Petit Brabancon企画によるライブシリーズ「Petit Brabancon "CROSS COUNTER -02-"」が、9月5日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で初日を迎えた。
今年3月に初開催された「CROSS COUNTER」は、プチブラの単独公演とゲストを迎えての対バンで構成した企画ライブ。2回目となる今回は対バン相手として凛として時雨、SiM、SABLE HILLSの3組に白羽の矢が立てられた。この記事では凛として時雨が出演した初日公演の模様を紹介する。
凛として時雨
345(Vo, B)が、プチブラの一員でもあるyukihiro(Dr / L'Arc-en-Ciel、ACID ANDROID)とgeek sleep sheepを組んでいることから、奇しくもバンドメンバー同士の対戦カードが実現した「CROSS COUNTER -02-」初日。先攻を務めるのはもちろん、345を擁するゲストの凛として時雨だ。サイレンのような携帯電話の着信音やザラついたノイズをサンプリングしたおなじみのSEが会場いっぱいに反響し、TK(Vo, G)、345、ピエール中野(Dr)の登場を告げる。拍手と歓声、プチブラファンの好奇の視線を浴びた3人は、1曲目の「abnormalize」からフルスロットルでその凶暴性をあらわに。結成から20年を超えるキャリアを通して磨き上げてきた切れ味の鋭いアンサンブルの上で、切迫感と狂気を帯びたTKと345のボーカルの応酬が繰り広げられると、当初はまばらだった歓声のボリュームが次第に大きくなっていった。
狂犬Petit Brabancon”と相対するために、時雨の3人がセットリストに組み込んだのは攻撃性の高い楽曲ばかり。ピエール中野が手数の多いドラミングでフロアを煽り、オーディエンスを焚き付けるのはいつものことだが、この日は345が感情を爆発させるように高く手を掲げる場面があり、この日の対バンに懸ける彼女の思いがその些細な動きひとつにもにじむ。一見すると、感情に任せ猛るように個々の楽器を鳴らす3人だが、その実、TKの手元はよどみなく動き続け、345は鼓膜を震わせる低音を鳴らしながら、TKと阿吽の呼吸で絶唱。ピエール中野は自らが繰り出すリズムでフロント2人を時に支え、時に煽り、三位一体の絶妙なアンサンブルの柱を担った。息つく暇もない勢いで曲が畳みかけられ、このままライブは絶頂を迎えるのかと思いきや、3人が最後に鳴らしたのは「傍観」。不穏なギターノイズが静まり返った会場を侵食する中、あどけないTKの歌声が響く。しかし、曲の展開とともに3人が鳴らす音、TKと345の歌声に激情が帯びていく。会場に漂う緊張が極限に達したとき、血飛沫を上げるようなTKのシャウトが轟き、オーディエンスの耳にべったりと張り付いた。
Petit Brabancon
“opening”の「move」がスピーカーから流れ出すや否や、クラップを打ち鳴らし、メンバーの登場を今か今かと待つオーディエンスたち。各々のキャラクターを表すラフなファッションに身を包んだ京(Vo / DIR EN GREY、sukekiyo)、yukihiro、ミヤ(G / MUCC)、antz(G / Tokyo Shoegazer)、高松浩史(B / The Novembers)の5人は、怒号混じりの歓声をかき消すように轟音をフロアに叩き込んだ。
「わかってんだろ?」。不敵な笑みを顔に浮かべた京は、楽器隊のメンバーをけしかけるようにステージを縦横無尽に練り歩き、それに追随するようにミヤとantzも躍動する。凛として時雨の苛烈なステージに感化された5人のプレイは、滑り出しトップギアが入った状態。その勢いのあるパフォーマンスはオーディエンスの反応にも直結し、モッシュ、ダイブ、ヘッドバンギングがあちこちで発生する事態に。各々が思い思いの形でPetit Brabanconの音楽に身を委ねる一方で、統制の取れたクラップとシンガロングが会場の一体感を生み出す場面もあり、連帯と個人主義の両方が混在する空間がZepp DiverCity(TOKYO)に構築された。「CROSS COUNTER」というタイトルの通り、“戦い”がテーマとなっているこのライブシリーズ。対バン公演においては、毎回食うか食われるかの死闘が展開されているのが特徴だ。この日も、凛として時雨が残した爪痕を振り払うように、時間の経過とともにPetit Brabanconサイドのボルテージも増していく。
5人は、ライブの中盤でノイズギターが象徴的な新曲を披露。個々の活動が多忙を極める中であっても、Petit Brabanconとしての進化を止めることのない意思を表明した。京が「もっともっと狂っちまえ」と叫べばオーディエンスはタカが外れたように暴れ、場内の混沌としたムードはますます強まる。京の挑発はメンバーにも波及し、ライブの折り返しまで特性である抑制を効かせたプレイを展開していたyukihiroは、佳境に差し掛かるタイミングでリミッターを解除。目にも止まらぬ速さでスティックを振り下ろし、激しくエモーショナルなプレイでライブをクライマックスへと導いた。
「Petit Brabancon "CROSS COUNTER -02-"」はこのあと、愛知・THE BOTTOM LINE、大阪・GORILLA HALL OSAKAで展開されたのち、9月25日に東京・Spotify O-EASTでファイナルを迎える。
公演情報
Petit Brabancon "CROSS COUNTER -02-"(※終了分は割愛)
2025年9月13日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
<出演者>
Petit Brabancon
2025年9月14日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
<出演者>
Petit Brabancon / SiM
2025年9月20日(土)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
<出演者>
Petit Brabancon
2025年9月21日(日)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
<出演者>
Petit Brabancon / SABLE HILLS
2025年9月25日(木)東京都 Spotify O-EAST
<出演者>
Petit Brabancon
撮影:Cazrow Aoki、尾形隆夫
