YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで3月29日から4月4日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、6位にCreepy Nutsの「二度寝」がランクインした。この曲は3月29日に最終回を迎えたTBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」の主題歌として書き下ろされたナンバーで、「warning warning 不適切な語録」や「このバスに乗って未来へ」など、ドラマの内容とつながるフレーズが巧みに盛り込まれている。ちなみに、今週でCreepy Nutsは「Bling-Bang-Bang-Born」とテレビアニメ「マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編」のコラボMVが5週連続で1位となり、「THE FIRST TAKE」にて披露された「Bling-Bang-Bang-Born」が4週連続で2位を記録した。まだまだ彼らの勢いは止まらない様子だ。
18位には、中森明菜の「TATTOO -JAZZ-」歌唱動画が初登場した。中森はデビュー42周年記念日である5月1日にベストアルバム「ベスト・コレクション ~ラブ・ソングス&ポップ・ソングス~」のリリースを控えており、これに向けて4月3日から中森明菜オフィシャルYouTubeにて5週連続で最新のセルフカバーの動画の公開を実施。その第1弾として公開されたのが、1988年にリリースされた21枚目シングル「TATTOO」のジャズバージョンだ。凄腕のプレイヤーたちが繰り出すテクニカルな演奏に、歌声に深みの増した中森のボーカルが見事にハマっている。4月10日には、1987年にリリースされた18枚目シングル「BLONDE」のセルフカバー「BLONDE-JAZZ-」がアップされているので、そちらも合わせてチェックいただきたい。
22位は、YG ENTERTAINMENTからBLACKPINK以来の約7年ぶりにデビューしたガールズグループ・BABYMONSTERの「SHEESH」がランクイン。儚げなピアノで始まり、厚みのあるシンセのパートに展開し、重低音のベースが乗り、曲が進むに従ってカッコよさが増していく。スキルフルなラップも素晴らしく、1曲通して力強さに魅了される。「SHEESH」はMV公開から10日が経った4月11日時点で1億再生を突破しており、これはK-POPガールズグループのデビュー曲MVとしては最短記録となる。
27位には、TOMORROW X TOGETHERの「Deja Vu」が登場した。4月1日にリリースされたTXTの6thミニアルバム「minisode 3: TOMORROW」は、過去の約束を思い出し、一緒に約束した“君”を探しに行くストーリーを描いた作品。そのリード曲である「Deja Vu」には「僕たちがした過去の約束のように、君と僕は必ず再び会うことになり、再会の瞬間がまるで『デジャブ』のように感じられる」というアルバムの核となるメッセージが込められている。MVでの5人は卓越したダンスだけでなく、演技力も光っている。特に、ラストでボムギュが泣いているヨンジュンを優しく抱きしめるシーンは、息を呑むほど美しい。
40位は、さくらみこ&星街すいせいによるユニット・miCometの初のオリジナル曲「シュガーラッシュ」がランクイン。この曲はブシロードのトレーディングカードゲーム「ヴァイスシュヴァルツ」のタイアップソングで、作詞はDECO*27、作曲はDECO*27とTAKU INOUE、編曲はTAKU INOUEが担当した。疾走感のあるサビも心地よく、さくらみこの甘い声と星街すいせいのクールな声が抜群のハーモニーを生んでいる。曲に合わせてギターを演奏したりダンスを踊ったりする2人の映像も魅力的だ。
そんな多種多様なジャンルの楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップ。
なにわ男子「NEW CLASSIC」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場12位
なにわ男子の今年一発目となる新曲は、クラシックの名曲であるヴィヴァルディの「四季」より「春」をモチーフとした、スケール感のあるナンバーだ。「気持ちはまるで冒険者 / 運命を変えてく旅立ちさ / 螺旋めぐる未来へと飛び込んで」という歌い出しの通り、新生活を始める人やこれから新しいことにチャレンジする人の背中を押す応援ソングとなっている。
MVで注目してほしいのは1分40秒以降の、多重合成やVFXなどのギミックを駆使しつつ、24名のオーケストラをバックに7人が華々しく踊る場面だ。中でも2分20秒の紫やピンクの鮮やかな草花に囲まれて歌うシーンは、今回のハイライトだろう。この7人の姿を見ていると、自然と心に花が咲くような優しいパワーをもらえる。
KeeP「だる着のまま迎えに行くよ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場74位
2021年にTikTok、Spotifyでバイラルヒットした「AM2:00drive(feat. ユエ)」で知られる、KeePの「だる着のまま迎えに行くよ」が74位にランクインした。今作は同じく2021年にリリースされた「AM2:00drive Part2(feat. Milky)」のリリックをそのまま使い、Rin音やasmi、Aile The Shotaらの作品も手がけるmaeshima soshiの新たなトラックでリニューアルした曲だ。
印象的なパンチライン「時計の針も嫉妬して早く回る」が曲の終盤で「今の2人の関係が少しだけ安定 / したら時計の針もいずれ嫉妬しなくなって / スローに流れる時間を少し自慢げに過ごしたいな」と回収されたりと、時間をテーマに「男女で違う時間の感じ方」や「早く過ぎてしまう2人の時間」がリリックに落とし込まれている。maeshima soshiによるトラックにも時計の音が取り入れられ、時間というテーマへの細かなこだわりを感じる。
MVはChilly Sourceが脚本からプロデュースしたストーリー仕立て。深夜にドライブデートをするカップルの仲睦まじい映像が続くが、いつしか心がすれ違い、別れ、お互いに別のパートナーと新たな人生を歩み始めるという意外な結末を迎える。個人的には3分30秒の2人がすれ違う場面は、坂元裕二が脚本を担当し、菅田将暉と有村架純がダブル主演を務めた映画「花束みたいな恋をした」(2021年公開)のラストシーンと通じる絶妙な切なさを感じた。
七人のカリスマ「カリスマジャンボリー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場90位
「超人的シェアハウスストーリー『カリスマ』」は、「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」の開発・運営を手がけるキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSと、株式会社Dazedが2021年に立ち上げた二次元キャラクターコンテンツだ。“正邪のカリスマ”である伊藤ふみや、“秩序のカリスマ”である草薙理解など、異なるカリスマ性を持つ7人が己のカリスマと向き合いながらシェアハウスで共同生活する物語である。メインコンテンツは「おそ松さん」を手がけた松原秀が脚本を担当しているボイスドラマと、 “七人のカリスマ”名義の楽曲配信。2021年に発表された初のオリジナル曲「めちゃめちゃカリスマ」は7人の自己紹介ソングで、脱力感のあるサウンド、コミカルな歌詞、それぞれの個性的な歌声が話題を呼び、MVの再生回数は現時点で380万回を突破している。
「カリスマジャンボリー」は4月24日にリリースされる2ndアルバムの表題曲。スペインの民謡「If You're Happy and You Know It」(幸せなら手をたたこう)を下地にしたキャッチーなメロディの、何度も聴きたくなるナンバーだ。まったく意味がわからないが観ているとなぜか元気になるカオスなMVも相まって、中毒性のある作品に仕上がっている。
そしてこの曲の歌い出しの挨拶「ちにわんこ」が凡人(カリスマファンの呼称)の間で流行中。凡人同士がつながるためのハッシュタグ「#凡人ちにわんこ」が、X(Twitter)でトレンド入りをするほどの盛り上がりを見せている。この記事でカリスマを知って興味を持った人は、さっそく「#凡人ちにわんこ」とポストしてみよう。