楽曲のリズムやノリを作り出すうえでの屋台骨として非常に重要なドラムだけど、ひと叩きで楽曲の世界観に引き込むイントロや、サビ前にアクセントを付けるフィルインも聴きどころの1つ。そこで、この連載ではドラマーとして活躍するミュージシャンに、「この部分のドラムをぜひ聴いてほしい!」と思う曲を教えてもらいます。第20回はアヒト・イナザワさんが登場。多くのフォロワーを生み出したロックバンド・NUMBER GIRLのドラマー、そしてVOLA & THE ORIENTAL MACHINEのフロントマンとして唯一無二の存在感を放つアヒト・イナザワさんが「相当影響受けた」と語る曲は?
構成 / 丸澤嘉明
ドラムフレーズが好きな曲とその理由
The Who「Won't Get Fooled Again」
キース・ムーンのドラムはどこを切り取っても面白い、とりあえず全体を聞け。
ドラムと言うと、リズムキーパー的な意味合いが強いと思うのですが、彼のドラムはまさに歌なんですよね。
というか、The Who自体すごいバンドなんですよ。
どのメンバーも目が離せないというか、こんなに自由にやっても音楽というものは成立するのかと深い感銘を受けました。
そして、見ていて楽しい。面白い。一番重要なところだと思う。
The Jimi Hendrix Experience「Purple Haze」
次は特にフィルイン関係ですね。
影響を受けたのがThe Jimi Hendrix Experienceでドラムを叩いていたミッチ・ミッチェル。
おそらくジャズドラマー上がりだと思うんですが、2小節を埋め尽くすようなフィル、ダブルパラディドル系の6連フィルを多めに使い、ジャズドラマーらしくルーディメンツを多用している。当時のロックバンドのドラマーとしては珍しいかと思います。
速めの曲のシングルストロークの2小節を埋め尽くすようなアクセントショットのフィルには相当影響受けましたけどね。めちゃめちゃカッコいいんよ。
THE ROOSTERS「We wanna get everything」
最後になるんですが、これが重要。
福岡というのは、僕が高校生の頃はどれだけ速いエイトビートを叩けるかがステータスなっていました。そのお手本になったのがTHE ROOSTERSの池畑潤二さん。
THE ROOSTERSは、当時の福岡のいわゆるめんたいロックとカテゴライズされていたようですが、私はちょっと違う感触を持っていて、池畑さんのドラムは確かにすごいエイトビートで、まさに戦車や貨物列車のようなんですが、その中に時折顔を出すラテン色があるんですよね。その感じめちゃめちゃ好きなんです。
こういう曲に簡略化したラテン風フレーズをはめ込んだのはまさに、すごいとしか言いようがないと思います。
自身でドラムフレーズをプレイする際に意識していること
歌をしっかり聴いて、そのメロに沿ったドラムのフレーズを考えています。もしくは曲全体の雰囲気。リズムキーパーとしてのドラムではなく、ドラムはメロディ楽器の1つとして考えています。
自身のプレイスタイルに影響を与えたドラマー
たくさんのリスペクトするドラマーはいます。青山純さん、中畑大樹くん(syrup16g、VOLA & THE ORIENTAL MACHINE、peridots)や8ottoのマエソン(マエノソノマサキ)、BOBOくん……やっぱり自分とは全然違うタイプのドラマーには憧れがありますね。
自分の個性を生かしつつ、彼らに近付けるようにがんばっていきたいと思います。
アヒト・イナザワ
1973年生まれ、福岡県出身のミュージシャン。向井秀徳、田渕ひさ子、中尾憲太郎とNUMBER GIRLを結成し、1999年5月にシングル「透明少女」でメジャーデビュー。4枚のスタジオアルバムなどをリリースしたのち、2002年にバンドは解散する。その後はVOLA & THE ORIENTAL MACHINEを結成し、ボーカル&ギターを担当。NUMBER GIRLは2019年7月に活動を再開したが、2022年12月に再び解散した。
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