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パンチライン・オブ・ザ・イヤー2022 (前編) “Watson系”の増加、夢を与えるAwich、レイヴカルチャーとの融合……2022年の日本語ラップシーンを振り返る

題字 / SITE(Ghetto Hollywood)
9か月前2023年05月27日 12:06

ラッパーたちがマイクを通して日々放ち続ける、リスナーの心をわしづかみする言葉の数々。その中でも特に強烈な印象を残すリリックは一般的に“パンチライン“と呼ばれている。

音楽ナタリーでは「昨年もっともパンチラインだったリリックは何か?」を語り合う企画「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」を今年も実施。2022年に音源やミュージックビデオが発表された日本語ラップを対象に、有識者がそれぞれの見地からあらかじめ選んできたパンチラインについて語り合う座談会を行った。

今回選者として参加したのは、前回と同じく二木信、渡辺志保、YYK、MINORIの4名。昨年一気にブレイクしたWatsonをはじめとして、シーンの最前線で活躍するラッパーたちの魅力を“パンチライン“という観点から語り合い、2022年の日本語ラップシーンを振り返った。

取材・文 / 三浦良純 題字 / SITE(Ghetto Hollywood)

一気にブレイクしたWatsonの魅力

渡辺志保 去年大きな話題を呼んだWatsonは、今年さらなるブレイクが期待されそうですよね。

YYK 去年は話題にしている層がまだコアだったけど、今年に入ったくらいからライトな層にまで届き始めている感覚がありますね。

二木信 Watsonはどの曲で人気が決定的になったんですか?

YYK 今回僕が「ジャンケンいっつも負けないチョキ / なのに財布からなってる遊び」というラインを選んだ「ASOBI Remix」だと思います。「ASOBI」のオリジナルバージョンは、CandeeとPlaysson(現:Pedro the GodSon)をフィーチャーしたヒット曲で、そのリミックスコンテストで選ばれて正式リリースされたのが、Watsonの「ASOBI Remix」です。最初から最後まで言葉遊びをガッチリ詰めている曲で、こういう感じのラップがこれからどんどん増えていくんだろうなって思ったら、実際フォロワーが増えてきていて。時代を作る曲になっているし、Watsonを今の勢いにした曲だと思いますね。YouTubeチャンネルの03- Performanceにアップされているパフォーマンス動画で、最初にWatsonがDopeOnigiriをドンと押すところも、TikTokで真似するのが流行って。

YYK Twitterで個人的にWatsonのパンチラインで人気投票のアンケートを取ったら、Watson自身がそれを拡散してくれて、最終的に1000人以上の回答が集まったんですけど、「ジャンケンいっつも負けないチョキ / なのに財布からなってる遊び」は3位でした。

二木 人気が実証されていると。

YYK そうですね。このラインは、なんでいつもチョキなのかというところも話題になったんですけど、KOHHが「正直に」という曲で「俺はチョキばっかのじゃんけん / 勝ったり負けたりするけどハッタリなんかしない」とラップしているんですよね。Watsonは去年出したEP「Spill the Beans」の1曲目「Kick It」でも「チョキばっかのジャンケン / KOHHとすればずっとアイコ」と言っていて、自分が影響を受けたKOHHと同じチョキを出すことにこだわっているんです。それで、続く「なのに財布からなってる遊び」は、勝った人がお金を払う遊びで勝って、財布が空になっているということなのかなと。

二木 ギャンブル?

YYK いや、勝った人が負けた人に奢る「漢気じゃんけん」ってあるじゃないですか。BAD HOPのYZERRもAwichの「GILA GILA」で「ルイ・ロデレールの古酒シャンパン / 会計漢気またじゃんけん」とラップしてますよね。その漢気じゃんけんで勝って財布が空になっているんだと自分は解釈しました。

二木 なるほど。WatsonはMINORIさんも選んでいますよね。

MINORI 私は「Spill the Beans」の収録曲「OTAKARA」から「どうしようもない俺みたいな奴でも / 人生かきだしゃお宝の山」っていう、いかにもWatsonらしいラインを選びました。Watsonってカッコつけずに、自分が考えていることや生活の実情をそのまま言う感じがいいんですよね。この「OTAKARA」という曲は、お金に困らないようにはなってきたけど札束にはまだ遠いってことを正直に歌ってる曲なんですけど、順を追ってWatsonの曲を聴いていくと、ちょっとずつ生活がよくなっているのがわかる(笑)。

YYK 実際にもう全然違うと思うんですよ。そこがハッキリ出ている曲で、この曲もパンチラインの宝庫ですよね。

MINORI 「大切に使わなくなった100円」とか「ご太いchainつけたい / けど今細いのがお似合い」とか、金銭感覚が近くて共感できますね(笑)。

YYK 微妙に庶民的なところが見えてきますよね。「non scale」の「止まらなかったお陰で止めれる様になったタクシー」というラインもわかりやすくていい。

MINORI Watsonは「reoccurring dream」の「巻いてるcannabis」も選びたかったんですよね。

YYK Watsonが最初にヒットしたのは、「ASOBI Remix」の前にYouTubeチャンネルの03- Performanceで披露された「reoccurring dream」なんですよね。「巻いてるcannabis」はTikTokでも流行って、僕が集計した人気投票のアンケートでは圧倒的に1位でした。

渡辺 このラインが公園に落書きされていたことがテレビでニュースにもなっていたし、TikTokではギャルがみんなこの曲で踊って(笑)。

二木 「巻いてるcannabis」と言えば、昨年10月に開催されたヒップホップフェス「THE HOPE」では、ジャパニーズマゲニーズの「最後の一本」の盛り上がり方が凄かったですね。あれは発見でした。ただ、あの曲はもちろんマリファナ賛歌ですけど、フックはメロディアスな歌で曲調もポップですし、そのフックのリリックは汎用性があるからバズるのも理解できるんです。ところが、「巻いてるcannabis」はほかのものが代入不可能じゃないですか。それがTikTokでバズるとは時代は変わりましたね。

YYK 下ネタが入ってる曲でも普通に女の子が使っているし、みんなあんまり歌詞の内容は気にしてないんですよね。英語の場合は特に。ギャルならまだしも、普通の女の子や子供がこういう曲で踊ってるのはどうなんだろうと思いますけど(笑)。

MINORI 教育によくない(笑)。

二木 とはいえ第1回の「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」の大賞は舐達麻の「たかだか大麻 ガタガタぬかすな」でしたからね。

渡辺 大麻についての建設的な議論が深まるきっかけになればいいのに、と思いますね。実際に、国外ではどんどん許可されているわけじゃないですか。

YYK 若い世代はそこまで大麻がヤバいものだと思ってないかもしれないですね。

二木 それは国家や警察にとっては脅威ですね。

YYK そうですね(笑)。入れ墨とかもそうですけど、どんどん意識が変わっていて、若者にとっての普通の感覚が今どうなってるのかわからない部分はあります。Watsonのパンチラインでは「Hood Star」の「路地裏でパフパス / 俺のばーちゃんのエビフライはサクサク」も選ぼうか迷ったんですよ。不良感のある前半とかわいい後半のギャップがいい。韻踏合組合のエローンもこのラインをツイートしていましたけど、やっぱり関西寄りの人はこういうギャグっぽいラップが好きですよね。Watsonってあんまりニヒルな感じじゃなくて、温かみがあって、女の子に対しても思いやりが感じられるんです。

MINORI 俺様な感じじゃないですよね。

YYK 女の子と遊ばないし、お金も使わないで制作に充てるということも言っていて。「Hood Star」もわかりやすく「俺はスター」みたいにアピールする曲かと思ったら、遊ぶのはやること全部やってからって曲で、歌い出しが「間に合わせる納期」なんですよ(笑)。そういう、仕事第一で真面目な性格だから成功しているのかなって思います。

KOHHの次の世代としての“Watson系”

YYK 今回僕が選んだパンチラインは“Watson系“ばっかなんですよね(笑)。

二木 すでにそういう概念が生まれていると(笑)。

MINORI Young Zettonとか、03- Performanceに出てる人が多いですよね。

YYK そうそう。Young ZettonがWatsonとコラボした「本音」がすごく好きで、その中から「あの子大好きcoco / だけど切れ目で寒い外 / またもあいつが誘惑するけど俺は一線引けてるとこ」というラインを選びました。Watsonの魅力の1つとして「悪いことがカッコいい」という価値観を覆そうとしている感じがあって、Young ZettonもPedro the GodSon も、Watsonのそういうところが好きでWatsonとつるんでるんだと思うんですよね。「本音」も贖罪感のある曲で、「ドラッグとかいろいろ悪いことはやったけど、今はもうやらないよ」という感じのことを歌っている。

渡辺 「あの子大好きcocoだけど切れ目で」の「coco」はコカインとシャネルをかけたクレバーなラインですよね。

YYK Young Zettonはそういう言葉遊びの面でもWatsonの影響をめちゃめちゃ受けてるんですけど、Watsonみたいな笑いの方向じゃなくて、よりサグな方向なんですよね。「NEW REAL」という曲でも「悪さをすることが別にリアルじゃない」とラップしていて、Watsonの登場で価値観まで変わってきているのを感じますね。

MINORI そっちのほうがカッコいいんじゃないかって思えてきますよね。

YYK 大阪の若手18stopもWatsonからの影響を感じるラッパーでありつつ、Watsonよりさらにソフトで青春っぽさすらある人で。「7ice cool」という曲から「忘れてった甘い匂いシュシュ / 似てる気するあの子と同じ感じのチュー」というラインを選んだんですけど、「チュー」って言うラッパーがまずいなかったじゃないですか(笑)。

渡辺 キスはあるけどチューはないかも(笑)。

MINORI かわいい(笑)。

YYK 「NAGAI」ってタイトルの曲があるんですけど、それも彼女にチューが長いって言われるという曲で(笑)。19歳の若い価値観で、そういうことを普通に言っちゃう感じが甘酸っぱい。

二木 それをラップで表現しているのが新鮮ですよね。

YYK 「俺のベイビー」みたいなキザな感じになりがちですよね(笑)。そういうカッコつけがなくて、日常生活を全部出すみたいなWatson系のラップをしている子が増えてきていて、18stopはその代表の1人ですね。

二木 女性との恋愛やアバンチュールを題材にしてたくさん曲を書いてきたラッパーと言えば、KOHHですよね。例えば「I Think I'm Falling」や「John and Yoko」とか。

YYK さっきジャンケンの話をした通り、WatsonはKOHHからめちゃめちゃ影響を受けてますからね。

渡辺 KOHHを聴いてラップを始めた子が去年くらいから出てきている感じがしますね。

二木 KOHHは1990年生まれで今年33歳ですね。

渡辺 そう。KOHHが世に出るきっかけとなったのが、2012年に発表された「WE GOOD」というMonyHorseとのビートジャック曲なんですけど、そこからまるっと10年が経って、Watsonをはじめとする若手が出てきていると考えると、ちょうど10年でひと区切りみたいな感じがしますね。

ふざけたことをストイックにラップするヤバさ

二木 「巻いてるcannabis」の話の流れで僕が選んだパンチラインを1つ挙げますと、JNKMN「一方通行(feat. SQUASH SQUAD)」の「悩んだらとりま韻を踏む / やっぱりweedを吸う / おまけにもう一本吸う / パクられたら刑執行中」ですね。最後を意外性のあるジョークで締めるのが素晴らしいですし、しかもリリック通り韻を踏んでいるし、切実さもある。

YYK JNKMNはずっとガンジャネタでラップしていて筋が通ってますよね。

二木 Watsonもそうですけど、JNKMNのちょっとふざけたりギャグや面白いことを言ったりするために本気を出してストイックにやっている感じが僕は好きなんですよね。

YYK  JNKMNは作品を定期的にしっかり出すから真面目だし、ちゃんとしてるんだなって思いますね。ちゃんとしてない人って出せないんですよ。イメージ的にはJNKMNはちゃんとしてないし、本人的にもちゃんとしてないって言いたいかもしれないですけど(笑)。

二木 たしかに本人はストイックとは言われたくないかも(笑)。リリース量が多いと言えば、MINORIさんが選んだCHOUJIも精力的ですよね。

YYK  CHOUJIもめちゃめちゃ作品を出してますし、熱いラッパーですよね。

渡辺 MILES WORDとのユニット・CMWとして出したアルバム「俺成」もよかった。

MINORI 自分を奮い立たせる感じのリリックがたまらないですよね。私がCHOUJI とOlive Oilのコラボ曲「kamasereba」から選んだ「好きなだけじゃ足りない / やる気だけじゃダメだ 条件は一つ / 勝負は自分 / 俺もそう君もそう仲間も / 要はかませれば」というヴァースは、ずっと続けているCHOUJIだからこそ説得力あるなって。

渡辺 エネルギーが尽きないのがすごいですよね。

MINORI この「kamasereba」という曲は「お気に入りのchampionのボクサーパンツ / 履いてボクは勝つ」とか、ほかにもパンチラインが多くて。

YYK  CHOUJIはメロディもカッコいいんですよね。

MINORI フックの「かませれば」で急に拳が入った歌い方をしていて上手ですね。

YYK 僕の中ではCHOUJIはインディペンデントの代表格みたいな存在で、自分で全部やっていくんだという意識を強く感じるんですよ。

渡辺 ずっと沖縄にいてね。

YYK そうそう。メジャーとか流行るとかをそんなに考えてなくて、かといってアンダーグラウンドな感じでもなくて。

MINORI ちゃんと全国でライブもしてますしね。

レイヴカルチャーと接近するゆるふわギャング

二木 定期的にリリースしているという点では、JNKMNとも親交の深いゆるふわギャングもそうですよね。

MINORI ゆるふわギャングもめっちゃストイックで、ちゃんとRecするし、完璧主義で突き詰めているんですよね。ゆるふわギャングが去年出したアルバム「GAMA」からは「MADRAS NIGHT PART 2 feat. 鎮座DOPENESS」の「手短にクリアするこの時代 / ここがクソパンデミックしょうもない」というNENEのラインを選びました。これは2021年10月にシングルリリースされた曲で、その頃のほうが今よりもコロナ禍が深刻視されていましたよね。その頃と今で状況自体は大きく変わってないのに、みんな慣れてきちゃって、ライブも前のやり方に戻ってきた中で「手短にクリアする」っていうNENEちゃんのスタンスが正解だったのかなって思えるんですよ。毎日同じニュースが流れて鬱憤が溜まっているときに「クソパンデミックしょうもない」って言い切ってくれるのがスッキリしたし。

YYK この曲はレゲトンみたいなリズムですよね。

MINORI ゆるふわギャングが山奥のキャンプ場で開催したレイヴの雰囲気は、 このMVの空気をバーっと浴びる感じでしたね(笑)。異世界に迷いこんじゃったみたいな。300枚限定のチケットは即完で、客層はゆるふわが好きな人と、レイヴそのものが好きな人が半々くらいな感じ。そこで普段からレイヴに行ってるという20歳の子と友達になって、レイヴが好きな人のコミュニティがあるという話を聞きました。私が知らないだけであるんだなって。

渡辺 やっぱりコロナ禍で都内のパーティがなくなってから、若い子も場所非公開のレイヴに行き始めたみたいな話を聞きますね。

二木 パンデミック以降に都会や都市部から離れる動きもあったのではないかと思います。

渡辺 密な空間から距離を置くみたいなね。

二木 自分は、20代前半の00年代初頭の頃、「レイヴ」は90年代に遊んでいた上の世代から継承されたカルチャーという認識でした。しかも、その頃すでに「レイヴ」という言葉を使うのを躊躇う年上の世代の人もいましたね。その後、野外パーティやフェスはたくさん開催されてきましたけど、少なくとも僕の個人的な観測範囲では「レイヴ」って言い方はほとんど聞かなくなっていったし、使われなくなっていました。それがここ数年で再び「レイヴ」が盛り上がっていると聞くようになって、実際ゆるふわギャングがレイヴを開催して、ヒップホップとレイヴカルチャーが混ざってきたのは面白い現象ですよね。

MINORI Tohjiとか松永拓馬とかも、レイヴのサウンドを取り入れて新しいものを作り出してますよね。

YYK ゆるふわギャングはNENEがこういうレイヴの方面に進んでいるんですかね?

MINORI ゆるふわが仲よくしているヘンタイカメラの影響が強いですよね。

渡辺 ちょうどコロナが来る直前に、ヘンタイカメラやYOU THE ROCK★と一緒にインドに行って、そこで目覚めた感じですよね。NENEに話を聞いてビックリしたんですけど、YOU THE ROCK★が何年も前からヘンタイカメラと一緒にインドで活躍しているらしくて。

MINORI NENEはSTUTSの「Expressions feat.Daichi Yamamoto, Campanella, ゆるふわギャング, 北里彰久, SANTAWORLDVIEW, 仙人掌, 鎮座DOPENESS」から「興味ない女子会 / 拒否パンケーキ」とかも選びたかったんですよね。でも、この曲はフィーチャリングゲストがみんな主役級にカッコよくて、その中でもSANTAWORLDVIEWのラップの勢いやワクワク感がとにかくよくて。「魂の話、電卓は無しで / 汗水垂らし稼ぐんだ脚で / 『ダメかももう』って落ち込むなよ / だってエヴァに乗れるか? / お前ならどう?」というラインを選びました。

渡辺 SANTAWORLDVIEWは毎回どんな比喩をぶち込んでくるんだろうとかどんなワードチョイスをしてくるんだろうって期待させるラッパーですよね。この曲だと「エヴァに乗れるか?」の部分。

MINORI  MVでは秋葉原で「新世紀エヴァンゲリオン」のTシャツを着てラップしてるんですよね。

YYK Leon Fanourakisとか横浜周辺のラッパーってだいたいハード系だけど、SANTAだけは最初から遊び心がありましたよね。

渡辺 個人的には「BOUNCE」のときのイメージが強いですね。

MINORI 「傘を持たない土砂降りの雨に / 意味を持たすが音楽さ正に」とかカッコいいことも言いつつ、ユーモアも織り交ぜて軽くやってのける感じが好きなんですよね。

新たな道を切り拓き、夢を与えるAwichの存在

二木 志保さんがAwichのラインを選んでいますけど、去年は彼女の年だったとも言えるんじゃないですか?

渡辺 「口に出して」は2021年8月に発表された曲ですけど、去年の年末に完成形をようやく観ることができたんですよ。1月に日本武道館で行われたワンマンライブをはじめとして、去年は基本的にお客さんが声出しできなくて、Awichは厳しくガイドラインを作っていたから、歌わせたいんだけど、アカペラでラップすることでパンチラインを際立たせていたんです。そんな中、12月に行われたバースデーライブでようやく声出しが許可された結果、お客さんの女の子たちが「腹ばっか立てずに立てろよChimpo」と叫んでいて。ああ、これが完成形かと(笑)。COMA-CHIやMARIAもこれに近い攻め攻めのラインはあったし、もちろん先輩たちが生み出してきたパンチラインの延長線上にあるんですけど、女の子が大合唱するようなことはこれまでなかったんですよね。

二木 そうですね。

渡辺 性的に過激なことって誰でも言おうと思えば言えると思うんですけど、ダブルミーニングとかウィットを込めてまとめられるのは彼女ならではだし、 Awichの年だったと言わせしめる魅力の1つだ感じました。カーディ・Bとか海外のラッパーのライブを観ているような感覚になりましたね。アメリカでは女性が自分の体を客体化せずにその魅力を伝えるムーブメントがありますけど、それを今の日本で先頭切ってやってるのはAwichだと思います。

YYK 去年の「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」でも話しましたけど、ビデオに女の子しか出てないのも新鮮ですよね。

渡辺 本当にそうなんですよね。「どれにしようかな」もそうですし、そうしたムーヴはめちゃめちゃ健全だなって思います。今回私がAwichの曲から選んだのは去年出たアルバム「Queendom」の最後に入っている「44 Bars」の「マイク持てば不安消せた / 時間無いの分かる / 12月でもう35 / 怖い全て間に合わなくなってしまう事」というライン。この曲は「今日も遅くなるから / ドアのガードだけは開けてて / 食べ終わりの食器とかはせめて水を掛けてて」という娘さんに向けた言葉で始まるんですけど、あんなギラギラした衣装を着て歌っているAwichにもこういう面があって、一般的なワーキングマザーと同じなんだと思って。日本で女性は30歳を過ぎると賃金も上がらないし、結婚や出産を急かされるし、自分で年齢を言うことがはばかられるような空気があると思うんですよ。そんな中、彼女が「もう35で時間がない」とハッキリ言いつつ、それでも「マイク持てば不安消せた」と言えることが素晴らしいなと。Awichは去年の12月で36歳、私は今年39歳になるなんですけど「Awichも36だから大丈夫」って思える存在。

YYK Awichは遅咲きで、出てきたときにはもう30超えてるくらいでしたよね。Lunv Loyalも若くないということを言ってましたけど、男女問わず年齢ってみんなけっこう気にしてるんですね。

渡辺 ラッパーは若い子が多いし、20代後半くらいになるとみんな年齢を気にするんじゃないでしょうか。特に最近はシーンの新陳代謝も活発だし、2年くらいで人気のメンツもすぐ入れ替わっちゃう。

YYK 昔は35のラッパーとかいなかったですからね。夢を与える存在だと思います。

渡辺 Awichはシングルマザーでもありますし、自分の環境を理由にいろんなことを諦めてしまった女性はめっちゃ勇気もらえますよね。シングルマザーのラッパーだと、今はAwich以外にも、MaRIや麻凛亜女、Tokyo Gal、Charluらもいるし、COMA-CHIもそう。

YYK 30超えてからこんなにブレイクする人を見ていたら、年齢を理由に音楽やダンスを辞めた人でももう1回やってみようかってなると思いますね。

<後編につづく>

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