YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeの、10月13日から19日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100の中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、トップ20以内に初登場の新曲が多数ランクインした。10位は結成5周年を迎えた、なにわ男子の「I Wish」。また8月に「CRUISIN'」で世界同時配信デビューをしたIMP.が、早くも3曲目の配信シングル「SWITCHing」を発表し11位に登場している。
12位には80年代の感性が込められた、TOMORROW X TOGETHER「Chasing That Feeling」がランクイン。13位は“猫ひげダンス”が人気を集めているIVE「Baddie」。17位のKing & Prince「MAGIC WORD」は、家族を守れる強さが欲しいと願うアップテンポのダンスナンバーだ。18位はポケットモスターと初音ミクのコラボ「Project VOLTAGE」第3弾となるMitchie M「ミライどんなだろう」。20位にはフジテレビ系で放送中のテレビアニメ「ONE PIECE」の新主題歌であるSEKAI NO OWARIの「最高到達点」が入った。
そんな幅広いジャンルの楽曲が並ぶ中、今回は下記の3曲をピックアップ。
DOES「曇天」THE FIRST TAKE
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場8位
今週もTHE FIRST TAKEの勢いがすごかった。78位にYENA「SMILEY -Japanese Ver.-」、88位にKyrie(アイナ・ジ・エンド)「キリエ・憐れみの讃歌」のTHE FIRST TAKEが初登場でランクインする中、とりわけ注目されたのは8位のDOES「曇天」だ。
この曲がリリースされたのは2008年のこと。当時、テレビ東京系アニメ「銀魂」のオープニングテーマとなり、子供から大人まで幅広い層に支持された。その名曲を今のDOESの演奏で聴けるということで、ロックファンもアニメファンもとにかく沸いた。YouTubeのコメント欄に書き込まれた、氏原ワタル(Vo, G)のコメントを一部紹介しよう。
THE BLUE HEARTSでロックを好きになり、NIRVANAで3ピースバンドをやりたくなり、デビュー当初から「ギター1本で成立するシンプルで強い曲」を模索する中でできた、ひとつの完成形である曲。15年も経って、今でもこの「曇天」を聴いてくれる人がいてくれて、この曲を作って、演奏し続けて、良かった。
改めて思うのは、バンドは続ければ続けるほど、楽曲の説得力が増すのはもちろんだが、そのバンドごとの様式美が極まっていくこと。THE FIRST TAKEで公開された一発撮り映像は、DOSEの3人の出立ち、3人だけの音が非常にカッコよかった。10月25日には、第2弾として映画「劇場版 銀魂 新訳紅桜篇」の主題歌「バクチ・ダンサー」もTHE FIRST TAKEで公開されているので、あわせてチェックいただきたい。
星川サラ×天音かなた×胡桃のあ×獅子堂あかり「わざとあざとエキスパート」カバー
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場76位
原曲は「TikTokでバズるようなかわいい曲を作りたい」というメンバーの意見がきっかけで制作された、いぎなり東北産の今年3月配信のシングル。どんな歌詞にするか、振付は誰にお願いするかという話にも彼女たちのアイデアを反映した結果、この曲は5月に見事TikTok月間楽曲ランキング1位を獲得した。
そんな“あざとさ”と“かわいさ”が詰まったこの曲を、人気Vtuberたちがカバーした。そもそもメンツの豪華さに驚く。「にじさんじ」の星川サラと獅子堂あかり、「ホロライブ」の天音かなた、「ぶいすぽっ!」の胡桃のあという、Vtuberの大手“三大箱”が所属の垣根を越えて夢のコラボを果たしたのだ。天音の透明感のある声、星川の妹系の甘い声、同じ甘い系でも赤ちゃんっぽさも感じる獅子堂の声、どこか小悪魔感のある胡桃の声。三者三様のかわいさが現れた歌声に、賞賛の嵐が巻き起こっている。
マルシィ「ラブソング」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場97位
TikTok上における人気を測るBillboard JAPANのチャート「TikTok Weekly Top 20」にて、10月11日付と18日付の2週連続で1位になった、マルシィの「ラブソング」。これまで数々の恋愛にまつわる楽曲を発表してきた彼らが、ここに来て直球のタイトルを作ったことに、並々ならぬ覚悟を感じる。何より、これほど純度が高くて飾り気がないラブソングも珍しい。というのも、ただただ愛している思いを1曲通して伝えているだけなのだ。サウンドを必要最低限に抑えているのも好印象。サビで派手に盛り上げることもなく、悲しげな音色のピアノでしっとりと聴かせることもなく、温かみのあるアコギを軸にドラム、ベースで優しい音を作っている。歌詞に寄り添うような演奏だからこそ、歌メロのよさが際立っている。MVの内容は彼女と過ごすドライブデート。女優や「non-no」の専属モデルとしても活躍する鈴木ゆうかの彼女役もハマっており、まるでデートをしているような感覚になって、思わずドキドキする。