hide(X JAPAN、hide with Spread Beaver)の誕生日を祝うバースデーイベント「hide Birthday Party 2023」が昨日12月10日に神奈川・CLUB CITTA'で開催された。
hide実弟、HEATHを追悼
hideはX JAPANのギタリスト、ソロアーティストとして活躍。しかし1998年、この先の活動にも期待が高まる中、33歳という若さでこの世を去る。永眠後も絶大な人気を誇っており、この日の公演にはhide亡きあとに彼を知ったという10代を含む、幅広い世代のファンが来場した。また開演時にはhide実弟の松本裕士氏(ヘッドワックスオーガナイゼーション代表取締役)が登壇。X JAPANのメンバーで10月29日に55歳でこの世を去ったHEATHを偲び、1分間の黙祷を捧げた。黙祷の前に松本氏は「今日は暖かいですね。この会場の中で皆さん厚着して倒れないようにしてくださいね」と来場者に優しく声をかけつつ、「真面目な話になっちゃいますが、ファミリーが1人、hideさんのもとに向かいました。悲しいですが、やっぱり僕らのファミリーの1人ですから、今日はご親族の方にも来ていただいております。なのでHEATHにこの場をお借りして、みんなで黙祷をさせていただきたいと思いました」とコメント。黙祷後には「僕らはがんばって生き抜いて、生き抜いたそのあとに報告できるようにしましょう。それまではがんばって生きるんだ! 楽しみましょう、人生を! 今日はちょっと早いけどhideのバースデーパーティ、思いっきり楽しんでください! よろしくお願いします!」と挨拶した。
「hide Birthday Party 2023」出演者
この日のアクトはオープニングを飾ったDJ桃知みなみをはじめ、OBLIVION DUST、DIE、SPEED OF LIGHTS、DJ-INA、Chirolyn、ZEPPET STORE、MADBEAVERS、defspiralとゲストのPATA(X JAPAN、Ra:IN)。12月13日に迎えるhideの59歳の誕生日を祝うために集結したhideの仲間や後輩たちによる宴がいよいよ始まった。
1組目:OBLIVION DUST
イベントのトップバッターを務めたのは、hide with Spread Beaver、VAMPSでの活動でも知られるK.A.Z(G, Programming)が在籍するOBLIVION DUST。彼らはhideが組んでいた多国籍バンド・zilchの「ELECTRIC CUCUMBER」を重厚かつソリッドなインダストリアルロックアレンジでカバー。ダークな雰囲気のKEN LLOYD(Vo)が歌う横で、hideから“ギターヒーロー”と称されていたK.A.Z.は、寡黙な表情を浮かべてお立ち台に上がり、ギターをクールにかき鳴らした。
また本公演では、出演者それぞれが思い入れのあるhideの写真がスクリーンに映し出された。OBLIVION DUSTのライブ中、ステージ後方のスクリーンにはzilch時代のhideの写真が投影された。そんな写真をバックに彼らは、RIKIJI(B)の極悪ベースサウンドが炸裂するキラーチューン「You」などを披露。ダウナーからアッパーに昇華するバンドサウンドを一身に浴びる観客の一部が、フロアでモッシュを巻き起こした。なおKENは「OBLIVION DUSTはhideさんに日本で一番面倒を見てもらって、優しくしてもらいました。こうしてステージでちょっとでも恩返しができるのはうれしい。見守られている感じがして、音程を外すと怒られそうな気もしますが(笑)。感無量です。hide、ハッピーバースデー」と語った。
2組目:DIE
続いてhide with Spread Beaver、Ra:INのキーボーディストであるDIEがステージに上がった。DIEは90年代にGLAYのサポートを務めたほか、スプレビのライブで暴れ回るなど、ロックキーボディストのイメージが強いが、近年はアンビエント系、エクスペリメンタル系の作品を発表している。DIEはステージに設置されたグランドピアノ、お立ち台に置かれた砂箱でステップを踏んで音を出したり、ボコーダーを使って話したり、実験的なアプローチのソロパフォーマンスを展開。そしてひとたびピアノに指を走らせると、美しい旋律を奏でた。
DIEは「DIEごときが大きな舞台でやらせていただいて、感謝でございます。ハッピーバースデーhideちゃん! hideちゃんも59歳ですよね、いい歳になってきましたよ、メンバーも。60の壁に届く歳になってきました。Spread BeaverもX JAPANも含めて俺が一番年上なんですよ! 年齢不詳の人もいますけど(笑)。来年の2月でDIEは60歳になります。そこからみんな次々と60歳になって。I.N.A.ちゃんももうすぐ59ですね、おめでとうI.N.A.ちゃん!」「できるうちにやりたいことをやり尽くして、それで会える人に会いたいと思います」とコメント。そして「ピンク スパイダー」をボサノバ風のラテンピアノアレンジで弾き語った。その後、彼はhide「Hi-Ho」の歌詞にある「見える月の数は同じ」を引用しつつ、「お月さまの曲を作りました。地球上どこにいても同じ月が見えるよって曲です、hideちゃんとも同じ月を見ているよって」と述べ、「THE SAME MOON」を捧げた。
3組目:SPEED OF LIGHTS
続いてはhideが見出したバンド・SHAMEのボーカリストとしても知られるCUTT(Vo, G, Sequencer)がフロントマンを務めるバンド・SPEED OF LIGHTSがステージに上がる。彼らはzilch「SPACE MONKEY PUNKS FROM JAPAN」をスペーシーなアレンジでパフォーマンスし、続けて会場でCDが販売された新曲「Our New World」を初披露。「Cosmic Rolling」ではスクリーンにリズムゲームを模した映像が投影され、SPEED OF LIGHTSは観客のハンドクラップに合わせて楽曲を演奏した。
ライブ後半にはhideが作詞作曲を手がけたXの楽曲「Joker」を“Alien Chorus ver.”でカバー。シンセサウンドとエイリアンボイスのコーラスを重ね、SPEED OF LIGHTSらしいポップなアンサンブルで観客を踊らせた。hide愛とX JAPAN愛を込めつつ、持ち前のアレンジセンスを爆発させた彼らは、さらにアッパーチューン「Speed Of Lights」などをプレイし、オーディエンスを熱く盛り上げる。CUTTが「皆さんの前で今年もSPEED OF LIGHTS、うれしいです。今年は特に皆さんの顔を見て安心したというか」と話した際には、SHOKO(Synth)とJUNYA(Dr)も来場者に挨拶。さらにCUTTは「今日はまだまだ始まったばっかりですから。想像を絶する楽しみが待っています。来年SPEED OF LIGHTSはより楽しい音楽を伝えられるようにがんばっていきますので、応援よろしくお願いします。最後はhideさんとすべての方にハッピーバースデーという気持ちを込めて、この曲を」と述べ、「Birth Everywhere」でライブを締めくくった。
4組目:DJ-INA
hideの共同プロデューサーであるI.N.A.はDJ-INA名義で登場。「hideさんハッピーバースデー。コロナ禍を経て、4年ぶりのDJ-INAなんですけど、HEATHのこともあったりしてどんな顔して出てこようかなと。いつもは酔っ払っておちゃらけDJをやってたんだけど。いつもバースデーパーティのとき、1曲目に『CELEBRATION』をやるんです。PATAとHEATHに作ったやつで。HEATHは(hide没後のトリビュートアルバムのオファーを受けた当時に)、過去に『やってナンボだから』とhideに言われたことがあったから、トリビュートへの参加を決めたんだ。『何をやらないよりも一歩踏み出してみよう』というお話で。今回、俺もとりあえずやってみようと思って今ここにいます。25年前にhideさんが逝っちゃって、今年はSpread Beaverが25年ぶりにツアーをやって。(1998年)当時は無理やり笑ってやってたのね。笑ってやっていればそのうち楽しくなるかなって。今日もそういう感じでやりたいと思います」と声を震わせながら話す。そして「なので皆さん! お力を貸してください。今日のDJはHEATHに捧げようと思ってます! 改めて松本秀人(hideの本名)ハッピーバースデー!」と話して、DJタイムをスタートさせた。
I.N.A.は挨拶での言葉通り、レコーディング時にPATAとHEATHも参加したhideの「CELEBRATION」を1曲目に流し、続いてhideバージョンの「MISCAST」をスピンした。続けてX JAPAN「Rusty Nail」の“THE LAST LIVE”バージョンを流すと、オーディエンスは歓喜。I.N.A.は感極まって涙を流しつつも、腕を大きく振る。ギターソロパートではステージのほうに目を向け、在りし日のhideとHEATHの姿を見つめているようだった。さらにI.N.A.は悲しみや痛みを飲み込んで笑おうというhideらしい優しいメッセージが詰まった「MISERY」を届け、「ever free」で合唱を誘った。エンディングでは12月12日に誕生日を迎えるI.N.A.を祝福するサプライズがあり、CUTT、ZEPPET STOREの木村世治(Vo, G)、defspiralのTAKA(Vo)がI.N.A.にバースデーケーキを贈呈。I.N.A.は笑顔でロウソクの火を吹き消した。
5組目:Chirolyn
hide with Spread Beaverのベーシスト・Chirolynは、ソロで出演し、同期トラックを用いて情熱的なステージを展開。「“ロック界の松岡修造”ことChirolynです! 川崎は生まれたところなんですよ」と会場のある川崎にちなんだトークをしつつ、「今日はドカーンとしたバンドが多いからさ、意味深にダンディにしたいと思います」と述べる。その言葉通り、「EnNUI」をムーディに届けた。そして「今日はSpread Beaverが全員集まったんだよ。すごくね? みんな集まるとほっこりするというか、この人(hide)が喜んでるんじゃないかな。リハ行くたびに飲みだったから。松本さんは来年で還暦。俺はPATAちゃんと同い年で58。今の還暦は若いですね、まだまだやれますから」とコメント。続けて昨年発表したアルバム「Release yourself」がジャンル別の配信チャートで2位だったこと、収録曲の「ピンク スパイダー」カバーがR&B・ソウル部門で48位だったことに触れ、「“69”じゃないあたり、奴はニヤッとするでしょうね」と笑った。
ソウルフルなステージが続き、「暇乞い」の間奏では腕を大きく掲げて「hideー!」と叫んだChirolyn。彼は「大黒摩季です! 嘘です!」「じゃあ最後に“呪いの歌”を聴いてください!」と冗談を飛ばしてからファンキーなアレンジで「ピンク スパイダー」を熱唱し、観客に投げキッスをした。
6組目:ZEPPET STORE
木村世治(Vo, G)、五味誠(G)、赤羽根謙二(G)、中村雄一(B)、YA/NA(Dr)にサポートメンバーとしてHAZE(Dr)を迎えた編成で登場した。スクリーンに映し出されたのはZEPPET STOREにとっても思い出深い場所であるアメリカ・ロサンゼルスの飲食店にてビールのピッチャーを前に微笑むhideの写真。ZEPPET STOREは2011年の再結成後に作られた楽曲「NOTHING」で激しくライブをスタートさせ、hideお気に入りの「FLAKE」へとつなげる。サポートを含む6人編成で奏でられるサウンドは分厚くラウドだ。イベント開始から3時間以上が経過し、酒を片手に盛り上がっていた観客らが心地よさそうに体を揺らした。
今年行われたhide with Spread Beaverのワンマンライブにオープニングアクトとしてソロで出演した木村は、「hide with Spread Beaverのワンマンでは、声援をくれてありがとうございました。今日もパーティです。世の中は悲しい出来事が多くて気が滅入っちゃいますけど、今日はhideさんの誕生日。皆さん盛り上がってください!」とコメントし、hideの楽曲「FLAME」のカバーにつなげた。この曲はhideがZEPPET STOREに影響を受けて制作した1曲だ。続けてZEPPET STOREは1996年にアメリカのインディーレーベルから発売されたアルバム「716」からhideもアメリカのライブハウスで目の当たりにした楽曲「NANCY」を演奏。彼らのメロディアスなメロディとオルタナティブなサウンドの魅力が詰まった「THE GAME」を投下し、場内の熱気を一段と高めたところでライブを終えた。
7組目:MADBEAVERS
次なるアクトはhide with Spread BeaverのギタリストKiyoshiとドラマーJOE、そして2023年に加入したベーシストRyotaの3人からなるMADBEAVERS。スクリーンにはベースを弾くhideと、ドラムを叩くJOEのツーショット写真が投影された。MADBEAVERSは「ハッピーバースデー! ロックンロールしようぜ!」というKiyoshiの挨拶から「MARS HALL」でロックンロールショーをスタートさせた。曲中には「去年はサポートメンバーだったRyotaがよ、正式メンバーになったんだ!」と、Kiyoshiが改めてベーシストを紹介する場面も。Kiyoshiは「今日は長丁場、大変だな。あっ、MADBEAVERSです」と挨拶し、ローディから缶ビールを受け取る。「今日で59歳だよ奴は。俺もな」とhideと同い年であることに触れた。
「CLOVER」「嵐の夜」とアグレッシブなロックチューンが連投された際には、スクリーンの写真がhideとKiyoshiのツーショット写真に変わった。Kiyoshiは「今もまったく色褪せない曲だったり存在だったり。あいつが過去に作った曲がみんなの刺激になったり栄養になったりしてるじゃん、俺もそうなんだけどさ。それがきっとまたみんなの未来に続くと思うからさ、ロックンロールしようぜ。俺たちと一緒にロックンロールしようぜ!」と話したあと、hideとの思い出の写真をバックにMADBEAVERSは、hide with Spread Beaver「FISH SCRATCH FEVER」をカバー。観客とともに「Go fish boys!」と叫び、熱い空間を生み出した。
8組目:defspiral
イベントのトリを務めるのは、hideに見出されたバンド・TRANSTIC NERVE(the Underneath)のメンバーが在籍するdefspiral。TAKA(Vo)のセクシーな低音ボイスが炸裂する「FLASH」で華々しくライブの幕を開けた彼らは、RYO(B)がステージから身を乗り出すようにベースを演奏するなど、攻めた姿勢で観客を圧倒した。「VIVA LA VIDA」で熱狂を生み出したあと、defspiralはhideのソロワークにおける初期ナンバー「DICE」をカバー。彼らの音楽性にマッチする選曲にフロアは大きく盛り上がった。
TAKAは「毎年恒例になりますけど、今年も参加できて、皆さんと楽しめてうれしいです。この日は毎年、自分と向き合う大切な時間だと思っています。2023年は皆さんにとってどんな1年だったでしょうか。いいことばかりではありませんでしたけど、きっとそれぞれにいいこともうれしい瞬間もあったと思います。俺たちにはhideさんの歌が、心のそばにあるでしょ? hideさんがいてくれるからね。hideさんの思いやメッセージ、音楽や歌を胸にこれからも歩み続けていきたい。みんなの未来がとてもよいものになりますように。そんな思いを込めて」と話し、タイトルコール。defspiralはhide「MISERY」をカバーし、会場に集まったhideのファンと気持ちをひとつにした。
スペシャルゲストPATA登場~オールキャスト「TELL ME」セッション
defspiralのライブ終盤、スペシャルゲストとしてPATAがステージに招かれる。「毎度お邪魔します」と控えめに挨拶したPATAは、「CELEBRATION」のギターリフを爆音で演奏。お祭りムードの盛り上がりを見せる中、CUTTと木村も加わり、PATAとの共演を楽しんだ。PATAは「お邪魔してます。楽しんでますか? そりゃいいこった。もうちょっとだけやるんだよな? 俺らがここにいるってことは。なので、もうちょっとだけ楽しんで帰ってください」とファンにメッセージを送った。
PATAの言葉に続いて、この日の出演者がステージに集結。DIEが「皆さん元気ですか! THE LAST ROCKERS(のライブ)で一番オイシかった方」とPATAをイジる場面もありつつ、イベントの締めくくりにはhideの歌声とともにオールキャストでhide「TELL ME」のセッションへ。DIEがスマートフォンでステージの様子を撮影し、ChirolynがなぜかDIEのキーボードを片手にステージ最前を練り歩く。I.N.A.がJOEの後ろでスティック回しを見せたり、ギターを弾くPATAをハグしたりと、ステージをぐるりと練り歩いた。演奏後にPATAは「俺がしゃべるのもなんだけど、ありがとうございました! じゃあ皆さんを含め、写真を撮るらしいです。いい顔で撮れよ!」と笑顔で呼びかけ。出演者と観客の記念写真が撮影され、イベントは大団円を迎えた。
hide生誕60周年プロジェクト始動~最後にHEATHを追悼
出演者がステージを去ったあと、hide生誕60周年に向けたプロジェクトなどの紹介映像が上映された。そしてHEATHへの追悼の意を込めて「迷宮のラヴァース」「MISCAST」の映像がスクリーンに上映され、ステージはライブさながらにライトアップされた。
セットリスト
「hide Birthday Party 2023」2023年12月10日 CLUB CITTA'
OBLIVION DUST
01. ELECTRIC CUCUMBER(zilchカバー)
02. Lust & Graffiti
03. Designer Fetus
04. Searchlights
05. You
DIE
01. BLOOM
02. LOVE CYCLE
03. CRAZY FOR YOU
04. ピンク スパイダー(hide with Spread Beaverカバー)
05. THE SAME MOON
SPEED OF LIGHTS
01. SPACE MONKEY PUNKS FROM JAPAN(zilchカバー)
02. Our New World
03. Cosmic Rolling
04. Joker(Alien Chorus ver.)
05. Speed Of Lights
06. Birth Everywhere
DJ-INA
01. CELEBRATION(INA+PATA+HEATH)
02. MISCAST(hide+INA+PATA+HEATH)
03. Rusty Nail
04. MISERY
05. ever free
Chirolyn
01. Soul Love
02. 真夏の夜のティーダー
03. EnNUI
04. 暇乞い
05. ピンク スパイダー(hide with Spread Beaver)
ZEPPET STORE
01. NOTHING
02. FLAKE
03. FLAME(hideカバー)
04. NANCY
05. THE GAME
MADBEAVERS
01. MARS HALL
02. SMOKING KILLS
03. CLOVER
04. 嵐の夜
05. FISH SCRATCH FEVER(hide with Spread Beaverカバー)
defspiral
01. FLASH
02. VIVA LA VIDA
03. DICE(hideカバー)
04. MISERY(hideカバー)
05. 流星
06. CELEBRATION(hideカバー)
ALL CAST SESSION
01. TELL ME