2020年に暴行事件で逮捕された大阪市生野区出身のラッパーREAL-T(リアルティー)。その後、懲役生活に入り、表舞台から姿を消すも、Jin Doggと彼のコラボ曲「街風」がアンセム化するなどして、シーンで存在感を放ち続けていた。
そんな彼が7曲入りのニューアルバム「SHIN SCAR」を突如リリースし、出所していたことを明らかにした。服役中であるはずの2025年12月末にもアルバム「善悪」をリリースしてシーンを騒がせていたREAL-Tだが、いったいどのように塀の中で活動してきたのか。音楽ナタリーでは、アルバムリリース直前のREAL-Tに接触。服役中にどうやって歌詞を書き、ニューアルバムの制作を進めたのかを聞いた。
取材 / 二木信 文 / 三浦良純 撮影 / JUNYA"Thirdeye"S-STEADY
刑務所に入る前の心構え
──可能な範囲でいろいろとお話ししていただきたいのですが、まずどういう理由で逮捕されたのかを聞いてもいいですか?
ケンカして、人をさらって、ぐちゃぐちゃにしました。生命身体加害目的略取ってやつで、殺人未遂の一歩手前ですね。
──それでどのくらい服役していたんですか?
4年ですね。
──2023年5月にInstagramで「懲役生活はある意味、意思を殺しながらの生活になると思うけど、自分の内面にある強さと弱さ、心に向き合う事に意義があると思えば、得る物も必ずある。人は誰しも置かれた場所で咲く事に意味がある。決して自分を見失う事無く、男らしく。皆さん、お互い大きい人間になって再会しましょう」というステートメントを投稿していますが、このときはもう刑務所の中にいたんですか?
はい、仲間が発信してくれました。昨年末に出したアルバム「善悪」も、中に入る前の保釈中にレコーディングした曲をまとめて、仲間にリリースしてもらった形ですね。パクられる前に思ったことを込めました。
──「善悪」のタイトル曲「ZENAKU」での「未来は俺らの手の中」というTHA BLUE HERBの歌詞の引用も印象に残りました。
これはTHA BLUE HERBじゃなくてブルーハーツの引用ですね。絶対成功するって思いを込めてます。
──刑務所に4年も入るのは初めてですか?
そうですね。
──率直にどうでしたか?
楽しかったですよ。楽しまなやってかれへんと思ってたんで、刑務所の環境をどう楽しくさせるかを意識してましたし、何がなんでも音楽は絶対やろうと思ってましたね。外の人に忘れられとったとしても続けようと思ってたし、「中でもリリックは書く」って決めてました。
──ずっと同じ刑務所の中にいたんですか?
そうですね。段階的に刑務所が変わっていくんですけど、初めは絶対に地元の刑務所に行かなダメなんです。そこに1カ月くらいおってから、自分がずっと服役し続ける刑務所に移されたって感じですね。そこはめちゃくちゃ行状(ぎょうじょう)がゆるかったです。刑務所内での処遇の厳しさのことを行状って言うんですよ。
刑務所の中でどう歌詞を書いたか
──刑務所の中では、どんなふうに過ごしていたんですか?
昼は基本的に工場で仕事して、帰ってからの余暇時間に歌詞を書いてましたね。歌詞が検閲されるようなことはないので自由に書いてました。それと読書って感じですね。哲学の本は何回も読みましたね。けっこう自分のためになるようなことが書いてあるんですよ。
──ほかに印象に残った本はありますか?
Z李さんの「飛鳥クリニックは今日も雨」は、僕も経験してきたようなリアルなことが書いてあって楽しかったですね。あの小説は懲役囚ならみんな好きなんじゃないかって内容で、刑務所の中のことを歌った新曲「寄場」のサビにも「飛鳥クリニック」という単語が入ってます。本は仲間から差し入れしてもらえるし、中でも買えるんですよ。
──音楽は聴けるんですか?
模範囚で居続けて、一番上のレベルまで行くとCDを聴けるんですけど、自分はそこまでは到達しませんでした。15日間、懲罰を受けたことがあって、それまでの取り組みが台無しになったんです。懲罰部屋はあぐらかいてるだけなんで、懲罰を受けることを“座る”って言うんですけど、1カ月座るやつもいるんで、それに比べたら15日は全然やと思ってます。ANARCHYくんとの曲「OUT ON BAIL」は、「座ってるときのインスピレーション」と歌ってる通り、懲罰中に歌詞を考えた曲なんですよ。座りながら頭の中で作りました。
──音楽を聴かずにフロウまで考えていたんですか?
頭の中でビートを思い出して、リズムを自分で作って、フロウも全部決めとった。外に出てから刑務所の中で考えていたフロウそのままでレコーディングしましたね。中はホンマにやることが限られてくるんで、未来とか過去のことに思いが至るんですよ。そこでじっくり自分を見つめ直す。それは刑務所だからこそできたと思います。
──刑務所の中にはREAL-Tさんのことを知っている人もいたのでは。
そうですね。僕のことを尊敬してくれてる感じで、向こうから近付いてきてくれる人もいたので、僕もそういう人たちのことは大事にしてました。
──刑務官の人たちとも、うまくコミュニケーションして、いい関係を作ってきたんですか?
そうですね、ホンマにいいオヤジもいてましたよ。オヤジも人間やから、やっぱ好き嫌いがあるんですけど、僕にはよくしてくれて。例えば僕が不正行為をやっても握ってくれたオヤジもおるし。“握る”っていうのは、黙認してくれることですね。
腹を決めてラップしている
──REAL-Tさんの歌詞って隠語がすごく多いじゃないですか。そこがみんな好きだけど、なんのことなのかわからない部分も多いので、いろいろお話を聞かせてください。
はい。
──「OUT ON BAIL」で「1点で鳩してくれた あの財閥の顧問弁護士に寒がられた」というのはどういう意味ですか?
パクられた人のところに弁護士を飛ばして、意思疎通してもらうことを「鳩」って言うんです。弁護士ってだいたい5万円くらいが相場で、1点、つまり1万円程度の報酬では誰もやってくれないんですよ。でも僕は値切ってガメつい動きをして、シャブ中のやつがパクられかけたりしたら、その弁護士を飛ばして助けに行ってもらったりして。弁護士はめっちゃ面倒くさかったと思うんですけど、そんなんをやりすぎて煙たがられた、という意味ですね。「寒い」はいろんなところで使える言葉で、警察関係とかにパクられそうな感じを「寒い」って言うんですかね。そういう「寒い」もあるし、シャブ中のことを「寒い」言ったりもするし、全国のアウトローの共通語だと思います。
──そういう言葉って、REAL-Tさんの子供の頃から気付いたら身近にあったんですか?
そうですね。この「OUT ON BAIL」は「保釈中」という意味のタイトル通り、保釈中にANARCHYくんと作ろうとしていたんですけど、制作途中で僕が刑務所の中に吸い込まれて最後まで作れなかった曲なんです。さっき話した通り、刑務所で座ってるときに歌詞を考えて、外に出てから完成させました。ANARCHYくんは、やっぱりヒップホップ業界のトップみたいな存在だと思ってるので、参加してもらえて箔が付きましたね。
──「GUN56VERSE」も聴かせてもらったんですけど、ここで出てくる「はよ紅桜かけてくれ」はあのラッパーの紅桜ですよね?
そうですね、「GUN56」は、ガンコロの当て字で、速いの(※覚醒剤)のことなんですけど、速いのやってパキパキのときに紅桜の曲を聴いたら、普段の何十倍も染み込むって、昔一緒に速なってた人間と盛り上がってたんですよ。それで、突いた(※注射器を打った)ときに「はよ紅桜かけてくれ」とよく言ってるやつがいたので、その口癖を引用した歌詞です。刑務所の中で歌詞を書くとなったら、刑務所の中での経験を書くことがやっぱ多くなるけど、それだけだったら全然書けないんで、やっぱり今までのことを思い出して書きましたね。その結果、今回のアルバムは10代の頃から現在に至るまでを歌ったアルバムになりました。
──REAL-Tさんは赤裸々になんでもラップしていると思いきや、「GUN56VERSE」には「言ったらアカンで誰にも」というフレーズもあって。これはどういう意味合いですか?
シナモン(※覚醒剤)いってるやつらの9割が自分がいってることを隠そうとするって話なんですけど、まあシナモンのことだけじゃなくて、秘密を人に伝えたときにみんな「誰にも言ったらアカンで」ってよく言うじゃないですか。「GUN56VERSE」は、僕的にはリスナー向けに作った曲でもあって、そういう誰でも耳なじみのある言葉も入れてます。
──身の回りのことをラップすることで、大変な目に遭うことはないんですか?
僕がですか?
──はい。
いや、今のところないですね。“赤裸々”と思うかもしれないけど、僕も言ったらアカンところの線引きはあるし、まだ全然言えるところまでしかラップしてないです。まあこの先続ける中では、いつかそういうトラブルも絶対あると思うんですけど、腹を決めてラップしてます。
1年早く出られた理由
──出所してからは何をされているんですか?
急いでアルバムの制作を進めつつ、身近な人間に挨拶回りに行って、情報を整理してます。もう慣れましたね。外の生活にうまく適応できないみたいなことはなくて、仲間にも「ムショボケしてない」って言われます。
──Jin Doggさんには会いましたか? REAL-Tさんがいない間も、Jin DoggさんがREAL-Tさんとの「街風」を「POP YOURS」などいろんな場所で歌ってアンセム化していたんですよ。
はい、会いました。Jin Doggさんがそうやって歌ってくれたおかげもあって、みんなに忘れられなかったんで、ありがたいですね。服役中に仲間がリリースしてくれた自分の曲に対する世間の反応とかも手紙で教えてもらえて、うれしかったし、歌詞を書くモチベーションになりました。今回、刑務所に入ってる間に、いろんな人から200通くらい手紙もらったし、面会は100回以上あって。僕はすぐ“社”を組む(※刑務所内で集団を作ること)から、職員から警戒されとった存在でもあるんですけど、そうやって外に居場所があるって認知されとったおかげで、仮釈放をもらって1年早く出れたんですよ。
──そうだったんですね。
本当は5年いるはずだったんですよ。1年も仮釈がもらえるのは滅多にないことで。なので、これから刑務所に入るラッパーとかには、中の生活じゃなくて、外に居場所があるかないかでジャッジされるぞってことを伝えたいですね。もし周りに早く帰ってきてほしい仲間がいるのであれば、手紙をずっと出し続けるのが効果的だと思います。
──出てきて変わったなと思うことはありますか?
4年でラッパーがめっちゃ増えてますね。全然知らんラッパーだらけで。
──REAL-Tさんは今後は音楽活動に集中していくのでしょうか?
もう音楽だけですね。僕はリアルグループの一員で、それはどこまで行っても変わらないんですけど、今後は音楽に専念して、まずはアルバムを出して、ツアーで全国を回って、それからも曲をずっと出していくつもりです。
プロフィール
REAL-T(リアルティー)
1996年生まれ、大阪市生野区出身のラッパー。 2019年に突如発表した「REAL業界」「Secret Life」で強烈な個性とキャラクターを提示し、地元である今里新地での生活に根差したリアルな裏社会の情景描写、パンチラインで話題となる。 2020年5月に1st EP「REAL TAPE」、同年11月に2nd EP「REAL TAPE2」、2021年4月に1stアルバム「業界」をリリース。その後、刑務所に収監され、表舞台から姿を消すも、2025年12月に2ndアルバム「善悪」を配信し、2026年5月に3rdアルバム「SHIN SCAR」のリリースとともに出所したことを明らかにした。


