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「フリースタイルダンジョン」の仕掛け人Zeebraが語るMCバトルの歴史

左からZeebra、KEN THE 390。
約1か月前2024年04月08日 10:01

ラッパーのKEN THE 390がホストとなり、MCバトルに縁の深いラッパーやアーティストと対談する本連載。EPISODE.6の前編では、ゲストのZeebraがフリースタイルとの出会い、「B-BOY PARK」の舞台裏などについてエピソードを語った。

後編では、バトルブームの火付け役となった番組「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」「フリースタイルダンジョン」立ち上げの裏話、フリースタイルのプロリーグ化を掲げる「FSL(FREE STYLE LEAGUE)」、さらにこれからのシーンについて語り合う。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 斎藤大嗣 ヘアメイク(KEN THE 390) / 佐藤和哉(amis)

メディアをどう使ったら、ヒップホップが広まるのか

──「B-BOY PARK」(BBP)のMCバトルは2003年以降、MCバトルイベントの主役の座を「ULTIMATE MC BATTLE」(UMB)に譲るような形になりましたが、それはどう見えていましたか?

Zeebra 「UMBがバトルのフィールドを補完してくれてるから、もう任せていいんじゃないですか?」とAKIRAくん(CRAZY-A)に言った覚えがある。誰かが全部のパートをやらなきゃいけないもんじゃないし、逆にいろんな人たちが補い合うのがベストだから、MCバトルはもうUMBに任せればいいでしょって。ただバトルは見てたよ。時代は飛ぶけど、R-指定の存在は大きかったもん。UMBで三連覇したときのRは、KREVAがBBPで三連覇したときみたいな無双感があったじゃない? 晋平太が先鞭をつけた“バトル強者”という存在を、Rがもっと広く明確に、確固たるものにしたことで、“バトルヒーロー”という存在が生まれたんだなと思った。

KEN THE 390 Rはバトラーとして無敵だったし、当時の試合は今でもコンテンツ力が超高いと思うんです。でも、バトル全体が今ほどの知名度を持ってなかったし、Rの存在も含めて、まだまだアンダーグラウンドだったなって。

Zeebra 本当に時代はあるよね。「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」(「高ラ」)だって「BSスカパー!」で始まったじゃない? 「BSスカパー!」なんて……なんてってことはないけど(笑)、たまたま家にケーブルが入ってて「あ、こんなチャンネルあるんだ」ぐらいの感じだったし、今考えたらだいぶ視聴へのハードルが高い。でも、あの時代はギリギリまだメディアが新しいアプローチをできた時代だったよね。

KEN 「高ラ」はYouTubeで拡散された部分も大きかったですからね。

──「BAZOOKA!!!」というメディアのコンテンツの制作力と、YouTubeというプラットフォームの連携は大きかったですね……とはいえ違法アップロードではあったんですが。

Zeebra 「メディアをどう使ったら、ヒップホップが広まるのか」は、ずっと考えてきたことなんだよね。あんまりピリッとしなかった「シュガーヒルストリート」(※2006年から2007年まで日本テレビで放送されていた音楽番組。Zeebraは司会を務めた)とかもあったからさ(笑)。

KEN みんな観てましたよ!(笑)

──僕も取材に入ってましたから(笑)。

Zeebra わはは! 番組自体は面白かったし、チャレンジングではあったんだけど、時代とマッチはしてなかった。そうやって手を変え品を変え、いろいろやってきたけど、「高ラ」がバズったときは「バトルはこんなに時代と相性のいいコンテンツだったんだ」と正直驚いたね。

完全に新しいリスナーを開拓した「高校生RAP選手権」

──「高ラ」へのZeebraさんの関わり方を改めて教えてください。

Zeebra もともと俺に密着取材でピタ付きしてたフジテレビのプロデューサーがいて、俺が(真木)蔵人とツルんでた流れで、彼から「蔵人を司会にしたい」という話が来て。俺はヒップホップに絡んだ内容のときには出てって、いろんなラッパーをスタッフに紹介したりしてさ。その時期は「学校へ行こう!」みたいなことと、ヒップホップを絡めたような企画をやりたいなと思ってた。それこそいろんな学校に行って、ヒップホップダンスをちゃんとレクチャーしたり、DJやラップを教えるみたいなことをやりたくて。というのも、当時はヒップホップ全体の年齢層がかなり上がってたんだ。

KEN わかります。若手の数が減ってきていたし、注目もされにくかった。

Zeebra それ以前は20代前半どころか、10代もいっぱいいたのに、「あれ……ラッパーもリスナーも30代以上ばっかりだし、高校生なんて誰もヒップホップ聴いてねえぞ」という状況になってた。それがとにかく不安だったし、若い世代をなんとかヒップホップに呼び込むべく、若い世代のためのヒップホップコンテンツを作ろうとしてたんだ。その中で「BAZOOKA!!!」のスタッフにDARTHREIDERと仲のいいやつがいて、「MCバトルとかってどうなんですかね?」という話が出てきて。それで「確かにU-20とかもあったりするから、高校生でもできるかもしれないけど、どのぐらい絶対数がいるかわかんないな」みたいな。最初はそれぐらい手探りな感じだった。

KEN 今からすると隔世の感がありますね。

Zeebra 本当だね。で「まあ、とりあえずやってみましょう」と始まったのが1回目だった。それで川崎の、やつらの先輩を経由して知り合ったT-PablowやYZERRに声をかけて。2人は当時バトル未経験だったから、KM-MARKITに特訓してもらったりしてさ。

──そんな流れがあったんですね。

Zeebra で、いざ収録したら「なんですか! このエモさ!?」みたいな。それで「これは注目されるかもな」という予感はしてたんだけど、あんなにすごい勢いで急拡大したのは予想外だった。

──「BAZOOKA!!!」は生中継でタトゥーを入れたり、宗教やエロ、陰謀論など、かなりアンダーグラウンドな内容を放送していましたね。

Zeebra 「実話ナックルズ」のテレビ版みたいな感じだよね(笑)。

──制作陣には堀雅人さんや岡宗秀吾さん、佐々木堅人さんなど、ヒップホップシーンともつながりのある方が顔をそろえていたので、「面白くなる」とは思ってたけど、ただ、その面白さのベクトルがどこに向くのかは、「高校生RAP選手権」というタイトルを聞いたときは不安でもあって。

Zeebra だから「学校へ行こう!」みたいなティーン向けの内容をイメージしてたとはいえ、そこで「B-RAPハイスクール」みたいなコミカルなものには絶対にしたくなかったし、そういう存在は完全に知らないふりしてた(笑)。

──でも、そういった構成をイメージしていた人は多かったと思います。

KEN 当時のラップは、マスに届けるために曲自体を丸くするとか、そういう手法を取る場合が多かったですよね。「高ラ」も「高校生同士がラップバトルをする」というパッケージ自体はキャッチーだったと思います。でも、内容はMCバトルをそのまま放送するコアなものだったし、発想の転換が大きかったと思うんですよね。

Zeebra “ヒップホップのビートに歌謡曲の歌詞が乗る”んじゃなくて、“歌謡曲に超ハードコアなリリックが乗る”感じだよね(笑)。そして、結局それがマスに刺さった。しかも、ヒップホップリスナーよりも先に、普通の高校生とか、ラップに興味がないであろう層に響いてバズったのも大きかった。

KEN 完全に新しいリスナーを開拓したし、それが今につながる道になっていますね。

Zeebra 本当だよ。そう思えば思うほど、若い子たちが大切なんだよね。これからも若い子がいれば、ずっとこのままシーンは存在し続けるし、若い子が途切れる時間を作ってはいけない。

──なぜ「高ラ」が始まる時期は、若い子が途切れていたんでしょうか。

Zeebra ヒップホップの面白さの1つに、“アカデミックな部分”があるじゃない。「この曲は実はあの曲を引用してるんだよ」みたいな、知識の楽しさというか。当時はそれが行きすぎて、知ってる人同士で楽しんで、知らない人をどんどん置いていった部分はあると思う。

──排他的な、内輪的な部分は自省も込めて感じます。

Zeebra だから、あの時期はそういうヒップホップ的な楽しみのほかに、もっとわかりやすい入り口もあるべきだったし、それが「高ラ」の果たした大きな役割だったよね。俺だってヒップホップを聴き始めた頃は、知識なんてなかったわけだからさ。それは全員そうなんだから。

MCバトルブームに火を付けた「フリースタイルダンジョン」

──「高ラ」に続き「フリースタイルダンジョン」がスタートしたことで、MCバトルブームが本格化します。その状況をどう見ていましたか?

Zeebra 昨今の日本のヒップホップブームには、大きく2つの由来があると思うんだ。1つは「高ラ」をはじめとするMCバトル由来、もう1つはKOHH以降の、ストリートとファッションやアートが密接につながる、カッコいいしゃれたものとしてのヒップホップ。その2つは2012、13年ぐらいの、ちょうど同じ時期に盛り上がったし、これは2つの武器を手に入れたなと。

KEN 「ダンジョン」を始めたときに考えていたことはありますか?

Zeebra 「ダンジョン」は民放とABEMAだから、本気でわかりやすさを考えた。で、それを考えすぎたせいで、最初はラッパーを山車に乗せて旗持たせたりしてさ。山車が止まったときに、(慣性の法則で)ユラっとするのがとにかくカッコ悪すぎた(笑)。

KEN でも、T-Pablowに聞いたら「全然気にしてなかった」って言ってて(笑)。

Zeebra わはは! YUTAKAくんが「ターンテーブルの上に寿司を乗っけて回転寿司やってください」とかテレビマンに言われてた時代を知らない世代だからな(笑)。ただ、山車は別にしても、放送の中でバトルやラップの魅力は当然として、“そこで何が行われているか”という根本を伝えたかったよね、番組として。

KEN 確かに、MCバトルはパッと見ただけでは、何が行われてるかは瞬時に理解しにくいタイプの構造ではありますね。

Zeebra 格闘技みたいに「パンチが当たったから倒れた」みたいな、わかりやすさはないからさ。

──「何が起こったのか」「何がすごいのか」という共通言語や理解度が必要という。

Zeebra それをすぐにわかってもらうために、テロップが必要だったんだよね。バトル中に歌詞のテロップを入れるのは絶対で。なんだったら韻の部分に色を付けようと思ってたぐらい。

KEN それはわかりやすいですね。

Zeebra それによって、“今何が行われているのか”がわかりやすくなると思ったし、ジャッジ陣の解説を入れることで、“何が基準なのか”も伝わりやすくなるなと。俺らだってバトルの言葉を聞き取れないことあるじゃん。

KEN ありますね。

Zeebra ラップに耳が慣れてない人が一発で聞き取るなんて、なおさら無理だから、テロップは入れようと。目論見通り、視聴者に伝わったのがうれしかったね。「ラッパーってすごいんですね!」とか超言われたもん(笑)。

KEN 「頭いいんですね!」とか言われましたね(笑)。

Zeebra 「即興ができないラッパーでも、みんな家でがんばってリリックを書いてるんですよ」という話が、ちゃんと伝わったというか(笑)。少なくとも「チェケラッチョかヤンキーか」みたいな、ザックリした見方はかなり薄れたと思う。

KEN そもそも「ダンジョン」の企画はどうやって始まったんですか?

Zeebra 「高ラ」を卒業したラッパーが出られるメディアが欲しかったんだよね。ほかのMCバトルはメディアでは展開されてないから、その場を作るべきだなと。それで自分で企画書を作って。自分でも民放でバトルをやりたいと思ってたし、藤田(晋 / サイバーエージェント社長)くんも何か一緒にやりたいという話をしてたので、この企画を持っていったら、それが通ったという感じ。

KEN 「ダンジョン」は、「チャレンジャーがモンスターに挑む」、「3ラウンド制」のような番組ならではのシステムがありましたが、その発案は?

Zeebra 俺の企画書の段階で、「フリースタイルダンジョン」というタイトルはもちろん、3ラウンド制、クリティカルみたいなアイデアはすでにあった。あとはマッチメイク制、階級制というのもあって、どちらかと言えば、今の「FSL(FREE STYLE LEAGUE)」の方式に近いかな。それをテレビ制作者側とブラッシュアップする中で、「ダンジョン……RPGっぽいのはどうですかね」「ラスボスがいると面白いかも」という話に進んでいって。で、その企画会議の最中に般若に電話して、「こんな企画を考えてるんだけど、どう思う?」「面白いですね」「よし決まり! 般若がラスボスです」みたいな(笑)。

KEN 般若さんがラスボスという構図は誰も想像できなかったですよね。

Zeebra やっぱり般若がUMBで優勝した瞬間は俺も泣いたし、ドラマを生める男だから、ラスボスは任せられると思った。あと、RPGだと魔法が得意、オールラウンダー、攻撃力が高いみたいな、いろんなキャラがいるじゃん。そういうバランスを考えながら、モンスターを選んでいったんだよね。ラスボスの般若、総合力最強のR-指定、若手ホープのT-Pablow、UMB含めてキャリアのある漢、ジョーカーとしてサイプレス上野、みたいな。

──まさにヨコハマジョーカー(笑)。

KEN モンスターの人選で「これは本気なんだ」とわかったし、出る側も出やすくなった部分がかなりありますね。

Zeebra モンスターは本当にがんばってくれたよ。般若はモンスターのリーダーとして、モンスター側の苦情を吸い上げて、俺ともいろいろな話し合いをしたし。「モンスターが5人じゃキツい」という話がモンスター側から出て、それでCHICO CARLITOとDOTAMAが入ったんだ。

──あれはモンスター側からの要請だったんですね。

KEN 3ラウンド制というシステムは、すごく効果的でしたね。バトルは基本的に一度でも負けたらその日は終わり。でも3ラウンド制は、1回負けてもまだ戦えるんですよね。

──クリティカルは一発KOですが、票が割れれば次ラウンドに進み、負けを挽回することができる。

KEN ちょっと格闘ゲームっぽいですよね。1回で勝負が決まったら味気ないけど、一度負けても次戦で戦略を組み立て直すこともできるし、観る側もどうなるのか考える猶予がある、みたいな。

Zeebra 1回で勝負が決まるのは、スピーディな反面“流れていっちゃう”感じがあったんだ。それで試合が軽く思われることになるのは嫌だったから、ラウンド制を取り入れて。あと、やっぱりビートの得手不得手は確実にあるから、それも平等にしたかったね。

「BATTLE SUMMIT」参戦と「FSLトライアウト」での誤算

──Zeebraさんは、2022年に日本武道館で行われた「BATTLE SUMMIT」に出場されます。

Zeebra 「逃げ切れなかった」っていうのが正しいのかな(笑)。俺の性格上、あれ以上バトルから逃げられなかった。それに、こんなにMCバトルのプロジェクトに関わる以上、その現場にもちゃんと参戦しないと、いい加減もうカッコつかないなとずっと感じてはいたし、俺自身、本気でやってみたい、本気だったらどこまでいけるのか興味があった。もし俺が出ることでみんなが沸いてくれて、面白いと思ってくれるんだったら、そんなうれしいことないからね。

──負けることによるリスクも考えられたと思いますが。

Zeebra コテンパンに負けたり、途中で詰まって何も言えなくなるようなダサダサのバトルをしたら、マイナスにしかならないし、ラッパーとして終わるとは思ってた。でも、負けるとしてもちゃんと全力を出し切ったなら、観客はもちろん、俺自身も納得できるだろうなと。それでUZIと出場前にスパーリングをした……けど、そこまで根を詰めてはやらなかったかな。どちらかと言えばイメトレ。殺しのラインを頭の引き出しに入れておいて、それをバッチリのタイミングで出せるように心を整理していたというか。

KEN バトルでは漢さんとDOTAMAさんに勝利しましたね。

Zeebra 2人とは縁もあるし、ぶつかったときのシミュレーションができてたのは大きかった。だけど、Authority戦は完全にノープラン。でも、彼との試合が一番評判がいいのは、そういう潔さとか、生の部分が垣間見えたからなのかな。

──そして2023年にはチェアマンを務める「FSL(FREE STYLE LEAGUE)」内のプログラム、「FSLトライアウト」の予告動画を巡って、端的に言えば“炎上”が起きます。Zeebraさんがさまざまな試行錯誤を繰り返してきたことは、今回のインタビューでも伝わると思いますし、「FSLトライアウト」もその1つではありますが、一方で口論、諍い、暴力が表出した予告動画には、個人的にも強い違和感を感じました。

Zeebra はっきり言えば“見誤り”があった。FSLは「BreakingDown」(BD)と運営の母体が同じだから、まず運営上の連携がある。俺もBDが好きだし、梵ちゃん(梵頭)もBDに出場したりするから、視聴者層が近いと思ってたし、それを連動させることができたら、より外に広がるんじゃないかという目論見があったんだよね。だけどフタを開けてみたら、BDへの認知度やプロップスが、MCバトルファン、ヒップホップファンの中では予想以上に低くて、BD的な煽りへの拒否反応が強かった。完全な誤算だったね。

──それは出場者も然りだったんではないでしょうか。

Zeebra そう。「FSLトライアウト」に応募してくれたラッパーは、シリアスにラップに取り組みたい人も多くて、BD的なやんちゃなタイプは想定よりも少なかった。だけど映像の制作側が、見た目が派手なほう、そこでのいざこざのほうにより強くフォーカスしたから、やんちゃな側が余計に悪目立ちしてしまって、正直言えば最初にイメージしていた方向とはだいぶ違うところに着地してしまった。だから、構成のチェックや映像の確認も、チェアマンである俺がするべきだったという反省がある。

KEN なるほど。例えば「ダンジョン」で、T-Pablowが晋平太の胸ぐらをつかんだシーンも、そこだけを切り取ったら、炎上してた可能性があると思うんです。でも、試合の流れを見れば、それだけではないことがわかるし、「FSLトライアウト」もそういう部分があったのかなと、本編を観て思いました。

Zeebra FSLに関して、俺はチェアマンではあるんだけど、完全な統括ディレクターのような立場ではないんだよね。ただ、対外的な立場にいるならば、責任は俺が持つべきだし、俺がステートメントを出したり、叩かれたりするのも仕方ないと思ってる。

KEN 「FSLトライアウト」の件は、炎上とひと言で片付けるのは乱暴だなって。あの事象が起こったことは、1つの問題提起になったし、それに対しての意見を、アーティストもリスナーもSNSを中心に発信して、Zeebraさんもステートメントを通して、どんな意図があって、ここが間違ってた、こう変えていく、という言葉を残した。そういう議論が生まれたのは、すごくヒップホップ的だと思ったんですよね。

Zeebra 当事者である俺が言っちゃいけないというのを前提としたうえで発言をするけど、あの議論はすごく健康的で、うれしいことだった。やっぱりヒップホップは文化だなと思ったよね。

KEN 美化してると思われるかもしれないけど、あの事象が無視されたり、何も議論が生まれなかったりするよりは、炎上することでコミュニケーションが生まれたのは、健全だなと思いましたね。

Zeebra 世の中で起きていることに対して、どう捉えて、どう対処していくかを自分の頭で考えることがヒップホップだと俺は信じているし、みんなもそうなんだなと改めて感じたな。

KEN 全員がシーンの参加者であり、当事者であるという。

Zeebra 俺のやり方が違うと思ったら、そう言ってほしいし、俺もそれが考えるきっかけになるからね。

「世界で一番デカいMCバトルシーンは日本にある」と言わせたい

──では、これからのFSLにはどのようなイメージを持たれていますか?

Zeebra 2023年までは大会を開く、ランキングを作るみたいな動きが中心だったけど、2024年はもっとコンテンツや内容を膨らませていこうという話になってる。トライアウトも含めて、積極的に新人の発掘もしたいよね。

KEN ニュースターの発見や、今の既存のMCバトルシーンではスポットが当たりきらないラッパーをどうやって見つけるかは、大事になりそうですね。

Zeebra まさにそれ。新陳代謝を起こしたい。あとはバトルだけで食える人間を生みたいね。それにはFSL自体のマネタイズの問題は当然大きくなる。ランキング制度を含めて、コミットするMCの活躍に見合った賞金を渡すために、スポンサーを見つけたりもしないといけないし、そういう代理店的な動きも含めて、もっとMCバトル業界にお金を流せるようにしたい。それがバトルを盛り上げるモチベーションには確実になるだろうし。

──ネガティブな意味ではありませんが、“産業としてのMCバトル”を成立させるというか。

Zeebra ただ、それが行き過ぎると、炎上させて収益を得るというビジネスモデルにもつながってしまう。俺はバトルでそれをやるのは不本意だと思ってるし、スレスレのことをあえてやりたいとは思ってないけど、それが数字につながるのも、1つの事実だからさ。そのバランスを考えないといけないよね。

──“ヒップホップピュアネス”と“話題性と数字”とのバランスですね。

Zeebra 俺を古くから知ってくれてる人は、俺がどう考えているかわかってくれると思うけどね。でもFSLでは新しいことをどんどんやらないといけないと思ってる。MCバトルシーン全体のためにもね。

──これからのシーンはどのように進んでほしいと思っていますか?

Zeebra 大きくなるに越したことはないと思う。もちろん、大きくなることで薄まって終わっていく、という流れには気を付けるべきではあると思うけど。それでもMCバトルで何万人も集められる国なんて、ほかにはないでしょ。「Red Bull Batalla」ぐらい?

KEN あれはスペイン語の話者が対象だから、そもそも母数が大きいですからね。

Zeebra だから、ここまでいったら「世界で一番デカいMCバトルシーンは日本にある」と言わせたいよね。それぐらいの気概を持ちたい。日本に関して言えば、“MCバトルだけで完全に成立する”と“ヒップホップの一部として成立する”の2パターンがあると思うんだよね。今までは後者をメインに考えていたけど、前者の考え方もあると思うんだ。

──いわゆる“ヒップホップイズム”よりも、“ラップ / バトルという表現形態”が中心になるというか。

Zeebra そこにどうFSLが関わるのか、すくい上げるのか、距離を置くのか、とか考えることはたくさんあるよね。「Red Bull Roku Maru」みたいな持ち時間制も話題になってるけど、あの形式だとトップオブザヘッドには適正がなくても、構築したリリックなら自信がある人間も出られるじゃない?

KEN ディスることが苦手なラッパーも、それを聴くのが苦手なリスナーもいるし、そういう人にアプローチしやすいコンテンツですよね。

Zeebra そうそう。いわゆる“バトル派”と“音源派”の溝も埋められるんじゃないかなって。そういう選択肢を増やすことが、これからは必要だと思うし、それはFSLでも積極的にやっていきたい。

KEN より広いアプローチを考えているんですね。

Zeebra 俺は「とにかくヒップホップを盛り上げたい」という一心で生きてるから。MCバトルも盛り上げると同時に、音源や“ヒップホップゲーム”も盛り上げていきたいとずっと思ってるからね。

KEN ちなみに、バトルへの参戦はこれからも考えていますか?

Zeebra まあ、オリンピックより頻度は低いかもしれないけど。まだKENとも戦ってないわけだしね(笑)。

KEN 楽しみにしてます(笑)。

Zeebra(ジブラ)

東京都出身のヒップホップ・アクティビスト。キングギドラのフロントマンとして1995年にデビューする。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。日本のヒップホップシーンの顔役として活躍し、2014年に自身のレーベル「GRAND MASTER」を設立。同年夏には自身がプロデュースするヒップホップフェス「SUMMER BOMB」をスタートさせた。2015年にはZeebraがオーガナイズとメインMCを務めるMCバトル番組「フリースタイダンジョン」がテレビ朝日で放送開始。2017年、ヒップホップ専門ラジオ局「WREP」をインターネットラジオとして開局した。東京都渋谷区の「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」を務めるなど、その活動は多岐にわたる。

Zeebra -Information Headquarters-

KEN THE 390(ケンザサンキューマル)

ラッパー、音楽レーベル・DREAM BOY主宰。フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年、アルバム「プロローグ」にてデビュー。全国でのライブツアーから、タイ、ベトナム、ペルーなど、海外でのライブも精力的に行う。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員として出演。その的確な審査コメントが話題を呼んだ。近年は、テレビ番組やCMなどのへ出演、さまざまなアーティストへの楽曲提供、舞台の音楽監督、映像作品でのラップ監修、ボーイズグループのプロデュースなど、活動の幅を広げている。

KEN THE 390 Official

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