YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月12から4月18日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、2位に米津玄師の「さよーならまたいつか!」がランクイン。4月12日にMVを公開して11日間で1000万回再生を突破し、4月24日発表の「オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキング」で先週4月22日付に続き2週連続1位を獲得するなど、大きな注目を浴びている。
3位にはMrs. GREEN APPLEの「ライラック」が登場した。4月12日放送のテレビ朝日系「ミュージックステーション」2時間スペシャルに彼らが出演した際、大森元貴が「ライラック」は「青と夏」のアンサーソングとして書いた大人も楽しめる青春ソングだと解説。結成12年目を迎えた、今の彼らを象徴する新しい青春譚となっている。
5位にはNumber_iの1stシングル「GOAT」に収録されている「Blow Your Cover」が初登場。MVは3人の切なさがにじみ出た演技や、「GOAT」の激しいダンスと対照的な水中で踊っているかのような力を抜いた動きが素晴らしい。
74位には、JO1「Test Drive」のパフォーマンスビデオがランクインした。今シーズンの阪神ホームゲーム勝利後に行う「VICTORY DISCO」のために書き下ろされた楽曲で、YouTubeのコメント欄には阪神ファンをはじめ、各球団のファンからも「この曲でJO1を好きになりました」という声が多く書き込まれている。
バンドからダンスグループまで、幅広いジャンルの楽曲が初登場した今週は、下記の3曲をピックアップ。
Aぇ! group「《A》BEGINNING」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場48位
Aぇ! groupが結成されたのは2019年2月18日のこと。翌19日に関ジャニ∞(現:SUPER EIGHT)の横山裕が企画・演出をしたAぇ! group主演の舞台「僕らAぇ!groupって言いますねん」の開催が発表されるとチケットは即完。2022年9月には神奈川・ぴあアリーナMMにて初単独ライブ「西からAぇ! 風吹いてます!~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」を成功させ、2023年3月からは初の全国ツアー「Aッ!!!!!!と驚き全国ツアー2023」を開催するなど、彼らはデビュー前から着実に実績を積み上げてきた。そして今年3月16日、大阪・京セラドーム⼤阪でのファンミーティング「Aぇ! group Aッ倒的ファン⼤感謝祭in京セラドーム⼤阪~みんなホンマにありがとう~」で彼らは、5月15日にCDデビューすることを発表した。
記念すべきデビューシングルの表題曲「《A》BEGINNING」からは、彼らが強い覚悟と熱い気持ちで未来を切り開こうとする勢いを感じた。特に、この曲での「此処が出発点」という末澤誠也のシャウトは積年の思いが実った雄叫びに思えた。決して順風満帆なグループだったわけではない。苦楽をともにしたジュニアが続々とデビューを果たす中、一時は自分たちを鼓舞するためにAぇ! groupのメンバーだけで夜な夜な集まって、今後の目標について話し合うこともあったという。苦悩や葛藤も経てやっとつかんだデビュー。4月20日に放送された日本テレビ系「with MUSIC」でAぇ! Groupがテレビ初パフォーマンスをした際に、末澤の「此処が出発点」というシャウトを聞いた多くの視聴者がX(Twitter)に「震えた」「鳥肌が立った」とポストしていた。
2022年発売の音楽誌「MG」(NO.13)で僕が彼らに初めてインタビューをした際、小島健が言った。「エイトさんやWESTさんと同じ関西感もあるけど、そこと同じルートをたどっても面白くない。やっぱり誰も通っていないところへ行きたいですね。KAT-TUNさんみたいにカッコいいことも、エイトさんみたいに楽しいことも、King & Princeみたいに踊ったりキラキラもしたい。全部含めてまた違うところに行きたいです」と。「《A》BEGINNING」を聴いて、Aぇ! groupがどんなグループに大成していくのかますます楽しみになった。
YouTubeでは同曲のソロシーンのティザー映像や、MVメイキングダイジェストも公開されているので、MV本編と合わせてチェックしていただきたい。
aiko「相思相愛」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場56位
56位にランクインしたのは、5月8日にリリースされるaikoの45枚目シングルの表題曲「相思相愛」だ。この曲は現在公開中の映画「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」の主題歌で、作中に登場するキャラクターの心情を見事に捉えている。特にサビの「あたしはあなたにはなれない / なれない / ずっと遠くから見てる / 見てるだけで」は、毛利蘭、遠山和葉、中森青子の恋心とリンクしている。それぞれ意中の相手が幼馴染でありながら、“東西の高校生探偵”、“天才マジシャン”として周囲からも注目され、近くにいるのに遠い存在に感じている様と当てはまるのだ。
4月18日にTOKYO FM / JFN系で放送されたラジオ「SCHOOL OF LOCK!」にaikoが出演した際、彼女は「好きな人がこっちを向いてくれていても、絶対完璧に重なり合えることはない。相手が苦しい悲しいと思っているときに、自分はまったく同じ気持ちで苦しいとは思えない。そういうことが切ないな、と思って。私は、好きな人に対して尊敬が必ずあるんです。だから、ずっと追っかけているイメージが強くて……それで、書きました」とこの曲についてコメント。映画の主題歌として作品に花を添えるだけでなく、楽曲単体で聴いてもしっかりと共感を生むメッセージが込められた快作だ。
竹下☆ぱらだいす「とーちゃんの足ってなんでクサイの? feat. しんのすけ&ひろし」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場57位
竹下☆ぱらだいすは、2022年に結成された“原宿クリエイターアイドル”である。オリジナル曲「派手髪でも出来るばい!」や「うんぴフレンズ」など、キャッチーな見た目とギャグてんこ盛りの歌詞、思わず真似をしたくなるダンスで多くの子供たちから支持を集めている。
そんな竹下☆ぱらだいすが結成2周年を記念して発表した新曲は、「クレヨンしんちゃん」との公式コラボ曲「とーちゃんの足ってなんでクサイの?feat.しんのすけ&ひろし」。1曲を通して野原しんのすけの父・ひろしの足がクサイことを歌ったおバカな楽曲で、鼻をつまんで手を振るダンスに思わずニヤけてしまう。
作詞・振付・MV監督を担当したのはメンバーのあぃりDX。MVではロケ地である淡路島公園内の「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」に展示されているひろしの靴下の臭いを嗅いでメンバーが倒れるシーンもあり、曲・歌詞・映像が三位一体となっておバカな相乗効果を生んでいる。竹下☆ぱらだいすは以前から「クレヨンしんちゃんの主題歌を歌うこと」が目標だと公言していたため、このMVが公開されると多くのファンから「夢を叶えてすごい」という喜びの声があふれた。難しいことは考えずに、誰もが元気をもらえる魅力的なMVだ。