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還暦になっても“未完成”の藤井フミヤ、「歌えるところまで歌います」と誓った誕生日の夜

藤井フミヤ(撮影:三浦憲治 / チームライトサム)
2年以上前2022年07月14日 11:04

藤井フミヤが60歳の誕生日を迎えた7月11日に、東京・日本武道館にてバースデーライブ「RED PARTY」を開催した。

1962年に福岡で生まれ、1983年にチェッカーズでデビューして以降、約40年にわたって第一線で活躍し続けているフミヤ。彼のホームとも言える武道館を舞台に行われた還暦を祝うライブには1万4000人が集まり、その模様はWOWOWや配信プラットフォーム・neo bridgeでも生中継され、多くのファンがさまざまな形で記念すべき1日を祝福した。

ライブタイトルの「RED PARTY」、そして還暦を祝う色である“赤”にちなんだファッションやグッズに身を包んだオーディエンスが客席を埋め尽くす中で始まったこの日の公演。暗転と同時にアリーナエリアをクロスするように組まれたLEDパネルを敷き詰めたセンターステージに、大島賢治(Dr)、山田“Anthony”サトシ(B)、沢頭たかし(G)、大島俊一(Key)がスタンバイする。煌びやかな映像が投影される床の中央からフミヤがせりあがりで現れると、ドラマチックな登場スタイルに客席から思わず歓声が漏れた。ゆっくりと姿を見せたフミヤのファッションは、差し色に黒を取り入れた艶やかな真紅のスーツ。足元まで還暦にふさわしく赤でキメたその姿に、武道館中が沸き立った。万雷の拍手を浴びたフミヤが歌い出したのは、ソロデビュー曲であり、ミリオンヒットを記録した「TRUE LOVE」の“Re Take Ver.”。ダンサブルなアレンジを施した代表曲をオープニングでパフォーマンスしてパーティの始まりを華やかに飾った。

「MY STAR」「SWEET GARDEN」というポップチューン2曲を披露したところで、フミヤは「ようこそ。ご存じかと思いますが私、今日が誕生日で60歳。還暦ということで皆さんも赤を着てきていただいて、まるで大きなチゲ鍋の中で歌っているような。そして真ん中で歌っている私もカズレーザーみたいで」とユーモアを交えて挨拶。「還暦になってこれだけの人に祝ってもらって、人生は何が起きるかわからない。今日は初老の老体に鞭を打って歌いますので、皆様私を応援しつつ、最後まで楽しんで帰ってください」と呼びかけ、筒美京平が作曲した1995年リリースのラブソング「タイムマシーン」を軽やかなステップを踏みつつ、伸び伸びと歌い上げた。さらに、ファンと一緒に同じ振り付けを楽しむ「GIRIGIRIナイト」をチェスボードを思わせる映像の上で軽快に歌い、「I・N・G」ではハイキックを決めつつ、100回以上にわたって立ってきた武道館のステージをなめらかな足取りで移動する。その現役感たっぷりの脂が乗ったパフォーマンスにオーディエンスは大いに熱狂した。

「短いような、長いような……ここまで来たらあっという間だったという感じがします。年齢とともに時のスピードが加速しているような気がします」「未来より過去が長くなった。過去に起きたいろんなことのほうが長い年齢になっています」と自身の人生を振り返ったフミヤは、赤一色で染まった客席を見渡し「今というのはあってないようなものですが、さすがに皆さんと武道館にいられることは流石に私の人生の記憶に残ると思います」と笑う。そして、「私が還暦ということは皆さんもそれなりに年齢がいっているということなので……」と観客に座るように促し、「わらの犬」や「水色と空色」など歌手としての真髄を発揮するバラードやミディアムチューンを惜しみなく届ける。さらに「TRUE LOVE」に次ぐ代表曲として知られる「Another Orion」を、時折目を閉じ、観客1人ひとりに語りかけるように歌唱。星空を思わせる映像や照明を交えながら、深みのある声で武道館を優しく包み込んでいった。

「DO NOT」の穏やかな余韻が残る中、フミヤと入れ替わるように青いチェック柄のスーツを着た弟の藤井尚之(Sax, G)がステージへ。何度もフミヤと武道館に立ってきた彼が奏でたのは、約30年前のチェッカーズの解散コンサートの冒頭で披露されたインストゥルメンタルナンバー「FINAL LAP」だ。フミヤ同様に、リラックスした調子でバンドメンバーとアイコンタクトを取りながら自身が作曲した1曲を披露した尚之。一瞬の暗転ののち、今度はフミヤが赤いチェック柄のスーツに身を包み現れる。「ワン、ツー、スリー!」というカウントで始まったのは、昭和を代表する1曲としても名高い「ギザギザハートの子守唄」。さらに尚之が吹く哀愁たっぷりのサックスの音色が炸裂する「ジュリアに傷心」と続き、武道館はたちまち1980年代にタイムスリップした。

特別な夜にふさわしい懐かしい楽曲を歌い終えたフミヤは、12歳のときに始まったバンド人生を回顧。「あんなスーパーアイドルになるとは思わなかったけど」と一世を風靡したチェッカーズについて言及しつつ、「解散したのがこの武道館。30年前です。みんな……大人になったね」と笑い、アイドルとしての絶頂期に発表した「あの娘とスキャンダル」と「星屑のステージ」を尚之と息ぴったりのセッションを繰り広げながらパフォーマンスした。チェッカーズの楽曲で構成したブロックの最後を飾ったのは、ウエディングソングとしても愛されている「夜明けのブレス」。大島俊一のダイナミックなピアノの調べに乗せて、フミヤは「君のことを守りたい その全てを守りたい 君を生きる証にしよう 誰のためでもなく」とつづった1曲をみずみずしい声で届けた。タイムマシンで過去に戻ったかのようなブロックを経て、フミヤは武道館での思い出を語り始める。かつてカウントダウンライブを行なっていたことについて触れつつ、当時披露していた曲を歌唱することを予告。その言葉通り、ラストブロックでは「WE ARE ミーハー」を筆頭にBPMもテンションも高いパーティチューンがノンストップで続く流れに。本編のラストナンバー「恋の気圧」では、フミヤの盟友であるスティーヴエトウが巨大な銀色のフラッグを手に縦横無尽にステージを駆け回り、華やかで祝祭的な空気を引き立てた。

「人生っていうのはどうなるかわからないですね。60歳、武道館の真ん中で歌ってますからね」とアンコールの序盤で語ったフミヤ。「みんなが一番好きな曲をやります」と口にした彼は、ライブの定番曲であり、ファンのリクエストでも1位に選ばれた「ALIVE」を力強く歌い上げた。時代ごとに異なる意味合いを持つメッセージソングを届けたあと、彼は「古希のときもパーティやります。座って歌うかもですが(笑)、歌えるところまで歌います」と宣言し、歌手としてのスタンスを改めて表明する。そんな言葉から始まったのは、盟友との絆を歌った「友よ」。彼が歌っている最中にヒロミと木梨憲武という親友2人がステージに姿を見せ、フミヤと歌声を重ねる。ヒロミが持ち込んだプレゼントのゴルフセットをフミヤが確認する間、木梨がリードボーカルを務めるというひと幕もありつつ、曲が終わると今度はサプライズゲストとして赤いちゃんちゃんこを抱えた水谷豊が登場。フミヤは水谷が持ってきたちゃんちゃんこを着用すると、運び込まれた巨大なケーキに灯るロウソクの火を吹き消してみせた。水谷、ヒロミ、木梨の3人を送り出したあと、フミヤは「笑いすぎて鼻水出た。これ着て歌うのかよ……」とちゃんちゃんこ姿のまま「紙飛行機」を歌唱。サビではステージに向かって赤い紙飛行機が一気に飛ばされ、一瞬ではあったがコロナ禍前さながらのにぎやかな光景が武道館に広がった。

「自分の人生は本当にずっと皆さんとともにありました。まだまだ求めていく、未完成な藤井フミヤだと思うので。でも、未完成なまま死んでいきたい……それは夢を追っていたということだから」と口にしたフミヤは、「また、一緒に遊ぼうぜ」とファンに再会を誓う。一瞬天を仰いだ彼が歌い出したのは、「360度の笑顔に 両手を広げたいから」と全方位をファンに囲まれたシチュエーションにふさわしい最新曲「未完成タワー」。曲のラストでフミヤは客席を抱き締めるように腕を大きく広げ、名残惜しそうに“ホーム”である武道館のステージをあとにした。

藤井フミヤ「RED PARTY」2022年7月11日 日本武道館公演セットリスト

01. TRUE LOVE
02. MY STAR
03. SWEET GARDEN
04. タイムマシーン
05. GIRIGIRIナイト
06. I・N・G
07. わらの犬
08. 水色と空色
09. Another Orion
10. DO NOT
11. FINAL LAP
12. ギザギザハートの子守唄
13. ジュリアに傷心
14. あの娘とスキャンダル
15. 星屑のステージ
16. 夜明けのブレス
17. WE ARE ミーハー
18. Stay with me.
19. UPSIDE DOWN
20. 恋の気圧
<アンコール>
21. ALIVE
22. 友よ
23. 紙飛行機
24. 未完成タワー

※記事初出時、本文に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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