FACTの自主企画イベント「ROCK-O-RAMA-THE END」が10月5日、千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催された。
FACT、“本当の解散”へ
昨年12月に同会場で行われたライブイベント「REDLINE ALL THE FINAL」にて、2015年に解散して以来9年ぶりの復活を果たしたFACT。今年に入ってからも「SATANIC CARNIVAL」へ出演したほか、10年ぶりのライブツアー「FACT IS LIFE TOUR 2025」を開催したが、イベントタイトルにある「THE END」の通り今回のイベントをもって“本当の解散”を迎えることとなる。
そんな「ROCK-O-RAMA-THE END」にはCrystal Lakeやdustbox、HEY-SMITH、NOISEMAKER、SHANK、The BONEZ、04 Limited Sazabysなどの盟友たちから、Closure In MoscowやYour Demiseという海外勢まで豪華な面々が出演。「UNITY STAGE」「ANARCHY STAGE」が横並びとなったメインステージに交互でライブを行い、FACTの“正真正銘のラストライブ”に華を添えた。また、文字通り中型トラックの荷台をステージにしてライブが展開される「TRUCK STAGE」にはENDZWECK、ENTH、FOR A REASON、Loyal to the Grave、PALM、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、waterweedが出演。フロア後方に大型のスケートボードランプも設置された、シンプルでストリート感の強い空間を熱狂の渦へと巻き込んだ。
HEY-SMITHからつながれていくバトン
正午からスタートしたイベントのトップバッターを務めたのはHEY-SMITH。「UNITY STAGE」に登場した猪狩秀平(Vo, G)が「おっはよーっ!」と軽やかに挨拶すると、バンドは冒頭から「Living In My Skin」「Say My Name」を連発し、フロアは早くもモッシュ&クラウドサーフの嵐と化す。熱量の高いライブが進行する中、猪狩が「今日でFACT、解散しちゃうんだって。寂しいよな。でも、どうせ送り出してやるんなら、ド派手に行こうぜ!」と告げると、オーディエンスはさらに大きな盛り上がりを見せ、イベント冒頭からクライマックスのような光景を作り上げた。
もう一方の「ANARCHY STAGE」の幕開けを飾った04 Limited Sazabysは、「fiction」や「monolith」といった疾走感の強い楽曲を携え、エネルギッシュなステージを繰り広げていく。「いつもより野郎の声が大きくてうれしいです(笑)」と笑顔で語るGEN(Vo, B)だが、ライブ後半では「FACTの残した泥水は土に染み込み、草木を生やし、新たな実を結んで次の世代につながれていくはず。形もジャンルも世代も違うけど、俺たちもそんなふうに栄養を与え続けたい」と伝えてから「Squall」を披露する、実に感動的な場面もあった。
まさかのFC FiVE復活
この日最大のサプライズはイベント中盤、シークレットアクトとして登場したFC FiVEだろう。デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」が流れる中、ステージ上にメンバーが登場するとインストナンバー「Enter」から約13年ぶりのライブを開始。フロアが騒然としながらも次第に熱を帯びていく中、TOMY(Vo)がステージに加わると「New Greed」でライブは本格化する。
この伝説の瞬間を見届けようと、ステージ袖には大勢のミュージシャンやスタッフたちが詰めかけ、オーディエンス同様に熱気を持ってFC FiVEの復活を祝福。20分にも満たない短い時間だったが、終演後もフロアから「FC FiVE」コールが鳴り止まないほどの衝撃を与えた。
イベント終盤のCrystal Lakeのステージでは、冒頭の「Matrix」にHER NAME IN BLOODのフロントマンIkepy(Vo)がゲスト出演。当初「ROCK-O-RAMA-THE END」での再結成がアナウンスされていたものの、その後出演がキャンセルとなっていただけに、このサプライズは大歓声を持って迎えられた。
また、Crystal Lakeは公演中、同じく出演キャンセルとなったCrossfaithに触れる場面もあり、彼らに向けて「Beloved」を演奏するひと幕もあった。「ANARCHY STAGE」のトリを務めたThe BONEZは、JESSE(Vo, G)が「今日は……言葉にできねえよ」と感傷的な言葉を寄せる場面もあったが、演奏中は常にアグレッシブな姿勢でフロアを沸かせ、リリースされたばかりの新曲「So Fucking What」を含む激アツのセットリストで、続くヘッドライナーのFACTへとバトンをつないだ。
「これを言うのも最後か……」
いよいよFACTのラストライブの時間だ。会場が暗転し、メンバーがステージ上に姿を現すと、そのまま円陣を組んで気合いを入れる。そして、Hiro(Vo)の「ラストだ、遊んでいけ!」を合図に「slip of the lip」でライブはスタート。強烈な音圧とともにバンドの奏でるサウンドが会場中に響き渡ると、観客はクラップやシンガロング、モッシュやクラウドサーフなど思い思いのアクションでFACTの熱演に応え続ける。その流れで、Eiji(Dr)の激しいドラムフィルとともに「los angels」へ突入すると、HiroとAdam(Vo, G)のハーモニーにKazuki(G)がシャウトを重ねて、場の空気は白熱したものと化していった。
4曲立て続けに披露し終えたところで、Hiroが「これを言うのも最後か……FACTです!」と改めて挨拶。続けて「ここで『FACTです』って言って始まって、ここで『FACTです』っつって終わることができて光栄です」と述べてから、競演者やスタッフ、オーディエンスに感謝を伝えると、Kazukiがフロアに向けて「やべえ、お前ら全員ゾンビみたい(笑)。あれ、生き返ってきた?」と投げかけ、フロアが沸くひと幕もあった。そして「古い曲やります」という言葉を合図に、バンドは「Start From Here」を筆頭に2000年代半ばに発表したインディーズ時代の楽曲を連発。Takahiro(G)のシャウトが印象的な「Deviation」、Eijiのブラストビートが轟く「Manic」を前に、フロアの盛り上がりはカオス状態と化していく。
その後も、ROSÉ&ブルーノ・マーズ「APT.」の名フレーズをフィーチャーした「the way down」や、シンプルなコール&レスポンスで一体感を高めていく「ape」など、曲を重ねるごとに会場の熱量はどんどん高まっていく。そんな中、MCではTomohiro(B)が会場を見渡して「めっちゃいい景色」と感慨深げに語り、Eijiは「頭真っ白。バグってる」と言いながらもシンプルに感謝の思いを客席に届ける。そして、Adamの「一緒に歌う最後のチャンスだよ?」の言葉に続いて始まったライブ後半戦では、「Pressure」「We Do It In Our Way All The Way」といった初期曲のほか、フロアに投げ込まれた無数ものラブドールが観客の頭上を舞う「FOSS」、会場にいくつものサークルピットが発生した「tonight」などを次々に繰り出していき、オーディエンスもFACTと共有できる残り少ない時間を心の底から満喫した。
「FACTってバンドは俺の誇りです」
ことあるごとに「ありがとう」と口にするHiroだが、ライブが佳境に突入したタイミングで「ちょうど10年ぐらい前に(最初の)解散すると決めて、それからの1年はツアーをして曲も作ったけど、人生で過去一番つらくて悲しい時期でした」と過去を振り返る。しかし、「(復活してから)『このツアーに意味なんかねえ』とか言ってきたけど、ちょっとだけ本音を言うと、そのすごくつらかった1年間を取り戻せた、そんな気がします。最高に楽しい10カ月でした」とポジティブなメッセージに、HiroやTomohiroなどは感極まる様子を見せる。
そんな湿っぽい空気を払拭するかのように、「残り2曲!」と告げるとバンドは「sunset」へなだれ込む。スケール感の大きなサウンドで会場を飲み込むと、エンディングで再びHiroが結成からの約25年を振り返りながら、「FACTってバンドは俺の誇りです。これからもFACTの音楽を、みんなでつないでいってください。そして、ここから進む俺たち6人のこと、みんなよろしくね」と語りかける。
そして、最後は「泣いても笑っても、次の曲で最後。ここにいる全員で……かかってこい!」と力強い言葉とともに「a fact of life」に突入。昨年12月の「REDLINE ALL THE FINAL」での復活の際、1曲目に選ばれたこの曲でFACTは再びその歴史に幕を下ろすこととなる。
全身全霊と言わんばかりに、すべての力を振り絞って叩きつけるバンドの歌と演奏を前に、会場に鳴り響くオーディエンスの歌声もこの日一番大きなものとなり、フィナーレに相応しい会場の熱気とオーディエンスの盛り上がり、90分にもおよぶ熱演とともにFACTは自身の歴史に終止符を打った。
セットリスト
FACT「ROCK-O-RAMA-THE END」2025年10月5日 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
01. slip of the lip
02. los angels
03. purple eyes
04. the shadow of envy
05. Start From Here
06. Deviation
07. Manic
08. error
09. the way down
10. wait
11. new element
12. drag
13. ape
14. Pressure
15. We Do It In Our Way All The Way
16. FOSS
17. tonight
18. eighty six
19. worm
20. look away
21. disclosure
22. miles away
23. sunset
24. a fact of life
