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矢野顕子が年末恒例「さとがえる」で大好きなYMOカバー、MISIAの夢叶えるデュエットも

矢野顕子とMISIA。(Photo by YUSUKE TAKAMURA)
7分前2024年12月18日 10:03

矢野顕子が年末恒例企画として行っている「さとがえるコンサート」が12月15日に東京・NHKホールで千秋楽を迎えた。

矢野顕子、お歳暮の季節に“さとがえる”

アメリカ・ニューヨークを拠点にする矢野が日本への“里帰り”を兼ねて、1996年より開催している「さとがえるコンサート」。全国5都市で開催された29回目となる今年は、旧知の仲である小原礼(B)、佐橋佳幸(G)、林立夫(Dr)という3名の凄腕ミュージシャンをフィーチャーする形で、新旧のソロ曲、矢野にとって思い入れのある洋邦カバーが披露され、さらに最終日はスペシャルゲストとの共演も実現するなど、年末らしい大盤振る舞いのステージが観客に届けられた。

グランドピアノとキーボード、ベース、ドラムセット、ギターが一定の距離を保ちながら並び、その上からそれぞれの存在感を際立たせるようにスポットライトが落ちるステージ。シンプルの極みとも言える舞台に、まずは小原、佐橋、林の3人がスタンバイする中でこの日のライブはゆるりと幕を開けた。続いて大輪の花を大きくあしらったロングドレスに身を包んだ矢野が登場すると、場内は一気に華やかに。林のスティックカウントで始まったのは「わたしのバス(Version 2)」。「のって みんなのって わたしのバス もうすぐ出る」と歌う「さとがえるコンサート」ではおなじみの1曲が、観客をコンサートという“旅”へと誘うようにたおやかに響く。この日の東京は快晴に恵まれたものの、最低気温は1.5℃。まごうことなき冬本番の気候だったが、矢野が「春咲小紅」を歌い出すとNHKホールに春が訪れる。さらに佐橋が弾くコミカルなフレーズも相まって、思わず笑みがこぼれるようなほっこりした空気が立ち上った。

バンドメンバーのソロプレイが光る「海と少年」を経て、矢野は「今年もNHKホールに帰ってくることができて、本当にうれしいです。お歳暮の季節にやってます。なんと、なんと、今年で29回目! 1回目の年に生まれた子供は29歳! 来年もあったらエキストラなことをやりたいですね」と満面の笑み。「(私には)レパートリーが無尽蔵にあります。今日は厳選したものをご用意しました」と含みを持たせつつ、難しいのでなかなかライブでやる機会がないという複雑な展開が特徴の「TIME IS」へ。さらに、敬愛する宇宙飛行士の野口聡一とその家族とのやりとりの中で生まれたという「You Are Special to Me」「Three Rockets」を、宇宙から見た地球を思わせる青いスクリーンを背に歌い上げ、壮大な世界を描き出す。曲のクライマックスでロケットの発射音が轟き、ステージの床が赤く染まる中、矢野は空に向かって大きく手を振った。

矢野顕子、MISIAと「希望のうた」を歌い紡ぐ

小原、佐橋、林のテクニカルなプレイが堪能できるインストゥルメンタル「Love is all you get」を挟み、矢野はたっぷりとしたシルエットの新緑のドレスでステージに再登場。スティーヴィー・ワンダー「My Cherie Amour」をバンドメンバー1人ひとりと軽やかに歌いつなぎ、自身の代表曲「ラーメンたべたい」に大胆なアレンジを施し、ミニキーボードを弾きこなしながらチャーミングにパフォーマンスしていく。「私は随分昔に、YMOの3人の後ろでとても楽しくキーボードを弾いておりました。YMOの曲は全部好きなんですが、中でも大好きな2曲を続けてやります」という矢野に続いて始まったのは、坂本龍一作曲によるYMO「1000 KNIVES(千のナイフ)」「Tong Poo(東風)」だった。矢野は滑らかに、だが力強く鍵盤を叩きながら、坂本が遺した旋律に自身の歌声を絡ませる。最後に「わたしたちの前の海は青く深く 永遠の生命へと誘う」というフレーズが歌われると、会場にいる誰もがそれぞれの脳裏に浮かぶ景色に思いを馳せた。

これまで多くの盟友を見送ってきた矢野の「こうやって毎年コンサートができるということは、当たり前ではありません。来年もこういう機会がありましたら来てください」という言葉がひときわ重く響いたライブ終盤。本編が「GREENFIELDS」をもって穏やかに終わりを告げたのち、アンコールはひと呼吸置いて今の季節にぴったりな「クリームシチュー」で幕開け。まろやかなクリームシチューの味を想起させる、ほっくりとした空気がNHKホールを包み込む。年末の忙しない日々を過ごす多くの観客が、穏やかな余韻に浸る中、バンドメンバーが一旦去り、ステージ上は矢野ひとりに。「今日はとてもとても特別な日です」とつぶやいた彼女は、2年前にあるアーティストから楽曲制作の依頼を受けたエピソードを語り出す。そして、その楽曲の依頼主であるMISIAの名を叫び、オーディエンスを驚かせた。

「どうして私に曲を?」という矢野の素朴な質問に対し、「私はもともと矢野さんの作るメロディが好きで。いつか矢野さんに曲を作っていただけたらという夢があったんです」と少女のように目を輝かせながら答えるMISIA。当初彼女は矢野に、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け反戦歌の制作をリクエストしたが、矢野本人からの「戦禍を逃れてきた難民の人たちに寄り添う曲だったら作れるかもしれない」という提案を受けて「希望のうた」が生まれたという経緯を語り、「矢野さんのピアノでこの曲を歌うことができたらと夢見ておりました」とその言葉に興奮と喜びをにじませた。そして2人は互いを慈しむように見つめ、ピアノの音色と歌で交歓を重ねながら、ふくよかで心地よいハーモニーを丁寧に紡いでいく。観客は矢野とMISIAの作り出す得も言われぬ幸福感に身を任せ、曲が終わるや否や万雷の拍手をステージに浴びせた。万感の表情で「さらにさらに特別な日になりました」と笑みを浮かべた矢野は、「最後にMISIAと一緒にみんなが大好きな『ひとつだけ』を」と大団円にふさわしい1曲をタイトルコール。ステージ上の演者も、客席のオーディエンスも誰も彼もが心をひとつにしながら、45年近くにわたって歌い継がれ、愛され続けている名曲を口ずさんだ。

セットリスト

矢野顕子「矢野顕子さとがえるコンサート2024 featuring 小原礼・佐橋佳幸・林立夫」2024年12月15日 NHKホール

01. わたしのバス(Version 2)
02. 春咲小紅
03. 海と少年
04. TIME IS
05. You Are Special to Me
06. Three Rockets
07. Love is all you get
08. My Cherie Amour
09. ラーメンたべたい
10. Do you love me?(愛されたいおれら)
11. 夢のヒヨコ
12. 1000 KNIVES(千のナイフ)
13. Tong Poo(東風)
14. GREENFIELDS
<アンコール>
15. クリームシチュー
16. 希望のうた with MISIA
17. ひとつだけ with MISIA

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