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大人の沼 ~私たちがハマるK-POP~ Vol. 3 とにかく大スターになってほしい!

左からMICA氏、土岐麻子。
4年以上前2020年09月10日 8:04

アーティスト土岐麻子が中心となり、さまざまな角度からK-POPの魅力を掘り下げていくこの連載。今回は連載初のゲストとして、土岐がプライベートでも親交の深い“K-POP沼”仲間の中から、東京・初台の輸入雑貨店「ひなぎく」の運営をはじめバイヤー、商品開発ディレクター、リサーチャーとして活動しつつ、NCT 127のジョンウとテヨンのサポートアカウントを運営するMICA氏にご登場いただいた。仕事と“オタ活”を両立し、行動力と情熱を持ってNCT 127を応援するMICA氏の“推し事”に迫る。

取材 / 土岐麻子 文 / 臼杵成晃 撮影 / 森好弘

運命を変えたNCT 127単独ツアー

土岐麻子 MICAさんに初めて会ったのは、去年の夏かな? MICAさんがお店で韓国のもの縛りのポップアップイベントをやっていて、友達に誘われて行ったんです。そのとき私はまだ沼の入り口で、BLACKPINKにハマったばかりの頃。K-POPが好きなこともまだあんまり人に話していなかったから、MICAさんがK-POPお好きだと聞いて、話しかけてみたんですよね。そしたらNCT 127についてものすごい熱量で教えてくれて(笑)。

MICA 私、あのときは土岐さんだって気付かなかったんですよ(笑)。アーティストとしての土岐さんの存在自体は知っていましたけど、共通の知人からの紹介のされ方が普通に「お友達です」みたいな感じだったから結びつかなくて(笑)。

土岐 いえ、私もただK-POPの話ができる人を探していただけなんで(笑)。とにかくNCT 127についてものすごい熱量と文字数で語られていて、なんかカッコいいなって。MICAさんのお店にはいろんな国の雑貨が並んでいるんですけど、NCT 127のワールドツアーに遠征しては、訪れた国で雑貨を買い付けているんです。

MICA ライブにはTwitterとかで知り合った人たちと現地集合、現地解散で行くんですけど、私は合間に雑貨の買い付けをしていて。買い付けは面白いからお友達も一緒に付いてきたりしますね。

土岐 MICAさんはもともと何がきっかけでK-POP沼にハマったんですか?

MICA 最初は5人時代の東方神起だったんですけど、ハマって半年くらいで分裂騒動が起きてしまって。私は脱退したジェジュンが好きだったから、そのまま離れたあとも活動を追ってたんですけど、私はSMエンタテインメントのステージが好きだったんだなと気付いたんです。そこからはジェジュンよりもSMエンタテインメントのほかのグループを追うようになって。特に推しはいなくて、SHINeeとかEXOとか、2人になった東方神起のライブを観てました。SHINeeやEXOに次いでデビューしたのがNCTなんですけど……NCTは説明が難しいんですよね。全部で21人いて(2020年9月現在)、NCT 127、NCT DREAM、WayVという内部グループがあるんです。

土岐 初めに聞いたときは全然わかりませんでした。

MICA さらにその中でNCT Uというユニットを組んだり、全員集まったり。ややこしいんですよ。「SMTOWN LIVE」という、SMエンタテインメントのアーティストが全員集まるライブには毎年行っていて。そこで彼らのことも観ていたんですけど、しばらくはメンバー個人を推すというよりは単に曲が好き、という感じでした。それが、2019年の2~3月にあったNCT 127初の単独ツアーで初めて彼らの完成されたステージを観て、すごくハマっちゃって。さらにその公演で2018年9月に追加加入したジョンウを初めて観て「なんだこの子は!!」と。その私が観たさいたまスーパーアリーナ公演が日本でのツアーファイナルだったから、また観ようと思ったら海外に行くしかなかったんですよ。そこで一気に火が点いて……バンクーバー、バンコク、サンクトペテルブルク、モスクワ、シンガポールに行って、みたいな(笑)。

土岐 すごすぎる(笑)。そのタイミングで雑貨を買い付け始めたんですか?

MICA 自分のお店を始めたのが、ちょうどそのたまアリに行く1週間前だったんです。もともとお店のコンセプトが「世界中からいろんなものを集めたお店」だったから、いろんな国を回って雑貨を買い付けよう……と思っていた矢先にNCT、特にイリチル(NCT内グループ・NCT 127の呼称)にハマって、じゃあもう一緒に回っちゃおうって。

土岐 すごい。最初はオタ活を仕事に結びつけようとは思ってなかったんですね。

MICA 全然。それまでも仕事で韓国とかベトナムとか台湾とか、いろんなところに買い付けには行ってたんですよ。NCT 127のツアーには今まで行ったことがなかったロシアもあると聞いて「ロシア? ちょっと面白そうだな。一石二鳥だな」みたいな(笑)。

深いK-POP沼の底にいる温かい人々

土岐 そもそも東方神起の前にはオタ活するほど何かにハマることはあったんですか?

MICA 全然なかったですね。昔はクラブばっかり行ってたから、テクノとかハウスミュージックしか聴いてなかったし、ライブも好きで観に行ったのは808 Stateとかテクノやハウスばかり。J-POPも全然聴かないし、全然オタクの要素はなくて。本当に突然。東方神起に興味を持ったのも、たまたまCMで聴いた曲が気になって調べてみたのがきっかけなんです。

土岐 ツアーで何公演も観たり、海外まで観に行くようなことも初めて?

MICA 東方神起は上海とかソウルでも観ましたけど、欧米まで追っかけたのはNCT 127が初めてですね。今まで真剣に推した人ってあまりいなくて、東方神起もハマる間もなく分裂しちゃったので……そのあとApeaceという日本を拠点に活動しているグループを4年くらい熱心に応援してたんですけど、そこからまた3、4年はオタ活してなかったんです。NCT 127にハマるまでは。ジョンウとテヨンが人生最後の推しだと思ってる(笑)。

土岐 すべてを懸けてる感じがしますよ。MICAさんのその情熱に心惹かれて……私はまだ沼に入りかけのときにMICAさんに出会ったので、MICAさんは私にK-POPの沼の深さ、奥深さを初めて感じさせてくれた方なんです。この連載の1回目と2回目では、私がK-POPアーティストの素晴らしさを語ってきましたけど、K-POP沼の大きな魅力の1つとして、ステージの向かい側にいるペン(韓国語でファンの意)の姿がすごく大きいと思うんですよ。MICAさんもそうですし、私が出会ってきた沼の底にいる人たちってみんな人間として奥深くて面白いんです。日本に入ってくる情報なんて限られてるのに、みんな記者みたいなんですよね(笑)。自分から韓国語を覚えて情報を収集したり。だから人それぞれに持っている情報が違ったり、その人なりのストーリーやロマンで情報がオリジナルなものになっていたりする(笑)。同じグループを同じ期間追っていても、ペンそれぞれに見方が違う。

MICA 全然違うよね。うん。

土岐 自分と推しが違う人と話すのも楽しいし、同じグループが好きな人ならいくらでも話が尽きなくて。「私はこう見てたけど、MICAさんはこう見るんだ」とか、もう学問のような(笑)。研究会みたいな感じなんですよね。同じ“好き”にも鉄道の撮り鉄、音鉄みたいに解釈がいろいろあるんですよ。あと、誠実さというか……韓国のアイドルって、ペンに向けてすごく誠実なことを言うじゃないですか。まるで恋人かのように。それに対して鏡のように、お客さんも誠実であろうとする。老若男女問わず誠実な人が多い印象で、K-POP沼に落ちてる人と話していると温かい気持ちになるんですよね。それは魅力の1つとして絶対に伝えておきたかったんです。

MICA うんうん。手土産文化とかね(笑)。ライブに行くと、みんなちっちゃい袋にお菓子を何十セットも用意して、お互いに配り合うんですよ。

土岐 MICAさん、今日も配る用のCDを人数分用意してるし(笑)。これはイベント参加券が目当てで複数買ったんですか?

MICA いや、これはただチャートを上げたくて買っただけなので、イベントには一度も参加してない(笑)。

土岐 新大久保でご飯を食べているときも、たまたま隣に座った若い人がセブチ(SEVENTEEN)ペンで、「お近付きの印に」ってセブチのCDをくれたんです。小さな袋に入れた可愛いお菓子の詰め合わせも。いきなりお菓子をくれるなんてこれまでは親戚のおばさんくらいしかいなかったから(笑)、なんだか懐かしい温かさもあって。

MICA 当たり前になっちゃってるから、何も持っていかないのも申し訳ない、みたいな(笑)。

行動力のあるヌナシズニが立ち上げたセンイル企画

土岐 MICAさんのように、大人のペンには仕事とオタ活を上手に両立している人も多くて。私の周りには実行力のある人がたくさんいる印象なんですよ。K-POP好きな部分を生かして新しい商品を開発したりとか。推す気持ちをプライベートじゃなく自分の仕事にも反映させる、ブルドーザーのように切り開いていく姿勢に勇気をもらえるんです。だからMICAさん、学生や20代のペンから人生相談されるんですよね。

MICA めちゃめちゃされます(笑)。就活の相談とか。

土岐 仕事もバリバリやって、好きなことを形にしていて、しかもオタ活を両立している……こういう大人になりたいなと思うんでしょうね。ペン同士のつながりはどうやって?

MICA イリチルにハマって専用のTwitterアカウントを作ったものの、最初はフォロワーもいなくて。それこそ中学生から大人まで、単にNCT 127が好きという共通項だけで気の合う人を探すのって難しいですよね。だから最初は「ヌナシズニの会」というアカウントで……。

土岐 ヌナシズニ?

MICA NCTのファンのことをシズニと呼ぶんですけど、ヌナはお姉さん。つまりメンバーより年上のペンを取りまとめるアカウントですね。プロフィールを書いて「ヌナシズニのお友達を探しています」と書くとそのアカウントがリツイートしてくれて、そうするとアラサー、アラフォーの人とつながりやすくなるんですよ。匿名性を保ってオタ活をやっている人もいるけど、私はあまり気にしていないから仕事のこととかも書いてたんです。そしたら類は友を呼ぶというか、同じように仕事をしながらオタ活をしているお友達が増えて。3月末にハマって、5月にバンクーバーに遠征に行く頃には仲間が4、5人できてた(笑)。自分で会社をやってる人、フリーランスのライター、海外に駐在している人……時間にも金銭的にも余裕のある大人の人が自然と集まって。自分の推しのサポートアカウントを運営している人がいたり、熱量がすごいんですよ。

土岐 サポートアカウントって主に何をするんですか?

MICA 私の場合はジョンウのほうは3人、テヨンは2人で運営していて、公に出ているジョンウやテヨンの国内外の情報を全部収集してリツイートしたり翻訳して出したりするのと、あとはセンイル……誕生日の企画をやったり。

土岐 そう! 今日はそのセンイル企画の話をどうしても詳しく聞きたかったんですよ。

MICA 韓国に行った人は見たことあると思いますけど、地下鉄やバス停にアイドルの誕生日を祝う大きい広告を出すんですよ。それを日本のファンから出すというのを企画してるんです。だいたい1口1000円とか1500円くらいで、中高生とかでも気軽に参加できるようにしていて、上限はいくらでもOK。何十人かでお金を出し合って、私が代表して韓国の広告代理店とやりとりをして出す場所を選んだり、データを入稿したり。で、参加してくれた人には何口出資したかによって内容を変えて特典をプレゼントしてるんです。

土岐 日本ではなかなか個人で広告を出せないですよね。

MICA 2月にジョンウの広告を出すとき、本当は日本で出したかったんですよ。JRの代理店にいくつか問い合わせてみたんですけど、個人広告はNGということで全部断られて。新宿のユニカビジョンはOKだったんだけど、あれは動画だからいろいろと大変で。ユニカビジョンは事務所の許可さえ取れたらOKで、前例もあるんです。でも結局日本で出すのはあきらめて、ジョンウの地元の金浦市にある金浦空港駅に出しました。ジョンウの家族に見てもらいたかったから。

土岐 すごい(笑)。権利のあり方が日本と韓国では違うんですよね。

MICA 肖像権については日本より韓国は相当ゆるくて、事務所側も宣伝効果が大きいので基本的には昔から黙認しています。著作権はマスターと呼ばれる、推しの写真を撮ることに命を懸けているファンが撮影したものは撮影者に権利があるので、公式写真よりもマスターに許可を得て広告に使用するケースが多いです。(編集部注:場合によって認識と対応は異なり、近年ではトラブルに発展しているケースもあります)

土岐 費用は募集した分で足りるんですか?

MICA 全然足りない(笑)。広告自体は日本よりも安いんだけど、特典を作るのは私の場合は自腹でやってるから。でも中国のファンダムに比べたら微々たる金額ですよ。中国は本当にすごい。広告に1億円くらいかけるアカウントもあるんですよ。

土岐 ええー!

MICA この前のテヨンのセンイルでは、大都市のビル38カ所を使ったプロジェクションマッピングもありました。電車や飛行機のラッピングとかもある。

土岐 すごいなあ。でもMICAさんがやっているような形は、自分が中高生の頃を思い出すと、お金って本当に自由にはならなかったし、データ入稿とか絶対にできるはずがないから、そういうことをやってくれるお姉さんの先輩がいるのはうれしいことですよね。自分の思いを代行してくれる人がいるというのは。

MICA 参加してくれた人たちから感謝のメッセージをもらったりすると、すごくうれしいですね。

男性K-POPアーティストならではの切実な「推しは推せるときに推そう」という気持ち

土岐 ほかにはどんなことをやってるんですか?

MICA マスターさんの個展が韓国で開催されるとき、会場で写真集やグッズが販売されるんですけど、それを購入しようと思うと、やっぱり韓国の口座に入金しなくちゃいけないし、やりとりも全部韓国語なんですよ。GO……グループオーダーの略なんですけど、そういったやりとりを取りまとめるアカウントがいくつも存在していて、例えば有名なマスターさんだったら10カ国くらいのファンを対象にオーダーを取りまとめているGOがあるんです。私もそれをときどきやっています。一旦私のところに全員分のオーダーを送ってもらって、私が一括して注文するっていう。

土岐 それ、もはや仕事ですよね(笑)。

MICA そうですね(笑)。でも1円も利益を取らずにやってるから、本当に好きでやってる感じですね。あとは誕生日のメッセージカードを集めたアルバムを事務所に送ったり。韓国語が書けない人もいるから、私のほうでメッセージを翻訳して、まとめてアルバムにして届けるんです。

土岐 それも無償でやってるんですよね。翻訳なんてお金を出してでもやってほしいことなのに。その原動力はなんなんですか?

MICA 私は特に見返りが欲しいわけではないし、自分が推しに認知されたいという気持ちも全然なくて。ただ単に、推しに大スターになってほしい(笑)。推しが成功していく道のりを共有しながら応援することが私の幸せなんです。K-POPの一番の世界的な成功者はBTSだと思いますが、BTSほどまでいけるかはわからないけど、次を狙っていける可能性があるのはNCTだと思っているから、そのための応援は惜しまない。本国では先輩のEXOが早い段階でブレイクしたけど、NCTはそれに比べるとまだまだで……NCTの曲を聴くとわかるんですけど、全然大衆受けする音楽じゃないんですよ(笑)。私はこの曲大好きなんですけど、デビュー曲も相当変な曲で。

土岐 めちゃくちゃカッコいいんですけどね。

MICA めちゃくちゃカッコいいんですけど、韓国のペンは中高生がほとんどだから、K-POPによくある、わかりやすい王道パターンのほうが好まれるんです。NCTは全然そういうのがなくて。だから初めての単独ツアーもデビューから2年半かかってるんですよ。途中から売れ線に方向転換するんじゃないかと思っていたけど、全然その気配がない(笑)。

土岐 いかにも今風な曲もあれば、スティーヴィー・ワンダーみたいなR&Bもあって。この間出たNCT 127のアルバム(3月6日発売の2ndフルアルバム「NCT#127 Neo Zone」)も聴きましたけど、すごくカッコいいんですよね。

MICA 社運賭けてるわりに攻めすぎでしょ、みたいな(笑)。でもそのアルバムでミリオン突破しました!

土岐 MICAさんのおっしゃった「単に大スターになってほしい」という気持ちはわかります。韓国の男性アーティストには兵役もあるし、グループ全員がそろって何年も活動を続けることができなかったりする。そんな中で、ファンとしての一番の願いというのが、なるべくいい状態で長く活動を続けてほしい、ということなんですよね。パフォーマンスを観るだけで幸せというか、とにかくいい歌といいダンスを届けてほしい。応援している人がここにもいるよ、と声を上げたくなる気持ちはすごくわかります。比べると日本はすごく平和だなと思う。

MICA うん、そこはすごく違うと思う。彼らには兵役があるから、活動にどうしても期限があるんですよ。NCT 127が今のメンバーで完全体として活動できるのはあと2年くらいなんです。韓国人、日本人、アメリカ人、カナダ人のメンバーがいるけど、2年後には最年長のテイルが兵役に入って、そこから韓国人メンバーは順に兵役に入るから……。SMエンタの先輩のSUPER JUNIORも、完全体に戻るまで10年かかってるんですよ。NCT 127も2年後からは誰かが欠けている状態がしばらく続くから、この2年のうちにある程度の地位まで行ってほしい。日本だとジャニーズのグループを2世代で応援していたり、息が長いじゃないですか。裁判を起こして解散したりとかもないし、すごく平和。最初にハマった東方神起でハマって1年も経たないうちに大変なことになっちゃうという経験をしているから、「推しは推せるときに推そう」という気持ちが切実にあるんです。

土岐 メンバー本人からも、そういう不安を抱えているような様子が垣間見えたりするんですよ。「歳を取っても応援してくれる?」とか「忘れないでね」とか、弱音を吐くときがあって。

MICA 日本のアイドルだと、そこまで切実な思いを口にすることはあまりないですよね。あくまで夢のある部分だけを見せるというか。最近はインスタライブやV LIVEでメンバーが家から配信するようなこともよくあって、プライベートな部分を晒しすぎでしょってぐらい見せてくれるんですよ。

土岐 ファンとの距離感が濃密で近いですよね。愛情表現もすごいし……サランヘヨ、愛してますよという言葉が日本の「愛してる」とは違うというか、照れずに言うから「あれっ? ひょっとして私って愛されてるのかも?」みたいな(笑)。演者がそこまで心を開いているから、ファンも熱心に応援するという、そういう関係性があるんだなってことを私はこの沼の中で学びました。私はバンドでデビューしたし、アイドル的な活動をしていないから、ファンと一定の距離を保っているのが当たり前だったけど、K-POPを追っているうちにいろいろ考えさせられることが多くて。もっとステージ上でもオープンマインドにしなくちゃなと思ったり、モバイルサイトももっとちゃんとやらなくちゃ、みたいな(笑)。相互関係は大事だなって思いました。

K-POPの進化するパッケージ文化

MICA K-POPを好きになってびっくりしたのが、毎回アルバムが豪華ですごいんですよね。しかも、すごくしっかりした写真集が付いてるのに2000円くらいだったりする。リパッケージ盤という文化もあって、数曲追加して同じアルバムのパッケージ違いが出たりもするんです。あと、キットアルバムというのもあって……(現物を取り出す)。こういうちっちゃいパッケージなんですけど、スマートフォンのアプリと連動していて、音源だけじゃなく歌詞や写真も入っていて、関連する公式のYouTube動画にも飛べるんです。

土岐 以前MICAさんにこのキットアルバムをいただいて、すごいプロモーションツールだなと思いました。総合的に楽しめるから、自分で探しに行かなくてもいろいろチェックできるんです。

MICA 元に出たアルバムがあって、リパケ盤があって、このキットも何形態かあって、さらにランダムでトレカも付いていて……めちゃめちゃ集め甲斐があるんですよ。そもそも買い支えたい気持ちはあるけど、これだけバリエーションがあるから買うのも楽しい。トレカを集める趣味なんてこれまでまったくなかったのに、必死で集めてる(笑)。海外公演はキャッシュカード型のライブチケットがあったりして、これも記念になるし保存もしやすいからすごくいいんですよね。

土岐 こんなに豪華なパッケージなのに、なんでそんなに安いんですか?

MICA 韓国は印刷のコストが日本より全然低いらしくて、安いけどクオリティは高いんですよ。あと、共同購入をするとさらに安く買えて……。

土岐 共同購入とは?

MICA ファンアカウント専用の共同購入イベントというのがあって、ある程度影響力のあるアカウントだったらやらせてもらえるんです。通販サイトからそのファンアカウント専用の共同購入ページで買うと20%オフくらいで買える。この間も「Beyond LIVE」というチャンネルでNCTのオンラインライブがあって、その写真集の共同購入イベントをやりました。そのときは私のアカウントから980冊売れたの。

土岐 すごーい!! そのアカウントを運営している人には何%か入るの?

MICA いや、まったくないの。

土岐 ないんだ(笑)。

MICA うん(笑)。私は単純にそのリンクを作れば自分も定価より安く買えるし、みんなも使えるからやってるだけなんだけど、中国のサポートアカウントが開催する共同購入イベントだと、このアカウントではどのくらい売れたとか、そこで張り合いたいみたいなのもあって。「このアカウントが一番影響力がある」「うちの推しが一番売れた」みたいな。

土岐 エリアプロモーターみたい(笑)。

“推し事”は行動力と努力が大事

土岐 若い子に進路相談されたときは、どんなふうに答えてるんですか? これから就職する人や、推し活に悩んでいる大人の人に対するアドバイスがあったら教えてほしいんです。

MICA 若い子から「韓国で仕事するのが夢なんですけど、どうやったらそういう仕事に就けるんですか」みたいなアバウトな相談を受けることがよくあるんですけど、そういう子に限って韓国語の勉強をしているわけではなかったりするんですよね。行動力のある人は、相談する前に自分で率先して勉強してるんですよ。最近知り合った大学生は、撮りオタとして推しを撮影して、カフェでカップホルダーイベントを開いたり……。

土岐 カップホルダーイベント?

MICA 推しの誕生日のときに、撮った推しの写真を使ったカップ用のスリーブを作って、カフェでイベントを開くんです。イベント期間に注文するともらえるっていう。カプホルイベントを頻繁にやってるカフェも新大久保や原宿とかにたくさんあって、イベントに合わせて店内に飾り付けをしたり。昨日も友達がやってたカプホルイベントの撤収を手伝ってきました(笑)。さっきの大学生の子は自分で撮った写真で、日本、韓国、シンガポール、インドネシアの4カ国でイベントをやったんですよ。同じ学生でもそのくらい行動力のある子もいるけど、やっぱり「お金がない」とか「学生だから」とかいう理由で努力する前にあきらめている子が大半なんですよね。厳しいことを言うと、「好きなことを仕事にするにはどうすればいいんですか?」と聞いてるうちはダメだなって(笑)。

土岐 なるほど。

MICA 10代でも行動力のある子はあるし、韓国で仕事したいと思ったらまずは韓国語の勉強をする。夢が漠然としていても、今できることをとにかくコツコツやるしかないし、その延長線上に自分の叶えたいものがあるはずだから。推しであるアイドルも同じで、どんな人だっていきなりそこにたどり着いたんじゃなくて何年もコツコツと努力を続けてそこにいるわけだから、そこに至る努力を怠っちゃいけない。

土岐 人と出会っていく、つながりの輪を作る行動力も大事ですよね。

MICA 私の場合はSNSに匿名性を求めてないし、面白そうだなと思った人には自分からガンガン話しかけていくんですよ。その大学生の子も何歳なのかわからないけど「発言が面白い子だな」と思って声をかけたんです。フォロワーも少なかったんだけど「この子絶対何かある!」と思って(笑)。それで仲良くなってみたら、実はフォロワーが何千人もいる別のアカウントを持ってた。仲良くなるのはそういう人が多いんです。

土岐 行動あるのみですね。好きな気持ちを隠さずオープンにして、どんどん人と出会って、好きなことに対してアクティブに動いていく。

MICA それの積み重ねでしかないですから。2014年から1年半くらい韓国で仕事していたんですけど、そのときもいろんな知り合いに「韓国で仕事したいから何かあったら教えて」って言いまくってたんです(笑)。そしたら向こうの大手セレクトショップから「今まで洋服だけを扱ってきたけど、ライフスタイルの要素を取り入れたお店に変えていきたいから協力してほしい」というお話をもらって。内に秘めてるだけだと周りに伝わらないから。

土岐 私も言い回っているうちにこの連載のお話をいただいたので(笑)。連載が始まってからも、あるK-POPアーティストのレーベル担当の方からメッセージをもらったり、今まであまり話したことのなかった知り合いから「実は私もK-POP沼に落ちていて……」と連絡がきたりして。K-POPがきっかけで知り合った人たちはみんな楽しそうなんですよね。

MICA とにかくスターになるまで見届ける、そのためにはどんな応援も惜しまない、みたいなムードがあるんですよね。

土岐 それは韓国の芸能界のシステムだったり、韓国人のフレンドリーな国民性もあると思うんですけど、ペンの力で苦難も乗り越えられるかもしれないという気持ちがあるからだと思うんですよね。楽しんでいるんだけど、メンバーを支えるのが仕事だみたいな(笑)。よく“推し事”って言いますけど、まさに仕事だよなあって。

MICA ぶっちゃけ、ハマりすぎて仕事にもちょっと支障をきたしてるんですけどね(笑)。

※9/11追記:記事内にある著作権や肖像権にまつわる認識と対応は場合によって異なり、近年ではトラブルに発展しているケースもあります。ナタリーが著作権および肖像権侵害を容認しているわけでは決してありません。

新沼のコーナー

こんにちは。土岐麻子です。私を新たにハマらせてくれるK-POP沼の情報を募集するこのコーナー。第2回目の新沼は、MICAさんから。もう1人の推しであるNCT 127のテヨン沼のご案内をいただきました。

「テヨンは見るからに完璧なリーダーでセンターでファッションアイコン、まさにNCTの顔なのですが、知れば知るほどその表現の才能や発する言葉、キャラクターのギャップに一時も目が離せなくなってしまいます」

ジョンウも犬顔だけどテヨンもまた違う犬種の犬顔だなあ。ちなみにMICAさんが飼い始めたワンちゃんの名前はヨヨちゃんだそう。テヨヨのヨヨ。チワワ。

「NCTのメインダンサーでラッパーのテヨンは、グループ活動のほかにも自作の曲や心の機微をそのまま表現したようなダンス動画も出しています。おしゃれすぎる私服も見逃せません!」

私の推し、ジュホン(MONSTA X)とテヨンのコラボステージを観たことがありますが、熱感のあるジュホンに対してクールなスタイルのパフォーマンスが印象的でした。

「その溢れる才能やセンスに毎度感動する一方、お菓子や動物やぬいぐるみが大好きでかまってちゃん、そしてちょっと人見知りで隠キャで潔癖症というギャップのデパートのような性格! それに加えて人一倍ファンやメンバー思い、誠実で謙虚すぎるNCTのリーダー、それがテヨンちゃんです」

ギャップ、大好物です! 足をからめとる沼の水分=ギャップと言っても過言ではないかと。

MICAさんのオススメ動画

「テヨンが作詞、作曲に参加したソロ曲」

「パリ公演の合間に撮影されたフリースタイルダンス」

「テヨンほかNCT(127、WayV)から4人と、SHINeeのテミン、EXOのベッキョン、カイで構成されているSMエンタテインメントのアベンジャーズグループSuperMの新曲。テヨンのパートをぜひ見てください!」

こんなクールな彼が、いったいどんなぬいぐるみを持ってるのかさっそく調べたくなってきました……。

MICAさん、ありがとうございました~!

このコーナーでは、私をこれから新しいK-POP沼にハマらせてくれる情報を引き続き募集します。こちらのフォームから、ぜひあなたの沼を熱くプレゼンしてください。

土岐麻子

1976年東京生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」をリリースし、ソロ活動をスタートさせた。2007年11月にアルバム「TALKIN'」でメジャーデビュー。ユニクロのCMソング「How Beautiful」や資生堂「エリクシール シュペリエル」CMソング「Gift ~あなたはマドンナ~」などで注目を集め、さまざまなアーティストとのコラボレーションでも評価を集めている。2019年10月にソロ通算10作目となるオリジナルフルアルバム「PASSION BLUE」を発表。2020年7月にテレビアニメ「『フルーツバスケット』2nd season」第2クールのオープニングテーマ「HOME」を配信リリースした。

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