アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、湯浅政明監督が本日5月6日に東京・新宿バルト9で行われた劇場アニメーション作品「犬王」の先行上映会に登壇した。
5月28日に全国公開される「犬王」は、古川日出男の著書「平家物語 犬王の巻」を原作とした映画。南北朝から室町期にかけて活躍し、世阿弥と人気を二分した能楽師・犬王の実話をもとにしたミュージカルアニメーションで、室町時代の人々を熱狂させた犬王と、その“バディ”である琵琶法師・友魚の友情が描かれる。
犬王の声優を務めたアヴちゃんと友魚の声優を務めた森山は、ともに鮮やかなオレンジ色を基調とした衣装で観客の前へ。2人の衣装の色は打ち合わせなしに揃ったといい、アヴちゃんは「仲ええんやな」と言って森山と笑い合った。完成した作品を観ての感想をまず司会者に問われると、アヴちゃんは「私事の最たるものかもしれないけど、最後のクレジット、一番始めに自分の名前が出てきたときに『こんなことがあるんや』と泣いてしまいました」と明かす。声優としてアニメ映画で主演を務めることを「想像していませんでした!」と断言したアヴちゃんは、オファーがあった際の思いについて「声優2作目で主演かいって1分くらい悩んだけど、(森山)未來氏が『アヴちゃんがやるなら自分も出る』って言ってる、未來氏とダブル主演やでと聞いた瞬間、あ、大丈夫と思いました」と振り返り、森山はこれに「10年以上前に出会ってから付き合いがあって、いつかどこかで関われたらと思っていました。今回アニメーション作品で関われるということで、縁を感じて『ぜひ』という感じでしたね」と応じていた。
森山は、完成した作品について「能って世界で最古のミュージカルと言われているんですけど、『犬王』は歌え踊れが怒涛の勢いで押し寄せてくる作品。一番大事な言葉や思いが、すべて音楽と踊りの中にぶつけられているんです。すごい体験をしたなと思いましたね」と感想を語る。トークの話題が劇中の音楽に及ぶと、アヴちゃんは自身が担当した劇中歌の作詞について「室町時代に思いを馳せて歌詞を作るのは初めてだったので。“レペゼン室町”でどう作っていこうと思いましたけど、湯浅監督や(脚本の)野木(亜紀子)さんのメモを見て……2人が“点”で置いておいてくれていたものを私が咀嚼して歌詞にしていくという作業は、劇中で自分がやっている作業とオーバーラップしました。もともと書くのは速いけど、筆が止まらなかったです」と明かした。また、アヴちゃんは森山の歌のレコーディングでも活躍したといい、森山は「僕の歌はアヴちゃんに引っ張ってもらいました」と、アヴちゃんにディレクションしてもらっていたことを告白。この言葉に、アヴちゃんは「そう。『歌はケンカや。目ぇつぶるな!』って言ってね」と笑顔で応じる。そして、自身の歌入れについては「マイクがない時代の歌なので、もう喉をつぶすくらい。明日声が出なくなるくらいの勢いで、ひたすら歌っていました。それこそケンカを売るような感じで」と、並々ならぬ気迫で臨んでいたことを振り返った。
トークの終盤にはフリップボードを使った一問一答のコーナーも設けられ、登壇者は2つの質問に回答。まず「お互いの第一印象は?」という問いがアヴちゃんと森山に投げかけられると、アヴちゃんは「広大な砂漠」、森山は「物の怪」とお互いのことを評する。また、「自分にとっての日々の“バディ”は?」という問いに、アヴちゃんは「ステージ」と回答。その理由について「ステージは一番私を受け止めてくれる、一番息ができる場所」と思いを語っていた。
そして、最後の挨拶でアヴちゃんは「この映画に呼ばれたなという瞬間がたくさんありました。犬王を演じたことで、もう1人の自分を手に入れたような、不思議な気持ちに浸っております。この作品に呼んでいただけで、犬王をやれてよかった」とコメント。「ライブと違って遠征費も要らへんし、よければたくさん広めてもらって、いろんな人に見届けてもらえたらなって思います。私、応援上映やりたいって思ってるんです」と胸に抱く希望を語ると、客席からは大きな拍手が送られる。フォトセッションを終えたアヴちゃんはオフマイクで「楽しんで!」と客席に呼びかけ、劇場をあとにした。
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