ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回訪問するのは、アイドル育成シミュレーションゲーム「学園アイドルマスター」のプロデューサーを務める小美野日出文さんの仕事場です。
前編となるこの記事では、今後ゲームへの実装を予定しているイラストの監修会にのっちさんが潜入。この連載ではこれまでもさまざまなゲーム会社のオフィスを見学してきましたが、初めて「本当に仕事をしているところ」を見させていただくことになりました。
取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 文 / 橋本尚平 撮影 / 上山陽介 ヘアメイク(のっち) / 大須賀昌子 題字 / のっち
4面LEDで「学園アイドルマスター」のゲーム内ライブを疑似体験
今回やってきたのは「学園アイドルマスター」の販売元であるバンダイナムコエンターテインメントの本社。この連載では第11回で同社の「テイルズ オブ アライズ」について取材させてもらったことがあり、のっちさんがここに来るのは2度目です。
2年前は「アイドルマスター」シリーズのプロデューサーの部屋をイメージしたブースや、歴代「パックマン」グッズが飾られたコーナーがあったエントランス前の展示スペースですが、このときとは雰囲気がガラッと様変わり。「学園アイドルマスター」の映像が流れ、9人のアイドルの等身大アクリルパネルが並んでいます。
せっかくなのでアイドルたちのセンターの位置に立ってもらって撮影することに。のっちさんは「図々しい~(笑)」と恥ずかしそうにしつつ、「学園アイドルマスター」のアイドルになった気分でポーズを決めてくれました。
続いて訪れたのは、前回の取材でも見学させてもらった、床と壁の4面に高画質LEDディスプレイを常設しているMIRAIKEN studio(未来研スタジオ)。ここではxR技術を駆使した、ゲームやアニメの世界に入り込んだかのような没入感のある映像を体験することができます。
のっちさんがスタジオの中に入ると、そこには初星学園の教室そのもののような世界が広がっていました。
今回はこのスタジオで、アイドルたちのライブシーンを上映してもらいます。誰のライブを観たいか聞くと、のっちさんは「誰だろう……? やっぱり咲季ちゃんかな……? でもみんなのライブを観たいです……!」と選びきれない様子。そこで花海咲季、月村手毬、藤田ことねの3人の映像を流してもらうことになりました。
のっちさんはイベント公式グッズタオルを両手に持って、実際のライブさながらに大盛り上がり。藤田ことねの「世界一可愛い私」のライブシーンでは、楽しそうに「かわいい!」とコールしていました。歌って踊るアイドルたちを大画面で観て、のっちさんは「確かに動きが自然ですごいわ」と納得。
撮影した写真をカメラマンに見せてもらったのっちさんは「どこにいるんだろう?っていう不思議な画(笑)。本当にライブに来て楽しんでる人みたいですね」と満足そう。疑似体験ではあれど、アイドルのライブを観ているのっちさんというなかなか見ることができない写真になりました。
移動の途中、廊下のディスプレイに「学園アイドルマスター」のグッズが飾られているのをのっちさんが発見。アイドルたちのアクリルスタンドやぬいぐるみなどが並んでいます。
各アイドルの1stシングルのパッケージを覗き込んだのっちさんは、そのジャケットデザインのコンセプトに気付きました。「あれっ! よく見たらこれ自撮りじゃん! かっわいい!」
どこか青春のエモさを感じさせる、自撮り風のジャケットというアイデアをのっちさんは絶賛。それぞれのアイドルが出たイラストを見ながら「手毬のジャケ、よく見たらカメラに指が写り込んでる! かっわいい!」「(紫雲)清夏のジャケ、やっぱりギャルは自撮りを撮り慣れてますね! かっわいい!」と、もはや「かわいい」しか発せなくなってしまったのっちさんでした。
定例会を見学「そんな先のことまで今から決めてるんですね……!」
のっちさんが会議室に案内されると、そこにいたのはプロデューサーの小美野さんと、アシスタントプロデューサーを務める佐藤大地さん&山本亮さん。「学園アイドルマスター」を共同で開発を担当しているQualiArtsの岩本航輝さんと多田烈さんをリモートでつなぎ、5人でゲームの運用に関する定例会を行っていました。
この日の議題になっていたのは「シーズンイベントで、どのアイドルをどういうスケジュールで出していくか」「アップデートの内容やタイミングが集中してしまって、その後に予定しているイベントに影響して楽しみが損なわれないように、どうやってまんべんなくこのゲームを盛り上げていけばいいか」などなど。モニターに映る開発スケジュール表に記載された施策を何度も入れ替えて見比べながら、熱い議論が交わされていました。
企画の現場で交わされる議論の様子を見て、のっちさんもどことなく緊張した面持ち。「スケジュールってこんなに大事なことだったんですね。例えばガシャで同じアイドルをピックアップするにしても、順番によって印象が変わってくるし、複数のアイドルを分けてピックアップするか、一気にピックアップするかでも見え方が違うし。すごく勉強になりました。Perfumeでも何か応用できないかな……?」と、会議の内容に感銘を受けていたようです。
開発スケジュールの日付を見たのっちさんは、打ち合わせの内容が2026年の話だと気付いて「そんな先のことまで今のうちから決めてるんですね……!」とびっくり。アイドルたちが歌う曲は、ゲームに実装される1年以上前から楽曲制作を始めないとゲーム内の“Pライブ”の制作に影響してしまうそうで、「いつ誰の新曲をゲームの中で出していくのか」というのはかなり先まで決めているんだそうです。
イラスト監修会を見学「スピード感に驚きました」
開発会議が終わると、そのままイラストの監修会がスタートしました。イラストは「構図がわかるラフ」「着彩して詳細を描き込んだもの」「ほぼほぼ完成した清書」の3段階でチェックしているそうで、この日に行われていたのは清書に対する「何か問題のあるところはないか?」という最終チェック。アイドルたちのイラストが画面に映し出され、小美野さん、佐藤さん、山本さんが「問題ないです」「大丈夫です」と次々にチェックしていきます。
小美野さん、佐藤さん、山本さんはそれぞれでアイドルの企画を分担しており、イラスト確認の際も、誰がどのアイドルをチェックするのかが決められています。上がってきたイラストに対して3人は、「ラフのポーズを別案で検討したい」と指摘したり、
「今回のシナリオに合わせて考えると、完全にカッコいいほうに振り切った1案のほうがいいのかもしれないけど、かわいさを残した2案もアリではないか。個別のシナリオをどこまで拾うべきか」
「曲調がかなりはっちゃけていて元気な感じなので、それに合わせて開放感がある構図にしたほうがいいのではないか」
といった議論を展開。ハイスピードでチェックを進めつつも、こだわる部分は細部まで徹底的にこだわっていて、アイドルに対する思い入れの強さがうかがえます。
また、今後実装される予定のとあるアイドル衣装の監修では、ズラッと並んだ何十種類ものバリエーション案のイラストを見比べながら、小美野さんが「うーん、設定的には黒を印象づけたいので、もうちょいシンプルなほうがいいんだよな……。丈はもうちょっと長くていいと思う。あと、オーバーサイズじゃなくてサイズ感は体格に合わせて、学園の校風のイメージに寄せていきたい」と寸評。こうやってブラッシュアップを繰り返しながら、プロデューサーの頭の中にある完成形のイメージに近付けていきます。
監修会の終了後、のっちさんの「OKテイクを選ぶスピード感に驚きました」という感想に対して、小美野さんは「事前に目を通したうえで、それでもいつもはもっと時間がかかってるんですけど、今日はあんまり意見が分かれないものが多かったですね」とコメント。同じメンバーで企画当初から一緒に開発をしているので、最近は上がってくるイラストにも、そこまで方向性にズレがないんだそうです。
「この子はこんなことしない!みたいな解釈の違いはないんですか?」とのっちさんが聞くと、「解釈の違いは生まれたりしますね」と言って笑う小美野さん。そんな話し合いが白熱すると、長いときは監修会が3時間かかったりすると話してくれました。
実際の開発会議を目撃し、リアルなゲーム作りの現場を体験したのっちさん。このあとは小美野さんに会議室に残っていただき、アイドルたちの楽曲レコーディングの裏話や、ハイクオリティな映像が話題になっている“Pライブ”の秘密など、「学園アイドルマスター」に関するさまざまなことをインタビューします。後日公開の後編をお楽しみに。
<後編に続く>