YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月15日から8月21日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、9位にLISA(BLACKPINK)の「DREAM feat. Kentaro Sakaguchi」が登場した。今作は2月にリリースされたソロデビューアルバム「Alter Ego」の収録曲。ゲストに坂口健太郎を迎えたMVでは、これまでのビジュアル作品では見られなかった、俳優としてのLISAの一面を観ることができる。
15位にはMON7Aの「おやすみTaxi」がランクインした。これは現役高校生アーティストである彼が初めてリリースしたオリジナル楽曲。8月7日のMV公開から2週間で350万再生を突破し、日の出の勢いを見せている。
34位にはMAZZEL「DANGER」が登場した。和とストリートの要素を組み合わせた斬新なサウンドにメンバーの多彩な歌を乗せた、MAZZEL史上最も自由な1曲に仕上がっている。
41位に登場したのはBOYNEXTDOORの「Count To Love」。今作は初の日本オリジナル曲となっており、ユニークで力強いギターサウンドとエネルギッシュなドラムが調和したバンドサウンドの、一度聴いただけで耳に残る楽曲だ。
人気ボーイズグループの楽曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
YUTORI-SEDAI「YURU FUWA」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場55位
YUTORI-SEDAIは金原遼希(Vo, G)、上原駿(B)、櫻井直道(Dr)による3ピースロックバンド。“ゆとり世代”という言葉のネガティブな響きをポジティブな印象に変えたい、という思いからこのバンド名が付けられた。金原の切なく優しい歌声と、「すき。」「ぎゅっとして、」などの曲に見られる恋愛をテーマにした女性目線の歌詞がZ世代を中心に共感を呼んでいる。
そんな彼らが8月13日にリリースした「YURU FUWA」は「私フっちゃうなんてないないな / まだまだ私は可愛く / なってみせるから」などの歌詞で、“自分らしさ”や“かわいさ”を軽やかに肯定する曲になっている。失恋しても前を向こうとする主人公“私”の姿は、ネガティブをポジティブに変換していくYUTORI-SEDAIの音楽に対する姿勢と重なる。
ジャケットやMVには、ABEMA恋愛リアリティ番組「今日、好きになりました。」シリーズの“おひなさま”こと長浜広奈を起用。彼女の雰囲気が世界観にマッチしていることもこの曲がヒットしている一因のようで、リスナーの間では「歌詞がおひなさまの口調に似ている」といった声が多数上がっている。
ELLEGARDEN「カーマイン」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場57位
ELLEGARDENの約3年ぶりとなる新作「カーマイン」は、アニメ「ONE PIECE」のオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲。ELLEGARDEN は8月10日に東京・東京ビッグサイトで開催された「ONE PIECE DAY’25」に映像出演し、「作品に曲を書き下ろすことを初めてやったんですけど、もともと『ONE PIECE』の大ファンだったので(楽曲制作は)めちゃめちゃ楽しかったです。作っている間も楽しかったし、カッコいい曲ができたと思います」とコメントした。
壮大で力強い演奏、悔しさをバネに前へ進んでいく歌詞が、「ONE PIECE」の世界観と見事にハマっているこの曲。エキストラとして集まった約300人のファンとともに作り上げたリアルなライブシーンのMVからも熱気が感じられる。
細美武士(Vo, G)は8月25日にJ-WAVEのラジオ番組「THE KINGS PLACE」に出演。ナビゲーターのGEN(04 Limited Sazabys)に、楽曲提供を受けた際にアニメ制作サイドから何か要望があったのかを聞かれて「アップテンポな日本語の曲をお願いします、と言われた。でも、それって一番難しいんだよね」「きっと『ジターバグ』とか『風の日』とか、あのへんのイメージなんだろうなと思った」と答えている。
また、自身の書いた楽曲に「ONE PIECE」のアニメーションが重なった映像を観たときには「曲の雰囲気とバッチリ合ったオープニングだし、皆さんが90秒の映像を作るのに4カ月くらいかけてくれたのを知って、(音楽と)一緒だなと思った。俺も半年くらいかけてこの曲を作ったから」と、映像と楽曲の親和性や共感した点についても話した。ぜひMVと合わせてアニメのオープニング映像もチェックいただきたい。
じょるじん「ラストファラオ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場58位
童話、神話、史実などをもとに曲を作る“暗黒童話P”じょるじんが古代エジプトの女王・クレオパトラの命日から2日後の8月12日に新曲「ラストファラオ」のMVを公開した。
クレオパトラは自身の美貌を生かして権力者に取り入り王座を勝ち取った“魔性の女”や“悪女”のイメージが強いが、今作では「国を守るためにすべてを差し出した女王」として再定義した歌詞が話題になっている。筆者が印象に残ったのは「“娼婦” “売女” “魔性” “淫乱” / 罵声の数々 / 己がカラダで 国が守れるなら安いもの」「けど誘惑なんてしたことないのよ だってそうでしょう」というフレーズだ。王国のために己の身を削るクレオパトラの悲痛な思いと、悲壮な覚悟が伝わってくる。
また「戦争なんてしたくはないのよ」「ファラオとは人を 殺めるために 有るのではなくて / 守るために 立ち上がるものよ」という一節は、彼女の勇ましい生き様が胸に響く。じょるじんの表現力豊かな筆致による歌詞、楽曲の解像度を上げているMVを見れば彼女のイメージが刷新されるだろう。
