YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月11日から4月17日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、1位にMrs. GREEN APPLEの「クスシキ」が登場した。テレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2期第2クールのオープニングテーマとして書き下ろされたこの曲。4月5日のMV公開から10日間で1000万回再生を達成している。
15位にはmiwa「ヒカリヘ」のライブ映像がランクインした。これは3月15日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された「トライストーン大運動会」内で撮影されたもの。当日のリハーサルで足を怪我してしまったmiwaが、小栗旬に押されて車椅子で登場する心温まるシーンが話題になった。「ヒカリヘ」は2012年に放送された小栗旬主演ドラマ「リッチマン、プアウーマン」の主題歌。miwaは自身のInstagramで「アクシデントではありましたが、小栗旬さんとステージに登場して歌う『ヒカリヘ』は特別な時間となりました」と投稿した。
47位に登場したのはIMP.「Cheek to Cheek」だ。この曲はメンバーの鈴木大河が出演しているTBSドラマ「三人夫婦」の主題歌。日々いろいろな出来事が起きる日常で、信じている者同士が寄り添い、前向きに人生と対峙できるような応援歌になっている。
49位にはMAZZELの「King Kila Game」がランクインした。今作は4月16日にリリースされた1st EP「Royal Straight Flush」のリードトラックで、MAZZEL史上かつてないほどにぎやかなパーティロックチューンに仕上がっている。
バンド、シンガーソングライター、グループなど幅広いジャンルの楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
SmilyBruh「AKAGE」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場69位
1月25日にMVが公開され、4月17日現在でその再生回数が750万回再生を突破した、SmilyBruhの「AKAGE」。この曲は原口沙輔「イガク」のアンオフィシャルなリミックスで、対戦型リズムゲーム「Friday Night Funkin'(FNF)」の主人公・Boyfriendの声を使用していたり、中盤パートではきくお「愛して愛して愛して」のフレーズを引用していたりと、ボカロ曲や音ゲーを元ネタにして作られている。曲名はおそらく「イガク」を歌っている重音テトの髪色のことだろう。
そして今、この曲が「AKAGE meme」としてミーム化し、ネット上で世界的に拡散している。2月に入ってからこのMVを真似たショート動画が作られるようになると、TikTokでテンプレートが提供されはじめ、ユーザーが簡単に「AKAGE」スタイルの動画を制作・共有できるようになったことでパロディ動画がますます増殖。さらに、Boyfriendが重音テトや初音ミクと「AKAGE」に合わせてラップバトルをする「FNF」のModも作られ、ゲームプレイヤーの間でも話題になった。
作者・SmilyBruhが何者なのかについて詳細はわかっていないが、X(Twitter)のプロフィールにベネズエラの国旗があり、YouTubeチャンネルの居住国の欄にベネズエラと書かれていることから、ベネズエラ在住のクリエイターではないかと思われる。「AKAGE」の人気がどこまで広がるのか、今後の動向に注目したい。
清水翔太「PUZZLE」 from SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2024 ツアーファイナル日本武道館
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場85位
「PUZZLE」は2024年10月9日に配信リリースされた楽曲。清水翔太が特別講師を務める母校の大阪・キャレスボーカル&ダンススクール(現・CALESS ENTERTAINMENT LABO)京橋校のレッスン課題曲として制作され、スクールの生徒ら総勢約40名がボーカルおよびコーラスで参加したゴスペルソングとなっている。MVにはスクールでのレッスン風景も使用された。
今年4月に同スクールの京橋校と都島校が統合して桜ノ宮に拡大移転となったことで、京橋校でMV撮影が行われた「PUZZLE」が再び注目を浴びた。その結果、この曲は4月10日発表の「オリコン週間ストリーミング急上昇ランキング」で1位を獲得し、上昇率151.2%を記録。人気はストリーミングだけに留まらず、去年10月に開催された全国ツアー「ゲルぴよ presents SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2024」の東京・日本武道館で披露された同曲のライブ映像も、この盛り上がりと併せて再生数が急上昇した。
19歳のときに「HOME」でデビューをした清水が、30代になり「いつか帰るよ 僕だけのホーム」という歌詞の通り地元・大阪に戻って、後輩たちとこの曲を作ったことに熱いドラマを感じる。
神が残した夢を喰う。「雨」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場97位
神が残した夢を喰う。は、2023年に解散したNon Stop Rabbitのボーカル・晴-haru-(矢野晴人)のソロプロジェクトだ。「雨」は2023年10月リリースのデビューシングル。各SNSで徐々に注目され、MVは公開から約1年半を経てYouTubeのウィークリーミュージックビデオランキングで97位に初登場した。
「雨」は晴-haru-が初めてイチから自分で作った楽曲で、別れた恋人を思う切ないラブソングになっている。まずは歌詞の構成に注目していただきたい。1番は1人になった部屋で、彼女につけてあげるはずだった指輪を眺めている“ぼく”の目線で曲が始まる。そして2番は、彼が好きだった映画をよく知らない人の家で観ている“あたし”の目線に切り替わる。1曲の中に男女の視点が描かれていることで、より楽曲のストーリーが立体的に浮かび上がってくる。
曲は儚さとエモーショナルさを内包したサウンドになっていて、特に光っているのがサビのメロディだ。 1段ずつ上って下る階段のように、サビでひと言ずつメロディラインが上がってから今度はひと言ずつ下がっていくので、非常に覚えやすく、一聴しただけで口ずさめるキャッチーさも魅力に感じた。
ちなみに「雨」は歌ってみた動画も盛り上がっている。TikTokでささ。という女性が投稿したカラオケ動画は100万再生され、その歌声を晴-haru-本人が絶賛。その結果、今年1月に公式カバーとしてリリースされるという面白い展開になった。ぜひ2曲あわせてチェックしていただきたい。
