HYDEのオーケストラツアー「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL」の最終公演となるオーストリア公演が、5月25日(現地時間)にウィーン・コンツェルトハウスで行われた。
ツアー終幕の地として選ばれたウィーン
「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL」は最新アルバム「JEKYLL」を携えて、音楽都市である福島・郡山で今年1月にスタート。HYDEは弦楽ダブルカルテット、管楽器隊、コーラスを擁するJEKYLLオーケストラとともに各地を巡り、先日は“公開リハーサル”と称して故郷・和歌山で特別編成による一夜限りの公演を行った。
一連の公演の最終地としてHYDEが選んだのは、彼が2024年より観光大使を務めるオーストリアの首都であり、音楽の都として知られるウィーン。会場となったウィーン・コンツェルトハウスは竣工から100年以上の歴史を誇る老舗のコンサート会場で、クラシック音楽はもちろん、ジャズ、ワールドミュージック、最先端の実験的音楽なども奏でられている。そんな由緒ある会場での公演には、JEKYLLバンドと現地ミュージシャンで編成されるフルオーケストラが参加。HYDEはフルオーケストラならではの豊潤かつ重厚なアンサンブルに乗せて、長年にわたって磨き上げてきた歌声を響かせた。
フルオーケストラの豊潤な演奏で「JEKYLL」の世界を
定刻を少し過ぎ、艶やかに彩られたステージにオーケストラメンバーが続々とスタンバイしていく。クラシックのコンサートホールらしい独特の空気感の中でオーケストラのチューニングが始まり、指揮者に続きキャペリンにダブルトレンチコートをまとったHYDEが舞台へ。割れんばかりの拍手と歓声を浴びた彼は、特注のスワロフスキー製のマイクスタンドにそっと手をかけ「DIE HAPPILY」を甘やかな声で歌い上げる。フルオーケストラならではの複雑で豊かなアンサンブルを背に、ゆっくりと体を揺らすHYDE。1曲目が終わると感嘆をにじませた歓声がホールに反響した。
続いて、ウッドベースのまろやかな音色を合図に、TOMORROW X TOGETHERに提供した「SSS」のセルフカバーへ。ささやくような声でオーディエンスの心をとろかせ、最後には舌で唇をなぞり艶めかしい表情を浮かべる。狂おしい声を聞かせる「MAISIE」では、ハンドマイクから伸びる赤いケーブルを握り締めながら絶唱した。
「Guten Abend!(こんばんは)」というドイツ語も交えたMCを挟んで始まったのは、チャーミングな魅力を詰め込んだ「SO DREAMY」。目の前のオーディエンス、日本からライブビューイングや配信で見守るファンを幸福感たっぷりの表情と歌でもてなす。大サビの前にはピアノを弾くhicoに視線を送り、柔らかな表情を浮かべた。このブロックでは、ピックで奏でられるガットギターやシェイカーの音が印象的なスパニッシュ調の「HONEY」、フルオーケストラの力量が発揮された「NOSTALGIC」、テンポを落とし、スローバラード調に仕立てられた「GLAMOROUS SKY」と新旧のナンバーを続けて披露したHYDE。「GLAMOROUS SKY」では、茜色の照明の中で浮かび上がる彼のシルエットや、サックスの音色が楽曲に宿る甘い郷愁を引き立てていく。また重厚さと軽やかさが同居する「TATTOO」でHYDEは、この曲を特徴付ける口笛も披露。繊細な旋律を奏で、喝采を浴びるひと幕もあった。
観客を包み込むようにパフォーマンスされた「FINAL PIECE」を経て、第1部のクライマックスを飾る「DEFEAT」へ。国内ツアーでは、この曲のパフォーマンス前にHYDEがご当地名物を食するのが恒例となっていたが、このウィーン公演でもその“お約束”は継続。「ウィーンの名物は何?」と英語で問いかけつつ、どこからかザッハトルテを手に取った彼は、それを二口頬張る。そしてゆっくりと味わったのち、会場を見渡し「It's delicious」と満足げな表情を浮かべた。クスクスと笑い声が漏れる中、HYDEは「Listen to one more song. Before heading to the restroom(もう1曲聴いてください。トイレに行く前に)」と即興による歌をやたらと美しい声で披露して、喝采と笑いを巻き起こす。そのままHYDEはジャズアレンジを施した「DEFEAT」を、激情をほとばしらせながら熱唱し、会場を大いに盛り上げた。
「FORBIDDEN COLOURS」は坂本龍一への思いを込め
クラシックコンサートならではの途中休憩を挟み、第2部の幕開けを飾ったのは静謐な世界を描き出す、アルバム「JEKYLL」のラストナンバー「FADING OUT」。幻想的なハンドパンの調べに導かれるように、現れた光沢のある白いブラウスシャツ姿のHYDEは、憂いを帯びたはかない声で曲の世界を紡いでいく。さらに「SMILING」でも、切ないボーカルを聴かせ観衆の心を揺さぶる。フルオーケストラならではの、圧倒的で多彩な音色が光った「THE ABYSS」に続いたのは、ソロアーティストとしての“始まりの曲”「EVERGREEN」。ミラーボールの光が降り注ぐ中、HYDEは25年前に発表した曲を慈しむように歌い上げて観衆を魅了した。
そして、ホールに静寂が横たわる中、HYDEは「FORBIDDEN COLOURS」を披露。自身の“静”の表現のルーツでもあるデヴィッド・シルヴィアンの「FORBIDDEN COLOURS」は、坂本龍一が出演し、劇伴も手がけた映画「戦場のメリークリスマス」のメインテーマをベースにした1曲。ピアノの旋律が誘うシネマティックな世界の中、低く、ほのかに張り詰めたHYDEの声がホールに広がった。その後のMCでは、「FORBIDDEN COLOURS」が日本を代表する世界的なアーティスト・坂本龍一による楽曲であることを紹介しつつ、「彼は亡くなってしまいましたが、彼の音楽は永遠に生き続けます」と音楽の持つ永遠性を静かな熱意を持って口にした。「日本とオーストリア、両国の素晴らしい文化をこれからも守り続けていけるよう願っています」と続けたHYDEは、「今年は僕のソロ活動25周年の節目でもあります。その長い旅路の中でも、今日は私の人生で最も特別な日の1つとなりました」と感慨を言葉ににじませた。そして、「観光大使という役割を通じて、オーストリアとつながることができたこの機会に、心から感謝しています。残り時間はわずかですが、どうか最後までこの夜を楽しんでいってください。ありがとうございました」と改めて観客に感謝の思いを伝えた。
「本当に最高のツアーでした」
この日のセットリストはツアー本編を踏襲するものであったが、HYDEが異国で自身の故郷を紹介するための1曲として「ZIPANG」が用意された。わびさびを感じさせる独特の旋律と、ヨーロッパで誕生したオーケストラサウンドが融合を見せ、クライマックスでは彼の「The sun's gonna rise」という咆哮のような声が轟く。「ZIPANG」の開放感を引き継いだ「RED SWAN」から、世界的人気アニメのテーマソング「夢幻」へ。勇壮なイントロに導かれ、ステージを力強く踏み締めたHYDEは、ダイナミックなサウンドを背に伸びやかな声をホールいっぱいに響かせる。
5カ月に及んだツアーの最後に届けられたのは、イントロのフルートの軽やかな音色とは裏腹に、聴く者の感情を激しく揺さぶる「LAST SONG」。手を胸に当て、歌詞を噛み締めるように歌うHYDEの姿に、オーディエンスの視線が集まる。管楽器の音が激しく唸り、明滅するライトに照らされたステージで、彼はまるで号泣するような悲痛な声を響かせた。オーケストラのダイナミズムが爆発し、クワイヤのようなコーラスが重なる中、絶叫のような声が歴史あるホールを切り裂いていく。最後の一節として「SECRET LETTERS」のワンフレーズを口にしたのちHYDEは、赤いマイクケーブルを大きく揺らしオーケストラにコンサートの終演を告げた。
この日一番の拍手と歓声がホールにこだまし、スタンディングオベーションを受ける中、HYDEは感極まった様子で「ありがとう」とドイツ語、英語、日本語で繰り返し、「素晴らしい演奏をしてくださったJEKYLLオーケストラの皆さん、ありがとうございました」とステージをともにしたメンバーに告げる。そしてバンマスのhicoと力強くハグを交わしたのち、観客で埋め尽くされたホールの隅々まで見渡し、「本当に最高のツアーでした」「Vielen Dank, Wien!!」と笑顔で叫んだ。
オーケストラツアーを無事終えたHYDEは、ここからL'Arc-en-Cielのボーカリストとしての活動にシフト。音楽フェスティバル「SUMMER SONIC 2026」への出演を経て、バンド結成35周年ツアー「35th L'Anniversary TOUR」を開催する。なお、「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien」の模様は、LIVESHIPにてアーカイブ配信中。HYDEが自身の集大成を見せた一夜限りのパフォーマンスをお見逃しなく。
セットリスト
「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien」2026年5月25日 ウィーン・コンツェルトハウス
01. DIE HAPPILY
02. SSS
03. MAISIE
04. SO DREAMY
05. HONEY
06. NOSTALGIC
07. GLAMOROUS SKY
08. TATTOO
09. FINAL PIECE
10. DEFEAT
11. FADING OUT
12. SMILING
13. THE ABYSS
14. EVERGREEN
15. FORBIDDEN COLOURS
16. ZIPANG
17. RED SWAN
18. 夢幻
19. LAST SONG
アーカイブ配信情報
配信期間:2026年5月27日(水) 00:00 ~ 5月31日(日)23:59
配信サイト:https://liveship.tokyo/hyde-jekyll-in-wien/


