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心姫奈は「まだ途中 でも本気」、目指すのは誰にも似てない本物のArtist

心姫奈
16分前2026年10月20日 10:02

気鋭の新人アーティストにインタビューしていく連載企画「Who's Next?」。第3回に登場するのは、SNSへの動画投稿を糸口にして年初に活動を開始した心姫奈(こひな)だ。「心姫奈です ラップしている まだ途中 でも本気 口だけじゃない理想を掴む Artist」という自己紹介のフレーズがネットミーム化して注目を浴びている彼女に、活動を開始した経緯や今後の展望などを聞いた。

取材・文 / 3NK

最初はとにかく顔と名前を知ってほしかった

心姫奈が初めて動画を投稿したのは今年1月8日。自己紹介フレーズ(「kohinaRAP」)を歌うだけの短い動画だが、この動画が一気に広まったことで、彼女は楽曲をリリースする前から注目の存在となった。あの動画はいったいどうやって生まれたのか。

「『kohinaRAP』を制作したきっかけは、まずアーティストとして、自分の顔と名前を多くの方に知っていただきたいと思ったことです。そのために、15秒という短い時間の中で『心姫奈という名前』と『ラップをしているアーティストであること』を印象付けられる動画を作ろうと考えました。一般的にラップというと、速いテンポで言葉を重ねたり、韻を踏んだりするイメージが強いと思います。もちろん、それもラップの魅力の1つですが、私はあえてその逆を選びました。短い言葉をゆっくりと、シンプルなリズムに乗せることで、1つひとつの言葉を際立たせ、より記憶に残る表現を目指しました。また、ショート動画では冒頭の数秒で視聴者の興味を引くことが重要だと考えていたので、最初に顔のアップを入れるなど、映像の構成にも工夫をしています」

彼女なりのマーケティング戦略もありつつ、人々の心をつかんだリリックは撮影時に自然と出てきたものだそうだ。

「冒頭の『心姫奈です ラップしている』というフレーズは、最初から明確に決めていました。一方で、それ以降の言葉は、撮影する瞬間の自分の気持ちから自然に生まれたものです。特に『まだ途中 でも本気』という言葉には、今の自分自身の姿を重ねています。まだ理想の自分には到達していないけれど、本気で夢に向かって進んでいる。その気持ちは、きっと私だけではなく、何かに挑戦している多くの方にも共通するものだと思います。だからこそ、難しい表現ではなく、誰もが自分自身に重ねられるような、身近でシンプルな言葉を大切にしました。そして最後の『Artist』という言葉には、単にSNSで注目される存在ではなく、音楽や表現を通して自分の思いを届けていくアーティストでありたい、という意思を込めています」

ドン底で出会ったラップという手段

ラップに出会う前の心姫奈は、別の方法で脚光を浴びることを考えていた。

「小さい頃からダンスをしていて『表舞台に立つ存在になりたい』という気持ちが強くあったんですけど、ダンサーとして日本一になる目標を中学2年生の頃に達成してしまって、それからダンス以外のことがしたいと思うようになったんです。それでガールズグループのメンバーを目指して練習生になったんですけど、なんか違和感があるというか、自分が本当にしたいことではないような気がして辞めてしまったんです」

それから普通の大学生活を送りつつも、自分の居場所に違和感を抱えていた心姫奈は「現代ではネットやSNSでの発信が重要」という考えから、19歳のときにマーケティングの会社に入社。そこで発信の方法を学んだものの、自分が何を発信していくべきなのかを見つけることはできないまま退職してしまう。

「20歳、21歳と年齢を重ねる中で、焦りが生まれてきて。周りもみんな進路を決めているし、親にも早く就職しろとか言われるようになって、すごく病んでバッドに入っちゃったんです。何かしたいのに何をしたらいいかわからない状態が何カ月か続いて、理由もなく涙が出るようになっちゃって」

ドン底に陥った心姫奈。彼女がそこで自ら見つけ出したのがラップという表現手法だった。

「自分が今なんで泣いてるのかを分析してノートに書いてみたんです。それを自分で読んだときに、これはもしかしたらラップに変えられるかもしれないと思いついて、勢いでビートに言葉を乗せてみたら『うわー、私これがしたかったんだ!』って感じて。そこからラッパーを目指し始めました。それが去年の11月くらいですね」

誰かに憧れたことは一度もない

そこから日本のラップを聴き、独学を始めた心姫奈。今年4月に行われたヒップホップフェス「POP YOURS 2026」にも足を運んだ。

「特によく聴いていたのはOZworldさんで、あとはSALUさんとかLEXさんとか。『POP YOURS』ではKaneeeさんのパフォーマンスが印象に残りました。声質とかスタイルに惹かれるのは同性より男性の方が多いんですよね。でも、“好きなラッパー”とまではいかなくて、特に憧れてる人もいないんです。それはラップを始める前からそうで、ロールモデルとかは一度も考えたこともなくて。誰かに憧れたり、ロールモデルにしようとしたりした時点でその人のことを超えられないと思うから」

日本語ラップのカバーや自己紹介ラップの替え歌、家族や友人とのコラボ動画などを投稿し、知名度を高めていった心姫奈は、8月に1stシングル「HONKI」をリリース。ゆったりした歌で登場した彼女だったが、この曲ではハードにラップしており、そのギャップでラップファンを驚かせた。

「この曲はプロデューサーのGAL Dさんとチームの皆さんと一緒に制作させてもらいました。GAL Dさんは、バズる曲を制作するのがすごく上手な方という印象があったし、自分が表現したい音楽ともマッチするんじゃないかと思って、私からDMしました。GAL Dさんとはほかにも曲を作っているし、ほかにもビートを提供したいというプロデューサーさんから連絡をいただいて、セッションしたり、曲を作ったりしているところです。ラップのスタイルとか方向性は特に定めてなくて、今の自分の感情に向き合って曲を作っていきたいと思っています」

Zeebraの言葉を受けて

動画投稿を続けつつ、心姫奈はZeebraが主催する女性ラッパー発掘オーディション「GOLDEN MIC」にも挑戦。2次審査で脱落するも、参加することで得るものはあったという。

「やっぱりみんな強い個性を持っているし、それぞれ自分を貫き通してる姿を見て、『ラッパーってカッコいいな』と改めて思いました。Zeebraさんには『いい意味でラッパーっぽさがない』と言われたんですけど、私自身もそう思ってるし、それをマイナスと捉えてないので、今後も自分を曲げずに貫き通したいなって気持ちが湧きました」

ラップはコンペティション(競争)の性格が強く、スキルの優劣を比較する文化が根付いている。また歴史的に男性中心で発展してきた側面があるため、女性がいまだに厳しい視線や批判にさらされやすい面もあるが、不安はないのか。

「ほかのラッパーとスキルの面で差を感じることはあるけど、そこで終わりにしないというか、そこから『練習しよう』って思えるからバッドに入ることはないし、そこは大丈夫です。何よりラップって楽しいという気持ちがすごくあって。リリックはそんなにスラスラ書けなくて、それが課題でもあるんですけど、もともと自分の感情を伝えるのが苦手だったから、今それをビートに乗せて表現できていることは、自分の中では成長だと思えるんです。自分自身を知るきっかけにもなっているし、ラップにすごく感謝しています」

まだ途中、でも本気

ビートメイカーや周囲の友人などの協力を得つつも、マネージャーも雇わず、なんの後ろ盾もない完全なインディペンデントアーティストとして活動してきた心姫奈。8月にはラッパーの登竜門と言える東京・恵比寿のライブハウスBATICAで初の主催ライブを成功させた。順風満帆に思えるが、本人としては必ずしも計画通りではないそうだ。

「活動を始めた当初は、もっと短期間で一気に成長していく自分を想像していたので、正直、今の歩みは思い描いていたよりもゆっくりだと感じています。ただ、活動を続ける中で、結果やスピードだけを追い求めるのではなく、自分自身の心と向き合いながら、自分のペースで積み重ねていくことの大切さも感じるようになりました。もちろん、今の自分に満足しているわけではありません。今はまだ『ラップをしている心姫奈』という自己紹介の段階だと思っています。これからは、音楽性や表現力、人間性も含めて、自分にしかできない表現を追求していきたいです。そして、ただ知名度を上げることが目標ではなく、自分の音楽や言葉を通して、誰かの心を動かしたり、前に進むきっかけを届けられるアーティストになりたいと思っています。その理想に向かって、焦らず、でも現状に満足することなく、一歩ずつ成長していきたいです」

プロフィール

心姫奈(コヒナ)

群馬県出身。2026年1月にSNSで動画投稿を開始して注目を浴びる。同年8月に1stシングル「HONKI」をリリースし、東京・BATICAでの主催ライブを成功させた。

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