2015年の登場以来、ワン&オンリーな音楽性とパワフルなパフォーマンスでアイドルシーンに大きな刺激を与えたグループ、フィロソフィーのダンス。その歴史は6月13日の東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演「フィロソフィーのダンス The Last Dance ~DFP Forever!~」をもって終了した。バックバンドを従えてのラストステージは、ソウル / ファンクをベースにした彼女たちの音楽性を存分に満喫できるものだった。奥津マリリ、日向ハル、佐藤まりあ、木葭のの、香山ななこ──メンバー5人の明るいキャラクターはこれが最後のパフォーマンスだとは思わせない、さわやかな後味を残した。
そんな最後の姿を記録するうえで、音楽ナタリーはフィロのスの11年におよんだ活動を常に見届けてきたライター・南波一海にレポートを委ねることにした。デビュー時から彼女たちのことをよく知る南波の目に、あの“ラスト・ダンス”はどう映ったのか。
本文 / 南波一海 撮影 / 臼杵成晃
ラストライブにこそ最も映える、最後のオリジナル曲
とても楽しい時間だった! 日向ハルの放った「フィロソフィーのダンスはずっと史上最高を更新し続けてきました。ということは今日が一番最強のフィロちゃんズです」という言葉に偽りのない、これ以上ないほど最高のラストライブだったように思う。
去る6月13日、フィロソフィーのダンスがLINE CUBE SHIBUYAにて単独ライブ「フィロソフィーのダンス The Last Dance ~DFP Forever!~」を開催し、この公演をもってグループは活動に終止符を打った。ライブを観ながら個人的に感じたことを書き連ねたい。
開演前のBGMはマイケル・ジャクソンしばり。フィロソフィーのダンスが楽曲やダンスで参照してきたことに加え、折しも映画「Michael/マイケル」の公開がライブ前日から始まったばかり。優れた音楽はこうしてずっと聴かれ続けていく、というメッセージだと受け取った。セレクトしたのはグループの産みの親である加茂啓太郎だったとあとで知って深く納得。これは余談だが、会場の入り口を抜けると加茂との記念撮影を求めるファンが列をなしていて、まるで撮影会の様相を呈していたのがとてもほほえましかった。
ステージ上にはドラム、ベース、ギター、キーボードというバンドセットの配置。当日がどんな編成になるのかは特にアナウンスがなかったので、これはちょっとしたサプライズだった。フィロソフィーのダンスの音楽と生演奏の相性は抜群によいのだ。
オープニングナンバー「ファンキー・バット・シック」のイントロとともにまずはバンドメンバーが登場。ソロ回しから「BRAND NEW DANCE」に突入するとともに、黒と金を基調としメンバーカラーをポイントにあしらった大きなドレスをまとったフィロソフィーのダンスの5人がステージ中央に現れる。この2つのオープニングナンバーはそれぞれ4人体制時、5人体制時に使用されていたもので、冒頭からさらりと歴史を総括してみせる。
メンバー1人ずつがランウェイを歩くように顔見せしたあと、全員が一斉にドレスを脱ぎ捨てると、鮮やかな赤い衣装が姿を現す。思い返せば、フィロソフィーのダンスが節目で着用してきた衣装はいつも赤だった。厳かな雰囲気から一転して、これからパーティが始まるのだという合図に誰もが胸が高まったはず。
それぞれの自己紹介があり、日向の「フィロソフィーのダンス史上、最大の愛を持って帰ってね」という言葉からスムーズに始まった1曲目は、最後のオリジナル曲にして瞬く間にキラーチューンとなった「ダンス・フォー・フィロソフィー」。音源で聴くよりも細やかなニュアンスが加わっていて、2番のサビにおける奥津マリリのタメの効いた後ろノリの歌唱やラストの一糸乱れぬハモなどを聴くと、リリースから今日に至るまでの数カ月で楽曲をしかと血肉化してきたのがわかる。また、終わることとその先の未来をつづった歌詞は、このラストライブにこそ最も映えるのだと気が付いた。
伸ばしに伸ばした“うぉうおおお~~~~”
小気味よいギターのカッティングから始まり、「忘れようと思っても忘れられない夜にしましょう」(奥津)、「忘れようと思うな、絶対覚えとけ!」(佐藤)といった煽りとともに歌われる2曲目は「すききらいアンチノミー」。鮮烈なデビューシングル曲で、つまり11年前から歌われてきたものである。最新曲から一気に初期曲に向かうのもラストライブならではの演出と言える。「年を重ねても長く歌い続けられる歌」という建付けのもとに作られた楽曲群が、実際に色褪せないということを鮮やかに証明してみせるセットリストだ。
続く「ロック★with you」はバスケットボール女子日本リーグ・Wリーグの応援ソングという背景もあり、盛り上がりやすいポイントがいくつも置かれた1曲。ファンのコーラスや掛け声の参加も力が入っていて序盤からひたすらに熱い。そしてこの曲のハイライトとも言える、後半の日向と奥津のロングトーン。伸ばしに伸ばした“うぉうおおお~~~~”は、バックがバンドだからこそできるものだろう。何かと決まりごとが多いアイドルソングにおいて、こんなに自由でいいのだと思わせてくれるのは間違いなくフィロソフィーのダンスの魅力の1つだろう。
MCもそこそこにテンポよく曲が投入されていく。詳しくはセットリストを見てほしいが、中盤のメドレーを含めて歌われる曲数がとにかく多い。しかし、どこを切ってもグッドナンバーだらけなので、もっと詰め込んでもらってもよかった!
ソウルフルなナンバー「コモンセンス・バスターズ」。この曲の間奏ではポーズをとったまま横歩きで移動していくのだが、ステージ袖に捌けていってしまうほど移動したのには笑ってしまった。これは後述するが、パフォーマンス中の端々でちょくちょくふざけてみせるのがこのグループの唯一無二のよさだと思っている。
怒涛のメドレーを終え(「テレフォニズム」「アイム・アフター・タイム」「スーパーヴィーニエンス」という都会的楽曲固め打ちはこの次の流れへの布石として見事だった)、この日ほぼ初めてのゆったりしたMCパートで息を整えたあとは、ミディアムの代表曲「シスター」。ある時期以降はダンスなしで披露されることが多かったが、この日は振付ありでパフォーム。ここからはシリアスでスウィートに魅了してみせる。盛り上げに盛り上げたあとはしっとりと落ちつけて聴かせる構成が実に巧みで、セットリストそのものがうねりを伴ってグルーヴしていく。
ゴスペル調のバラード「ジャスト・メモリーズ」のあとは「ヒューリスティック・シティ」。“さよならを 好きだって言えるうちに 次の時代いきましょう わたしが覚えておくから 今を”。奥津はこのくだりを歌いながら涙していた。
しっとりと聴かせたあとは「ドント・ストップ・ザ・ダンス」。メジャーデビュー曲であり、パーマネントに続くと思われていたヤマモトショウ&宮野弦士コンビが楽曲制作陣から離れ、新たな布陣で送り出された1曲である。リリース当時はリアクションがさまざまあったが、場を一変させる力を宿した楽曲だ。ここから終盤まで熱い方向へギアを上げていくのだなとわかる。
フィロのスの強力なチャームポイントは“いい奴ら性”に宿る
佐藤まりあ、木葭のの、香山ななこからなる女神ズによるバンドメンバー紹介を経て、この日、間違いなくクライマックスのいち場面を作ったのは「バイタル・テンプテーション」。楽曲の途中で奥津と日向によるスキャット合戦があるのだが、そこが異常なほど自由でスキルフルであると同時におちゃらけ倒してもいて、フロアを湧かせまくっていた(これはまじで映像でも観てほしい!)。
なんと言うか、彼女たちは端的に“いい奴ら”なのである。
ディスコやR&Bを軸にしたファンキーな音楽。高クオリティの楽曲を歌いこなす確かな歌唱力。インパクト大のユーモラスなダンス。よく語られるポイントはいくつかあるものの、それらの形容だけではどうしてもこぼれ落ちるものがある。フィロソフィーのダンスのオンリーワンで強力なチャームポイントは“いい奴ら性”に宿っているのだ。個人的にはそれこそがフィロソフィーのダンスが繰り返し伝えてきた“愛”の背景にあるものだと思う。私はフィロソフィーのダンスがライブでふざけなかったのを見たことがないし、この日もこの場面に限らず随所で愛すべきやんちゃさが出ていて、ラストライブという大舞台でもいつもと変わらぬ調子が持ち込まれていることにいたく感動した。
「オリメン」「新メン」というくくりがまだうっすらと立ちはだかり、どこか先輩に遠慮がちだった木葭と香山も、ラストツアーを経てすっかり変わったようで、「Love&Loud」で奥津の頬にキスをする一連のくだり(ツアーではおなじみの光景だったようだ)はただただピースフルだった。多少歌が崩れようとも、ライブ体験としての楽しさはどちらが上かは言わずもがなだろう。“いい奴ら性”がメンバー全員に浸透し、この5人のフィロソフィーのダンスの形が最後のツアー、そして最後のライブをもって完成したのだと思う。
本編最後は「ライブ・ライフ」。ライブで人生を歩んできたグループにふさわしい楽曲を歌い、メンバーはステージをあとにする。「みんな気づいちゃった? ここが最高って みんな踊っちゃって わかっているのね」。歌詞の1つひとつがその場にシンクロしていた。
アンコールに応じる形で5人は再びステージに登場。ここで1人ひとりが真摯に言葉を紡いでいく。これも詳しくは文字起こしなり映像なりを確認していただきたいが、奥津が涙をこらえながら関わったすべての人への愛を語る中で、メンバーが茶々を入れていくさまがあまりにフィロソフィーのダンスらしい光景だった。日向の悪魔のような笑い声は忘れられない。
アンコールは4曲披露。最後に歌われたのは「ダンス・ファウンダー」だった。“新しいダンスを踊らせてあげる”と高らかに宣言し、独自の道を切り拓いていったこの曲でフィロソフィーのダンスの活動は幕を閉じた。本公演はおよそ2時間40分。もっともっと観ていたかったが、終わってしまう寂しさ以上に楽しさが強く感じられたライブだった。メンバーの去り際の晴れやかな表情を見て、そう思っていいのだなと確信した。
セットリスト
フィロソフィーのダンス「The Last Dance ~DFP Forever!~」2026年6月13日 LINE CUBE SHIBUYA
01. ダンス・フォー・フィロソフィー
02. すききらいアンチノミー
03. ロック★with you
04. シュークリーム・ファンク
05. イッツ・マイ・ターン
06. ダンス・オア・ダンス
07. 熱風は流転する
08. 夏のクオリア
09. プラトニック・パーティー
10. フリー・ユア・フェスタ
11. アルゴリズムの海
12. カップラーメン・プログラム
13. ポジ子とネガ乃
14. コモンセンス・バスターズ
15. 好感度あげたい!
16. テレフォニズム
17. アイム・アフター・タイム
18. スーパーヴィーニエンス
19. シスター
20. ジャスト・メモリーズ
21. ヒューリスティック・シティ
22. ドント・ストップ・ザ・ダンス
23. アイドル・フィロソフィー
24. バイタル・テンプテーション
25. Gimme Five!
26. Love&Loud
27. GO SURVIVE
28. ライブ・ライフ
<アンコール>
29. 愛の哲学
30. サンフラワー
31. DTF!
32. ダンス・ファウンダー


