佐々木敦と南波一海よるアイドルをテーマにしたインタビュー連載「聴くなら聞かねば!」。前回に引き続き、音楽プロデューサー・もふくちゃん(福嶋麻衣子)をゲストに迎えてお届けする。10年以上の長きにわたり、でんぱ組.incをプロデュースしてきた彼女が見据える今後のビジョンとは?
構成 / 望月哲 撮影 / 沼田学 イラスト / ナカG
オタクの子供がでんぱ組.incのメンバーになる時代
南波一海 令和に入ってアイドルブームが落ち着いてきたタイミングで、でんぱ組.incが、人生をテーマにしたような楽曲をリリースし始めたのが個人的にはすごく興味深いなと思ったんです。
もふくちゃん そうですね。「いのちのよろこび」あたりから。(古川)未鈴ちゃんの結婚・出産もあったり。
南波 あの一連の動きには、未鈴ちゃんの人生の変化も関係していたんですか?
もふくちゃん 未鈴ちゃんも当時いろいろ考えていたと思うんですけど、その結果、出産後もアイドルとして生きていく姿をみんなに見せたいということになって。「時代に先んじて、私がやる!」みたいな。
南波 すごすぎますね。
もふくちゃん 本当にそれをやってのけているので、「こいつはすごい!」って思います。もちろんメンバーの中には一生アイドルを続けたい子と、そうじゃない子がいるので、そこをどうやって見せていくかは今後の課題なんですけど。でも楽しいですよ。みんなある程度大人なので、今後のアイドル人生について前向きに話せるし。悲壮感はないです。
南波 長く活動していると、ファンの若返りみたいなことも考えなきゃいけなくなってくるじゃないですか。でも、でんぱ組.incは、例えば「オーギュメンテッドおじいちゃん」の歌詞に顕著ですけど、今付いているファンの先のことも、ちゃんと考えているというか。
もふくちゃん 「おじいちゃーん!」って(笑)。
南波 ひどいですよ、ファンをおじいちゃん扱いして(笑)。でも、みんなで一緒に老人になるまで歳を取っていこうという発想は素敵だなと思うんですよ。
もふくちゃん でんぱの場合は、子供の頃に聴いていた人がもう大人になっていたり、ファンの世代が1周しちゃってるんで。それこそメンバーの高咲陽菜ちゃんの親御さんはでんぱのオタクだったんですよ。今やオタクの子供がでんぱ組.incの新メンバーになる時代なんですよね。卒業していったメンバーの子供たちがアイドルになる時代もきっといつかありますね(笑)。
佐々木敦 でも、そういう現象が起きるのって今まではハロプロぐらいだったわけで。グループを長く続けてきたからこその賜物ですよね。もふくちゃんは、でんぱ組.inc以外にも、虹のコンキスタドールとか、いろんなグループを手がけられていますけど、正直でんぱ組.incを続けていくのがつらくなったような時期はあったんですか?
もふくちゃん 何度もありましたよ。人気が出始めた途端、いろんな人たちが来て、いろんなことを言ってくるようになって。「もっとテンポを落としてください」とか、挙句の果てには「もっと普通で売れそうな曲を歌わせてください」とか。すごくしんどい時期があったんですよね。虹コンで忙しかった時期は、最終的な部分だけチェックするみたいなこともあったし。去年の12月に出したEP「でんぱぁかしっくれこーど」のタイミングで、一旦「売れる」みたいなことから、「でんぱ組でしかできないことをやる」というふうに考え方を変えたんです。そうしたら好き勝手にしていい土台ができて。私も肩の力が抜けて制作に自由に関わるようになったんですけど、そうしたらやっぱりバレるんですよね(笑)。
南波 明らかに変わっただろ、みたいな。
もふくちゃん すぐにバレた(笑)。ひさしぶりに制作だけに100%打ちこめて、でんぱ組.incにしかできないことがあるというのに改めて気付いたんです。あと最近は「Y2K」というワードが出てきて、「Y2Kって私の時代じゃん!」と思って。冒頭でも話しましたけど、私は2000年代前後の10代の頃に、スリルジョッキーとか、あのあたりの音楽から大きな影響を受けてるんで。ついに自分の時代がやってきたと思っていて。
佐々木 時代がひと回りしたというか。
もふくちゃん そうです。だからLightning Boltとかに曲を書いてもらえないかなと思っていて。
南波 Y2Kの捉え方が独特すぎないですか(笑)。
もふくちゃん だから今こそ佐々木敦さんの時代なんですよ。
佐々木 えっ? そうなの(笑)。
もふくちゃん 今あっちゃんがやらないで誰がやるんですか(笑)。もう1回、「UNKOWNMIX」を復活させるべきなんですよ。あれこそY2Kです!
南波 見落としてた(笑)。
佐々木 全然気付いてなかったよ。
もふくちゃん もう、バカバカバカ。確実にあのへんが今、キテるんですよ!
佐々木 そうだったのか(笑)。
南波 もふくちゃんの「今、キテる」がみんなよりも先に行っちゃってるのか全然違う方向に向かってるのかわからないけど、明らかにズレてるのは間違いないですよね(笑)。
もふくちゃん そうかも(笑)。なので、もうちょっとポップな人にも書いてもらおうと思って、これは佐々木敦系じゃないですけど、新作ではTahiti 80にも曲をお願いして。結局は自分が楽しいことをやったほうがいいなと思うんですよ。そうしないと、この先の人生が楽しくならないような気がして。
今のアイドル業界はパクりだらけ
佐々木 要するにもふくちゃんの場合は、発想の入り口が「これをやったらウケそう」とか「売れそう」というところじゃないんでしょうね。誰もやってないからやるっていう。
もふくちゃん 私の中で最上級のモチベーションって、「誰もやってないことをやる」ということなんです。誰もやってないことをやる以外はカッコ悪いと思っていて。これは声を大にして言いたいんだけど、今のアイドル業界はパクりだらけなんですよ。
南波 実際でんぱ組.incのフォーマットはめちゃくちゃ流用されまくってますよね。
もふくちゃん クリエイティブな何かを加えてくれれば全然いいんです。むしろ、うれしいというか。「そう来たか!」って驚きがあること自体は楽しいし、そこにリスペクトを感じられるので。もちろん、そういうのが大半だとは思っています! ただ、あまりにもそのままパクられることも多いし、パクリまくってドヤ顔してる感じが理解できなくて。もうちょっと恥ずかしそうにしろよって思うんだけど(笑)。「出典:でんぱ組.inc」って書いてくれるならいいんですが。ああいうのって、なんなんですかね。
南波 もしかしたらパクってるという意識自体ないのかもしれないですね。「好きだから、いつの間にか真似してた」みたいな。
もふくちゃん 例え「好きだから」という理由だとしても、物作りをしてる人間なんだったら、もうちょっと工夫してほしい。私はリスペクトの気持ちがあるから、ハロプロさんのことをそんなふうに扱わないし。もしハロプロさんの真似をするとしても、私なりの解釈で、「この作家さんにハロプロっぽいテイストの曲を書いてもらったら面白いものが生まれるんじゃないか」とか、最大限の敬意を込めて、クリエイティブ面で工夫すると思います。
佐々木 YouTuberの世界でよくある、「バズるためには過去にバズったことをそのままやるのが一番手っ取り早い」みたいな感覚に近いのかな。
もふくちゃん そんな時代は早く終わったほうがいい。つまんなすぎて、先細りする未来しかありません。なので私は今後、老害になります(笑)。老害としてやることは1つ。ツマらないことやってるやつらに「お前らカッコ悪いことやってんじゃねえよ!」って言っていくしかない。もちろんカッコいいことをやってる若い人たちは応援しますけど。
佐々木 今の話が象徴的だけど、ある時期からメタがベタに取って代わって、「ベタであることの何が悪い?」みたいな風潮ができあがってしまったよね。そしてタチが悪いことに、大資本が絡んだりすると、今やそれがビジネスになってしまうことさえある。
もふくちゃん そうそう! 本当そうなんですよね。オリジナルに対してのリスペクトが本当にない時代です。
佐々木 ベタが持っている無意識の暴力性が今後さらに顕在化していくような気もするよね。
もふくちゃん でも、最後お金がなくなって立ち行かなくなって「どっちを選ぶ?」って言われたとしても、私はクリエイティブなほうを選びます。最後の残党になっても、絶対にやり続けようと決めたので。だからこそ、あえて老害になろうと思って。
佐々木 この連載で今まで何度も言ってきたんだけど、僕は長い間アイドルに興味がなかったんです。それがある時期からいろいろ気になるようになってきて。そんなときに、「形而上学的、魔法」のミュージックビデオを偶然YouTubeで観て驚いたんだよね。でんぱ組.incはもちろん知ってたんだけど、諭吉佳作/menが曲を書いてるんだ、と思って。あれは早かったよね。これぞクリエイティブだなって。
もふくちゃん やっぱりプライドもあるし、手垢の付いてない人にお願いしたくて。だから自然とそういう感覚になりますよね。「この人、もうアイドルの曲書いてるじゃん」とか。
佐々木 面白い曲を書く人ってたくさんいますからね。
もふくちゃん そう! 探せばいるんですよ。でも、いざオファーしたら「アイドルはちょっと……」って断られるのが9割。そんな中で曲を書いてくれたのが玉屋(2060%)さんとか清竜人さん。最初戸惑ったんですよ、竜人さんには。
南波 オファーを受けてくれないんじゃないかって?
もふくちゃん いや、そうじゃなくて。毎回とんでもない曲ばかり書いてくるから。
佐々木・南波 あはははは。
もふくちゃん そのつど、「アイドルにこういうこと歌わせたらダメだよ」ってやりとりするみたいな(笑)。でもそれが、電波ソングの持つギリギリ、ハラハラの加減とめちゃくちゃ相性よしだったんですよね。それがのちのちいろんなアイドルに曲を書くようになって。挙句には自分でもアイドルグループ(清竜人25)を始めて。
佐々木 もふくちゃんを通じてアイドルソングのノウハウを学んだわけですね。そして見事に花開いたと思ったら……。
もふくちゃん アーンって食べようとしてたハンバーグを、サッとトンビに持ってかれちゃうみたいな(笑)。まあ、いいんですけど。
南波 大丈夫ですよ。誰がオリジネーターなのか、わかる人はわかりますから。
もふくちゃん いやいや最近のオタクは知らないでしょ。おじいちゃんしかわかってくれない。だから最近はおじいちゃんの歌ばかり作ってるんです(笑)。
黒人音楽と宇宙の関係性みたいなものをでんぱ組.incで表現したい
南波 「形而上学的、魔法」しかり、ここ最近の楽曲もそうですけど、僕は、あれくらい振り切った楽曲のほうが面白いと思うんですよ。でも、「こういうのでいいんだよ」という言い方がありますけど、変に攻めずに変わらないでいてほしいという人もきっと一定数いますよね。
もふくちゃん 私が好きだったアーティストって、アルバムごとにどんどん音楽性が変わっていったので。プリンスとか本当に素敵だなと思う。だからいいんです。今がでんぱ組.incの全盛期じゃなくても、ファンの人たちが振り返って「あのときは、ああいう感じだったんだな」とか思ってもらえれば。そもそも全盛期が続くことなんてあるわけないし。だったら人生レベルで、いろんな物語を表現したほうが面白いなと思って。レガシーを残していきたいんです。「レガシー」って、めちゃくちゃ面白いから最近よく使ってるんですけど(笑)。
佐々木 ははは。でも、そこで人間が2種類に分かれるんだと思う。一度成功したことをやり続ける人と、同じことをやり続けるのが嫌なタイプ。もふくちゃんは明らかに後者だよね。同じことをやり続けるほうが勝てる確率は高いだろうけど。
もふくちゃん そうですね(笑)。
佐々木 毎回、賭けになっちゃうから。
南波 だからこそ僕は、でんぱの新曲を聴いて、いよいよワケがわからなくてワクワクしてるんですよ。秋葉原を古代遺跡に見立ててみたり(笑)。
もふくちゃん 逆に今のほうがファンの皆さんが「これこれ!」ってなってて私も意味がわからなくて。「あれ、こっちなの?」みたいな(笑)。でんぱのオタクは長年かけてヘンテコなものに対して調教されてるのかな?って思いました(笑)。昔の調教が今も効いてる(笑)。
佐々木 グループを長く続けていくと、当然メンバーの加入 / 脱退という問題に直面することも何度かあるわけで。でんぱに関して言えば、2021年2月に5人の新メンバーが加わったのがグループにとって大きな変革のタイミングだったと思うんです。一気に仕掛けてきたなって。
もふくちゃん さっきも話した通り、今まで何度か、でんぱ組.incをやめようと思った時期があって。新メンバーを入れたあのときは、もうグループを解散させようと思っていて。このまま続けていくかどうかずっと考えていたんです。でも、スタッフよりもむしろメンバーのほうから、絶対にグループを続けてほしい、だから新メンバーを入れてほしい、という意見が出てきて。それで「続けていく」ということにチーム全体で腹を決めたんです。そしたら自分自身すごく気が楽になって、前みたいに個別でキャラクターを作りこんだりせず、グループ全体で長期的なストーリーを考えていけばいいんじゃないかと思うようになったんです。もともと1stアルバムからやってた宇宙っていうモチーフを使ったSFチックなことというか、この先、誰かが辞めたとしても、長い宇宙の歴史の中に存在を刻んでいって名を残せるというか。違う星に行ったんだとかブラックホールに吸い込まれて並行世界に行ったとか、そういうふうに考えればいいんだって(笑)。いつかまた出会える。
佐々木 「アベンジャーズ」みたいな(笑)。1回死んだキャラクターが別の役で戻ってきたり。
もふくちゃん そうそう。マーベルシリーズとか仮面ライダーもそうですけど、やっぱり人々に愛され続けるコンテンツって、長く続くなりの理由がちゃんとあるんですよね。今後はそこを目指していこうと思って。
南波 個別のキャラクターに寄り添いすぎる楽曲って、その人がいなくなった瞬間に意味合いが変わっちゃったりするけど、ストーリーがベースにあるとずっと歌い続けることができますからね。
もふくちゃん それで秋葉原という“場所”に戻ってきたところもあるんです。もっといえば宇宙。普遍的なようでいて、常に変わり続けているというか……ズルいんですよ、宇宙って。
南波 宇宙、ズルいって(笑)。
もふくちゃん 宇宙、マジで使えるから(笑)。それこそP-FUNKがずっと使い続けてるネタだし、でんぱ組.incの1stアルバムのタイトルも「ねぇきいて? 宇宙を救うのは、きっとお寿司…ではなく、でんぱ組.inc!」だったりするし。The Isley Brothersのジャケットの宇宙っぽい雰囲気とか昔から大好きで、黒人音楽と宇宙の関係性みたいなものが私の中で理想的なイメージとしてずっとあるんですよね。その感覚をでんぱ組.incで表現したくて。だから適当なモチーフで宇宙を使ってるアイドルとか、めっちゃ嫌なんですよね。まあ仕方ないか。宇宙はみんなのものなので。
佐々木・南波 はははは!
もふくちゃん それをパクリだとは言わないです(笑)。
南波 しかしこうやって話を聞いてると、でんぱ組.incは、たまたま時代とシンクロした部分があったのかもしれないけど、例えそうじゃなかったとしても間違いなく面白いことになっていたんでしょうね。
もふくちゃん 私はスリルジョッキーやメゴを目指していたから時代の流れは最初から関係ないです(笑)。流行っていても、流行っていなくても同じことをやっていたと思う。
面白いものを残していれば後世の人たちが発掘してくれる
佐々木 そんなもふくちゃんから見て、今のアイドルシーンってどういうふうに見えているんだろう?
もふくちゃん わかりやすいところで言えば、ファンの男女比が変わりましたよね。女性のファンが圧倒的に増えて。そこは1つのチャンスですよね。TikTokでバズった系のグループのファンはほとんど女の子だし。人気があるアイドルって今は女性ファンに支持されてるんですよね。
佐々木 裏返すと、男性オタクが減っているとも言えるよね。それはアイドルシーンだけに限らず。例えばマンガ専門店とかに行っても、昔は男性ばかりだったのが、2010年代の中頃あたりから女性のお客さんが目に見えて多くなって。要するに女ヲタだよね。今思えば弱者男性論の先取りだったんだなって。
もふくちゃん 新宿の歌舞伎町も、この10年でホストクラブが急激に増えてますよね。昔はキャバクラばっかだったのに。水商売の世界では、とうの昔に男女比が逆転していたんでしょうね。それがアイドルの世界にも起こってるという。
南波 アイドルが女性に支持されるようになった要因の1つには、女性プロデューサーが増えたということもあると思います。もふくちゃんもそうですけど。女性が手がけることによって、同性も好きになれるようなポイントが増えていって。
もふくちゃん 確かに。ここ数年で女性プロデューサーが一気に増えましたよね。
南波 femme fataleも姉妹でセルフプロデュースしてますし。
佐々木 元アイドルがプロデュースするパターンも増えてるみたいだね。
南波 それって、すごくいい傾向だなと思うんです。ここ数年のアイドルシーンに自分は悲観的なんですけど、やっぱり希望は持ちたいので。
佐々木 女性ファンが増えているというのは一縷の希望でもあるよね。一時期に比べてシュリンクしてしまったアイドルシーンにとって、新規のファンをどうやって巻き込んでいくかということは何よりも大事なことだから。おじいさんはいつか死んでしまうから(笑)、いかにニュージェネレーションを巻き込んでいくかという。
もふくちゃん そうなんです。そこはすごく大事だなと思っていて。さっき「レガシー」って言いましたけど、今私たちが作ってるものって遺跡と一緒で、本当に面白いものを残していれば、後世の人たちがいつか発掘してくれると思ってるんですね。だから自分が心から面白いと思うことをやり続けるしかないんです。未来の人たちに発掘されて「なんだこれは!」って思ってもらえるようなものを。「何万年も前に、こんな面白い人たちがいたのか。でんぱ組.incっていうのか!」って。
佐々木 ラスコー洞窟の壁画みたいな(笑)。
もふくちゃん カルチャーやアートって、そういうふうに受け継がれていくと思うから。私たちも、とっくの昔に死んでる芸術家の作品に感銘を受けたりするじゃないですか。それが売れてた、売れてなかったに関係なく。その時代に受け入れられてなくても、あとから評価されていくこともありますから。
佐々木 確かに。
もふくちゃん だから、アイドルシーンに関していえば今は悲観的な状況なのかもしれないけど、長い目で見れば別に大したことないっていうか。どうせいつか死ぬんだったら、今の自分たちにしか作れない面白いものを残すだけなので。それ以外、残りの寿命を使うことはないかなって。
佐々木 今、めちゃくちゃすごいこと言ってますよ。
もふくちゃん 本当に面白いものは絶対に残りますから。歴史がそれを証明してるので。ただ自己満にならないように気を付けなきゃとは思っていて。私たちが作るものは、みんなの手が届かないような崇高なものじゃなくて、あくまでもポップなものにしたいんですよね。例えばマイケル・ジャクソンがやってきたことって音楽史的に見ても超意味があることじゃないですか。
佐々木 アートとして優れていると同時に、大衆にもちゃんと支持されているという。
もふくちゃん もっと言うと、Earth, Wind & Fireの「September」とか。アースがあの曲をリリースした当時、ブラックミュージックファンの間で、めちゃくちゃ叩かれたみたいなんですよ。でもポップミュージックの歴史の中で、一番聴かれた楽曲って実は「September」だという説もあるみたいで。私たちもそうでありたい。どんなに時代が移り変わっても、常に「September」を作るチャレンジ精神を忘れない側でいたいですね。
もふくちゃん
東京都出身の音楽プロデューサー、クリエイティブディレクター。東京藝術大学音楽学部卒業後、ライブ&バー・秋葉原ディアステージやアニソンDJバー・秋葉原MOGRAの立ち上げに携わり、でんぱ組.incや虹のコンキスタドール、ミームトーキョー、ARCANA PROJECT、わーすたなどのアイドルに加えて、PUFFYをはじめとする多くのアーティストのクリエイティブおよび楽曲プロデュースを手がけている。6月21日には、Tahiti 80、ギターウルフ、桃井はるこ、ヤマモトショウら豪華な作家陣を迎えた、でんぱ組.incの新作EP「ONE NATION UNDER THE DEMPA」がリリースされる。
佐々木敦
1964年生まれの作家 / 音楽レーベル・HEADZ主宰。文学、音楽、演劇、映画ほか、さまざまなジャンルについて批評活動を行う。「ニッポンの音楽」「未知との遭遇」「アートートロジー」「私は小説である」「この映画を視ているのは誰か?」など著書多数。2020年4月に創刊された文学ムック「ことばと」の編集長を務める。2020年3月に「新潮 2020年4月号」にて初の小説「半睡」を発表。同年8月に78編の批評文を収録した「批評王 終わりなき思考のレッスン」(工作舎)、11月に文芸誌「群像」での連載を書籍化した「それを小説と呼ぶ」(講談社)が刊行された。近著に「映画よさようなら」(フィルムアート社)、「増補・決定版 ニッポンの音楽」(扶桑社文庫)がある。
南波一海
1978年生まれの音楽ライター。アイドル専門音楽レーベル・PENGUIN DISC主宰。近年はアイドルをはじめとするアーティストへのインタビューを多く行い、その数は年間100本を越える。タワーレコードのストリーミングメディア「タワレコTV」のアイドル紹介番組「南波一海のアイドル三十六房」でナビゲーターを務めるほか、さまざまなメディアで活躍している。「ハロー!プロジェクトの全曲から集めちゃいました! Vol.1 アイドル三十六房編」や「JAPAN IDOL FILE」シリーズなど、コンピレーションCDも監修。