RPGの金字塔「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲を吹奏楽アレンジで演奏するコンサートツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2024 with Siena Wind Orchestra」が、8月12日に東京・Bunkamuraオーチャードホールにてフィナーレを迎えた。
「子供の頃から慣れ親しんだ吹奏楽で『ファイナルファンタジー』サウンドを楽しもう」というコンセプトから発足した「BRA★BRA FINAL FANTASY」は2015年から2019年まで毎年行われていたコンサートで、コロナ禍を経て今年5年ぶりに復活。栗田博文指揮のもとシエナ・ウインド・オーケストラが歴代の「ファイナルファンタジー」シリーズの音楽を壮大なアンサンブルで奏で、曲の合間には制作総指揮の植松伸夫が、MCの山下まみと軽快なトークを繰り広げた。
第1部 レポート
開演と同時に現れた植松は、「オーケストラとはいえ、一緒に大騒ぎするコンサート」と「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」のコンセプトを説明。続いて、コンサートを盛り上げる“ブラボー係”を募り始めた。複数の“ブラボー係”が植松から任命されたところで、入れ替わるようにオーケストラの団員たちがステージへ。「ファイナルファンタジー」の人気キャラクター・サボテンダーを小脇に抱えた栗田が登場すると、ホール内に割れんばかりの拍手がこだました。
コンサートは2部構成で展開され、第1部はダイナミックなサウンドを打ち出した「FFバトル2メドレー」で幕開け。スリリングな死闘を想起させる始まりから、胸がすくような「勝利のファンファーレ」まで、観客は自身のゲーム体験を思い浮かべながらオーケストラが奏でるサウンドを味わった。その後もサックスが美しいメロディを紡ぐ「Eyes On Me」、木管楽器が主役となる人気曲「ビッグブリッヂの死闘」などが序盤に連投され、ホール内は高揚したムードに。
なお、「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」は観客が演奏に参加できるのも特徴。第1部ではリコーダーを持参した観客とオーケストラが「FFメインテーマ」をセッションするコーナーが設けられ、美しいリコーダーの音色と勇壮なオーケストラサウンドが溶け合いホールを満たしていく。ステージと客席の垣根を超えた力強い一体感に、「ブラボー!」の声があちこちから上がり、自らリコーダーを吹いていた植松も「いい演奏でしたね」と笑みを浮かべた。さらに第1部では、観客のブラボーの声と拍手の大きさで演奏曲を決める企画も実施。「FFIX」より「ハンターチャンス」、「FFX」より「シーモアバトル」が候補として選ばれ、植松いわく「2dB勝っていた」という後者の曲がパフォーマンスされ客席を大いに盛り上げた。
第2部 レポート
第2部は、クラリネット四重奏による「Fragments of Memories」、サックス奏者とパーカッショニストたちがコミカルな掛け合いを見せつつ、情熱的な重奏を聴かせる「Vamo'alla Flamenco」と少人数編成でのパフォーマンスでスタート。中盤では「これまでフィーチャーされていなかった曲に光を当てる目的」という植松の紹介から、発売25周年の「FFVIII」から「Blue Fields」、発売30周年の「FFVI」から「街角の子供達」の2曲が披露される流れに。団員がスタンバイしたタイミングで、「FFVII」の主要キャラクター・セフィロスのぬいぐるみを抱えた栗田が登場。彼はサボテンダーの横にセフィロスを座らせると、美しい旋律が光る鷹揚な「Blue Fields」、ハープの音色が柔らかく響く「街角の子供達」の指揮をとった。
これまで「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」ではインストゥルメンタルを中心に演奏されてきたが、今回のツアーではボーカル曲も演奏する試みも。「FFX」の主題歌である「素敵だね」がオーケストラの芳醇なサウンドと、植松が率いるバンド・conTIKIのボーカリスト暁 -Xiaoの包容力のある歌声で届けられ、オーディエンスに夢見心地のひとときを提供。植松はそのクオリティの高さに「これがいけるなら『Eyes On Me』もできるな……。ブラブラはやるたびに次のアイデアが浮かぶ!」と次回の「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」にも意欲を燃やしていた。
本編を締めくくったのは、セフィロスのテーマ曲である「片翼の天使」。戦慄的で荘厳な1曲が迫力たっぷりのオーケストラサウンドで再現され、オーディエンスを圧倒していく。その余韻が冷めやらぬ中で始まったアンコールでは、conTIKIとシエナ・ウインド・オーケストラが「FFVII REBIRTH」のテーマソング「No Promises to Keep」でコラボレーション。「ファイナルファンタジー」最新作の楽曲も“ブラブラ”仕様にアレンジする特別なパフォーマンスでオーディエンスを唸らせた。その後、2時間半に及んだコンサートもいよいよ大詰めに。最後は楽器を持参した参加者たちをステージに上げての「マンボde チョコボ」の大合奏だ。子供から大人まで、さまざまな楽器を手にした観客がオーケストラを囲むように立ち、にぎにぎしい演奏で5年ぶりとなる「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」のクライマックスを彩った。
植松伸夫(制作総指揮) コメント
久々にやってみましたけど、本当に楽しいコンサートでした。終わってから僕のところにいろいろな方から連絡が来るんですけど、嘘偽りなくみんな楽しんで感動してくれた意見が多かったです。ぜひともまた開催したいです。いろんな策もありますので(笑)
栗田博文(指揮) コメント
お疲れ様でした!
5年ぶりの開催でしたが、始まってみたらその時間の経過を感じなかったですね。これまでの曲は5年前がすぐ蘇る感じの演奏をしてくれたし、新しく演奏する曲もあったので新鮮さもありました。シエナの皆さんは回数を重ねるごとに演奏に深みが増すというか、新しい発見をちゃんと自分たちで見つけていて……回数を重ねる良さというのはそういうこと思います。今日の千秋楽も1回目と2回目両方とも違う良さがありました。それこそが生演奏のすばらしさであり、お客さまと一緒にコンサートを作ってる感覚があったので、本当に楽しいツアーとなりました。
音楽ってすてきだよね、音楽家でいてよかったな、と回数を重ねるたびに思えてきます。シエナの皆さんも生き生きしているし、毎回新鮮な演奏を一緒にやらしてもらってるので、これからもBRA★BRAでいろいろできたら良いなと思っています。
佐藤拓馬(コンサートマスター) コメント
初めてツアーに全部参加したのですが、昨日の夜から「あ、終わっちゃう……」と思って今日を迎えました(笑)
僕は、ファイナルファンタジーをずっとプレイしてたので、特に「ザナルカンドにて」はほんとに鳥肌、鳥肌って感じで……やばかったです……
会場の皆さんと一緒に作ってきたBRA★BRAの空気感というものができていて、すごいなと思いながら演奏していました。自分が楽しくなりすぎないようにだけは気を付けて(笑)、冷静さは1%いれて99%は興奮。本当に楽しかったので、また是非やりたいです。またやらないわけにはいかない!(笑)
山下まみ(MC) コメント
5年ぶりの復活ということで、5年前に来てくれた人はいるのかな?
5年前と同じような感じで盛り上がってくれるのかな?
そんな不安もありましたが、
初日の大阪公演のバトル2メドレーから「ブラボー!」の歓声が巻き起こり、「ああ、帰ってきたんだ…」と安堵と共にあの時の興奮と記憶がパッと蘇りました。
こんな自由でいいの?というくらいみんなが楽しいを追求しているブラブラだからこそ、時が経っても色褪せず、楽しめるんだなと思います。
あと10年は続けたいな~笑。
セットリスト
「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2024 with Siena Wind Orchestra」2024年8月12日 Bunkamuraオーチャードホール
第1部
01. FFバトル2メドレー
02. Eyes On Me(FFVIII)
03. ビッグブリッヂの死闘(FFV)
04. FINAL FANTASYメインテーマ(FFシリーズ)
05. シーモアバトル(FFX)
06. ルーファウス歓迎式典(FFVII)
07. The Man with the Machine Gun(FFVIII)
第2部
08. Fragments of Memories(FFVIII)
09. Vamo'alla Flamenco(FFIX)
10. Blue Fields (FFVIII)
11. 街角の子供達(FFVI)
12. 素敵だね(FFX)
13. ザナルカンドにて(FFX)
14. 片翼の天使(FFVII)
<アンコール>
01. No Promises to Keep(FFVII REBIRTH)
02. マンボ de チョコボ(FFV)