今年で76回目を迎える大晦日の大型生特番「NHK紅白歌合戦」。この番組は毎回その年に活躍した豪華な顔ぶれが出場者としてラインナップされることもあって、「紅白出場」を目標に掲げて活動するアーティストも多く、年末が近付くたびに「誰が出場するのか?」という話題に人々の関心が寄せられる。
この記事では5人のライターに、今年の紅白の出場者予想を依頼。「初登場アーティストのうち3組」「特別企画」「紅組白組それぞれのトリ」という3つのトピックについて考えてもらった。これらの意見を参考にしながら、あなたも自分なりの出場者予想をしてみては?
構成 / 橋本尚平
※寄稿者を50音順に掲載
キムラ(ライター)の予想は……
初出場のうち3組
- aespa
- &TEAM
- CANDY TUNE
特別企画
- 大阪・関西万博企画(コブクロ「この地球の続きを」、Perfume「ネビュラロマンス」など)
- 放送100年特別企画(大森元貴「見上げてごらん夜の星を」、紅白出演者有志「アンパンマンのマーチ」「手のひらを太陽に」、Wakeys「それもいいね」、timelesz「勇気100%」など)
トリ
- 紅組:MISIA
- 白組:福山雅治
今年は例年と比べて初出場が有力視される歌手が非常に多い状況です。「Blue Jeans」や「ROSE」などが大ヒットした新生ガールズグループHANA、そのプロデューサーであり、自身の活動も一段と飛躍したちゃんみな、来年に東京ドーム公演を控えるFRUITS ZIPPER、改名後バラエティ番組を中心に大活躍のtimelesz、「革命道中」が国内外でチャートイン中のアイナ・ジ・エンド、アメリカの「コーチェラ・フェスティバル」への出演も話題となったXGなど……特に紅組において初出場歌手が続出する見込みです。なので今回はそれ以外の、出場の当落線上と思われる歌手を挙げてみました。
まずaespaですが、「MUSIC AWARDS JAPAN」で最優秀アジア楽曲賞を受賞しており、さらに8月には「SUMMER SONIC」に出演、そのタイミングで「Venue101」の特番が放送されました。2023年にNewJeansがほぼ同じ形で紅白出場(こちらは放送2日前のサプライズ発表でしたが)を決めていることからも期待できます。
また近年の紅白は、SEVENTEENやStray Kids、TOMORROW X TOGETHERなどグローバルボーイズグループを積極的に起用しており、そこで今年出場が期待されるのが&TEAMです。今年はグループ初のアジアツアーを成功させ、ますます勢いを増しているほか、昨年末には「みんなのうた」に楽曲提供。HYBE傘下のレーベル所属であることからも可能性は十分。もし出場が決まればメンバーのKと司会:今田美桜の「世界陸上コンビ」にも注目です。
そしてCANDY TUNE。FRUITS ZIPPERの初出場は確実として、今年のKAWAII LAB. 全体の躍進を考えると、もうひと枠あっても妥当だと思います。チャート実績のみだとCUTIE STREETのほうが有力ですが、48や坂道グループの前例を見るに、おそらくはカワラボ内での年功序列順で選ばれるでしょう。かつてゴールデンボンバーやももいろクローバーZが担っていた“盛り上げ役”として紅白に貢献してくれるのは、間違いなくCANDY TUNE「倍倍FIGHT!」だと思います。
大阪・関西万博をフィーチャーした特別企画も期待。オフィシャルテーマソングを担当したコブクロのほかにも、NTTパビリオンでの展示が話題を集め、年内で“コールドスリープ”を迎えるPerfume、あとは落合陽一「null²(ヌルヌル)」の映像コラボや万博会場からの生中継演出もありそう。
トリは今年もMISIAと福山雅治。どちらも長崎出身歌手として戦後80年の節目の年の紅白を堂々と締めくくるでしょう。
紅白歌合戦をひと言で表すなら「奇祭」。アイドルやバンド、歌謡曲や演歌……あらゆるジャンルの歌手が一斉に集い、感動的な場面から、時にはくだらなすぎて笑ってしまうような企画までもが目まぐるしく続きます。こんなカオスな歌番組は紅白だけですし、まさに正月というハレの日を迎え入れるための「お祭り」そのもの。きっと今年もワクワクするようなステージが大晦日の日本列島に嵐を巻き起こすことでしょう。
キムラ
1997年生まれ。ライター / Podcaster / DJ。音楽・映画・小説・アイドルなど、国内外のポップカルチャーをウォッチ。文芸誌やWebメディアなどに寄稿。ポッドキャスト「コンテンツ過剰接続」配信中。
Kei(音楽チャートアナライザー)の予想は……
初出場のうち3組
- HANA
- M!LK
- TENBLANK
特別企画
- “つなぐ、つながる”を示すコラボレーション(米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」)
トリ
- 紅組:MISIA
- 白組:Mrs. GREEN APPLE
ここ数年はビルボードジャパンでのチャートヒットが、若手歌手主体に紅白出場の大きな判断材料となっています。今年デビューしたHANAはすでに3曲をソングチャートの首位に送り込んでおり、候補が多いアイドル / ダンスボーカルグループの中でも当確と言えるでしょう。HANAを手がけるちゃんみなさんも「SAD SONG」がヒットしていることから、2組の共演が見られるかもしれません。
白組のアイドル / ダンスボーカルグループではSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の再登場も考えられるほか、M!LKが初出場を果たすかもしれません。上半期の「イイじゃん」ブームがその理由ですが、他方ビルボードジャパンではこの曲のヒットがほぼ可視化されませんでした(ソングチャート最高45位、100位以内4週エントリー)。M!LKの出場が叶うならば、ビルボードジャパンが流行をより反映しやすい形にチャートポリシー(集計方法)を変更すべく動くかもしれません。
そのチャートポリシー変更という点では、アルバムチャートにストリーミングが組み込まれた昨年末以降、聴かれ続ける作品のヒットが可視化されています。Netflixドラマ「グラスハート」の劇中に登場するバンド、TENBLANKによる「Glass Heart」は10週連続でトップ10入りを果たしており、佐藤健さんらによるパフォーマンスが見られるか注目です。
特別企画については、今年のテーマがヒントになるでしょう。“つなぐ、つながる、大みそか。”からは複数のコラボレーションを想起しています。9月のリリースながらビルボードジャパン年間ソングチャートでトップ10入りする可能性が高い米津玄師「IRIS OUT」ともども、「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」から米津玄師と宇多田ヒカルの「JANE DOE」がパフォーマンスされるならば、紅白の目玉となることでしょう。
また、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」も披露されるかもしれません。可能性は高くないものの、日本を含む世界中で大ヒットしたコラボ曲の登場に期待したいところです。
紅白のXアカウントを使って内容が発信されたこともあり、紅白とつながりが深いといえる今夏の音楽特番「MUSIC GIFT 2025 ~あなたに贈ろう 希望の歌~」にてラストに登場したのが、MISIAさんおよびMrs. GREEN APPLEでした。特にMrs. GREEN APPLEはデビュー10周年を迎えたこと、ベストアルバム「10」が大ヒットしたこともありなおのこと、紅白でもトリにふさわしいと考えます。
Kei
青森県津軽地方在住の音楽チャートアナライザー。ブログ「イマオト -今の音楽を追うブログ-」を毎日、ポッドキャスト番組「Billboard Top Hits」を毎週木曜に更新。またラジオ番組「imaoto on the Radio」(NFRSラジオ 土曜19時)を担当。「Impress Watch」「uDiscovermusic日本版」などへの寄稿歴あり。
柴那典(音楽ジャーナリスト)の予想は……
初出場のうち3組
- HANA
- アイナ・ジ・エンド
- timelesz
特別企画
- 「あんぱん」特別編・やなせたかしトリビュート(「見上げてごらん夜の星を」~「手のひらを太陽に」)
トリ
- 嵐
NHKが選考の基準としているのは「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」という3点。中でも「今年の活躍」を考えるならば、初出場が最も確実なのはデビュー以来躍進を続けているHANAだと思います。話題性だけでなく、デビュー曲「ROSE」や「Blue Jeans」が今年を代表するヒットソングの1つになっているのが大きい。プロデューサーのちゃんみなも初出場の有力候補と言えるでしょう。披露するのは「SAD SONG」かな。
FRUITS ZIPPERも初出場は確実だと思いますが、2024年の予想コラムですでに挙げているので理由についてはそちらを。「わたしの一番かわいいところ」念願の初披露を予想します。
そして今回はアイナ・ジ・エンドのソロとしての初出場があるのではないでしょうか。「革命道中」は、今年数少ないグローバルヒットを記録したJ-POP楽曲の1つ。「つなぐ、つながる、大みそか。」というのが今年の紅白歌合戦のテーマですが、海外での日本のアーティストの活躍もフィーチャーされるトピックの1つになるのではないかと思います。海外でヒットした楽曲と言えばAiScReamの「愛♡スクリ~ム!」も見逃せない。XGの初出場も期待大。
白組の初出場の有力候補はtimelesz。STARTO ENTERTAINMENT所属アーティストが出場するなら、彼らがスポットを浴びる可能性はかなり高いのではと思います。
去年の「虎に翼」に続き、今年は朝ドラ「あんぱん」が大きな話題を巻き起こした1年でした。主演の今田美桜が司会に抜擢されたこともあり、「あんぱん」に絡めた特別企画が行われるのは確実でしょう。RADWIMPSによる主題歌「賜物」の披露にも期待したいですが、今年はそれだけでなく、やなせたかしトリビュート企画もありそう。いせたくや(作曲家のいずみたくをモデルにしたキャラクター)を演じたMrs. GREEN APPLEの大森元貴が大活躍するのでは。
トリについては、嵐が最後の出演で有終の美を飾ってほしいな、そうなったらきっと盛り上がりそうだなと思っています。ただ、話題性よりも安定感が重視されそうにも思うので、今年も白組は福山雅治、紅組はMISIAになる気もします。
柴那典
音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。音楽やビジネスを中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。著書に「平成のヒット曲」「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」「ヒットの崩壊」、共著に「渋谷音楽図鑑」「ボカロソングガイド名曲100選」がある。
てれびのスキマ(ライター、テレビっ子)の予想は……
初出場のうち3組
- ハンバート ハンバート
- アイナ・ジ・エンド
- Awich
特別企画
- 「アンパンマン」 / やなせたかしメドレー
トリ
- 紅組:Perfume
- 白組:米津玄師
3年連続で、音楽に詳しくない僕がこの企画に参加していいのかと思いましたが、今年もテレビからよく聞こえてきたなあという観点から考えてみました。
初出場組は、「予想」というより「願望」です。ハンバート ハンバートは、朝ドラ「ばけばけ」の主題歌「笑ったり転んだり」を歌っていますが、ドラマにあまりにもぴったりの、まさに「主題」歌。朝ドラ史上でも屈指のオープニングだと思うので、下期の朝ドラ主題歌は来年の「紅白」で、となることも少なくないですが、今年もぜひ聴きたい1曲です。それに「紅白」という豪華な舞台で歌う2人が見てみたい!
アイナ・ジ・エンドは、BiSHのメンバーとしてすでに一度出場はしていますが、ソロとしてはまだ。今年は「ダンダダン」第2期オープニングテーマ「革命道中」をヒットさせたことから可能性が高い気がします。
女性ラッパーで言えば、ちゃんみなが、自身がプロデュースしたHANAと一緒に初出場を果たすというのが大本命だと思いますが、個人的には大阪万博のオープニングや「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」などでのパフォーマンスが印象深いAwichも見たい。
特別企画はやはり「放送100年」や「戦後80年」関連の企画が行われることはほぼ確実ではないでしょうか。そういった意味でも「戦争」とも朝ドラ「あんぱん」とも関連付けられる、「アンパンマン」 / やなせたかし関連の楽曲が歌われるのではないかと予想しました。その場合、「アンパンマンのマーチ」を歌うのは誰か。もちろん原曲通り、ドリーミングという線もありますが、昨年の特別企画「歌って踊ろう! KIDS SHOW」でも司会者陣が参加していたので、彼らが歌う可能性もあるのかなと思います。楽しく、かつ、メッセージ性が込められたものになるのではないでしょうか。
トリは今年もMISIA・福山雅治が最有力で揺るがないと思います。でも、そろそろ違う人が締めくくるのも見てみたい。そう思って過去2年、僕は世代交代の意味を込めて、あいみょん・星野源を挙げていましたが、今年は“コールドスリープ”をするということもありPerfumeに務めてほしい(司会の有吉弘行&綾瀬はるかも同郷だし)。白組では「フェーズ2完結」と「フェーズ3開幕」を宣言したMrs. GREEN APPLEが福山雅治の強力な対抗馬になりそうですが、個人的にはいまや“国民的”存在となった米津玄師の大トリを見てみたいです。
てれびのスキマ
ライター。テレビっ子。戸部田誠名義で著書に「タモリ学」「1989年のテレビっ子」「全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方」「笑福亭鶴瓶論」「芸能界誕生」「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989」などがある。最新刊は「王者の挑戦 『少年ジャンプ+』の10年戦記」。
伏見瞬(批評家)の予想は……
初出場のうち3組
- FRUITS ZIPPER
- アイナ・ジ・エンド
- HANA
特別企画
- Perfume
トリ
- 紅組:MISIA
- 白組:Mrs. GREEN APPLE
FRUITS ZIPPERは、去年の時点で選ばれてもおかしくなかった人気グループです。バイラルヒットも数多く、今年は「KawaiiってMagic」でオリコンシングル1位を獲得している。2026年2月には東京ドーム公演も控えており、押しも押されぬトップアイドルの地位へと上り詰めました。紅白歌合戦の初出場には最適のタイミングではないでしょうか。
BiSHとしてはすでに紅白出場経験のあるアイナ・ジ・エンドは、アニメ「ダンダダン」第2期オープニングテーマで、自らも作詞・作曲に関わった「革命道中」がロングヒット。以前から独特のハスキーボイスと歌唱力に定評のあった彼女が、ソロシンガーとして大舞台に上がる可能性は大いにあります。
今年、最も話題を呼んだニューカマーはHANAでしょう。BMSG主催、ラッパーのちゃんみなが審査を務めたオーディション番組「No No Girls」から生まれた7人組は、デビュー曲「ROSE」からヒット曲を連発。歌唱力とダンスパフォーマンスの高さに加え、それぞれの個性を際立たせる楽曲や演出も見事。筆者も「SUMMER SONIC」で彼女たちのステージを観ましたが、デビューしたばかりとは思えない完成されたステージングに、感嘆の声を漏らしました。
2025年12月31日をもって“コールドスリープ”することを発表したPerfume。紅白出場16回を誇る3人が休止前の最後に有終の美を飾ることは、大いに望ましいことだと思います。司会の綾瀬はるかさん、有吉弘行さんが広島県出身であることを踏まえても、同郷であるPerfumeの軌跡を振り返る特別ステージは、多くの方から祝福されるのではないでしょうか。
トリに関して、紅組のMISIAはまだ不動に思えます。あのポジションにふさわしいシンガーが、MISIAより下の世代からはまだ出てきていない。ただ、白組に関しては、そろそろ世代交代があってもおかしくない。Mrs.GREEN APPLEのトリもあり得る。彼らは最初からテレビでスターになることを目指していた希有なバンドです。過去2回の紅白のステージでも番組全体を巻き込む多幸感を演出し、すでに国民的なバンドとしての実力を証明している。来年からバンドを「フェーズ3」に移行させると宣言した彼ら。大きな躍動を見せた「フェーズ2」の締めくくりとして、若手ながら紅白の最後を飾ることも十分考えられる。今年ではなくても、近い将来、ミセスが最後を飾る紅白は定番になっているんじゃないかと予感します。
伏見瞬
批評家 / ライター。2018年より批評×旅行誌「LOCUST」の編集長を務める。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾」第3期 東浩紀審査員特別賞を受賞。2021年に初の単著「スピッツ論 『分裂』するポップ・ミュージック」を刊行。照沼健太とともにYouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」を運営している。


