フィッシュマンズが6月14日に東京・渋谷PARCO 9階のSUPER DOMMUNEで無観客ARライブ「INVISIBILITY」を行った。
この公演はポストパンデミック以降の世界をイメージするための実験的プログラム「み・え・な・い・も・の」初回の第2部として、DOMMUNEと渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトがタッグを組んで開催したもの。5月に渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトが立ち上げたプラットフォーム・バーチャル渋谷は仮想空間の中に渋谷の街を構築するというコンセプトだったが、今回はそのネクストレイヤーとして、リモートカメラを駆使して撮影した現実の空間にリアルタイムで仮想世界を重ねるという実験的な試みが行われた。
ライブには茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key)、木暮晋也(G)、dARTs(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)に加えて、エンジニアとしてZAKが参加した。第1部のトークセッションにも出演したZAKが「音楽は見えないもの、言葉にならないものです。それを今からやっていきます」と宣言し、「OK!」と応えた茂木が笑顔でリズムを刻み始めると、フィッシュマンズ活動初期のレゲエナンバー「チャンス」でライブはスタート。メンバーが息を合わせて合奏する中、配信画面には光を放つプリズムがゆらゆらと漂い、幻想的なムードが生み出される。このメンバーで披露するのは初だという軽快なナンバー「いなごが飛んでる」を2曲目に演奏したフィッシュマンズは、その後もデビューシングル曲「ひこうき」をはじめ初期のナンバーを中心に披露。「頼りない天使」では曲タイトルにちなんで天使の像が映し出される中、ボーカルの原田が心に沁み入るような歌声を響かせた。ライブ前半の締めくくりとして、バンドは1994年発売の4thアルバム「ORANGE」から、茂木曰く25年くらい演奏していないという「MY LIFE」とアグレッシブなサウンドの「MELODY」を続けてパフォーマンス。現場の熱気が視聴者にも伝わってくるようなエネルギッシュな演奏を繰り広げた。
「LONG SEASON」が流れる約10分の換気時間を経て、フィッシュマンズは静かなピアノ曲「救われる気持ち」でライブを再開。白い光の粒子が浮かび上がる中、HAKASEの伴奏に乗せて原田が柔らかい歌声を聴かせ、茂木が優しく歌う「IN THE FLIGHT」につなげた。浮遊感あふれる「土曜日の夜」に続けて披露された「I DUB FISH」では1996年に発売されたシングルのレコーディングにも参加したエンジニアの横尾實が登場し、英語詞を朗読するというサプライズも。茂木は初期曲が多く盛り込まれた今回のセットリストについて“すごく無邪気“と語り、亡き佐藤伸治の無邪気な姿を柏原と共に振り返る。和やかなムードの中、「もうちょっと初期の曲やってみましょうか。93年の大ヒットシングルを」という茂木の曲振りからバンドは「いかれたBaby」を演奏。ファンがチャットで沸き上がる中、続けざまに披露された後期の代表曲「ナイトクルージング」ではARにより花火が打ち上がり、ライブのクライマックスをさらに盛り上げた。そしてフィッシュマンズはこの日のラストナンバーとして「夜の想い」を演奏。ファンが余韻に浸る中、終演後の配信画面にはライブタイトルと共に「Dedicate to SHINJI SATO」(佐藤伸治に捧ぐ)というメッセージが表示された。
なおZAIKOでは明日6月17日10:00まで本公演のチケットを販売しており、同日23:59までアーカイブを視聴できる。
IAF & DOMMUNE Presents FISHMANS AR LIVE「INVISIBILITY」
2020年6月14日 SUPER DOMMUNE セットリスト
01. チャンス
02. いなごが飛んでる
03. ひこうき
04. なんてったの
05. Thank You
06. Just Thing
07. 頼りない天使
08. MY LIFE
09. MELODY
10. 救われる気持ち
11. IN THE FLIGHT
12. Future
13. 忘れちゃうひととき
14. 土曜日の夜
15. I DUB FISH
16. いかれたBaby
17. ナイトクルージング
18. 夜の想い