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フィッシュマンズ、7年ぶりツアーで披露した最新型「LONG SEASON」

フィッシュマンズ「FISHMANS TOUR “LONG SEASON 2023"」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。
12か月前2023年11月02日 13:04

フィッシュマンズのツアー「FISHMANS TOUR “LONG SEASON 2023"」の最終公演が本日11月2日に大阪・なんばHatchにてフィナーレを迎えた。今回のツアーでフィッシュマンズは東名阪でライブを実施。7年ぶりのツアーということもありチケットは瞬時にソールドアウトを記録した。本稿では10月24日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で行われた初日公演の模様をレポートする。

開演前から場内に漂う異様な熱気

ここ数年、海外でも多くのファンを獲得しているフィッシュマンズ。数ある楽曲の中でも、とりわけ海外での人気が高いのが今回のツアータイトルにも冠されている、1曲35分16秒におよぶ長尺曲「LONG SEASON」だ。同曲が演奏されることが事前に発表されていたこともあり、会場には外国人客の姿も見受けられ、開演前から異様とも言える熱気が漂っていた。

開演時刻になると、茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key / LITTLE TEMPO、OKI DUB AINU BAND)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)、関口”dARTs”道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)がステージに登場する。メンバーはステージ前方に並び客席に手を振ると、それぞれ持ち場に着きセッティングを開始。シーケンスが爆音で鳴り響くとともに「A Piece Of Future」でライブをスタートさせた。茂木が繰り出す硬質なブレイクビーツに、メンバーが次々と音を重ね、めくるめく音の渦が広がっていく。茂木の「カモン!」という掛け声を合図にフィッシュマンズは続けざまに「MAGIC LOVE」をプレイ。演奏後のMCで茂木が「先週このツアーのためにリハーサルをしたんですけど、リハーサルしてることを忘れて完全にその日が東京1本目のライブになってしまいました(笑)。今日は東京2本目のつもりで全力で行くんでよろしく!」と意気込みを告げると大きな拍手が巻き起こった。

時を超えて愛される「いかれたBaby」

「BABY BLUE」でメロウなムードを作り上げると、フィッシュマンズは「バックビートにのっかって」を演奏。ゆったりとループするレゲエのリズムにフロアが静かに揺れる。続く「Smilin' Days, Summer Holiday」では一転、アップリフティングな演奏と、原田のオートチューンを用いた独特なボーカルとが相まって場内のテンションが一気に上昇していった。演奏を終えた茂木は「気持ちいいね」と、しみじみ呟く。そして「この曲が生まれて今年で30年目というびっくりするような歳月が流れてますけど、演奏するたびにフィッシュマンズってすげえ! 佐藤伸治ってすげえ!って思わずにいられない、そんな曲……みんなと一緒に作りたいと思います!」と観客に呼びかけると、バンドは「いかれたBaby」をプレイ。スウィートなサウンドに合わせて、観客たちは心地よさそうに体を揺らしたり、歌詞を口ずさんだりして、フィッシュマンズきっての名曲を思い思いに味わっていた。

UAとハナレグミがステージに登場

「頼りない天使」のイントロに乗せて、この日最初のゲストとしてUAが、しなやかなステップでステージに登場。挨拶代わりとばかりにパワフルな歌声を聞かせる。UAは天真爛漫なMCで会場を和ませたのち、「すばらしくてNICE CHOICE」を歌唱。ジリジリと張りつめた楽曲のムードをエモーショナルな歌声で絶妙に彩った。続く「WALKING IN THE RHYTHM」ではハナレグミが合流。重く引きずるようなダウンビートの上で2人のソウルフルな歌声が交差する。ここでUAが一旦退場。ハナレグミはアコースティックギターを手に取ると、バンドが重ねるシンプルな演奏に乗せて「夜の想い」を穏やかに歌い届ける。「ナイトクルージング」で引き続きボーカルを担当した永積は、夜のしじまを漂うような楽曲の世界に没入し、持ち前の情感豊かな歌声を会場いっぱいに響かせた。

「LONG SEASON」の演奏へ

「今日は深いところまで行くんで、最後まで付き合ってください」という茂木の言葉に続けて「LONG SEASON」の演奏がスタートすると場内に緊張感が張り詰める。関口の印象的なギターフレーズに、HAKASE-SUNが奏でるピアノのリフ、柏原の重厚なベースが重なり楽曲の輪郭が時間をかけて、ゆっくりと浮かび上がる。茂木がセンチメンタルなメロディを歌い上げると楽曲が徐々に熱気を帯びていく。夢と現実の狭間を行き交うようなサウンドに、ぐんぐん引き込まれていく観客たちに、あたかも呼びかけるように、「くちずさむ歌はなんだい?」「思い出すことはなんだい?」と原田の歌声がノスタルジックに響きわたる。バンドが繰り出す幻想的かつドープなサウンドが、観客たちを半分夢の中にいざなっていく。

やがて楽曲が中盤に差しかかると、茂木以外のメンバーが一旦退場し、ドラムソロのパートに突入。茂木は静かにうつむき神経を集中すると、静寂を切り裂くようにシンバルを打ち鳴らし、それを合図に感情の赴くままに、ひとしきり激しいインタープレイを繰り広げる。観客たちは突然の雷雨に見舞われたかのように、ただただ立ちすくみ、鬼気迫るような茂木のプレイをじっと見つめていた。ドラムパートが終了すると、柏原とHAKASE-SUNがステージに合流。3人はオリジナルバージョンを激しくテンポアップした演奏で場内にカオティックな雰囲気をもたらした。

ブレイクを挟み、木暮がアコギを手に演奏に加わり楽曲が再開。木暮の口笛、関口のノイズギター、HAKASE-SUNのアコーディオンなど、さまざまな音色が混じり合い壮大なサウンドスケープを紡いでいく。「Get round in the season」というコーラスのリフレインを経て楽曲は、いよいよ終盤へ。バンドの演奏は序盤のシンプルなアンサンブルに移行してゆき、先ほどまでの狂騒と入れ替わるように会場を静寂が満たしていく。やがて場内はしんと静まり返り、ミニマムなピアノのフレーズのみが延々と鳴り響く。そしてピアノの音色が途絶えた瞬間、楽曲は静かにフィナーレを迎え、盛大な拍手と歓声が場内に沸き起こった。約38分に及ぶ演奏を通じて、フィッシュマンズは最新型の「LONG SEASON」を見事に構築してみせた。本編最後に届けられたのは「Future」。興奮冷めやらぬ場内に原田の温かな歌声がふんわりと漂っていった。

アンコールのゲストは……

アンコールでは、この日3人目のゲストとなるマヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)が登場。マヒトは水の中を泳ぐ魚のようにゆらゆらと体を揺らしながら「POKKA POKKA」を朗らかに歌い上げた。続く「Weather Report」 ではUAとハナレグミもステージに合流。曲中では、マヒトが楽曲の世界観とリンクしたオリジナルのラップを披露し、楽曲に新たな息吹を注ぎ込む。アンコールの最後に演奏されたのは1991年にリリースされたデビュー曲「ひこうき」。ロックステディの牧歌的なリズムに乗せて、3人のゲストボーカルが楽しげに歌詞を歌い継いでいく。演奏後には、茂木の呼びかけで、出演者一同が肩を組み客席に挨拶。晴れやかな雰囲気の中、この日のライブは終幕を迎えた。

セットリスト

「FISHMANS TOUR “LONG SEASON 2023"」2023年10月24日(火)Zepp DiverCity(TOKYO)

01. A Piece Of Future
02. MAGIC LOVE
03. BABY BLUE
04. バックビートにのっかって
05. Smilin' Days, Summer Holiday
06. いかれたBaby
07. 頼りない天使 with UA
08. すばらしくてNICE CHOICE with UA
09. WALKING IN THE RHYTHM with UA、ハナレグミ
10. 夜の想い with ハナレグミ
11. ナイトクルージング with ハナレグミ
12. LONG SEASON
13. Future
<アンコール>
14. POKKA POKKA with マヒトゥ・ザ・ピーポー
15. Weather Report with UA、ハナレグミ、マヒトゥ・ザ・ピーポー
16. ひこうき with UA、ハナレグミ、マヒトゥ・ザ・ピーポー

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