YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月16日から10月22日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、14位にA2O LITEの「NEON」が登場した。A2O LITEは、SMエンターテインメントの創業者であるイ・スマンがプロデュースする9人組ガールズグループ。彼女たちのデビュー曲「NEON」は、10月12日のMV公開から2週間で2500万再生を突破し、昇竜の勢いを見せている。
19位にはDa-iCEの「うららか」ダンスパフォーマンスビデオがランクインした。今作はドラマ「波うららかに、めおと日和」の主題歌。映像では、楽曲に登場する2人の恋を祝福するかのような、メンバーのダイナミックなダンスと晴れやかな表情を堪能できる。
21位に登場したのは、原因は自分にある。の「ラブリーズン」。これは11月11日にリリースされる5thシングルのタイトル曲で、狂気と危うさが共存したスリリングな雰囲気が印象的だ。
25位にはAdoの「Raven Sky」がランクインした。今作は、小栗旬主演の日米合作映画「バッド・ルーテナント:トウキョウ」の主題歌。羽の折れたカラスと空をモチーフに、「朽ち果てても未来へとつながる」という輪廻転生を思わせる世界観を描いたロックチューンとなっている。
日韓の人気グループによる新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
MAZZEL「Touch」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場8位
愛とは、触れることなのか。それとも、触れられない時間に相手を思うことなのか。MAZZELの新曲「Touch」は、そんな問いを甘美なメロディに忍ばせたラブソングだ。2000年代のR&Bを思わせるなめらかなグルーヴに、8人の歌声が代わる代わる色彩を添えていく。恋人と過ごす何気ない日常を描きながら、そのサウンドには高級な香水のような気品が漂う。
田辺秀伸が監督したMVでは、アトリエや邸宅、ヘリコプターなど、異なる空間に身を置くメンバーの姿を映画的な質感で映し出す。華やかな衣装をまとい、洗練された身のこなしを見せる彼らだが、視線や指先の動きから浮かび上がるのは、そこにはいない誰かの存在だ。豪華な舞台装置とは対照的に、描かれる感情は驚くほどささやか。手を伸ばしても届かない距離にこそ、愛の輪郭は鮮明に浮かび上がる。そんな逆説が、この曲を単なる幸福の賛歌では終わらせない。
IVE「Looks Can Kill」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場20位
映画の撮影現場にいるはずの6人が、いつしかスクリーンの中のヒーローへと変貌していく。IVEの「Looks Can Kill」のMVは、虚構と現実の境界を軽やかに飛び越える、痛快なエンタテインメントだ。
華麗なアクションやドラマチックな演出から浮かび上がるのは、誰かに救われるのではなく、自ら運命を切り開く女性像。荒々しいベースと鋭いビートが交錯するサウンドも、彼女たちの不敵な魅力を際立たせる。ブリッジで空気を一変させ、ラストコーラスへとなだれ込む展開も鮮烈だ。磨き上げられた宝石の内側で爆発が起きたかのように、優雅さと破壊力が共存している。美しさは、誰かの評価を待つものではなく、自らの存在価値を示すための武器。その揺るぎない自信こそ、IVEが放つ輝きの源なのだろう。
きゃりーぱみゅぱみゅ「Pang Pang Pang」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場29位
パン生地は焼けば膨らむが、きゃりーぱみゅぱみゅの想像力は焼く前から膨張している。アニメ「パンどろぼう」のエンディング主題歌として生まれた「Pang Pang Pang」は、子供向けという言葉から連想される牧歌的な世界を、重低音の効いたビートで豪快にひっくり返す。中田ヤスタカ(CAPSULE)が仕掛けた電子音の洪水と、呪文のように繰り返されるフレーズ。その組み合わせは、耳から侵入して脳内で勝手に増殖する奇妙な酵母菌のようだ。
田向潤が監督したMVでは、レトロでカラフルなキッチンを舞台に、きゃりーと不思議な「生地くん」がパン作りに挑戦。コミカルな動きとシュールな演出が、日常の風景を愉快な異世界へと変えていく。しかも、映像にはデビュー曲「PONPONPON」へのオマージュまで潜んでいる。15年という歳月を経ても、彼女の表現は常識という型に収まらない。焼き上がったのは、懐かしさと新しさが同居する、最高に風変わりなパンである。


