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銀狼LV.999「HoYoHoYoにしてあげる♪」とは? / キタニタツヤの現実にも仮想にも回収されない歌

再生数急上昇ソング定点観測
8分前2026年05月08日 9:05

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月24日から4月30日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

文 / 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、3位にヨルシカの「あぶく」が登場した。今作はテレ東系で放送中のテレビアニメ「LIAR GAME」のオープニングテーマだ。MVを手がけたのは、「忘れてください」以来ヨルシカとは2度目のタッグとなる、擬態するメタ。同じ言葉の繰り返しを意味する“トートロジー”を題材に制作された楽曲と同様に、MVはスーツ姿の男性と、その男性を殺害しようとする謎の人物との攻防が繰り返し描かれている。一度再生したら結末が気になって、最後まで目が離せない。

8位にはMAZZELの「The Voice」ダンスパフォーマンスビデオがランクインした。これはニューアルバム「Banquet」の収録曲で、撮影はグループ誕生のきっかけとなったオーディション「MISSIONx2」最終審査の舞台である栃木・大谷資料館で行われた。彼らのパフォーマンスからは、デビュー3周年を迎える強い覚悟と気迫が感じられる。

13位に登場したのはLE SSERAFIMの「CELEBRATION」だ。今作は5月22日にリリースされる2ndアルバム「'PUREFLOW' pt.1」の収録曲。恐怖心を受け入れたメンバーの内面的な強さを讃える楽曲になっている。

14位にはMrs. GREEN APPLEの「風と町」がランクインした。NHK連続テレビ小説「風、薫る」の主題歌として話題のこの曲。4月29日のMV公開から5日間で300万再生を突破し、昇竜の勢いを見せている。

話題のアニメやドラマの楽曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。

初音ミク×銀狼LV.999「HoYoHoYoにしてあげる♪」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場17位

初音ミクのYouTube公式チャンネルで公開された「HoYoHoYoにしてあげる♪」は、2007年のボカロ黎明期を象徴する楽曲「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」をベースにした替え歌だ。タイトルの「HoYoHoYo」は中国のゲーム会社HoYoverseを指しており、原曲が提示していた“ミクにハマる感覚”が、この曲では“HoYoverseのゲームにハマる感覚”に置き換えられている。

この曲を初音ミクとともに歌っている銀狼LV.999は、HoYoverseのRPG「崩壊:スターレイル」に登場するキャラクター・銀狼の、4月に実装された別バージョン。「星核ハンター」に所属するゲーム好きの天才ハッカーで、MVは彼女が初音ミクとゲームセンターのリズムゲームで遊ぶシーンで構成された、2000年代ネットカルチャーと現在の空気感を接続したような映像となっている。

銀狼LV.999を前面に据えることで「プレイヤー自らがゲームにハマる」のではなく、「ゲームキャラクターが、こちらをハマらせにくる」という構造になっているのが面白い。かつてボカロ文化の入口として機能していた「みくみくにしてあげる♪」の視点を変えて、ゲーム体験に没入するように促すという仕掛けは斬新だ。

キタニタツヤ「れびてーしょん」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場69位

TOKYO MXほかで放送中の「NEEDY GIRL OVERDOSE」は、2022年にSteamでリリースされ、ダウンロード数累計300万本を突破したアドベンチャーゲームが原作のアニメ。“最強の配信者”を目指す女の子・あめちゃんが“超絶最かわてんしちゃん”を名乗って動画配信を行い、フォロワー100万人獲得を目指すという物語だ。そのエンディングテーマとして制作されたのが、キタニタツヤの「れびてーしょん」である。

本楽曲はアニメと同じく、ネットと現実社会の“リアル”を鋭く描き出している。かつてネットは「猥雑な遊び場」や「おもちゃ箱」のように、現実から少し距離がとれる逃避の場だった。しかし現在は「清潔なインフラ」として整えられ、安全で管理された“生活の一部”へと変質している。通知や広告に追われる描写からは、非現実で自由だったはずの場所が失われていく苦しみが伝わってくる。特に印象的なのが「返して、返してよ / 僕らしか好きじゃなかったろ!」というフレーズだ。これまでネットの世界に救われていた「僕ら」の嘆きが表れていて、思わず胸が痛くなる。

MVはソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」で全編撮影されており、少女のアバターが夜の仮想都市をさまよう映像が印象的だ。VHS風の質感や匿名的な身体性は、ネット上に存在する“もうひとつの自分”を象徴し、「NEEDY GIRL OVERDOSE」のテーマと高い親和性を持つ。現実にも仮想にも回収されない宙吊りとなった心の状態は、まさに“levitation(空中浮遊)”という言葉がふさわしい。

WHITE JAM「I Miss You」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場71位

正直、映像の刺激が強すぎて歌詞が頭に入ってこない。そう思うのは筆者だけではないはずだ。

WHITE JAMの「I Miss You」は、2013年発表の1stミニアルバム「渋谷クラシック」に収録されている、グループ初期から歌い継がれてきた彼らの代名詞的な“泣き曲”である。2016年にはベスト盤で「I MISS YOU(2016 Ver.)」としてリメイクされるなど、大切に更新され続けてきた。そして新バージョンの「I Miss You」が、今年4月18日に配信シングルとしてリリースされ、5月末にはCDシングルの発売も決定。今回ランクインしたMVは、その新バージョンのリリースに合わせて4月26日に公開されたものだ。

今この楽曲が改めて広く共有されるきっかけとなったのが、この新しいMVである。これまでも彼らは「Tattoo」などで、“メンバーのSHIROSEが裸で過激なことをする”という路線のMVを制作してきたが、今回はその傾向がさらに際立っている。その結果、「歌はめっちゃ好きなのにMVがえぐい」「もはや歌う性癖」といったコメントが相次ぎ、“いい曲なのに映像がヤバい”というギャップが話題となり拡散されている。

一方で楽曲の本質は、「大金持ちになることよりも、好きな人とコンビニに行ける日常のほうが幸せではないか」という等身大の価値観にある。派手さではなく、身近な関係性の中にある幸福を見つめ、「会いたい」というシンプルな思いにたどり着く。その普遍性こそ、「I Miss You」が長く愛され続けてきた理由なのだろう。

本来は切実なラブソングであるはずなのに、視線はどうしても過激な映像へ引っ張られてしまう。そのアンバランスさが違和感となり、ツッコミとともに共有され、結果的に再び多くの人の目に届いているのだ。

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