見汐麻衣のバンドセット・Mai Mishio with Goodfellasが5月8日に7inchシングル「水曜日 Wednesday / 永い瞬間 Eternity As An Instant」をリリースする。
Mai Mishio with Goodfellasの新作リリースは、2019年11月発表の7inchアナログ「August mood / さようなら、さよなら If you say so,good bye」以来およそ2年半ぶり。7inchシングルには、見汐が仲間とともにスケートボードに夢中になっていた2010年の毎週水曜日の情景から生まれた「水曜日 Wednesday」と、この2年間の生活の中で言葉の落ち葉拾いを続け完成した「永い瞬間 Eternity As An Instant」の2曲が収められる。なおシングルのジャケットは3種類。夜が明けるまでの様子を坂本慎太郎がグラデーション状に描いたイラストが使用される。
またMai Mishio with Goodfellasは6月8日に東京・晴れたら空に豆まいてでライブを行う。
Mai Mishio with Goodfellas「水曜日 Wednesday / 永い瞬間 Eternity As An Instant」収録曲
SIDE A
01. 水曜日 Wednesday
SIDE B
01. 永い瞬間 Eternity As An Instant
Mai Mishio with Goodfellas ライブ
2022年6月8日(水)東京都 晴れたら空に豆まいて
見汐麻衣 セルフライナーノーツ
2020年の始まり。
未曾有の事態が訪れ決まっていたライブの殆どが中止になり、家から出ることも億劫で、自宅でアルバム制作に向け新曲を作ることに専念しようとDEMO音源を聴き直していたら2010年に完成していた「水曜日」という曲が出てきた。
この曲は当時結成していたバンド、埋火(うずみび)で作品にすることもなく、ソロライブで何度か披露していた曲で、現在のメンバーで演奏したならどういった感じになるだろうかと思い立ち、スタジオに入ることにした。
2010年当時、私はスケートボードに夢中で、毎週水曜日23時から明け方までの数時間、住宅街から離れた広場に出向き友人達と練習していた。
トリックには興味がなかった。ウィールをソフトに変え、ひたすらプッシュを繰り返す中で身体が火照り軽くなっていく感覚が好きだった。友人達の中で一番下手だった私は、みんなが水を得た魚の様に自由にすべっていく背中を最後尾から眺めること、鼻腔を広げ、深夜から明け方の時間帯にだけ漂う空気の匂いを目一杯嗅ぐこと、街が動き出す前の静閑な気配が支配する束の間全てが好きだった。
当時の光景は記憶となって頭の片隅に残り、それを曲にしたまま放っておいたのだが、アレンジが施されていく中で、記憶は眺めのいい風景へと変容していった。
記憶の中に残った光景から光を奪うことによって炙り出されたものが作品となり得ることもあるのだと知った。この曲はこれまでの作品と異なる感じにできないかと思い、ミックスの段階で細かい要望は極力出さず、エンジニアの方に全て任せることにした。後日、仕上がった音はオブスキュア感のあるミックスに仕上がっていた。
一聴したとき、みんなが水を得た魚の様に自由にすべっていく背中を最後尾から眺めていたこと、鼻腔を広げ、深夜から明け方の時間帯にだけ漂う空気の匂いを目一杯嗅いでいたこと、街が動き出す前の静閑な気配が支配する束の間が好きだったこと、それら全てを含む時間の〈層〉が曲の中で具現化されていた。曲自体にも記憶は宿るのかもしれないと思った。
2012年、ある雑誌で尊敬する音楽家と対談した際、その人が「歌詞を書くことは落ち穂拾いに似ている」と仰っていた。その言葉に心底共感していた。当時から歌いたいことなど何もなかったけれど、歌にしておきたいと考える物事は沢山あった。コロナ禍の日々を過ごしながら沢山のメロディが出来たものの、歌える言葉は見つからないままだった。落ち穂拾いを続けながら暗い言葉ばかりを無意識に選んでしまっていた2年間。これまでの時間とひとまずおさらばできそうな曲「永い瞬間」が完成した時、アルバムよりも先ずはこの2曲でシングルを出したいと思った。
生活の中で見聞きし、感じてきた物事や目にする光景が個人の中で眺めのいい風景に変わるまでいくばくの時間を要するのか、人それぞれだと思うけれど〈懐かしい〉という言葉に変換される手前で立ち往生する記憶や光景を、経てきた時間の〈層〉と共に音楽という風呂敷で包めたら……と考えながら、今回3年振りのシングルが完成しました。どうぞよしなに、ご贔屓に!