JOYSOUND 音楽ニュース
powered by ナタリー
「JOYSOUND X1」公式サイト「ジョイオンプー」LINEスタンプ販売中

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第11回 岡山・YEBISU YA PRO

5年以上前2019年04月29日 9:01

全国のライブハウスの店長の話を通して、店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第11回は岡山YEBISU YA PRO代表の丹正功一氏に登場してもらった。店を始めるまでの経緯や、音楽の楽しみ方など聞いた。

アパレル店長からの転身

「僕は20歳の頃からアパレルの店長をやっていました。同時にDJとしても活動していて、クラブにレギュラーで入っていたりしていたんです。28歳のとき、アパレルのほうが行き詰まってやめることに。そこで『一生やりたい仕事は何だ?』と考えたらやっぱり音楽で食べていきたいと思って。とりあえず使い道は置いておいてですが、大きなスピーカーがどうしても欲しくて1年間お金を貯めて買ったんです。それを活用するために野外で音楽イベントを主催するようになりました」

お金に目が眩んで……(笑)

「今のビジネスパートナーであるキャプテン(池宗俊二氏)も地元では有名人でした。最初に2人で仕掛けた仕事は、大規模なレゲエの野外フェス『REGGAE Japansplash』を地元で開催すること。儲かるはずだったんですけど、思ったように集客ができず借金を抱えることになりました。チケットを売るために2人でレゲエのレコード店とかに営業をかけに行くんですけど、俺たちあまりレゲエに詳しくなくて、それがレゲエ好きの人たちにすぐバレちゃって(笑)。お金に目が眩んで、本当に好きなことで勝負しなかったのが原因でした。それからは何があっても自分たちの好きな音楽で勝負しようと、デトロイトハウスのDJ、ムーディーマンを呼んでイベントを開催したら、今度はたくさんの人が来てくれました。やっぱり自分が好きなことをやれば人に伝わるんだと。そのあと、FIASCOという今の会社を設立しました。“大失敗”という意味ですが、『ドンマイ! また最初から!』というかけ声としても使われるようで。まさに、失敗から始まった会社でしたから」

音楽好きが集まれる場所が欲しい

「やりたいことをやっていくためには、イベントだけでなく音楽好きが集まるコミュニティが必要だと思い、音楽ができる店を作ろうと思いました。それからは毎日岡山の町を歩いて、物件を探し回りました。そこで偶然にも以前、自分がレギュラーでDJをやっていたクラブの跡地が貸しに出ていたんですが、借りたくても先立つものが何もない。3つ仕事をしながら、銀行からやっとの思いでお金を借りてそこでライブハウスをオープンしました。とてもハードでしたが、絶対に店を出したいという強い気持ちがあったらからなんとかできたんでしょうね。数年はそこで店をしていたのですが、ビル全体が立ち退きになり現在の場所に移転しました」

憧れのアーティストをお店に呼べて

「お店をやる前からキャプテンと『普通ではない面白いことをやりたい』と話していて、トップDJである石野卓球さんお店に呼んだんです。卓球さんが岡山でやったのはそれが初めてでした。350枚の前売りチケットが完売してとても盛り上がり、それから卓球さんとの親交を深めていきました。お店を出すときにもいろいろ相談に乗ってもらいました。そのつながりでずっと目標だった、電気グルーヴをお店に呼ぶことができて。そのときは本当に感動しました」

こだわりは自分たちが好きだと思う音楽

「やっぱり自分が好きだと思うアーティストにやってもらうのが一番です。好きじゃなかったら失敗しますから。とはいえ、いいと思う音楽の幅はとても広いですよ。最近気になるアーティストは、中村佳穂とTempalay。ぜひ生で観てみたいですね。それとKID FRESINOくんは昨年うちに来てくれたんですが、彼のパフォーマンスは圧巻でした。あと、岡山を拠点にハウスシーンで活躍しているKEITA SANOも応援しています」

素晴らしい音楽と星空を

「ライブハウスの運営のほかにも、毎年秋に岡山の井原市美星町で『STARS ON』という野外フェスを主催しています。素晴らしい音楽と星空の下、夜空を見上げることを忘れかけている多くの人に何かを感じてもらえたらいいな、というコンセプトで開催しています。ZAZEN BOYSにはこのフェスに出てもらって、初めてライブを生で観てすごく好きになり、お店の周年ライブに出てもらうようになりました。『STARS ON』に出演してもらったアーティスト、関係者の方たちには本当によくしてもらっています。岡山出身のスチャダラパーのBOSEさんにいろいろアドバイスしてもらいイベントを改善していったりして。そのおかげもあり、イベントは昨年10周年を迎えることができました」

オススメのメニューは高級テキーラ

「一番のオススメメニューは高級テキーラの代名詞と呼ばれているポルフィディオというメキシコのお酒です。普通のテキーラよりも体に優しいお酒で、翌日に全然残らなくて、めちゃくちゃおいしい。飲み口はブランデーみたいです。最初は全然オーダーが入らなかったんですけど、ロバート・デ・ニーロが愛飲していたというところから、“デ・ニーロ”というメニュー名に変えたらすごく人気が出ました(笑)」

ライブはプロレス

「ライブは人を元気にしますよね。どんなに疲れていても、いいライブを観ると元気になる。アーティストはお客さんの熱を目の前にするとすごいパワーを出します。それをしっかりと受けてくれるお客さんがいるから、アーティストももっと熱くなる。その繰り返しで熱狂が生まれる。例えるならプロレスです。いい技をしっかりと受けてしっかり返す、ライブは観客があってのショー。これはライブだからできることなんです。動画を観たりCDを聴いたりするだけではわからないアーティストの魅力が絶対伝わるはずです。ここではとにかく楽しむ、これが一番。僕もいつもバーカウンターの中で踊ってますよ(笑)」

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

店舗情報

住所: 〒700-0903 岡山県岡山市北区中山下1-10-30 福武ジョリービルB2F
アクセス:JR岡山駅より徒歩15分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:あり
駐車場:なし
再入場の可否:公演により異なる
キャパシティ:450人
ドリンク代:600円
フリーWi-Fi:なし
貸切:あり

取材・文・撮影 / 松本紀子

関連記事

「中村佳穂 PIANO SOLO TOUR 2025」キービジュアル

中村佳穂、2年半ぶりホールツアーで5都市へ

1日
「FUJI ROCK FESTIVAL」の様子。

スペシャで「フジロック」特番、ライブダイジェスト&35組の独自コメントをオンエア

8日
電気グルーヴ

電気グルーヴが今年もロボット社会へ警告、なぜなら鬼日だから

10日
「liquidroom presents NEW YEAR PARTY 2025」第1弾アーティスト

LIQUIDROOM年越しに石野卓球、group_inou、パソコン音楽クラブ、砂原良徳

11日
Maika Loubté「art of mani mani(Live at WWW X)」配信ジャケット

Maika Loubté活動10周年記念、昨年のWWW Xワンマンが音源化

12日
「DOGEAR RECORDS 18th Anniversary Party at clubasia」ビジュアル

DOGEAR RECORDSのアニバーサリーパーティにMONJU、S-kaine、Sadajyo、KOJOEら

13日
「KID FRESINO elevate tour」ポスタービジュアル

KID FRESINOが神奈川と大阪でバンド編成ライブ

18日
左からリリー・フランキー、ハナレグミ、上白石萌歌。(写真提供:NHK)

NHK「The Covers」怒髪天、向井秀徳、中島美嘉の中森明菜カバーをオンエア

20日
MONO NO AWARE

MONO NO AWARE、東京&大阪開催「天下一舞踏会」でZAZEN BOYSとリベンジツーマン

21日
ビートに合わせて「ストレッチ・アームストロング」の腕をむんずと引っ張る向井秀徳(Vo, G)。(撮影:菊池茂夫)

ZAZEN BOYS初の日本武道館ワンマンは3時間20分で36曲、自己紹介は11回

28日