YOSHIKIがコンサートツアー「YOSHIKI CLASSICAL 10th Anniversary World Tour with Orchestra 2023 'REQUIEM'」の東京・東京ガーデンシアター公演を10月7、8、9日に開催。この記事では10月8日公演の模様をレポートする。
日本人初の快挙
「YOSHIKI CLASSICAL」は今年で開催10周年を迎えたYOSHIKIのソロコンサート。昨年はコロナ禍を経て、約4年ぶりに行われた。今年は東京公演のあと、10月13日にイギリス・ロンドン ロイヤルアルバートホール、10月20日にアメリカ・ロサンゼルス ドルビーシアター、10月28日にアメリカ・ニューヨーク カーネギーホールで開催される予定となっており、ロンドン公演にはイギリスのエリー・ゴールディングと、アメリカのセイント・ヴィンセントがゲスト出演する。
YOSHIKIは先日、アメリカ・ロサンゼルスにあるハリウッドを象徴するTCLチャイニーズシアターの祝典において、自身の手形と足形を刻んだ。1927年に同劇場がハリウッドの伝統的な祝典を始めてから約100年、日本人アーティストが選出されるのはこれが初めてのことで、YOSHIKIが手形を刻む様子は日本のみならず、アメリカのニュース番組でも報じられた。その中で彼は、ハリウッドで挑戦し続けてきたことが評価されたことに対して感謝を述べるとともに、昨年亡くなった最愛の母に向けて「空から見守ってくれているはずです」と語っていた。
人はいつか死ぬが、愛は生き続ける
今年の「YOSHIKI CLASSICAL」は、YOSHIKIが最愛の母に捧げるべく新たに書き下ろした楽曲「Requiem」の名を冠したもの。総勢50名のフルオーケストラは、YOSHIKI作曲による「Amethyst」で、コンサートの第1部をスタートさせた。「Amethyst」はX JAPANの解散前からライブのオープニングSEとして使用されてきた楽曲だ。YOSHIKIの功績を伝える映像が流されたあとに本人が登場し、最初にピアノで奏でた曲は「Tears」。この曲はYOSHIKIの幼少期に33歳という若さでこの世を去った父に捧げるバラード。YOSHIKIは祈りを捧げるような面持ちで鍵盤に指を走らせ、オーケストラとともに感動的なアンサンブルを響かせた。
この日のゲストシンガー・Beverlyを迎えての「Hero」に続いては、オペラシンガーの市原愛が登場し、再結成後のX JAPANのライブにおけるオープニングSEでもある「Miracle」で迫力ある歌声を披露。市原は「普段はベートーヴェンやモーツァルトの曲を歌う機会が多く、実際に楽曲を作った作曲家と一緒に演奏する機会をいただけて光栄です」と述べた。また「人はいつか死ぬが、愛は生き続ける」というYOSHIKIの思いが込められた楽曲「Forever Love」には牧阿佐美バレヱ団が参加し、楽曲の世界観が切なくも美しく彩られた。
その後、YOSHIKIは「共演する?」と観客に気さくに呼びかけ、「まったくリリースされないX JAPANのアルバムから(笑)」と自虐的な冗談を飛ばす。そしてX JAPANの楽曲である「Kiss the Sky」では観客がライトを点けたスマートフォンを掲げ、シンガロングをYOSHIKIに届けた。さらに7月に配信リリースされたX JAPANの楽曲「Angel」、天皇陛下の即位10年に捧げた奉祝曲「Anniversary」が演奏され、第1部は終了した。
まさかのドラムソロ~ダイエット中のYOSHIKI
しばしの休憩時間のあと、第2部はクラシックコンサートながら、YOSHIKIのドラムソロでスタート。X JAPANやTHE LAST ROCKSTARSのライブの際と同じく、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」をBGMに激しいドラムパフォーマンスが展開された。なおオーケストラによる生演奏をバックにYOSHIKIのドラムソロが披露されたのは今回の「YOSHIKI CLASSICAL」が初めてのことだ。
続いての演奏曲はX JAPAN改名前のX時代のバラード「Say Anything」。HIDE(G)とPATA(G)によるギターソロのメロディも再現する形のオーケストラバージョンが届けられ、観客は楽曲の美しいメロディに酔いしれた。また第2部のYOSHIKIはトークもたっぷりと披露。クラシックコンサートでドラムソロを披露したことについては「自分で言うと炎上するかもしれないけど」と前置きしつつ、「こんなことができるのは俺だけ。たまには自分を褒めてあげないとね」と笑った。さらにBeverlyとのトーク中、ダイエット中だと話したYOSHIKIは、「昨日も冷蔵庫にチョコレートが入ってたけど、スタッフにあげた。大好きなプリンも入ってたけど、スタッフにあげた」と甘いものを我慢していることを明かした。
「みんな俺について来いよ」
母の死に涙が止まらない日々を過ごしたというYOSHIKIは、譜面を涙で濡らしながら「Requiem」を書いたという。「ボロボロに打ちのめされるなんて」と母の死に相当なショックを受けたことを述べた彼は、「まだ作曲の途中で、ひょっとしたら10分にも15分にもなるかもしれない。今の時点での『Requiem』を届けられて光栄です。ありがとう。こうやってステージに立てているのはみんなのおかげ。そして今ここにいるのは、一緒にやってきたメンバーのおかげ。いろんな人に支えられてここにいるんで、『しっかり生きなきゃいけないんだよ、YOSHIKI』と自分に言い聞かせています」と胸中を吐露。続けて「最愛なhide、よく喧嘩もしたTAIJI、そしてToshl、PATA、あとで加わってくれたHEATH、SUGIZO、本当に感謝しています。hideはX JAPANの本当のリーダーなんじゃないかって思う。hideと二人三脚でやってきて、今でもhideと会話している気がしています」とX JAPANメンバーへの思いも語り、hideが1998年にこの世を去ったあとに作った楽曲「Without You」を最愛のhide、TAIJI、さらにはYOSHIKIの父、母に捧げて演奏した。
YOSHIKI作曲による「OPUS 13 in A-minor」、YOSHIKIの半生を表現した楽曲「ART OF LIFE」が届けられ、いよいよコンサート終盤へ。YOSHIKIは「みんなの心の支えになれるような芸術をこれからも生み出し続けたい。弱いところもあるけど、“強いYOSHIKI”もいるから、みんな俺について来いよ」と勇ましい言葉をファンに伝え、喝采を浴びる。ラストには「ENDLESS RAIN」で合唱を巻き起こし、感動的なフィナーレを飾った。
セットリスト
「YOSHIKI CLASSICAL 10th Anniversary World Tour with Orchestra 2023 'REQUIEM'」2023年10月7~9日 東京ガーデンシアター
第1部
01. Amethyst
02. Tears
03. Hero
04. Miracle
05. Forever Love
06. Kiss the Sky
07. Angel
08. Anniversary
第2部
01. 弦楽セレナーデ(DRUM solo)
02. 悲歌のシンフォニー(DRUM solo)
03. Say Anything
04. Swan Lake
05. Red Swan
06. Requiem
07. Without You
08. OPUS 13 in A-minor
09. ART OF LIFE
10. ENDLESS RAIN