国に文化芸術復興基金の創設を求める活動「We Need Culture」の記者会見が本日5月22日に東京・衆議院第一議員会館 多目的ホールで行われた。
新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う政府からの自粛要請により、劇場、ライブハウス、クラブ、ミニシアターをはじめとする芸術、文化のあらゆる会場が存続困難な状況に陥っている。この苦境から文化を守るため、各業界の団体がジャンルを越えて連携し、2020年度第2次補正予算案の編成に取り組んでいる国に文化芸術復興基金の創設を求める要望書と署名を本日提出した。
記者会見には文化施設への助成金を求める「SaveOurSpace」よりスガナミユウ(LIVE HAUS)とロフトプロジェクト社長の加藤梅造氏、演劇緊急支援プロジェクトより渡辺えり、西川信廣、詩森ろば、福島明夫氏、「SAVE the CINEMA プロジェクト」より諏訪敦彦と北條誠人が登壇。まず、司会の馬奈木厳太郎弁護士が「個々の取り組みではなかなか十分な救済を得ることができない、文化の守り手である文化庁が十分な支援を行ってきていないという現状を踏まえ、ジャンルを越えて文化という括りで共に声を挙げていこうじゃないかということになりました」と、「We Need Culture」を合言葉に音楽、演劇、映画といった3つのジャンルが手を組んだ経緯を説明した。
続けて要望書を執筆した詩森が国会議員との折衝の結果を報告。国が創設を進めているという民間企業や個人からの寄付を原資とする復興基金では不十分だと指摘しつつ、「いろいろなことが少しずつ進んでいるという印象を持ちました」「30人以上の議員さんが来てくださいました。そして文化は必要であるという熱い演説をいただきました」と手応えを語った。さらに詩森は「日本は世界的に豊かな国ではあるんですけど、それを非常に小さな経済帯の文化人たちが支えているんです。自分たちの仕事が公共を担っているものだという自負が大きいと思います。文化は他者を理解する心や日頃知らない世界を知るための手段です」「瞬発力のある経済支援を急ぎ構築する必要があると思います。文化の蓄積はなくならないとわからない、非常に可視化しづらいもので、一朝一夕では作れないものなんです」と基調報告を続けた。
東京・下北沢のライブハウス / クラブ・LIVE HAUSの店長であるスガナミは、「『SaveOurSpace』では4日間で30万筆以上が集まり、加山雄三さんや坂本龍一さんなど、たくさんのアーティストの方にも賛同いただきました。それは皆さんがライブハウスやクラブで育ってきたからだと思っています」「私たちは1日1日公演を作り上げていて、“箱”の商売だけでなく、1つのクリエイションを行っていると思っています。ただの事業者というわけではなく、文化を作っている担い手だと思って三者の取り組みに参加させていただきました」とライブハウスおよびクラブの重要性をアピール。「うちの店では緊急事態宣言中に配信番組の収録を少しずつ行っているんですけど、大きな音で音楽を楽しめるって本当に最高だなと思ったんです。今までそれが毎日だったので、そういう感動を忘れていたんですよ。でもそこにお客さんがいないんですよ。何かが足りないんですよね」と語り、「3密と言われるたびに僕たちは首を絞められているみたいに苦しいんですよ。そもそもそういう文化だったんですよ。人が隣り合って音楽を聴くっていう。今までのすべてを否定されちゃっているような気がするんですよね。国がロードマップを示してくれたらそこに沿って考えていけるんですけど、僕たちはまだそこから外されている状態で。すでに潰れている店もたくさんあって、救えなかったところもたくさんあるので、国には文化が殺されない迅速な支援を求めたいです」と切実に訴えた。
また加藤氏は東京都が本日発表した休業要請の緩和ステップにライブハウスが含まれていないことについて、「ライブハウスやクラブの再開が難しいことは承知しております。感染防止のガイドラインを現在厚労省の皆さんと作成していて、どうやったら再開できるのかを考えております。ライブハウスは実際にクラスターが発生した場所ですし、映画や演劇よりも再開があとになるのではないかと感じています。この状況が続くほど閉店せざるを得ない店が増えてきて、現状の制度では救えないところが多いと思っています」と述べる。最後は渡辺が「私もミニシアター、ライブハウスで育てられて、演劇によって65歳まで生きることができました。なのでその恩返しをしたいと思っています。ここに集まっている人たちに儲けることを考えている人は1人もいないんですよね。みんな愛を与えたいと思って要請しているんです」「手を取り合ってみんなで支え合ってがんばっていきたいと思っています」と語り、会見を締めくくった。