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佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 7回目 後編 松隈ケンタとアイドルソングのメロディを考える

2年以上前2021年11月26日 11:05

佐々木敦と南波一海によるアイドルをテーマにしたインタビュー連載「聴くなら聞かねば!」。中編に引き続き、BiSやBiSHらWACK所属グループのサウンドプロデューサーを務める松隈ケンタ(Buzz72+)を迎え、スターダムを駆け上がっていくBiSHの姿に感じていたこと、J-POPや歌謡曲に対する大きな愛情などについて語ってもらった。

構成 / 瀬下裕理 撮影 / 田中和宏 イラスト / ナカG

変化と成長、強くなっていくBiSH

佐々木敦 僕はハロー!プロジェクトも大好きなんですけど、ハロプロはどのメンバーがどのパートを歌うかという歌割りでメンバー同士が勝負している部分もあって。一方でユニゾンで歌うのが基本だとか、歌割りを重視していないグループもあると思うんです。WACKはそのあたりグループによって色が違うかもしれませんが、松隈さんの考え方としては歌割りはどういうふうに決めているんですか?

松隈ケンタ 詞の内容から決めていくことが多いかもしれないですね。歌詞と当日のレコーディングの状況を見て考えるというか。ファンの方の中には過剰なまでに歌割りを神格化している方もいると思うんですが(笑)、僕が重要視しているのは曲の中で一番いいなと思う歌詞の一節、Aメロの頭、1番サビの頭。このパートを歌う3人ぐらいしか選んでいないです。

佐々木 その3カ所をまず決めるんですね。

松隈 歌を録る日に歌詞カードを見ながら、「この子はここでいこう」と決めるんですよ。あとは当日の歌を聞いてみて、例えばAメロがいい子は多めに録るし、よくない場合は少なめに録る。で、大体のエディットはうちの若手に任せるので、録れ高によって編集してもらうんです。僕も人間なんで、その場で盛り上がったりとか、普段からなついている子をいっぱい使ったりみたいな、そういう自分の感情に流されたくないなと。だからフラットな視点で歌割りを考えるために、一旦別の人間にやってもらいます。それを聴いて何回かやりとりして1曲を完成させるという流れです。

南波一海 均等に振るとかでもないんですよね。WACK所属のグループにはユニゾンもないし、そういう部分も特殊ですよね。

松隈 でも数年前、BiSHが「My Landscape」(2017年11月発表)でテレビに出るってなったのに、番組だと1番しか歌えないので、1番にパートがなかったリンリン(BiSH)が「私1番歌うところないんで、別に緊張しませんでした」って悲しそうに言ってて。僕はそんなこと考えたことがなかったから、「リンリンごめん!」って。リンリンっていいやつなんですよ。普段はそんなこと言わないんですけど、勇気を持って伝えてくれたから、リンリンには1番を歌ってもらうことが多くなりました(笑)。

佐々木 「LETTERS」(2020年7月発表)のリンリンの歌い出しはすごくよかったですね。

南波 そうなったきっかけはめっちゃ個人的な感情じゃないですか(笑)。

松隈 いや、でもそこはみんなのハートを大事にしたいので(笑)。ほかにも思っている子はいるかもしれないですけどね。「私なかなか出てこないな」って。

佐々木 メンバーの性格も本当にそれぞれだと思うんですが、まだ10代の子も多いだろうし、いろいろと不安定だったりもすると思うんです。活動していくうえでの不安や不満をなかなか打ち明けられないとか、松隈さんたちもすべてを丸ごと受け止めるわけにもいかないでしょうし。ちょっと学校の先生みたいなところがありますよね。

松隈 学校の先生は贔屓できないと思うんですが、僕も渡辺くんもけっこうそのあたりはオープンにしているというか。むしろ、本当は全員1人ひとりのことを考えているんだけど、表向きに贔屓をしていますね。全員均等に接しようと無理をして不自然な関係になるよりは、ある程度正直になったほうがいいのかなと。「あいつとは仲いいけど、こいつとはあんまりしゃべったことないな」とか平気で言ってしまいます。

南波 やっぱり長く活動していれば、それぞれ調子のいいとき悪いときってあるじゃないですか。そういう波みたいなものを感じ取れる瞬間、例えばこれまであまりサビのパートを歌ってこなかったモモコグミカンパニーさんやハシヤスメアツコさん(ともにBiSH)が「STAR」(2021年3月発表)のサビ頭を歌う姿や、「LETTERS」の歌い出しがリンリンさんであることとかに、グッときますよね。「このタイミングで何かつかんだんだな」と感じるというか。でもそういう心理的な変化って、普段からメンバーのことをちゃんと見ている人じゃないと気付けないと思うんです。

佐々木 「今までメインで歌ってなかった子がめちゃくちゃ目立っているよ」というふうに企画っぽくしているわけじゃなくて、やっぱりそこにはちゃんと理由があるんだと。「ここで君に少しの間だけ主役をあげるよ」という感じがして、胸が熱くなるところがありますね。

松隈 おっしゃる通りBiSHは特にデビュー時から変化したグループだと思います。みんなが思っていたけど口に出せなかったこととかを、BiSHのメンバーは言えるようになりました。誰かが「今日はちょっと調子が悪い」と伝えたら、ほかの子がその分がんばるとか。ほかのグループの子たちは、まだ「私がやらなきゃ。あきらめたら出番がなくなる」という焦りがあるんですけど、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチなんかは、歌の調子が悪いときは「すみません、出ないです」と正直に言うようになって。代わりにほかの子がやってくれると信頼しているんでしょうね。ライブ終わりでも「自分は声が出なかったけど、誰々が歌ってくれたから助かったわ」と話していたり、チーム感が出てきて強くなった印象を受けますね。

アイナ・ジ・エンドに「グラミー賞を取れ」

佐々木 BiSHは最初、アイナとチッチがとにかく突出して歌がうまいという印象がありましたけど、歌のうまさって単なるテクニックではなくパフォーマンス力でもあるから、当人の自信が増すとやっぱり魅力がアップするというか。BiSHはすごい勢いでその階段を上がっていったなと思います。

松隈 僕も歌のうまい下手はあんまり大したことではないと思っていて。歌の割り振りでいうと、個々人の性格だったり、その時期のメンタルだったり、あとは曲と歌詞との相性だったりを考えますね。WACKにはあまりないケースですけど、「今回のシングルはこの子を押し出したい」とかあるじゃないですか。そういうのを目の当たりにすると、強烈な違和感を覚えてしまいますね。だって録らないとわからないし。WACKは逆に、本人のコンディションや個性を重視するというアプローチをよしとしているんです。

南波 歌入れのときに、シンプルにいい結果を出した人のテイクが採用されるという。

松隈 はい。だから歌割りについては誰も口出ししてこないですね。僕らレコーディングチームが作り上げた歌割りを尊重してくれているということでもあるんでしょうけど。WACKには、曲のクオリティを上げたいという共通認識が一貫しているかもしれないです。

佐々木 クオリティを上げる、ではなく、クオリティを維持しようするのはまったく別の考えで、後者はルーティンになるじゃないですか。一方で質を上げ続けようとすると、結局多作することが目的になって「今回の曲はこれがやりたいね」「これぐらい評判になったらいいね」みたいな話になってくるから、そういうノイズをいかに気にせず自分たちの能力を高めていけるか、みたいな話にもなりますよね。

松隈 ああ、そういう意味で言うと、僕は鈍感だと思います。

南波 気にしている暇がないというのもあると思いますが(笑)。

松隈 それもあります(笑)。曲が発売される頃には次の作品を作っていますしね。僕が駆け出しの頃に所属していた音楽事務所が、黄金期のジャニーズ楽曲をわりと手がけていたところで。僕の師匠であるCHOKKAKUさんというアレンジャーを含め、そうそうたる作家さんたちがいたんですけど、その事務所では毎週オリコンチャートのトップ10に所属作家が何人ランクインするかが争点だったですよね。ヒットソングを手がけて当たり前というか。僕はそういう環境で育ったので、決してバカにしているわけではないんですが、CDの売上が1万枚だろうが2万枚だろうが、あんまり興味がないんですよね。

佐々木 今よりもっとすごい時代を経験していたから。

松隈 だから僕の中には、CDの売り上げが上がったとか、出演できるライブハウスの大きさがちょっと変わったくらいで喜んでちゃダメだなという意識があって。アイナとかも、「松隈さんはなかなか認めてくれない」と言うんですけど、僕だけは見ている方向が違う気がします。「アイナはグラミー賞を取らないと意味がない」と思っているんで。だから「えー、そんなもんで褒められてるの?」とか「カリスマって書かれてるよ、お前」ってイジるんです(笑)。

佐々木 松隈さんにそう言われるのはキツくもあるし、励みにもなりますよね。

松隈 励みになってくれたらいいんですけどね。でも周りから言われることと、アーティストサイドの中の人が思う部分というのは、どこかで切り離して考えないといけないことなので。本当においしいものを作らないとダメというか、ちょっと話題になるだけじゃ甘いなと。

迷わず「J-POPやってます」

佐々木 松隈さんはプロデューサーでもあり、2020年にはご自身のバンド・Buzz72+を復活させましたよね(参照:Buzz72+「13」特集)。だからルーツはプレイヤー、パフォーマーでもあると思うんですけど、そういった経験が今の活動にどんなふうにつながっているんでしょうか?

松隈 自分でも考えたことがあるんですけど、僕が一番謎に思っています(笑)。

佐々木 自分がステージに立ってギターを弾いているのと、自分が作った曲をアイドルが歌っている状態って、かなり違いますよね?

松隈 そうですね。だから自分は二重人格なんじゃないかなと思います。めっちゃ裏方に徹してるくせに、出たがりだったりもして。

佐々木 松隈ケンタ=二重人格説(笑)。でも、その両方ができてしまうということですよね。

松隈 マルチコアでやってると思います。僕の場合、もしかしたらバンド活動とサウンドプロデューサーの仕事は、関連性がないかもしれないですね。表に出たいっちゃ出たいし、でも裏方に徹底している人にもなりたい。もはや違う名前でも曲を書きたいんです、マジで。

佐々木 まだ書くのか(笑)。

松隈 そこは、はい(笑)。松隈ケンタと聞いて「嫌だ」という人もいると思うので、そういう人たちに偽名で書いた曲を売りつけたいです(笑)。でも結局は身近な人たちと、その人たちに喜んでもらうために仕事をやっているので、「ファンのために」という意識は弱いのかも。

南波 その意識が強いと、ここまで振り切って曲を書き続けられないかもしれないですね。ファンの反応を気にしてしまうだろうし。

松隈 そう。実際、ファンの方の意見は絶対聞かないです。そこはレコード会社の人や、渡辺くんがすくってくれているので、僕がやらなくても大丈夫だろうと。もちろん、ライブを観に行ったときはお客さんたちの反応を見ますけどね。こんな感じで盛り上がる曲なんだとか。あくまで参考にしている、という感じではありますが。

「けいおん!」に感じたJ-POPブーム再来の兆し

佐々木 僕は、先ほど話に出たBiSHの「オーケストラ」(2016年9月発表)が死ぬほど好きなんですけど、ロックやパンクが松隈さんのコアな部分にあるとすると、「オーケストラ」はそういう曲ではないですよね。バラードとも違う、普遍的なメロディと感情を歌っている歌というか。聴いた瞬間にいい曲だとわかって、「たぶん10年後に初めて聴く人もみんな感動するだろうな」と。そういう曲を作れるのは、やっぱり松隈さんの作曲家としての根っこにある、マジックのような感じがするんですよね。

松隈 結局僕が好きなのは、J-POPなんですよ。ロック、ロック言ってますけど、道行く人に「どんな音楽やってるんですか?」と聞かれたら、迷わず「J-POPやってます」と答えると思うんです。具体的には織田哲郎さんとか、ZIGGY、THE YELLOW MONKEY、GLAYみたいな、歌謡的なセンスを感じるアーティストが好きで。BUMP OF CHICKENも、Mr.Childrenもそう。僕はそういうスタイルを目指してるんです。人に聴いてもらうために、アレンジは洋楽ライクにしたり、コンテンポラリーな部分も取り入れていかなきゃと思ってやっていますけど、基本は歌謡曲みたいなJ-POPが作りたいんでしょうね。世間が僕の曲を「ロックだ」「パンクだ」と勝手にジャンル分けしただけで。

佐々木 あるいはすぐ「何っぽい」と言いたがる僕らみたいな人たちが(笑)。

松隈 はははは。レコード屋さんが便宜上ジャンルを分けるということもあるのかもしれないんですけど、僕としては音そのもので判断すべきなんじゃないかなと。「この人J-POPやってるけど、どう考えてもThe Who好きな人だな」とか、そういうことを感じ取れるのが楽しいので。

佐々木 音で属性がわかるというか。ジャンルはあとからついてくるわけですよね。

松隈 そうそう。だから僕もJ-POPの中に自分の好きな要素を入れ込んだら、誰かに気付いてもらえるんじゃないかなって。そう考えると、歌謡曲的なものを作っていた人にこそ実はロック畑の人が多い気がするんですよね。J-POPとロックは相性がいいというか。その一方で、R&Bは難しい。R&Bのメロディやリズムって、歌謡曲にはなじみにくいと思うんですよね。

佐々木 1980年代くらいからMTVの影響などもあって、それまで以上に海外の音楽情報がどんどん入ってきて、日本の大衆音楽が洋楽化していったけど、その前には歌謡曲の時代があって。ある意味誰が歌ってもめちゃくちゃいい曲になるみたいな歌謡曲時代のメロディって、今の時代にもあるかというと、なかなか厳しいような気がするんです。本当にいい曲って、本気で書くつもりがないと書けないし、そうしたくても才能がなかったら書けない。歌謡曲的な音楽って、日本の音楽にとっては重要なのに、意外と絶滅の危機に瀕しているのかなと思うんですよね。

松隈 今はヒップホップやR&B的な曲がメインストリームになっていて、僕はJ-POPや歌謡曲界隈に物足りなさを感じているんです。

佐々木 そういう音楽をやる人が少なくなってしまった。そういう意味では、アイドルソングはJ-POPや歌謡曲的なものを受け止める容れ物として機能しているのかもしれないですね。

松隈 まさにそうです。僕は2000年代後半のAKB48の登場に本当にびっくりして。これこそJ-POPの極みだと思って興奮したんです。あとは、デビュー曲ではラップしていた嵐が「Happiness」(2007年9月発表)みたいなJ-POP感の強い曲を歌うようになったり。さらに、その時期に「けいおん!」(2009年4月から2010年4月にかけてTBS系列で放送されたテレビアニメ)が流行って。その瞬間に、佐々木さんのおっしゃる普遍的なメロディというか、日本人が好きな音楽が戻ってきた!と思ったんです。歌謡曲っぽいメロディで勝負するって無理なのかなと、そのときまではちょっとあきらめていたんですけど、やっぱりまだイケるじゃんって。その気持ちが、ここ1、2年でさらに確信に変わりました。歌謡曲やJ-POPの時代が戻ってきたなと。ちょっと前まで若い子は洋楽的なサウンドのバンドに夢中になってましたけど、最近はAdoさんの「うっせぇわ」(2020年10月発表)みたいな歌謡曲っぽい曲が好んで聞かれるようになった。けっこういい兆候にあるなと思ってます。高校生の生徒にいろいろ聴かせても、「スピッツがいい」という反応が返ってきたりとかして新鮮なんですよ。

佐々木 スピッツは曲のアレンジこそ変われど、メロディはまさに普遍的ですよね。

南波 松隈さんってマジで全然変わらないですね。学生の頃に洋楽のコピバンをやっていたけど、JUDY AND MARYのコピバンを手伝ったらそっちほうが受けて「俺はこっちだな」と思った、という話を以前聞いたことを思い出しました(笑)。

松隈 そうそう。洋楽の曲をやってみたら全然お客さんが盛り上がらなくて(笑)。

南波 そのときから一貫していますよね。学生の時点で「俺にはJ-POPのほうが合ってる」と思ったわけですから。

松隈 そうですね(笑)。

佐々木 自分が歳を取ってきたせいもあるのかもしれないけど、やっぱり歌謡曲的なものが今のJ-POPシーンには一番足りていない感じがするんですよね。最近は海外の音楽リスナーが日本の昔のポップスを好んで聴くという傾向もありますけど、そういう場所で跳ねるのって、決して洋楽的なサウンドではないと思うんですよ。シェイクスピアやチェーホフの劇を日本人がやっても本場の国の人にはなかなか響かないのと同じで、日本語の語感だったり日本人独特の情緒みたいなものこそ、海外の方の耳には新鮮に聴こえるんじゃないかなと。そういう語感やエモーションが反映された歌謡曲的なメロディが、今再び重要視されている気がするんです。

南波 今日ずっと話しているのもメロディについてですもんね。

松隈 例えばエド・シーランみたいな海外で売れているアーティストを見ていても、けっこう民族音楽を取り入れているんですよね。昔の洋楽にも、中国っぽいサウンドや中近東系のメロディはよく登場していたし、Aerosmithもインドのテイストが入ったアルバム(1997年発表のアルバム「Nine Lives」)を出していたりとか、The Beatlesの楽曲にもアジア系統のものがあったじゃないですか。そう考えたときに、日本のメロディはあんまり海外に進出していないなって。多分知られていないだけだと思うんですが。

佐々木 今まさに発見され始めているのかもしれないけど。

松隈 今は歌謡曲的なメロディのよさが改めて見直されてる時代だと思うので、ラッキーだなと思っていて。坂本龍一さんの「Merry Christmas Mr.Lawrence」(1983年5月発表)とか久石譲さんの作品みたいな、オリエンタルな楽曲が海外でも評価されるわけだから、J-POPもあんな感じで受け入れられるんじゃないかなと。

佐々木 日本の音楽って、古典芸能と現代のポップスの間にいろんな変遷があって、その中に歌謡曲もあったわけで。僕らの年代にも多いと思いますが、ある程度自覚的に音楽を好んで聴く人ほど洋楽を好む耳になっていく傾向がある。それ自体はもちろん悪いことではないんだけど、そこで見失われてしまったものを回復すべき時代が来ているように思うんです。それって松隈さんのように人を感動させるメロディを書ける作曲家が、1年間に200曲とか書いていく中で回帰してくるものなのかなって。やっぱり量的なことも重要だと思うんですよね。

松隈 そうやって曲を書き続けることで、先ほどお話ししたような“プロが作るメロディ”みたいなものが育っていくのかもしれないですね。

佐々木 坂本龍一さんの話が出ましたが、昔、坂本さんに話を伺ったとき、彼は「Merry Christmas Mr.Lawrence」とか「energy flow」(1995年5月発表)のような大ヒット曲のメロディを「ああいうのはすぐ書けちゃうんだよね」と言ったんです。メロディは苦労してひねり出すものじゃなくて、降りてくる。本当に重要なのはそれ以外の要素なんだ、とおっしゃっていたのがすごく印象的だったんです。松隈さんのお話を伺っていて、いい曲を書き続けられる人とは、自分の中に譲れない部分と譲れる部分があって、それらを独自のバランスで共存させる能力を持っている人なんだなと思いました。

松隈 確かに。その両方があるから曲を書き続けられているのかもしれませんね。

松隈ケンタ(Buzz72+)

1979年生まれの音楽プロデューサー / 音楽制作集団・スクランブルズの代表。地元福岡から自身がギターを担当するロックバンド・Buzz72+を率いて上京し、2005 年にavex traxよりメジャーデビューを果たす。2007年にバンドが事実上解散状態に突入して以降、楽曲提供やサウンドプロデューズの活動を開始。これまでにBiS、BiSH、EMPiRE、豆柴の大群らWACK所属グループや、中川翔子、柴咲コウ、Kis-My-Ft2らのサウンドプロデュースを担当しており、現在は2020年に再結成したBuzz72+のメンバーとしても活動しながら、日本経済大学の特命教授として同大学の福岡キャンパスで教鞭を執る。

佐々木敦

1964年生まれの作家 / 音楽レーベル・HEADZ主宰。文学、音楽、演劇、映画ほか、さまざまなジャンルについて批評活動を行う。「ニッポンの音楽」「未知との遭遇」「アートートロジー」「私は小説である」「この映画を視ているのは誰か?」など著書多数。2020年4月に創刊された文学ムック「ことばと」の編集長を務める。2020年3月に「新潮 2020年4月号」にて初の小説「半睡」を発表。同年8月に78編の批評文を収録した「批評王 終わりなき思考のレッスン」(工作舎)、11月に文芸誌「群像」での連載を書籍化した「それを小説と呼ぶ」(講談社)が刊行された。

南波一海

1978年生まれの音楽ライター。アイドル専門音楽レーベル・PENGUIN DISC主宰。近年はアイドルをはじめとするアーティストへのインタビューを多く行い、その数は年間100本を越える。タワーレコードのストリーミングメディア「タワレコTV」のアイドル紹介番組「南波一海のアイドル三十六房」でナビゲーターを務めるほか、さまざまなメディアで活躍している。「ハロー!プロジェクトの全曲から集めちゃいました! Vol.1 アイドル三十六房編」や「JAPAN IDOL FILE」シリーズなど、コンピレーションCDも監修。

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