佐々木敦と南波一海によるアイドルをテーマにしたインタビュー連載「聴くなら聞かねば!」。今回は番外編として、佐々木がこの1年で急激にハマっているというK-POPをテーマにお届けする。次々と新たなグループが生まれ、斬新な楽曲と圧倒的なパフォーマンスでワールドワイドな人気を獲得しているK-POP。ここ日本においてもLE SSERAFIMやIVEといった新進気鋭のグループが「第73回NHK紅白歌合戦」への出演を決めるなど、その勢いはとどまるところを知らない。音楽的にも急激な速度で進化を遂げているK-POPの魅力を2人に語り合ってもらった。
構成 / 望月哲 撮影 / 沼田学 イラスト / ナカG
今のK-POPには世界的な潮流やトレンドがしっかり反映されている
南波一海 ここ最近、佐々木さんのTwitterを見ているとK-POPの話題が増えていて、日本のアイドルへの熱量が明らかに下がっているような気が……(笑)。
佐々木敦 そんなことはないよ!(笑) い、一応(焦)、ちゃんと日本のアイドルもチェックしてるよ。でも、そういう印象を与えてるところもあるとは思う。僕は大学で講義の仕事もしてるんだけど、先日、学生に「先生、もう日本のアイドルに興味ないんですか?」と言われてしまった(笑)。
南波 ちなみに佐々木さんが今注目している日本のアイドルは?
佐々木 ExWHYZだね。EMPiREから改名して、これまでのロック的なサウンドからダンサブルな方向に思いきり舵を切って、サウンドアプローチに関してもすごく面白いと思う。もともと僕はクラブミュージックをたくさん聴いてきたから。最近のK-POP楽曲をいいなと思うのも、そういうところなんだよね。ダンスミュージックとして単純にカッコいい。
南波 K-POPのトラックは、音の隙間であるとか、低音を重視する感じとか、YouTubeやストリーミングでもいかに機能するかというところに重きが置かれていますよね。
佐々木 わかりやすく言えば、ドラムとベースの強調の仕方が日本のポップミュージックとは全然違う。ボーカルより手前に聞こえるくらいめちゃくちゃブイブイいっていて。
南波 LE SSERAFIMの「FEARLESS」の序盤なんてドラムとベースしか鳴ってないですもんね(笑)。
佐々木 Hyperdub(※先鋭的なエレクトロダンスミュージックを発表しているイギリスのレーベル)の曲かと思ったよ(笑)。ダブステップ以降の音。
南波 ブリアルみたいな。
佐々木 そうそう。ティザー映像が公開された時点では歌が入ってなかったから、「これ、どういう曲になるんだろう?」ってすごく興味をそそられた。
南波 LE SSERAFIMは歌詞もすごく印象的ですよね。
佐々木 そうだね。LE SSERAFIM にはKAZUHAという日本人メンバーがいて、彼女はオランダでバレエ留学をしていたんだけど、その最中に新型コロナが世界的に蔓延して。そこでバレリーナとしての未来を案じて、HYBEのインターナショナルオーディションを受けてLE SSERAFIMのメンバーになった。「ANTIFRAGILE」の歌詞に「忘れないで 私が置いてきたトウシューズ」という一節があるんだけど、そこにはKAZUHAが歩んできた物語が込められている。アツいよね!
南波 LE SSERAFIMの歌詞はパンチラインだらけですよね。「ANTIFRAGILE」の歌詞で自分がいいなと思ったのは、「操り人形は No Thanks」「捨てちゃった 君のFairy Tale」というフレーズ。ひと事でいうと自己肯定感ですよね。
佐々木 自立や自己実現がテーマになっている。でも、それはLE SSERAFIMに限ったことではなくて、IVEもそうだし、昨今のK-POPの女性グループ全般に言えることで。とにかく圧倒的に恋愛の曲が少ない。ミュージックビデオに男性が出てくることもほぼないし。
南波 以前はありましたよね。冒頭や途中にドラマパートがあって、男性ゲストが出てきたりして。
佐々木 ああいうものが見事になくなったよね。わかりやすい恋愛の歌も減ったし。たぶん異性からの萌えみたいなものを狙っていないんだろうね。実際、圧倒的に女性ファンが多いわけで。
南波 先日、Kep1erの幕張メッセ公演に行きましたけど、自分の周りは見事に女性のお客さんばかりでした。それで思い出したのがAwichの日本武道館ワンマン。あのときも圧倒的に女性のお客さんが多くて。女性がカッコいい同性を支持する時代になっているんでしょうね。力強いメッセージを放つアイコンが求められている感じがします。
佐々木 2010年半ばから顕著になった「#MeToo」運動やフェミニズムの全世界的な意識化の影響も間違いなくあるよね。サウンドにも歌詞にも今のK-POPには世界的な潮流やトレンドがしっかり反映されているように思う。そもそも韓国は、昔はかなり男尊女卑の社会だったわけで、そうした背景を加味して考えると、今、韓国の女性アイドルが堂々と自己肯定的なメッセージを歌い上げているのはすごいことだよね。
南波 家父長制が強い国でもありますし。
佐々木 チョ・ナムジュの小説「82年生まれ、キム・ジヨン」がベストセラーになったり、この10年くらいの間で韓国社会にドラスティックな変化が起こって、それが音楽にも影響を与えているんだろうね。国の変化とカルチャーの変化が見事にシンクロしている。
新興勢力も現れて今シーン全体が面白い
南波 話が前後しちゃいますけど、そもそも佐々木さんはどういう流れでK-POPにハマったんですか?
佐々木 これも日本のアイドル同様、YouTubeのオススメ動画がキッカケなんだよね(笑)。
南波 またしても、わかりやすくAIのアルゴリズムに導かれて(笑)。
佐々木 そう。今年の年明けくらいに、アンジュルムの動画を頻繁に観ていた時期があったんだけど、「この動画も好きかも」みたいな感じで、K-POPのMVがどんどん関連動画に上がってきて。最初に観たのはaespaの「Savage」だったかな? あの曲はメロディのフックというか、すごくクセが強いじゃないですか。「ああ、こんなんなってるんだ!」と思って、確かにハロー!プロジェクトのグループに近いものを感じた。それで、ほかのグループのMVとかを漁っているうちに気付いたら見事にハマってしまった(笑)。それまでK-POPはほとんどチェックしてなかったんだけど、「こんなに面白い曲がたくさんあるのか!」と思って。
南波 日本のアイドルにハマったときと完全に同じパターンですね。
佐々木 まったく一緒(キッパリ)! 1つのグループに興味を持つと、過去の映像もさかのぼってチェックしていくというタイムマシンパターンも同じ(笑)。コロナの影響もあるんだけど、基本的には日本のアイドル同様ネットで活動をチェックしてる。本当は現場にも行きたいんだけどね。こないだ日本で開催された「KCON」 (10月14~16日に東京・有明アリーナで行われた「KCON 2022 JAPAN」)のチケットを取ろうと思ったんだけど、残念ながらその日は地方出張だった。
南波 でもあれチケット取れなかったですよ(笑)。僕も3次まで全部落ちましたから。みんなどうやって取ってるんだろう? 複数のアカウントを持ってるのかな。
佐々木 K-POP関連の公演はチケットが取れないって、みんな話してるよね。
南波 そうなんです。LOONA(今月の少女)の来日公演のチケットは取れたと思ったらビザの関係でメンバーが来日できなくなっちゃって。でも、来日がなくなったことで海外の一部のファンの間では「ようやく休ませてあげられる」という声が上がっていたみたいですね。とにかく過密スケジュールで活動しているから。
佐々木 K-POPのグループは世界中を飛び回ってるもんね。だってKCONなんて日本の前はサウジアラビアで開催されていたわけでしょ? その前はアメリカのLAで。男女のトップグループをパッケージにして世界中でツアーを行っている。もはや国策以外の何物でもないよね。韓国は国費をちゃんと文化に使っている。まさにグローバル戦略。
南波 映画祭とBTSのライブが釜山で同時期に開催されるから、ビザなしで韓国に入国できる期間が延長されたという話もあるくらいで、韓国では国を挙げてカルチャーを応援していますよね。
佐々木 だから、どんどん面白いアーティストが出てくる。客観的に見て、今のK-POPシーンは本当に充実していると思う。新人でいうとaespa、IVE、LE SSERAFIMが瞬く間にトップグループに躍り出て。
南波 BLACKPINK以降の圧が強いビート感に対するカウンターというか、NewJeansみたいな新興勢力も現れて。シーン全体が面白い。
佐々木 NewJeansの登場はあらゆる意味ですごく衝撃だった。楽曲といいダンスといい、グループとしてのイメージの打ち出し方も、すごく斬新。そうした新しいグループがどんどん出てくる一方で少女時代、KARAみたいなレジェンダリーなグループが続々とカムバックしたり。日本の雑誌の表紙もK-POPのアーティストが飾りまくってるよね。
変化をよしとする文化と安心を求める文化
南波 ここ最近の来日ラッシュもすごいですよね。とはいえ新人グループは、ライブというよりも、ファンミーティングみたいなものが多くて。
佐々木 持ち歌があんまりないという事情もある(笑)。だからフルサイズのライブができない。
南波 それでもガンガン来日しちゃうという(笑)。
佐々木 持ち歌が少ないということで思い出したんだけど、韓国には異常なほどたくさん歌番組があって毎週チャートを発表してるんだよね。だから持ち歌が少なくても人気のあるグループは何週にもわたって番組に登場するし、その結果、認知度が一気に高まっていく。昔は「ザ・ベストテン」みたいな番組があったけど、今の日本では同じアーティストが何週も続けて同じ歌番組に出てくることなんてありえないもんね。
南波 露出の多さが日本とは全然違うわけですね。
佐々木 毎週同じ曲を歌うわけだから、出演するアーティストも視聴者を飽きさせないように、ファッションや髪形を頻繁に変えていて。Kep1erとか、めちゃくちゃ目まぐるしく髪色が変わるから一瞬、誰が誰だかわからなくなる(笑)。ピンクと金髪が突然交代してたりするんで。
南波 でも、ホント不思議だなと思うんですよ。日本だと芸能人が髪形を変えたりすることに対して、昔からすごく慎重じゃないですか。CMに出てるからその期間は髪の色を変えちゃいけないとか、謎のルールだなと思っていて。
佐々木 たぶんそういう縛りが慣習として残っているんだろうね。
南波 よく考えると理由はないんだけど、そういうルールでやってきたから今もそうやってます、みたいな。ホントに意味がわからない。アイドルだって新曲を出すたびに髪形が変わったりしたら、ファンは楽しいと思うんですよ。そこを変えられないのは不自由だなと思います。
佐々木 また炎上しそうなモードになってきた(笑)。
南波 「地下アイドルはよく髪形を変えてるぞ」って。
佐々木 俺、実際にそれ言われたんですよ、Twitterで(笑)。でもガンガン髪形を変えてるK-POPのアーティストが、今や世界の名だたるハイブランドのアンバサダーを務めているわけだから。
南波 例えばBLACKPINKのリサはセリーヌやブルガリのアンバサダーを務めていますし。世界的に人気を得ている人が普通にイメチェンしてる現状があるのにどうして、それができないんだろう。
佐々木 髪形を変えることとか、似合っているかどうかは別として、韓国ではアーティスト本人が変わっていくことに面白さを見出していて、ファンもそれを楽しんでいる。日本の場合、どちらかというと安定した不変のイメージを大事にするところがあって、ファンの側にもそれを好む風潮がある。徐々に変わってきているとは思うけどね。変化をよしとする文化と安心を求める文化の違いというか。
とんでもない競争を勝ち抜いてきた人たちだから歌えるリアリティ
佐々木 その一方で、韓国の芸能界の特殊さに驚かされることも多々あって。例えば中学時代のいじめ疑惑が問題になって専属契約解除となった元LE SSERAFIMのキム・ガラムの件もそうだし。
南波 韓国の芸能界はタレントの素行に関してかなり厳しいですよね。
佐々木 とにかく過ちを犯したらほぼ一発でアウトだから。例えばアメリカだと一度罪を犯したとしても更生すればセカンドチャンスが与えられるよね。ヒップホップの世界にそれが顕著だけど。韓国の芸能界では一度の失敗が取り返しのつかないことになるから過酷だなと思う。日本とは比べ物にならないくらいインターネット言論が発達しているということもあるんだろうけど。
南波 デビューが決定した瞬間にネットで粗探しが始まって。日本でもありますけど、もう影響の大きさが違うというか。
佐々木 異常なまでにネットで叩く人がいるからね。その結果、自殺に追い込まれるタレントもいたりするわけで。韓国の芸能界でサバイブしていくには相当タフじゃないといけない。
南波 そして常に潔白でいなければいけないという。
佐々木 それこそ幼少時代までさかのぼって調べられちゃうわけだからね。
南波 日本だと「記憶にございません」とかで逃げ切れたりしますからね(笑)。山際前大臣もギリギリまで居直っていたし。
佐々木 責任ある大人がそれだからどうしようもない(笑)。日本は建前社会だから、建前が維持できるうちはそれで乗り切ってしまおうという風潮があるよね。イメージだけ整えておけばいいというか。韓国では、それが許されず徹底的に糾弾されてしまう。社会の厳しさが日本とは比べ物にならない。
南波 安易に比較するべきではないですけど、日本社会は競争がゆるやかだから、アイドルがいろんな形態で存在できているというのもあると思います。見る側にも、ある種の寛容さがあるというか。そこまで競争が苛烈じゃないから、地下シーンまで見渡すと、すごくいろんなタイプのアイドルが活動していますし。
佐々木 それこそ本来の意味での多様性なのかもしれない。実力至上主義だけではなく、いろんなアイドルが共存できていて。不祥事を起こして脱退したアイドルもほかのグループで復活できたりするし(笑)。それは日本のアイドルシーンのいいところでもあるよね。
南波 韓国にも地下アイドルシーンが少しあるみたいですけどね。ともかく、日本はゆるやかな形で共存システムが形成されている。
佐々木 そう。逆に韓国は完全なる競争社会だから。冒頭で昨今のK-POPの歌詞には自己実現をテーマにしたものが多いという話をしたけど、そこには何年もの育成期間や、世界規模のオーディションだとか、とんでもない競争を勝ち抜いてきた人たちだから歌えるリアリティがあって。
南波 確かに。
佐々木 宮脇咲良はHKT48、AKB48で天下を取り、そして韓国に渡ってIZ*ONE、LE SSERAFIMでも天下を取った。彼女は最近、「私には生まれついての才能は1つもない。でも努力する才能だけはあったんです」という名言を残しているんだけど、実際、LE SSERAFIMのメンバーになって歌もダンスもすごくうまくなってるんだよ。努力すると人はここまで変わるんだなって。だから彼女の存在には圧倒的な説得力がある。
佐々木&南波が挙げる2022年のK-POPフェイバリットソング
佐々木 なんちゃんが2022年のK-POPのフェイバリットを挙げるとすると?
南波 真っ先に思い浮かぶのはクォン・ウンビの「Glitch」ですね。とにかくあの曲は衝撃的でした。
佐々木 あれこそHyperdubだよね(笑)。どういう発想でああいうトラックができたんだろう。最近のK-POPの曲には、ああいうタイプの曲が多いよね。ハードコアなダンスミュージックの上にキャッチーなメロディが乗っているという。日本のポップミュージックの場合、曲を提供している側がちょっと及び腰になっているところがあるのかもしれない。「ファンが付いてこなかったらどうしよう」って。でもアメリカだって、ビヨンセの曲とか、めちゃくちゃアバンギャルドだったりするし。
南波 あとK-POPの曲は、2~3分台で終わる曲が多いですよね。日本のアイドルの曲はAメロ→Bメロ→サビときて、最後に行く前に落ちサビも用意されていて、4分半とか5分になってしまう。あの強力な構造から抜けきれないところがあると思うんです。なので「Glitch」とかを聴くと、こういう曲が普通にヒットしちゃうのが単純にすごいなって。
佐々木 本当にびっくりするよね。
南波 「Glitch」は自分の中でナンバー1だったんですけど、NewJeansの登場でそれが塗り替えられました。デビュー曲の「Attention」は衝撃的でしたね。
佐々木 僕は「Hype Boy」が好きなんだよね。ミュージックビデオが4パターンあって、どれもよくできてる。4つの動画で1つの物語を作り上げていて。アートワーク1つ取ってもセンスがいい。ただ音楽的にいうと決して今っぽくはないんだよね。90年代の日本っぽい音作りともいえる。ある種のエモさというかセンチメントがあって。
南波 こういうことをやりたかったという日本のプロデューサーはたくさんいると思います。
佐々木 NewJeansはK-POPの新しい流れを明らかに狙って送り出されたグループだよね。HYBEの今後に向けた展望が垣間見えるというか。
南波 BTSのメンバーが兵役に行くことを見越して。
佐々木 一歩先を見据えていると思う。
南波 佐々木さんはどのグループが好きなんですか?
佐々木 客観的にはIVEとLE SSERAFIMが今年のツートップだと思うけど、個人的にはLE SSERAFIMに可能性を感じる。LE SSERAFIMは、毎回MVの最後に次の曲のヒントになるような言葉が出てくるんだよね。例えばデビュー曲「FEARLESS」のMVの最後に「DO YOU THINK IM FRAGILE?」というメッセージが流れるんだけど、それが次作のリード曲「ANTIFRAGILE」の予告になっている。曲タイトルもよく考えられていて。「FEAR+LESS」とか「ANTI+FRAGILE」とか否定的な言葉にもう1つ否定を重ねてポジティブな言葉に変換している。そういう戦略的な部分も含めて、めちゃくちゃクールだし、今後に向けた可能性を感じる。
南波 そういったコンセプト作りが頭ひとつ抜けてる感じはします。
佐々木 あと可能性といえば、Kep1erの日本オリジナル曲「Wing Wing」は面白いなと思った。K-POPの日本語バージョンや日本オリジナル曲ってイマイチな仕上がりになってしまうことが多いんだけど、「Wing Wing」は本当によくできている。今のK-POPの歌詞は半分くらい英語が入っていて、それはもともと韓国語と英語の馴染みがよくてできてるところがあるから、そのぶん日本語は不利なんだけど、Kep1erの「Wing Wing」は日本語と英語の混ざり具合が絶妙だなと思った。日本オリジナル曲ということでいうと、LOONA(今月の少女)の「LUMINOUS」もカッコよかったし、つい最近日本デビューしたSTAYCの「POPPY」もすごくよかった。
南波 僕は、そもそも「K-POPの日本語バージョンってなんであるんだろう?」と思ってしまうタイプなんですけど、Kep1erの「Wing Wing」は新しいなと思いました。実際、YouTubeにも海外のリスナーからのコメントがたくさん付いてるから日本語でもちゃんと届いてるんですよね。ああいう状況を見るとすごく可能性を感じます。
佐々木 日本の音楽の世界進出に関して、言語の壁みたいなことがずっと取り沙汰されてきたわけだけど、BTSが韓国語曲でも世界で売れたことで、言葉の壁を乗り越えられることを証明したわけだから。日本語のマイナー性によって、日本のポップソングが世界に進出できないとは今後はもう言えないと思う。YouTubeとかで歌詞の翻訳も付けられるわけだし。エイベックスがXGで、全員日本人メンバー、英語詞曲で韓国デビューというアクロバットをやってのけたわけだけど、日本語のポップミュージックもやり方次第で、絶対にブレイクスルーできる道があると思う。そこに期待したいね。
佐々木敦
1964年生まれの作家 / 音楽レーベル・HEADZ主宰。文学、音楽、演劇、映画ほか、さまざまなジャンルについて批評活動を行う。「ニッポンの音楽」「未知との遭遇」「アートートロジー」「私は小説である」「この映画を視ているのは誰か?」など著書多数。2020年4月に創刊された文学ムック「ことばと」の編集長を務める。2020年3月に「新潮 2020年4月号」にて初の小説「半睡」を発表。同年8月に78編の批評文を収録した「批評王 終わりなき思考のレッスン」(工作舎)、11月に文芸誌「群像」での連載を書籍化した「それを小説と呼ぶ」(講談社)が刊行された。
南波一海
1978年生まれの音楽ライター。アイドル専門音楽レーベル・PENGUIN DISC主宰。近年はアイドルをはじめとするアーティストへのインタビューを多く行い、その数は年間100本を越える。タワーレコードのストリーミングメディア「タワレコTV」のアイドル紹介番組「南波一海のアイドル三十六房」でナビゲーターを務めるほか、さまざまなメディアで活躍している。「ハロー!プロジェクトの全曲から集めちゃいました! Vol.1 アイドル三十六房編」や「JAPAN IDOL FILE」シリーズなど、コンピレーションCDも監修。