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ももクロ百田夏菜子が初のソロコン開催、2日間の“シンデレラタイム”で見せた多彩な表現力

2年以上前2021年10月17日 15:07

ももいろクローバーZの百田夏菜子のソロコンサート「百田夏菜子ソロコンサート Talk With Me ~シンデレラタイム~」が10月16、17日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された。

2008年の結成時からのオリジナルメンバーであるものの、佐々木彩夏や高城れにと比べるとこれまでソロの音楽活動を精力的に行ってこなかったももクロのリーダー百田。そんな彼女が初のソロコンをさいたまスーパーアリーナという大会場で、しかも2日間にわたって開催することを27歳の誕生日である今年7月12日に発表すると、モノノフ(ももクロファンの呼称)の間に驚きと歓喜の声が広がった。ライブの演出は映画「幕が上がる」や、東京・明治座公演「ももクロ一座 特別公演」でメンバーの魅力を引き出してきた本広克行監督が担当。“今の百田夏菜子”が歌や言葉を通して存分に表現された。この記事では全国40カ所の映画館でライブビューイングが行われた2日目公演の模様をレポートする。

最初に観客の目を引いたのは、アリーナ中央に存在感たっぷりに鎮座する円形のセンターステージと、会場の両端に設置された額縁のような巨大なスクリーン。その間を白い布を被った人々が彷徨い歩き、開演前から会場が幻想的なムードで満たされた。そして場内に鳴り響く時計の音がだんだんと強くなり、コンサートが開演時刻を迎えたことを観客に告げると、スモークとレーザー照明で装飾されたステージに白い衣装に身を包んだ百田が登場。イメージカラーである赤のペンライトの光で客席一面が染まる中、ももクロの5thアルバム「MOMOIRO CLOVER Z」の収録曲である、“心の闇”をテーマにした異色のナンバー「魂のたべもの」でライブの幕が開けた。百田はセンターステージを囲むようにして並ぶバンドの演奏に合わせて芯のある歌声を響かせ、「会えて嬉しいよ」というフレーズが印象的な「D'の純情」でもダンサーとともに力強いパフォーマンスを披露。またたく間にモノノフたちのハートを鷲掴みにした。

ここまでシリアスな世界観のステージが続いていたが、MCの時間になった途端、百田はいつもの天真爛漫な笑顔を見せる。モノノフもそれに応えるように百田プロデュースの「MCZライブ声援ペンライト」を振り、新型コロナウイルス感染拡大として声が出せない代わりに「夏菜子ー!」という音声を一斉に鳴らしてみせた。観客とのコミュニケーションを楽しみつつ、「魔法のような時間を過ごしていきましょう」と呼びかけた百田は、続いてバンドが奏でる大人びたアコースティックサウンドに乗せてライブを展開。ももクロの定番バラードナンバー「キミノアト」をしっとりと、2011年発表の初のソロ曲「太陽とえくぼ」をさわやかに歌唱した。

その後も持ち前の明るいキャラクターで会場を照らすMCパートと、迫真のライブパフォーマンスが交互に続く。百田は「みんなの近くにいられたらいいなと思ってセンターステージにしたんですけど、昨日観に来た玉(玉井詩織)とれに(高城れに)からめっちゃクレームが来たんですよ。『あんなに手を振ったのに全然こっち見てくれないじゃん!』って(笑)」とももクロメンバーとの仲睦まじいエピソードを披露したのち、アニメ映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の主題歌である飯島真理「愛・おぼえていますか」をカバー。本広監督にリクエストされたものの、この曲をセットリストに入れるかどうか悩んだとのことだが、「マクロス」で戦争を終結に導く鍵となった重要な楽曲を、竹上良成(Sax)が鳴らす伸びやかなサックスの音色とシンクロするように丁寧に歌い上げた。百田が自ら作詞を手がけ、昨年2月のバレンタインイベント以来2回目の披露となった「それぞれのミライ」では、ステージ上に仰向けになって歌い始めるというアバンギャルドな表現に観客の視線が釘付けに。スクリーンには彼女の人生観を反映したかのような温かい内容の歌詞が映し出された。

次のブロックではライブタイトルの「Talk With Me」の文字をあしらったセットアップのパンツスーツに着替えた百田が、2015年発表のKissとのコラボレーション曲「夢の浮世に咲いてみな」、オリエンタル調のEDMナンバー「リバイバル」をももクロのオリジナル音源とは異なる新たなアレンジ、解釈で披露。凛とした表情でクールなステージングを繰り広げ、激しい踊りを見せるダンサーとともにモノノフを圧倒する。さらに百田は年越しイベント「ももいろ歌合戦」で戸田恵子が歌唱しているところを見て感銘を受け、本人に「ぜひ今度歌って」と声をかけられた思い出のバラード曲「強がり」を熱唱。聴く者に安らぎを与える前向きなアコースティックナンバー「The Show」では傘を片手に歌声を届け、会場を朗らかな空気で包み込んだ。

ライブ終盤にはステージ上に真っ白なピアノが登場し、百田がその前に置かれた椅子にそっと腰掛ける。自身がヒロインを演じた映画「すくってごらん」の撮影のためにピアノを猛特訓し、劇中で見事な演奏を披露した百田は同作の主題歌である「赤い幻夜」を弾き語り。“ももクロの百田夏菜子“の歌声ではなく、映画に登場するミステリアスな美女・生駒吉乃の艷やかな歌声を響かせ、観客から大きな拍手を浴びた。会場に静かな緊張感が広がる中、さらに百田はアニメ「美少女戦士セーラームーンS」のエンディングテーマ「タキシード・ミラージュ」も自身のピアノの演奏に合わせて柔らかに歌唱。「今回のライブのサブタイトルは『シンデレラタイム』ですが、私にとってはお仕事をしているときが魔法のような、夢のような時間で。10年くらい前、静岡から東京へお仕事に行く新幹線の中で書いていた言葉があったんです。『そう言えばあのノートどこにあるだろう』と思って探し出して、それをメロディに当てはめていきました」「私にとっては新幹線の中の日常も大切でした」と語ったあとには、自ら作詞した新たなソロ曲「ひかり」を優しく弾き語った。

そして百田は間髪をいれずに「白金の夜明け」をライブ本編のラストナンバーとして披露。鍵盤を力強く打ちつけて不協和音を生み出してから歌い始め、だんだんとバンドのアンサンブルが加わっていくというカタルシスのある展開により、弱い心に寄り添って絶望を希望に変えていく歌詞の世界観を表現した。

アンコールでは再び時計の音が鳴り響き、バンドマスターの宗本康兵(Key)が「overture」を奏でる中、Tシャツ姿の百田が再登場。そのまま宗本の伴奏に合わせて「イマジネーション」を歌唱し、茶目っ気のある笑顔を浮かべてピアノの連弾を披露した。さらにナオト・インティライミが提供した新曲「わかってるのに」をこれから歌うことを宣言した百田は「『わかってるのに』ってナオトさんと話しているときに、よく私が口にしていた言葉なんですって」と楽曲タイトルの由来を説明しつつ、「ナオトさんと音楽や歌の話をたくさんさせていただいて。『私、音楽とか歌とか、全然得意じゃないんですよね』と話したときに、『そういうの関係ないじゃん。好きなように表現したほうがいいのに』って言っていただいたんです」とナオトから送られた印象的な言葉を紹介。センターステージからどの方向を向いて歌うかを決めるため、観客の1人とじゃんけんしたのち、石成正人(G)によるアコースティックギターの演奏に乗せて「わかってるのに」を情感たっぷりに歌い上げた。

その後、百田は百田夏菜子 with ザ・ワイルドワンズで2012年に発表したソロ曲「渚のラララ」をにぎやかにパフォーマンスし、バンドメンバーを笑顔で紹介する。曲の終盤では演奏の音が止み、百田の「ラララ」という歌声だけがさいたまスーパーアリーナに響き渡った。曲が終わると、百田は「私はずっとソロコンサートをやってこなかったけど、ちゃんと皆さんの声は聞こえていて。いつか自分1人で届けることができたらと思っていました。いろんなお仕事をさせていただいていますが、今までソロコンサートという選択肢は本当になかったんです。でも、皆さんが喜んでくれる顔を想像しながら今日を迎えることができました。来てくれて本当にありがとうございます」と胸に秘めた感謝の気持ちを言葉に。「今回ソロコンサートをやらせていただきましたが、みんな思ってるでしょ? 『あいつ、もう(ソロコンを)やらないかもしれないな。だから今観ておかないと』って(笑)。そんなこと言って今後の予定とか、新たに発表できることは何もないんですけど(笑)、今回のソロコンサートで幸せな力をたくさんいただいたので、それを力にして、皆さんにお返しできるようにがんばっていきたいと思います」と笑いを誘いつつ、モノノフと約束を交わした。

最後はスクリーンの時計の針がシンデレラタイムの0:00を指したところで鐘が鳴り、百田がステージをあとに。本広監督が手がけたエンディングムービーが流れ始め、輝く太陽の下、海辺で満面の笑みを浮かべる百田の姿や、彼女が歌う鼻歌が場内に心地よい余韻を残した。

百田夏菜子「百田夏菜子ソロコンサート Talk With Me ~シンデレラタイム~」2021年10月17日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト

01. 魂のたべもの
02. D'の純情
03. キミノアト
04. 太陽とえくぼ
05. 愛・おぼえていますか(オリジナル:飯島真理)
06. それぞれのミライ
07. 夢の浮世に咲いてみな
08. リバイバル
09. 強がり(オリジナル:戸田恵子)
10. The Show
11. 赤い幻夜
12. タキシード・ミラージュ
13. ひかり
14. 白金の夜明け
<アンコール>
15. イマジネーション
16. わかってるのに
17. 渚のラララ

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