YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月28日から9月3日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、4位にKEY TO LIT「Never Fade Love」のライブ映像が登場した。これは現在開催中のアリーナツアー「KEY TO LIT Arena Tour 2026 NEO CLASSICS」より、今年8月20~23日に開催された東京・有明アリーナ公演で撮影されたもの。楽曲の持つ夏特有の開放感と高揚感が、パフォーマンスを通してより強く伝わってくる。
20位にはBLACKPINKのメンバー・JENNIEの「FALLEN ANGEL」がランクインした。8月28日のMV公開から10日間で2300万再生を突破し、現在もハイスピードで再生数を伸ばしている。
22位に登場したのは、FictionJunctionの「彼方」だ。今作は公開中の映画「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ(ワルプルギスの廻天)」の主題歌。MVは壮大な世界観を持つ楽曲と呼応するような映像に仕上がっている。
ライブ映像や話題の映画主題歌など、幅広いジャンルの作品が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
=LOVE「恋、はじめました。」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場18位
突然だが、「恋」と「愛」はいったい何が違うのだろう? 美輪明宏は「恋とは自分本位なもの、愛とは相手本位なもの」と定義している。つまりある意味、恋は自分勝手でいいのだ。
そんな自分本位な感情を高い解像度で表現しているのが、=LOVEの新曲「恋、はじめました。」である。主人公の“私”は恋をした心情を「キュンってなった これって きっと / ぷるんてなった 私のハート」とかわいく表現しつつも、“君”に対して「この先 私以外 入っちゃダメ 君のハート」と自身の願望をのぞかせる。この曲から浮かび上がってくるのは、恋をした私の“ピュアさ”と“欲深さ”だ。「君のことが好き」という純粋な気持ちが、「私以外は入っちゃダメ」という独占欲に変わっていく。そのどちらも嘘ではなく、どちらも恋をした“私”の本音なのだろう。
かわいらしさの裏側に、ちょっぴり強欲な乙女心を忍ばせることで、「恋、はじめました。」は恋の甘さだけではない、人を好きになることの可笑しさまで描き出している。恋をすると、誰もが少しだけわがままになる。そんな当たり前の真理を、=LOVEはとびきりキュートに歌っている。
うちのボカロは様子がおかしい「アクマバライ feat. 雨衣 & 初音ミク」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場73位
うちのボカロは様子がおかしいは、今年活動を開始したボカロP。4月に「私と小鳥と鈴と、月明りと誰かの視線と、硬直する体と落ちる意識と、ニヒルに笑った感じと、例えば苦痛なんて存在しない日常と、部屋と、少女と、夢。みんなちがって、みんないい。」を投稿したのを皮切りに次々に作品を発表し、今回ランクインした7月公開の「アクマバライ」のMVが4作目となる。
「アクマバライ」は、好きな人に「女の影」があると悩む少女・雨衣が、AIのGoogle Geminiに相談したことから始まる、ちょっと不穏でユーモラスなラブソング。「どうすればいい?」という問いに対し、Geminiの思いがけない提案によって、恋愛相談はなぜか悪魔祓いへと発展していく。
MVは「日本異変調査局」の調査報告という設定でストーリーが進行。事件の容疑者である雨衣、被害者の恋人である初音ミク、そして擬人化したGeminiが登場するコミカルかつ怪しげな映像が展開され、楽曲の世界観を視覚的にも楽しませてくれる。
さらにこの曲は、生成AIであるGeminiのテキスト読み上げ音声を効果的に用いている点も大きな特徴。AIを題材にした楽曲であると同時に、現代的なブラックユーモアも楽しめる1曲だ。
東京真中「フォーモ feat. 重音テト」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場88位
楽曲制作にまつわる諸々に加えて、ロゴやアートワークなどのグラフィックデザイン、さらにミュージックビデオの企画・監督・映像編集まで幅広く手がけるボカロP・東京真中。2月に公開した「ブレインロット feat. 重音テト」は、もうすぐ4000万再生に迫る勢いだ。
ボカロ楽曲の投稿祭「The VOCALOID Collection ~2026 Summer~」のTOP100ランキングで4位を記録した新曲「フォーモ」は、ネットスラングとしても使われる「FOMO(Fear Of Missing Out)」をタイトルに冠した楽曲。FOMOとは、「自分だけが取り残されるのではないか」という不安や恐れを指す言葉で、SNSなどを通じて他人の行動や情報を目にすることで生まれる感情とも結びついている。そんな現代ならではの焦燥感や、周囲との比較によって揺れ動く心を描きながらも、サウンドは重苦しくならず、軽快なダンスミュージックとして楽しめるのが魅力だ。
MVでは、重音テトを中心にネット社会を連想させる映像がアニメと実写を織り交ぜながら展開され、楽曲のテーマを視覚的にも印象付けている。SNSで他人と自分を比較し、焦りや疎外感を覚えたことのある人なら、きっと身近に感じられるはずだ。


