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Snow Manが“聴く曲”を“体感する曲”へ変える / 大森元貴の「風が吹くように」発言の意図とは

再生数急上昇ソング定点観測
17分前2026年03月06日 9:05

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月20日から2月26日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

文 / 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeミュージックビデオランキングでは、30位にIVEの「BLACKHOLE」が登場した。これは2ndフルアルバム「REVIVE+」のリード曲。アルバム発売日の2月23日にMVが公開されてから9日間で1200万再生を突破し、昇竜の勢いを見せている。

32位にはMr.Childrenの「Saturday」がランクインした。今作は3月25日にリリースされるニューアルバム「産声」の収録曲。生活感あふれる描写と、優しく背中を押すような歌詞がじんわりと胸に響く温かい1曲に仕上がっている。

44位に登場したのは、Hearts2Heartsの「RUDE!」。耳を惹き付ける中毒性のあるメロディと、クールでシックな振付が融合したハウスナンバーだ。

46位にはXGの「ROCK THE BOAT」がランクインした。海の中を優雅に泳ぐような心地よいメロディと歌声が、抜群の没入感を生み出している。

人気ガールズグループの新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。

Snow Man「オドロウゼ!」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場2位

Snow Manの「オドロウゼ!」は、4月29日にリリースされるグループ初のトリプルA面シングル「BANG!! / SAVE YOUR HEART / オドロウゼ!」の表題曲の1つで、メンバーの佐久間大介が初単独主演を務める映画「スペシャルズ」の主題歌だ。日常の不安や疲れを吹き飛ばし、“踊ること”を通して毎日を祝祭のように変えてしまう、そんなポジティブな解放感にあふれている。

まず印象的なのは、思わず体が動いてしまう高揚感あふれるビートだ。低く響くグルーヴに「PO-PO-POPなステップで / Yeah Yeah Yeah Yeah」や「Don't you worry / ギラギラのFighter」といったキャッチーなフレーズが組み合わさり、聴くだけで気分が上がる。また「今日は踊ろう」と語りかける歌詞が、迷いを吹き飛ばすスイッチのような役割を果たしている。

さらに、この曲の魅力はSnow Manならではのダイナミックかつ緻密でコミカルなパフォーマンスにある。フォーメーションの美しさ、緩急のあるダンスブレイク、メンバーそれぞれのキャラクターが際立つパート割りなど、楽曲のエネルギーと9人の身体表現が重なることで、“聴く曲”が“体感する曲”へと昇華されている。ミュージックビデオでは9人がカラフルでポップな空間を舞台に躍動感あふれるダンスを披露しているので、この映像でSnow Manならではのダイナミックな身体表現を確認してみよう。

大森元貴「0.2mm」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場27位

大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)が、ソロ活動5周年を記念した1stミニアルバム「OITOMA」を2月24日にリリースした。今作のリードトラック「0.2mm」は、山時聡真と菅野美穂がダブル主演を務める映画「90メートル」の主題歌として書き下ろされた楽曲だ。

この映画では難病に苦しむシングルマザーと、その母親を介護する高校生の息子が描かれている。大森は以前から映画のプロデューサーと交流があり、ある日そのプロデューサーから「ヤングケアラーを題材にした映画を作ろうと思っている」と聞いた際、企画書もまだない段階で自ら主題歌を担当したいと申し出たという。YouTubeで公開されているレコーディング時のビハインド映像では、曲に込めた思いを次のように語っている。

「本当にちょっとだけ風が吹くように、ちょっとだけ(聴いた人の)背中を押せればいい。主人公の気持ちを明確に描こうとか、この映画の主題歌としてふさわしい曲を書こうとか、そういうことではなくて。(映画の中に)吹いているものとは、流れているものとは何かを考えました」「僕がいち視聴者としてこの映画を観たときに、どんなイントロが流れたら温かい感情で映画館を出られるかを考えました」

大森の「ちょっとだけ風が吹くように」という発言は、実際に曲を聴くと深く頷ける。親子の日常を淡々と描きながらも、「愛の本質とは何か」の明確な答えを示すのではなく、景色や会話の中に人の温もりを感じさせる絶妙な温度感が「0.2mm」の魅力なのではないかと思う。2月28日発売のインターナショナルモード誌「Numéro TOKYO」4月号特装版(増刊)で、筆者は大森にインタビューしており、今作の制作秘話にも触れているのであわせてチェックいただきたい。

ルシノ「ループザルーム feat. 初音ミク」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場92位

「リミナルスペース」という言葉をご存知だろうか? 本来は廊下、階段、ロビーなど場所と場所をつなぐ「境界的な(中間の)空間」を指す建築用語だが、現在はインターネットを中心に「どこか見覚えがあるのに、なぜか不安になる“境界的な空間”」という意味で認知されている。

その代表例が「The Backrooms」である。2019年、匿名掲示板4chanに投稿された1枚の画像が、ネット上で大きな話題を呼んだ。そこに写っていたのは、蛍光灯に照らされた黄色い壁紙、湿ったカーペット、人気のないオフィスのような空間。「現実世界の裏側にあるとされる無限に続く異空間」という設定が拡散され、クリーピーパスタ(ネット発の都市伝説)として語られるようになった。そこから多くの派生コンテンツが生み出され、今年5月には「The Backrooms」を元にした、人気映画スタジオA24が製作する映画の公開も控えている。

ルシノの新曲「ループザルーム feat. 初音ミク」には、このリミナルスペース的な要素が色濃く表れている。2025年11月に開催されたボカロPが匿名で楽曲を投稿するイベント「無色透明祭3」に投稿された本作は、その後に海外のホラー好きを中心に支持を集め、ショート動画でも数多く使用されるようになった。

歌詞では“どこまで進んでも同じ場所に戻ってしまう”ような感覚が巧みに描かれている。リセットや迷路、ダルセーニョ(楽譜で「戻ってまた繰り返す」を意味する演奏記号)といった言葉が示すのは、前に進んでいるはずなのに抜け出せない状況だ。「くりかえす」や「ふらくたる」の連呼も、その終わらないループを強く印象付けている。

ドアの先に“自分の背中”を見る場面は、今の自分が過去の延長線上にいることや、変わりたいのに変われないもどかしさを感じさせる描写のように思える。また「鉄臭い酸素 / 届かないSOS」といった表現からは、息苦しいほどの閉塞感が伝わってくる。今作はホラー要素だけでなく、「抜け出せない日常」や「堂々巡りの不安」を音と言葉で見事に表現した楽曲だと言える。ミュージックビデオでも、誰もいない無機質な空間をさまようような映像演出が用いられており、楽曲の持つリミナルスペース的な不安感を視覚的にも強調している。

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