YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで5月1日から5月7日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、5位にILLITの「It's Me」が登場した。今作は4thミニアルバム「MAMIHLAPINATAPAI」のタイトル曲。「Who's your bias? / I'm your bias」(あなたの推しは誰? 私でしょ?)と自信たっぷりに迫る、強気で中毒性のあるテクノポップだ。
16位にはBABYMONSTERの「춤(CHOOM)」がランクインした。タイトルの「춤」は韓国語で“ダンス”を意味する言葉。5月4日のMV公開からわずか1日で1600万再生を突破し、SNSでは同曲の“踊ってみた”動画も盛り上がっている。
17位に登場したのは、BE:FIRSTの「Rondo」ダンスパフォーマンス映像だ。これは9thシングル「BE:FIRST ALL DAY」の収録曲で、パイプオルガンや賛美歌を想起させるフレーズがタイトなビートの上で鳴り響く、ゴシックな空気感をまとったトラックが特徴。パフォーマンス映像では、目まぐるしく展開する各メンバーの個性あふれるダンスに目を奪われる。
21位にはCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」の韓国語バージョン「귀엽기만 하면 안 되나요?」のMVがランクインした。この韓国語バージョンは、3月26日にCUTIE STREETが韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」に出演した際に披露されて話題に。「ここは原宿」を「큐스토 한국에 입성」(キュースト韓国に進出)に変えるなど、歌詞の一部が韓国語オリジナルに変更されている。
日韓の人気グループによる新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
大森元貴「催し」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場11位
進学、就職、結婚など、人生は選択の連続だ。決め手となるのは「どの道を選べば自分の人生が豊かになるのか」である。そんな中で、どうすればいいのかがわからない状況が一番つらい。大森元貴の新曲「催し」にこんなフレーズがある。「信じたこの先に / 何があるのか / もうわかんないよ」。この言葉は、行き場を失った不安な感情を的確に表現しているように思う。
4月27日に配信リリースされた「催し」は、日本テレビ系「news zero」のテーマソングとして書き下ろされた楽曲。大森は楽曲に込めた思いについて、番組を通じて次のようなメッセージを寄せている。
「わからない、何がわからないのかわからない──そんな世の中だと思っています。知りたい、理解したい、愛したい。そんな歩み寄りが報われる世の中であってほしいと日々願っております。小さな幸せも大きなうねりも、すべてが“催しもの”であり、楽しむも悲しむも嘆くも自由だと思いますが、ひとまず僕は僕の人生を深く楽しみたい。そんなふうに思います」
目の前の不安や葛藤をネガティブに捉えるのではなく、それも人生である。そんな思いを筆者はこの曲から感じた。MVは5月6日に公開されてから7日間で540万再生を達成。ステディカメラでのワンカット撮影や、細部に効いた風刺、最後まで目が離せない群舞シーンが話題となっている。
また、YouTubeで公開されているMV撮影のビハインド映像では、大森がMVに込めたイメージが詳しく語られている。2本合わせて観ることで、「催し」への理解がさらに深まるはずだ。
宇多田ヒカル「パッパパラダイス」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場36位
宇多田ヒカルの「パッパパラダイス」は、テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディング主題歌とコカ・コーラ「綾鷹」の「お茶、しよっか。自宅」編CMソングに使用されているダブルタイアップ曲だ。「ちびまる子ちゃん」のプロデューサーである竹枝義典氏(フジテレビアニメ制作部)は、楽曲制作の経緯を次のようにコメントしている。
「『パッパパラダイス』は、“前向きで明るいテンポ感”。そして、“明日が早く来ないかなと思うような、明日への希望が持てるような楽曲”、というイメージをお伝えして、制作いただいた楽曲です」
同曲は宇多田ヒカルらしい洗練されたポップネスを保ちながら、近年発表された彼女の楽曲の中でもひときわ“無邪気さ”が前面に出た作品。跳ねるようなリズムと、「シュビドゥビ」「パッパパラダイス」といった擬音的なフレーズは、一見すると子供向けアニメに寄り添った軽やかさをまとっているが、その奥には「好きなことをしてたい」「変わり者でいいじゃない」という、他者の評価に縛られずに生きることへの肯定が込められている。これは「ちびまる子ちゃん」原作者のさくらももこがエッセイや作品で描いてきた「ありのままの自分を受け入れる」という価値観とも深く響き合う部分だろう。
また、「期待しちゃうとガッカリするかも / それがどうした?」というフレーズには、傷付くことを恐れず未来へ進む強さもにじむ。子供にも届くやさしい言葉でありながら、大人の背中もそっと押してくれる。そうした多層的なメッセージは、放送36周年目に突入した今もなお、幅広い世代に愛され続ける「ちびまる子ちゃん」の世界観と自然に重なり合い、作品の持つ普遍的な魅力をあらためて浮かび上がらせている。
MVは山田智和が監督を務め、宇多田がタクシードライバー役として登場。乗客の役で柄本時生、田中泯、渋川清彦、浅野順子、KONOも出演しており、楽曲の軽やかな世界観を視覚的にも表現している。
JI BLUE「景色」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場58位
JI BLUEは昨年11月にサッカー日本代表「最高の景色を 2026」のオフィシャルアンバサダーに就任したスペシャルユニットで、JO1の與那城奨、白岩瑠姫、河野純喜、佐藤景瑚、川西拓実、金城碧海と、INIの西洸人、田島将吾、髙塚大夢、後藤威尊、佐野雄大、池﨑理人の12人で構成されている。
そんな彼らが6月3日にリリースする楽曲「景色」は「最高の景色を 2026」公式テーマソングとして制作された、“応援すること”そのものを主題にしたスタジアムアンセム。m-floの☆Taku Takahashiが作詞・作曲・プロデュースを手がけ、汗や鼓動、歓声といったスタジアムの熱気をそのまま閉じ込めたような、疾走感あふれるサウンドに仕上がっている。
歌詞では「同じ景色を」「最高の景色を」というフレーズを繰り返し、選手だけでなく、応援する人々もまた同じ夢を見ていることを描写。勝利を願う気持ち、悔しさを乗り越えてきた時間、そのすべてが“景色”という言葉に集約されていく。単なる応援歌ではなく、「誰かを信じて声を届けることが力になる」というメッセージが込められた1曲であり、サッカーの枠を超えて、何かに挑むすべての人の背中を押してくれる楽曲になっている。


