぷりに

第1部の最後を飾った角野による“ポロネーズ”の流れを汲む形で、第2部はショパンの「ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61『幻想』」で幕開け。柔らかな聴き心地の「子守歌 変ニ長調 Op.57」から、角野のショパン愛が凝縮された「ポストリュード『雨だれ』」へとシームレスに移行し、ホールは繊細な調べで満たされていく。

穏やかな空気が残る中、角野は「ここからはアップテンポな曲を……」とモードを変えることを予告。まずは「エチュード 変ト長調 Op.10-5『黒鍵』」にインスパイアされる形で、「白いパレットにいろんな色を塗るようなイメージ」で角野が作曲したという「エチュード『白鍵』」へ。右手で弾くのはピアノの白鍵だけという“縛り”のある楽曲だが、その制約を感じさせない、躍動感たっぷりの伸びやかな音色が開放感を誘う。続く本家ショパンの「黒鍵」で、角野のプレイはさらに躍動。じゃじゃ馬のように起伏の激しい旋律を、見事な演奏力で弾きこなし喝采を浴びた。「舞曲」を裏テーマにした公演は、華やかなムードたっぷりのショパン「ワルツ 第1番 変ホ長調 Op.18『華麗なる大円舞曲』」、そしてラヴェルの「ラ・ヴァルス(ピアノ独奏版)」でクライマックスへ。壮絶な余韻を残しつつ角野が立ち上がると、万雷の拍手が全方位から浴びせられた。

最後までショパン愛を音ににじませて

「サントリーホールには7年前に初めて立ってから何十回と立たせていただいてますが、特別なステージです。このステージに立てるのは、こうやって聴きにきてくださる皆様のおかげです」。アンコールでそう噛み締めた角野は、かつてショパンが活躍した19世紀のサロンのように、と観客からのお題を募り即興演奏をすることに。「お題はなんでもいいです。作曲家でも、なんでも。どうですか?」と客席に呼びかけると、角野のオリジナル曲である「胎動」「ノクターン風に」という2つのお題が挙がった。「かけ離れていますが、やってみましょうか……」と少し控えめに口にした角野だが、あたかもノクターン風アレンジの「胎動」が以前から存在していたかのように、流麗な指さばきを披露。よどみのないパフォーマンスに感嘆する観客に向けて、「ちょっとメランコリックな感じになりましたね」とほほえんだ。

「もう1曲弾きましょうか?」と角野が口にすると、ホール内の空気はさらに熱を帯びることに。「今日はショパンの誕生日ということで……」と彼が弾き出したのは、「Happy Birthday To Everyone(ハッピー・バースディ変奏曲)」と「英雄ポロネーズ」で知られるショパン「ポロネーズ第6番」のマッシュアップ。ショパンの誕生日というメモリアルな1日を、ショパン愛にあふれた演奏で締めくくった。

なお、Streaming+では3月2日のサントリーホール公演のリピート配信を3月7日16:00から行う。配信チケットは3月7日16:00までイープラスにて販売中。

セットリスト

「角野隼斗 全国ツアー2026 “Chopin Orbit” supported by ロート製薬」2026年3月1日 サントリーホール

・ショパン:スケルツォ 第1番 ロ短調 Op.20
・ショパン:エチュード 変イ長調 Op.25-1 「エオリアン・ハープ」
・角野隼斗:リディアン・ハープ
・ショパン:マズルカ Op.24より 第1番 ト短調、第2番 ハ長調
・アデス:マズルカ Op.27-2
・ヒナステラ:ピアノ・ソナタ 第1番 Op.22
Ⅰ. Allegro marcato / Ⅱ. Presto misterioso / Ⅲ. Adagio molto appassionato / Ⅳ. Ruvido ed ostinato
・角野隼斗:ポロネーズ「空想」
・ショパン:ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61「幻想」
・ショパン : 子守歌 変ニ長調 Op.57
・角野隼斗:ポストリュード「雨だれ」
・角野隼斗:エチュード「白鍵」
・ショパン:エチュード 変ト長調 Op.10-5「黒鍵」
・ショパン:ワルツ 第1番 変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」
・ラヴェル:ラ・ヴァルス(ピアノ独奏版)

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