YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで12月8日から12月14日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および楽曲ランキングのトップ100の中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、12位にIMP.の4作目の配信シングル「I Got It」がランクイン。運命の人と出会ってしまった男が彼女の願いに応えるため“I Got It(わかってる)”と覚悟を決めて叫ぶ、心からのラブソングとなっている。29位にはXGの「WINTER WITHOUT YOU」が登場。クリスマスの時期になり、街中がきれいなイルミネーションに染まる中、遠く離れてしまった大切な人を思い出して切なくなるウインターソングだ。
そのほか、43位には現在公開中の映画「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」の主題歌である、Official髭男dismの「SOULSOUP」がランキング入りした。ソウル、ファンク、ロックなどさまざまなジャンルを取り入れたこの曲。MVではラーメン屋の厨房で、料理人の見習いに扮したメンバーと、個性的な客の奇想天外なストーリーが展開される。演奏シーンやアニメーションシーンも収められており、楽曲同様に多彩なアプローチが詰まったコミカルな映像となっている。
54位はTWICEのファミリーマート クリスマスタイアップソング「Dance Again」。“ささやかなパーティ”をテーマに制作された、きらびやかなダンスナンバー。MVでは今年の日本での活躍を記録したメイキング映像も観ることができる。クリスマス目前、この時期にぴったりな楽曲がランクインした今週は、下記の3曲をピックアップした。
羊文学「more than words」THE FIRST TAKE
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場19位
テレビアニメ「呪術廻戦」第2期「渋谷事変」のエンディングテーマとして書き下ろされた「more than words」。リリースされたのは9月で、少し時間が経っているが、ここに来てまたこの曲が注目されている。10月31日のABEMA「TVアニメ『呪術廻戦』『渋谷事変』記念特番」で、羊文学はアニメの舞台であるJR渋谷駅を再現したロケーションの中、この曲を演奏する様子を配信。その映像は11月24日にYouTubeでも公開されて大きな話題になった。
12月8日には「THE FIRST TAKE」に登場し、「more than words」の一発撮りパフォーマンスを披露。12月13日に放送されたフジテレビ系「2023 FNS歌謡祭」第2夜では、東急電鉄の全面協力により、終電後の渋谷駅構内で演奏の収録が行われた。短い期間でこの曲のパフォーマンス動画が連続でバスっていった結果、YouTubeではMVランキングに「THE FIRST TAKE」が初登場するのみならず、ウィークリー楽曲ランキングにおいても「more than words」が急上昇。最も順位を上げて(31も上昇)9位にまでランクアップした。
なお12月20日には羊文学が再び「THE FIRST TAKE」に出演し、TikTokを中心にクリスマスソングとして定着している「1999」を一発撮りで披露している。
JUNG KOOK「Hate you」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場41位
11月にリリースしたソロアルバム「GOLDEN」に収録されているバラード曲で、儚いピアノの旋律とJUNG KOOKの哀愁を帯びたエッジボイスが魅力。今回公開されたビジュアライザーは東京で撮影されたもので、最愛の“君”を失った主人公の喪失感を表すようにモノクロのシーンで始まり、後半で“君”といた幸せな時間を想像する場面に切り替わって、徐々に目の前の景色に色が付き始めるという構成になっている。
そんな「Hate you」だが、2018年リリースのBTSのアルバム「LOVE YOURSELF 結 'Answer'」に収録されたJUNG KOOKのソロ曲「Euphoria」のMVにそっくりな構図のシーンがある、とARMY(BTSファンの呼称)の間で話題に。「Euphoria」のMV でもJUNG KOOKはビルから夜景を見下ろしながら撮影しており、5年前と現在の2本の映像を比較した動画や画像がSNSに多く投稿された。
“このタイミング”でビジュアライザーが投稿されたことに、いろんな想像を働かせてしまう。というのもJUNG KOOKは兵役のため、12月12日から陸軍に入隊している。「Hate you」のラストで流れるライブ会場を彷彿とさせるアニメーションのシーンは、もしかしたらBTSのメンバー全員が兵役を終える2025年以降の、グループが活動再開をしたときの光景を表現しているのかもしれない。そう考えると、余計にこの映像はグッとくる。
平成フラミンゴ「スーパーヒロイン」
※YouTubeウィークリー楽曲ランキング初登場59位
SNS総フォロワー数1000万人を超える、幼馴染によるYouTuberコンビの平成フラミンゴ。「スーパーヒロイン」は初のオリジナル曲で、彼女たちは作詞作曲やMV制作まで手がけている。キャッチーなメロディとスケールの大きいサウンドに乗せて、小学1年生での出会いから平成フラミンゴ結成までの軌跡を歌った曲だ。MVでも2人が少女から大人になっていく過程をドラマチックに表現。
12月13日、千葉・幕張イベントホールにて開催された「YouTube Fanfest Japan 2023」に出演し、「スーパーヒロイン」を初披露した際に、2人ともステージ上で号泣しながら歌唱して会場を大きな感動で満たした。