YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10 月20日から26日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100と、TikTok上における人気を測るBillboard JAPANのチャート「TikTok Weekly Top 20」の中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、谷村新司と櫻井敦司(BUCK-TICK)の突然の訃報を受けて、24位に小川知子 with 谷村新司「忘れていいの -愛の幕切れ-」、41位にBUCK-TICK「JUST ONE MORE KISS」、61位にも同じくBUCK-TICKの「悪の華」が急浮上。多くの人々が故人を偲んでMVを観ていたようだ。
そのほか7位には、11thミニアルバム「SEVENTEENTH HEAVEN」の初動売上がK-POP史上初の500万枚超えの快挙を成し遂げたSEVENTEENの「음악의신」(God Of Music)、11位はポケットモスターと初音ミクのコラボ「Project VOLTAGE」第4弾となるピノキオピーの「ポケットのモンスター」がランクイン。23位に入った新しい学校のリーダーズの「Tokyo Calling」はエレクトロニックなビートが魅力的な楽曲で、昭和のゴジラやウルトラマンを彷彿とさせる昔懐かしい映像が話題になった。
29位にはオーストラリア出身のラッパーでありシンガーのザ・キッド・ラロイ、世界が認めた圧倒的歌唱力を持つJUNG KOOK(BTS)、新進気鋭の英ラッパーであるセントラル・シーの3人がコラボしたThe Kid Laroi, Jung Kook & Central Cee「TOO MUCH」が初登場する結果に。往年の名曲から話題の新曲までランキングに並んだ今回は、下記の3曲をピックアップした。
中川翔子「空色デイズ」THE FIRST TAKE
※YouTubeミュージックビデオランキング17位
アニメ「天元突破グレンラガン」のオープニングテーマ「空色デイズ」がリリースされたのは、今から16年前のこと。「新世紀エヴァンゲリオン」に多大な影響を受けた中川にとって、同じGAINAX制作のロボットアニメ作品に関わることは、特別な思いがあったはずだ。さらに、「空色デイズ」はオリコン週間シングルチャートにて初登場3位を記録し、中川はこの曲で「第58回NHK紅白歌合戦」にも初出場。海外のライブでこの曲を歌うと客席から大合唱が起きた。
中川本人も「20年間ずっと支えてくれた曲」と話す大事な楽曲を、彼女は今回THE FIRST TAKEで披露。当時と比べて声の深みや厚み、表現力も増しており、バックバンドのギザレンジャーによる演奏も含めて、16年の間で格段に進化した姿が話題となった。
11月1日には中川のTHE FIRST TAKE第2弾として、芸能生活20周年記念ソング「中川翔子」も公開されているので、ロックな「空色デイズ」とは対称的なこの最新曲のパフォーマンスもじっくり堪能してほしい。
¥ellow Bucks「Higher Remix(feat. YZERR, Tiji Jojo, eyden, Bonbero, SEEDA)」
※YouTubeミュージックビデオランキング19位
YouTubeでMVが公開されると、わずか2週間で120万回再生を突破。「参加ラッパーのオールスターぶりがヤバい」と注目を浴びている本楽曲は、¥ellow Bucksが今年6月にサプライズでリリースしたEP「Survive」の収録曲「Higher(feat. YZERR)」のリミックスバージョンだ。
ここでは原曲の¥ellow Bucks、YZERR(BAD HOP)によるバースに、同じくBAD HOP のTiji Jojo、若手注目株のeydenとBonbero、そして20年以上にわたりシーンの最前線を走るSEEDAが加わりマイクリレーを繰り広げている。YZERRの「まだまだVerseなら足りないぜ / なあそうだろ?To The Top Gang」やEydenの「次なる相手俺だぜ残念 / 肩借りますね 名古屋のパイセン」など、各人のバトンのつなげ方と受け取り方も胸が熱くなるし、ラストでしっかりと有終の美を飾るSEEDAも素晴らしい。
ぺろぺろきゃんでー「話題のGAL」
※Billboard JAPAN「TikTok Weekly Top 20」初登場7位。
ぺろぺろきゃんでーは、兄・SUNNY-PLAYと妹・Janet真夢叶による、TikTokのフォロワー数30.5万人、YouTube登録者数20万人、SNS動画の総再生数が2億2000万回超えを誇るポップラップユニット。そんな2人が8月にリリースした「話題のGAL」が、TikTok上における人気を測るBillboard JAPANのチャート「TikTok Weekly Top 20」にて初登場7位にランクインした。アートワークや歌詞も含めてゴリゴリのギャル感でいっぱいなこの曲。クセになるジングルやパーカッションっぽい人の声、不穏なリードなど、いろいろなギミックを盛り込んだ中毒性の高いSUNNY-PLAYのトラックに、細かくリズムを刻んだJanet真夢叶の低音ボーカルが心地いい。
もちろん今の10代や20代の人が聴いても楽しめるが、田中れいながこの曲を使ったダンス動画を投稿したように、ファッション雑誌「egg」「nuts」「Ranzuki 」やギャルが憧れたブランド「ALBA ROSA」など、2000年代のギャル文化の直撃世代にもどストライクな1曲。なお、この曲のリリック「話題のギャルならうちらだし」は「egg」によるアンケート集計結果から決まった「egg流行語大賞2023」にて第6位にランクインしている。