JOYSOUND 音楽ニュース
powered by ナタリー
「JOYSOUND X1」公式サイトJOYSOUND公式キャラクター「ジョイオンプー」

茨城出身・石崎ひゅーいの上京物語~東京ウブストーリー~

バンド時代、20歳の頃に友人の結婚式で「ガールフレンド」を歌う石崎ひゅーい。
18分前2026年03月18日 9:03

来たる新生活に向けて住み慣れた街を離れ、期待と不安を胸に東京での暮らしを始める人も多いこの季節。本連載では地方出身のアーティストに「上京」をテーマにエッセイを依頼し、東京に“ウブ”だった頃の思い出をつづってもらいます。

今回は、茨城出身で、東京を題材にした最新アルバム「Tokyo City Lights」を本日3月18日にリリースした石崎ひゅーいさんが登場。オフィスビルや住宅マンション、車のヘッドライト……東京の街に灯る無数の光の向こうには、日々を懸命に生きる人たちの営みがあります。石崎さんはそんな東京の風景に自身の暮らしを重ねながら、この街で夢を追いかける人たちに「ともにがんばろう」とエールを送る文章を寄稿してくれました。これから上京する人はもちろん、かつて上京を経験した人もそうでない人も、石崎さんが紡ぐ上京物語をお楽しみください。

僕はこれまでの人生の中で一番大きな決断をした

「表現しなさい」

幼い頃、感情表現が不得意な僕に母がよく掛けていた言葉だ。きっと母は僕のことを表現者にしたいと考えていたんだと思う。デヴィッド・ボウイやトム・ウェイツを教えられ、地元の劇団に入団させられ、ダンスやバンドもやり始めた。とにかく目まぐるしかった。コンサートや舞台を観に東京まで連れて行かれた時もあった。田舎街じゃ見れない特別な何かが東京にはある。幼いながらにそう感じ、ぼんやりと頭の中で「この場所で自分も何かを目指していくのかもしれないな」、そんな表現欲求が芽生え始めた時期だった。

僕は18で上京した。とは言っても実家まで電車で2時間くらいの距離だったから正直そこまで上京感は無かった。今思えばぬるっとしていた。その頃僕はバンドで活動をしていたが、何か漠然としていた。お客さんはなかなか増えず、バイト代は酒とパチンコに吸い込まれていった。だが不思議と焦りは無く、むしろ心地良かった。東京という街は夢や理想を生かしも殺しもする。立ち向かうことも甘えることも出来てしまう。どうしようもなさを美化することも、成功の向こうにはまた壁があることも、全部東京で勉強した。

26の頃、まだバンドを続けていた。活動に対して不満はなかったけれど、不安を感じるようになってきた。歴もだいぶ長くなってきたが音楽だけで生きていくのには程遠い、薄いもやの中にずっといるような感覚でいた。そんな中、音楽プロデューサーの須藤晃さんと出会い、一人で歌うことを提案された。迷った。メンバーとも深く話をした。そこで僕はこれまでの人生の中で一番大きな決断をした。僕はバンドを解散し、一人で歌う道を選んだ。

夜の東京を歩いているとふと立ち止まりたくなる瞬間がある。ビルの窓、マンションのベランダ、信号待ちの車のヘッドライト。無数の光が街のあちこちに浮かんでいて、それぞれが小さな星みたいに瞬いている。遠くから見ればただの灯りだけれど、その一つひとつの向こう側には誰かの生活がある。今日という一日をやり過ごして帰ってきた人。まだ机に向かって夢を追い続けている人。誰かのことを想いながら、眠れない夜を過ごしている人。東京の夜は、そんな無数の物語で出来ている。そう思うようになったのはこの街で長く暮らすようになってからかもしれない。気が付けば人生の半分以上を東京で過ごしていた。“安心”という名の故郷から離れて、歌を作りながらこの街で生きてきた。うまくいったことより、うまくいかなかったことの方が多い気もする。思い描いていた夢や理想は、時間と一緒に少しずつ形を変えていった。「これでいいや」と自分に言い聞かせる日もあるし、「いや、これじゃなきゃだめだ」と言い張る日もある。そんな自分を、もう一人の自分がどこか高い場所から眺めているような感覚になることもある。それでも、この街で諦めようと思ったことはない。東京には、諦めきれない人がたくさんいるからだと思う。大人になっても夢を追い続けている人。報われない夜を何度も越えている人。うまく笑えない日でも、また朝を迎えて街へ出ていく人。そんな人たちの灯りが、この街にはずっと灯っている。

人生は交差点みたいなもので、誰かと出会ったり、すれ違ったりしながら進んでいく。交わった時間もあれば、ほんの一瞬だけ隣を歩いた人もいる。でも、どこかで見たその灯りが、知らないうちに誰かを照らしていることもきっとある。街はそういう光で出来ているのかもしれない。そんな景色を思い浮かべながら、最近「Tokyo City Lights」という歌を書いた。

この街のどこかで、同じ灯りを見上げている誰かに届いたらいいなと思っている。

石崎ひゅーい

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサー須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューを果たす。2013年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2020年11月、菅田将暉へ提供した映画「STAND BY ME ドラえもん 2」の主題歌「虹」が大ヒットを記録する。2026年3月、6thアルバム「Tokyo City Lights」をリリース。7月に東阪でホール公演を開催する。

石崎ひゅーい
石崎ひゅーい (@huwie0307) / Posts / X

JOYSOUND
JOYSOUND.COMカラオケ歌うならJOYSOUND

関連記事

「EIGHT-JAMゴールデンSP」より、MCのSUPER EIGHT。 ©テレビ朝日

BE:FIRST・MANATO、三代目JSB・ØMI、コブクロ小渕、矢井田瞳らが選ぶ“最強のサビ歌唱”は?「EIGHT-JAM」SPで発表

約22時間
石崎ひゅーい

⽯崎ひゅーい「Tokyo City Lights」特設サイトオープン、リード曲MVティザーも公開

7日
「LuckyFes'26」出演アーティスト第1弾一覧

「LuckyFes」ふるっぱー、NiziU、BABYMETAL、Dragon Ash、マンウィズら第1弾59組発表

8日
「⽯崎ひゅーい 2026『キミがいるLIVE』-Piano Quintet-」より。

石崎ひゅーい新アルバムから新曲「Tokyo City Lights」配信、全曲トレイラーを公開

18日
「ARABAKI ROCK FEST.26」ロゴ

「ARABAKI」にあいみょん、T.M.Revolution、布袋寅泰、向井秀徳、黒夢ら追加

29日
宮世琉弥

宮世琉弥3rdアルバム「Illusion」に石崎ひゅーい、崎山蒼志、Aqua Timez大介ら参加

約1か月
「ARABAKI ROCK FEST.26」出演アーティスト

「ARABAKI」第2弾でSHISHAMO、ゴスペラーズ、柴田聡子、ハンバート、KEIJU、曽我部恵一ら20組

2か月
音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

3か月
ドラマ「シナントロープ」より、龍二役の遠藤雄弥。

遠藤雄弥×アフロ×染谷将太が歌う「シナントロープ」MV公開、目出し帽の男の正体は石崎ひゅーい

3か月