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西寺郷太のPOP FOCUS 第18回 SMAP「Dear WOMAN」

3年近く前2021年09月09日 9:04

西寺郷太が日本のポピュラーミュージックの名曲を選び、アーティスト目線でソングライティングやアレンジについて解説する連載「西寺郷太のPOP FOCUS」。NONA REEVESのフロントマンであり、音楽プロデューサーとしても活躍しながら、80年代音楽の伝承者として多くのメディアに出演する西寺が私論も盛り込みつつ、愛するポップソングを紹介する。

第18回では資生堂「TSUBAKI」のCMソングとして広く愛されたSMAPの楽曲「Dear WOMAN」にフォーカス。ほかにはないグループの強みや、彼らが音楽シーンにもたらした多大な影響とはなんだったのか。日本中を元気にしてきたSMAPの魅力に迫る。

文 / 西寺郷太(NONA REEVES) イラスト / しまおまほ

SMAPらしさを完璧に落とし込んだマスターピース

ずいぶんと長い間、多くの作詞・作曲家、ミュージシャンにとって「もしも自分の書いた曲や歌詞をSMAPが歌ったら、どんなふうに日本中に響くのか?」とイメージすることが“日本のテレビから広まる音楽”の基準だった気がします。

近年、さまざまなメディアでいわゆる昭和歌謡、J-POP史が改めて研究され、語られ、執筆されているように思いますが、今年3、4月にテレビ朝日系列で放送された「関ジャム 完全燃SHOW」の「J-POP20年史 プロが選ぶ最強の名曲 ベスト30!!」という企画は特に秀逸でした。選曲の“幅”を2000~2020年にリリースされた曲に絞ったことで、ミュージシャンやプロデューサー陣もベストソングを選ぶときに自分たちがプロになってから並走してきた時代をもう一度当事者としてリアルに捉え直す必要があるからです。

僕もこのコーナーに参加させていただき、考え抜いた末、3位にSnow Man「D.D.」、2位に嵐「Turning Up」を選んだのですが、どちらもこの連載でも取り上げた大好きな曲で。このとき僕がランキングでわりと悩まずに1位に選んだのが、2006年4月に発売されたSMAPの39枚目のシングル曲「Dear WOMAN」でした。資生堂のヘアケアブランド「TSUBAKI」のCMキャンペーンで、2006年にメディアで大量投下され続けた巨大タイアップソング。当然、全国的な広い世代への認知はありつつも“企業CMソング”というイメージが付きすぎたのか、メガヒット曲を豊富に持つ彼らの屈指の代表曲という扱いにまではなっていない気がします。ただし僕自身はリリース当時29歳だった最年少の香取慎吾さん以外、30代を迎えていた円熟期の彼らが90年代に作り上げたSMAPらしさを、年齢を重ねて改めて完璧に落とし込んだマスターピースだと考えているんです。

1995年の「Mステ」で届けたメッセージ

僕が「関ジャム」に送ったコメントは以下のようなものでした。

90年代半ばから、2016年の解散まで日本の「J-POP」の中心、頂点に存在していたのはSMAPだと思う。
「SMAP的」としか表現出来ないダンサブルなビート、コード、華麗なるストリングス!
セルフオマージュのように再構築し完成させた彼らの最高傑作の一つ。
5人の個性的な歌声で伝わる女性讃歌のメッセージが、説得力に満ちている。

「Dear WOMAN」の最大のポイントは「WELCOME ようこそ日本へ」という壮大なフックのフレーズ。これは中居正広さん、木村拓哉さんと同じ1972年生まれ、若くしてCMプランナーとして数多くの業績を残してこられた百戦錬磨の作詞家・麻生哲朗さんによるもの。「あなたは美しい」などという特定の相手に宛てた言葉ではなく「日本の男性代表としてすべての女性へ感謝する」という普通なら難しい役回りがSMAPに託されています。彼ら5人が10年以上にわたって日本を代表するエンタテイナー集団として実績を重ね、絶大なる認知と人気を獲得してきたからこそ成り立つ詞世界で、僕は大好きです。

では、いつどのタイミングでSMAPは誰もが認める“日本を代表する圧倒的なスターグループ”になったのでしょうか。1973年生まれで、稲垣吾郎さんや森且行さんと同じ学年、完全に同世代の僕は彼らが通常の人気アイドルグループの領域を完全に超えた瞬間を克明に記憶しています。

1995年1月20日金曜日、夜8時。

テレビ朝日系「ミュージックステーション」の生放送での出来事でした。SMAPはその3日前に日本を襲った阪神・淡路大震災の衝撃を受けて、当時リリースされたばかりの最新シングル「たぶんオーライ」を「がんばりましょう」に急遽差し替えて歌ったんです。「たぶんオーライ」は、個人的に今も好きなSMAPソングの上位に位置していますし、青い背景にモノトーンで陰影の強いメンバーの写真がジャケットに使用されている短冊8cmCDシングルのジャケットが最高にクールで、年末に買って繰り返し聴き込んでいた楽曲。なので、「あー、歌う曲変わるんだ、歌詞的にそれもそうか」などとテレビを観ながら僕は軽い衝撃を受けたことを覚えています。歌唱前にグループ最年長で当時それぞれ22歳の木村拓哉さん、中居正広さんが順にアップになり、被災者への実直なメッセージを添えました。今でこそ普通の対処のように感じるんですが、当時アイドルが選曲も含めて臨機応変な姿勢を見せ、自分の言葉で災害時に語りかけるのは珍しいことでした。そしてまさにその瞬間、上り調子のサイクルに入っていたSMAPが日本芸能界の頂点に立ったと僕は考えているんです。

日本国民共通の“ベストフレンド”

僕も若い頃はそこまで気が付いていなかったんですが、人間って知っている人と会ったり、声を聞いたり、話したりすると心の奥底が安心するもの。見知らぬ集団に囲まれたり不安なとき、ちょっとでも顔見知りがいるとうれしいものですが、それはテレビのバラエティや街中の看板や広告などで見る芸能人、スターも同じで、擬似的な友人のような関係がお茶の間との間には生まれてゆく。SMAPは、長い間、日本国民共通の“ベストフレンド”だったんじゃないか、と僕は思うんです。SMAP最大の武器は、A.B.C-Z「Moonlight walker」を取り上げた連載15回目でも触れたのですが、メンバー全員がソロパートで主役を張れる個性的な声。1996年に脱退した森且行さんも含め、それぞれの声やキャラクターが特に粒立っている。彼らほど日本全国の老若男女に名前、顔、声、キャラクターが認知され、浸透したグループはそういないなと。彼らの歌声は「あ! 中居くんがこのパートは歌っているな」とか「これは吾郎ちゃんだ」などとわかるから、街中でSMAPの曲が流れてるとすごく安心するんですよね。そんな彼らがその後も地震災害などのタイミングで必ずアクションを起こしメディアの先頭に立ってきた事実。彼らが存在し、メッセージを発信することで救われ、支えられてきた人々は数え切れないほどいるのではないか、と。SMAPが代表者として時にはつらい象徴的な役割を引き受けてくれたからこそ、日本の芸能界、エンタテインメント界は心地よく安定したのだと、グループとしての彼らが不在となった今、特にそう思います。SMAPが20年以上にわたって日本にもたらした幸福の総量は、大変大きなものだったということを強調したいです。だからこそ、彼らでなければ成り立たないほど壮大な歌詞をまとった「Dear WOMAN」も何の疑問もなく心に華やかに響きわたるのだな、と。

ちなみに、SMAPのアルバム「We are SMAP!」(2010年7月発売)に収録されている麻生さん作詞、ゲントウキの田中潤さん作曲の「短い髪」は、「Dear WOMAN」で放った“国民的広告音楽のパンチ力”とは対極の“若くして恋人を亡くした主人公の悲しみ”が草彅剛さん、香取慎吾さんの2人によって歌われるパーソナルで胸が苦しくなるバラードで、ボーカルも含めて大好きです。

アーティストたちのクリエイティビティを刺激したSMAPという存在

ミュージシャン、ソングライターとして、1997年にプロになった僕のような人間にとっては山崎まさよしさんによるオリジナル楽曲「セロリ」をSMAPが歌って大ヒットさせたり、スガシカオさん作詞、川村結花さん作曲による「夜空ノムコウ」がミリオンセラーとなり、のちに中学生の音楽の教科書に載ったりという世間への浸透と国民からの愛され方を目の当たりにすると「いつか自分もSMAPに曲を提供したい」という思いが音楽活動の大きなモチベーションとなりました。彼らの歌唱は本当に素晴らしく、楽曲が突然メジャーに、究極の“日本代表感”でカラフルに染まるので。フィギュアスケートでいう規定演技に近いのかもしれません。

SMAPの楽曲はコンペシステムで選ばれることが多く、2000年代以降、僕も声をかけていただき7回ほどエントリーしました。ただ厳しい審査に落選して、結局採用されずに返ってきたとしてもSMAPが歌う想定で書いた曲は“いい曲”になることが多いんです。例えば盟友の谷口尚久くんと共作してコンペに提出して落選した「休もう、ONCE MORE」という曲は、 自分たちでも気に入ってNONA REEVESのアルバム「POP STATION」(2013年3月発売)でギターの奥田健介、ドラムの小松シゲルと3人で歌っていて、ライブなどでもバンドの定番曲の1つとなっています。一応、歌詞を書いた時点で「ここは木村さんパートかな?」などと考えるのもクリエイティビティを刺激するんですよね。結局、僕は2010年発売のアルバム「We are SMAP!」収録の「SWING」という楽曲で一度だけ「SMAPに歌ってもらう」という夢を叶えました。5人が歌ったテイクを聴かせてもらい、バックトラックはニューヨークで録音され、10代の頃から憧れていたベーシストのウィル・リー、ドラムはオマー・ハキムという最強メンバー、届けられたときの感動は今も忘れられません。

彼らのアルバム、シングルをセレクトするため何千曲が毎年集められ、返却されていたという事実は、SMAPを想定して作った曲が、僕らの場合のようにそれぞれのアーティストやバンドに再利用されている可能性をも意味しています。実際、僕が関わった残りの数曲も形を変えながら、すべて世に出ています。その意味でもSMAPという“国民的いい曲を集めて歌うグループ”が存在したからこそ、日本の音楽業界が活性化していたという部分は必ずあるんです。

揺るぎないSMAPブランド

ここまで「Dear WOMAN」の作詞や、楽曲を多数のソングライターから集めてセレクトしてきたシステムから、SMAPが“日本代表として果たしてきた役割”の重要性について多く記してきました。ただし僕が、「Dear WOMAN」を「J-POP20年史 プロが選ぶ最強の名曲 ベスト30!!」のベスト曲に選んだ理由の最大のポイントは、平田祥一郎さんが担当された作曲・編曲にあります。僕は企画会議などに出席していたわけではないのでこれはあくまでも推測ですが、資生堂が「TSUBAKI」という看板商品を大々的に売り出して浸透させていこうと考えたとき、CM制作陣は「日本のポップミュージックのど真ん中に存在する楽曲とはなんだ?」と熟考したのではないでしょうか。日本のポップ音楽の代表としてのSMAPが歌う日本人がもっとも愛するタイプの楽曲・編曲。きらびやかなストリングスアレンジは、筒美京平さんが得意とした豪華絢爛なフィラデルフィアソウルのムードをまとうジャニーズ音楽の伝統。この時点での彼らは成熟した大人としての魅力も放ち、それでいて瑞々しさを失わない遊びに満ちたムードもあって素晴らしい。それまでの90年代SMAPミュージックを改めて研究し、いいところ、我々日本人が愛する要素を意図的に組み合わせたように思えて。5人のボーカルと言葉とサウンドが最大レベルの商業主義と純粋な美しさを兼ね備え、高いレベルで“揺るぎないSMAPブランド”として真空パックされている。それがベストに推した最大の理由です。

2017年の秋、稲垣さん、草彅さん、香取さんのプロジェクト・新しい地図にとって初のオリジナル曲「72」に仮歌、コーラスとして参加できたのも雄叫びを上げるほどうれしかったです(笑)。SMAP最高。それぞれの今に至る歩みも最高。1991年9月9日、シングル「Can't Stop!!-LOVING-」でのデビューから丸30年の今日。彼らの存在に「心からありがとう」と改めて伝えたいです。

西寺郷太(ニシデラゴウタ)

1973年生まれ、NONA REEVESのボーカリストとして活躍する一方、他アーティストのプロデュースや楽曲提供も多数行っている。2020年には2ndソロアルバム「Funkvision」リリース。2021年9月には、バンドとして17枚目のオリジナルアルバム「Discography」発表。文筆家としても活躍し、著書は「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い」「プリンス論」「伝わるノートマジック」「始めるノートメソッド」など。近年では1980年代音楽の伝承者としてテレビやラジオ番組などさまざまなメディアに出演している。

しまおまほ

1978年東京生まれの作家、イラストレーター。多摩美術大学在学中の1997年にマンガ「女子高生ゴリコ」で作家デビューを果たす。以降「タビリオン」「ぼんやり小町」「しまおまほのひとりオリーブ調査隊」「まほちゃんの家」「漫画真帆ちゃん」「ガールフレンド」「スーベニア」「家族って」といった著作を発表。イベントやラジオ番組にも多数出演している。父は写真家の島尾伸三、母は写真家の潮田登久子、祖父は小説家の島尾敏雄。

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