PELICAN FANCLUBが昨日7月5日に東京・LIQUIDROOMで3人体制最後のワンマンライブ「PELICAN FANCLUB ONEMAN LIVE - F -」を開催した。
このライブをもってカミヤマリョウタツ(B)とシミズヒロフミ(Dr)がバンドを脱退。PELICAN FANCLUBは3人体制ラストライブで、結成から10年の間に紡いできた楽曲を新旧問わず披露した。
ステージに姿を現したPELICAN FANCLUBの3人は、向かい合って一斉に音を鳴らして「新世解」でライブを開始。彼らがダンサブルで心地のいいリズムを刻むと、オーディエンスも自然と体を揺らしていく。観客のクラップが響きわたった「Dali」を経て、エンドウアンリ(Vo, G)がステージの前方に出てギターをかき鳴らしてスタートしたのは「Telepath Telepath」。3人で楽しげに呼吸を合わせて音を奏でたあと、エンドウは「今日はメンバーがやりたい曲を新旧問わず集めてみました」と穏やかに述べた。その言葉の通り、彼らはバンドの歴史の中で生まれたさまざまな楽曲を投下していく。「Chilico」ではエンドウとカミヤマの歌声が幻想的な空気をまとって重なり合い、「アンナとバーネット」では2人から力強い歌声が思い切りよく放たれた。
「Karasuzoku」を歌い終えたエンドウは「今日は例えば7年前にPELICAN FANCLUBが好きだったとか、最近好きになったとか、いろんなPELICAN FANCLUB好きが集まってると思うんだけど、この空間においてはいつ好きになったかは関係ないわけで。今、目の前にいるのは紛うことなきPELICAN FANCLUB。君が通ってきた音楽、今も変わらないPELICAN FANCLUBであると今日伝えられたらいいなと思っています」とオーディエンスに挨拶。「儀式東京」や「俳句」といった最新アルバム「解放のヒント」の収録曲も披露し、気迫に満ちたパフォーマンスを繰り広げた。「許されない冗談」では衝動に身を任せるようなプレイとともにエンドウの熱いシャウトが響きわたる。狂気的な空気を漂わせながらバンドは「説明」を続けると、オーディエンスはその世界観に陶酔して思い思いに体を揺らした。
その後メンバーはどこか柔らかな空気をまといながら「ダダガー・ダンダント」「Luna Lunatic」をプレイ。「Who are you?」ではエネルギーに満ちた3人のみずみずしいサウンドに呼応するようにオーディエンスが一斉に手を高く掲げた。そして彼らは「ファ」でたゆたうようなアンサンブルを穏やかに奏でたあと、「to her」で飾り気のない温かなメロディを紡いでいく。エンドウは「まるで記憶旅行をしているみたいです。みんなもそうでしょ? 懐かしいだったり、この曲初めて聴くだったり、どれもPELICAN FANCLUBです」と目を輝かせて語った。
「夜が明けるまで、音楽で踊りましょう」とエンドウが告げると、バンドは「Night Diver」を演奏して場内を高揚感で満たす。そして「Day in Day out」「三原色」でフロアはますますヒートアップしていった。「ディザイア」を力強くプレイしたあと、エンドウは「2人が脱退を発表してから、想像していた以上に食らってしまってね。希望を見ているはずなんだけど、後ろ髪を引かれるような思いがあって。未練だよね。でも、強い未練が沸々と湧き上がってくるということは、バンド人生、それだけ素敵なメンバーとやってこれたんだなとうれしく思いました。こんなに強い未練があるなんてね。それに気付かされたんですよ。あの発表から」と脱退発表から今日までの心境を率直に話す。彼は「PELICAN FANCLUBが続いていく中で、PELICAN FANCLUBの愛というものを形にしたくて、7月5日までに何かできないかなってチームのスタッフと話したりしてたんですよ」と話を続け、「数カ月前に『解放のヒント』というメジャー1stアルバムをリリースしたんですけど、その制作期間にレコーディングはしたけど収録を見送った曲はあって。その曲にこのタイミングで出会ったんですよ、改めて。その曲っていうのは、なんだかすごく僕の中でビックバンのような輝きがあったんですよ。ものすごく輝いていて。このタイミングで自分の今の思い、未練とかをすべて歌詞にして詰め込んで形にしたいなと思って、2人に連絡したんですよ。実質、この3人で作った最後の曲として、このライブを観ている人に贈りたいなと思います」と述べた。ラストナンバーとして披露された新曲のタイトルは「ForTune」。エンドウは優しさを感じさせるメロディに乗せて、自身の胸の内にある未練も未来への決意もまっすぐに歌い上げた。
アンコールを求める拍手に呼ばれ、メンバーは再びステージに登場。シミズは「めちゃくちゃ楽しいです! こういうイベントを開催できて本当によかったと思います。今日は来てくれて本当にありがとう。この3人体制は今日までになるわけなんだけど、PELICAN FANCLUBはまだまだこの先もずっと続いていくので、これからも応援してくれたらうれしいです」と観客に呼びかけた。カミヤマは「今日もそうだけど、10年間本当にあっという間だったなと思います。めっちゃ寂しいけど、それ以上に僕は感謝の気持ちがすごく強くて。応援してくれる皆さんがいなければ10年間突っ走ることはできなかったなと思っています。今の僕があるのは皆さんのおかげです。PELICAN FANCLUBは終わらないし、僕自身も音楽は続けようと思っているので、またどこかで会いましょう。幸せな10年間でした、ありがとう!」と笑顔を見せる。エンドウは「たくさん感謝してます。皆さんがいるから、これをもっと大きい規模にしていきたいって、まだまだ旅の途中だって本気で思っています。楽曲も作っていますし、季節を越える前に何かしら新体制のライブをするので、まだまだPELICAN FANCLUBに付いて来てください」と未来に向けて語った。その後バンドは人と人のつながりを描いたナンバー「少女A」を演奏。そしてこれまでのライブでも幾度となく最後に演奏してきた大切なナンバー「記憶について」を届けてステージをあとにした。
メンバーがステージを去ったあとも拍手は鳴りやまない。オーディエンスの拍手に応えて、3人は再びステージに姿を現した。エンドウは「名残惜しいです」と本音をこぼすも、「これまでの曲もまた違った形で演奏していくので、未来でまた会いましょう」とオーディエンスに告げた。メンバーが向かい合って演奏し始めたは「1992」。1音1音大切にじっくりと奏でられる3人の音が重なり合い、唯一無二の美しいアンサンブルが場内いっぱいに広がる。最後の1音を鳴らし終えたあと、3人は笑顔で肩を組んでおじぎをしてライブの幕を閉じた。
このライブの映像は7月12日23:59までアーカイブ配信されている。配信の詳細はバンドのオフィシャルサイトで確認を。
PELICAN FANCLUB「PELICAN FANCLUB ONEMAN LIVE - F -」2022年7月5日 LIQUIDROOM セットリスト
01. 新世解
02. Dali
03. Telepath Telepath
04. Chilico
05. アンナとバーネット
06. Karasuzoku
07. 儀式東京
08. 俳句
09. 許されない冗談
10. 説明
11. ダダガー・ダンダント
12. Luna Lunatic
13. Who are you?
14. ファ
15. to her
16. Night Diver
17. Day in Day out
18. 三原色
19. ディザイア
20. ForTune
<アンコール>
21. 少女A
22. 記憶について
<ダブルアンコール>
23. 1992